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第58話 第二階層の洗礼と、指揮官の誕生
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三体のゴブリンキングが霧散し、後に残されたのは、深い静寂だけだった。
子供たちは、息も絶え絶えになりながら、仲間と肩を寄せ合い、自分たちが成し遂げた勝利を噛み締めていた。
「やった……俺たち、勝ったんだ……」
「第一階層のボスを……全部、倒した……」
絶望的な状況を乗り越えた達成感が、疲労しきった体に、じんわりと広がっていく。
ディノッゾも、子供たちの奮闘に、満足げに頷いていた。
その時だった。
ゴオオオオ……という地響きと共に、ボスがいたところの奥、今までただの石壁だった場所が、ゆっくりと左右に分かれていく。
現れたのは、さらに下層へと続く、闇に閉ざされた巨大な階段だった。
「二階層への……道……」
リオが、ごくりと喉を鳴らす。
だが、驚きはそれだけではなかった。
階段が出現すると同時に、ボス部屋全体の壁が、淡い魔力の光を放ち始めたのだ。
光に照らされ、今まで気づかなかった古代の文様や絵が、壁画のように浮かび上がる。
それは、このダンジョンの構造を示す、巨大な見取り図だった。
壁画は、三つの階層に分かれている。
第一階層には、ゴブリンやオークといった魔物の姿が。
第二階層には、より禍々しい、悪魔や巨大な獣のような影が描かれている。
そして、最下層である第三階層。その中央、玉座に鎮座する、たった一体の存在。
その姿を認識した瞬間、子供たちの顔から、再び血の気が引いた。
「……うそ……だろ……」
カミラが、震える声で呟いた。
そこに描かれていたのは、この世の終わりを告げるかのような、巨大なドラゴンの姿だった。
オークキングも、ゴブリンキングも、ただの道化に過ぎなかった。このダンジョンは、この絶望の化身へと至る、ただの道筋だったのだ。
ようやく掴んだはずの希望が、壁画に描かれた一枚の絵によって、粉々に打ち砕かれる。
ディノッゾは、その壁画を忌々しげに見上げ、舌打ちした。
「……なるほどな。三階層仕立ての、クソったれなダンジョンか。そして、あいつがここの大将ってわけだ」
彼は、絶望に顔を染める子供たちを振り返ると、あえて、にやりと笑ってみせた。
「ビビってんじゃねえぞ、お前ら。どうせ、出口はねえんだ」
彼は、新たに開かれた、第二階層へと続く階段を、槍の穂先で指し示す。
「やることは一つだ。あのでかいトカゲをぶっ殺して、胸張って家に帰る。行くぞ」
その、あまりにも不敵な言葉。
子供たちは、まだ恐怖に震えながらも、こくりと頷いた。
この規格外のリーダーがいる限り、まだ、心は折れない。
九人の生存者たちは、決意を新たに、地獄の第二階層へと、その一歩を踏み出した。
リリアは他の女子に、ディノがいるから大丈夫と元気つけていく。
第一階層とは、明らかに空気が違った。
湿り気を帯びた空気、壁や床を覆う不気味な苔、そして、通路の奥から響いてくる、これまでとは比較にならないほど禍々しい魔物の咆哮。それが、第二階層だった。
「フレイム・ハート、前へ! グリーン・リーヴスは後方から援護!」
リーダーであるリオとカミラが、それぞれのパーティーに指示を飛ばす。
地獄の特訓と、第一階層での死闘を経て、子供たちの連携は見違えるほど洗練されていた。
カミラ率いる「フレイム・ハート」が、持ち前の攻撃力で突撃し、リオ率いる「グリーン・リーヴス」が、堅実な守りと援護でそれを支える。彼らは、自然と、二つのパーティーが一つの大きな部隊として機能する戦い方を身につけつつあった。
そこに、新たな敵が現れる。
爬虫類の鱗と、獣の鋭い爪を持つ、二足歩行の魔物「リザードマン」の小隊だった。
第一階層のゴブリンなどとは比較にならない、統率の取れた動きと、高い戦闘能力。
「ボルツ、右翼を崩せ! サラは左から回り込め!」
カミラの的確な指示が飛ぶ。
だが、リザードマンの動きは、彼女の想像をわずかに上回っていた。
「―――遅い!」
突如、後方からディノッゾの怒声が響いた。
「ボルツ、そこじゃない! 一歩下がって、中央の個体を叩き潰せ! リオ、お前のパーティーは左翼に集中砲火だ! ヒーラーはまだ動くな!」
それは、二人のリーダーの判断を、完全に上書きする命令だった。
子供たちは一瞬戸惑うが、もはや彼の言葉を疑う者はいない。即座に陣形を変え、ディノッゾの指示通りに動く。
すると、戦況は一変した。ボルツの一撃で敵の中央陣形が崩れ、そこに生まれた隙を、グリーン・リーヴスの集中攻撃が穿つ。リザードマンの小隊は、あっという間に崩壊した。
戦闘後、子供たちは、ぜえぜえと肩で息をする。
勝利はしたが、その顔には、疲労の色が隠せなくなっていた。
スキルとレベルは上がり強くなったはずだが、精神と肉体が休まる暇はない。絶え間なく続く戦闘は、確実に彼らのスタミナを削っていた。
ディノッゾは、そんな子供たちの様子を冷静に観察しながら、次の指示を出す。
もはや、彼は単なる引率者ではない。
二つのパーティーを駒のように動かし、この地獄を生き抜くための、唯一無二の総指揮官となりつつあった。
そのことに、子供たちも、そしてディノッゾ自身も、気づき始めていた。
子供たちは、息も絶え絶えになりながら、仲間と肩を寄せ合い、自分たちが成し遂げた勝利を噛み締めていた。
「やった……俺たち、勝ったんだ……」
「第一階層のボスを……全部、倒した……」
絶望的な状況を乗り越えた達成感が、疲労しきった体に、じんわりと広がっていく。
ディノッゾも、子供たちの奮闘に、満足げに頷いていた。
その時だった。
ゴオオオオ……という地響きと共に、ボスがいたところの奥、今までただの石壁だった場所が、ゆっくりと左右に分かれていく。
現れたのは、さらに下層へと続く、闇に閉ざされた巨大な階段だった。
「二階層への……道……」
リオが、ごくりと喉を鳴らす。
だが、驚きはそれだけではなかった。
階段が出現すると同時に、ボス部屋全体の壁が、淡い魔力の光を放ち始めたのだ。
光に照らされ、今まで気づかなかった古代の文様や絵が、壁画のように浮かび上がる。
それは、このダンジョンの構造を示す、巨大な見取り図だった。
壁画は、三つの階層に分かれている。
第一階層には、ゴブリンやオークといった魔物の姿が。
第二階層には、より禍々しい、悪魔や巨大な獣のような影が描かれている。
そして、最下層である第三階層。その中央、玉座に鎮座する、たった一体の存在。
その姿を認識した瞬間、子供たちの顔から、再び血の気が引いた。
「……うそ……だろ……」
カミラが、震える声で呟いた。
そこに描かれていたのは、この世の終わりを告げるかのような、巨大なドラゴンの姿だった。
オークキングも、ゴブリンキングも、ただの道化に過ぎなかった。このダンジョンは、この絶望の化身へと至る、ただの道筋だったのだ。
ようやく掴んだはずの希望が、壁画に描かれた一枚の絵によって、粉々に打ち砕かれる。
ディノッゾは、その壁画を忌々しげに見上げ、舌打ちした。
「……なるほどな。三階層仕立ての、クソったれなダンジョンか。そして、あいつがここの大将ってわけだ」
彼は、絶望に顔を染める子供たちを振り返ると、あえて、にやりと笑ってみせた。
「ビビってんじゃねえぞ、お前ら。どうせ、出口はねえんだ」
彼は、新たに開かれた、第二階層へと続く階段を、槍の穂先で指し示す。
「やることは一つだ。あのでかいトカゲをぶっ殺して、胸張って家に帰る。行くぞ」
その、あまりにも不敵な言葉。
子供たちは、まだ恐怖に震えながらも、こくりと頷いた。
この規格外のリーダーがいる限り、まだ、心は折れない。
九人の生存者たちは、決意を新たに、地獄の第二階層へと、その一歩を踏み出した。
リリアは他の女子に、ディノがいるから大丈夫と元気つけていく。
第一階層とは、明らかに空気が違った。
湿り気を帯びた空気、壁や床を覆う不気味な苔、そして、通路の奥から響いてくる、これまでとは比較にならないほど禍々しい魔物の咆哮。それが、第二階層だった。
「フレイム・ハート、前へ! グリーン・リーヴスは後方から援護!」
リーダーであるリオとカミラが、それぞれのパーティーに指示を飛ばす。
地獄の特訓と、第一階層での死闘を経て、子供たちの連携は見違えるほど洗練されていた。
カミラ率いる「フレイム・ハート」が、持ち前の攻撃力で突撃し、リオ率いる「グリーン・リーヴス」が、堅実な守りと援護でそれを支える。彼らは、自然と、二つのパーティーが一つの大きな部隊として機能する戦い方を身につけつつあった。
そこに、新たな敵が現れる。
爬虫類の鱗と、獣の鋭い爪を持つ、二足歩行の魔物「リザードマン」の小隊だった。
第一階層のゴブリンなどとは比較にならない、統率の取れた動きと、高い戦闘能力。
「ボルツ、右翼を崩せ! サラは左から回り込め!」
カミラの的確な指示が飛ぶ。
だが、リザードマンの動きは、彼女の想像をわずかに上回っていた。
「―――遅い!」
突如、後方からディノッゾの怒声が響いた。
「ボルツ、そこじゃない! 一歩下がって、中央の個体を叩き潰せ! リオ、お前のパーティーは左翼に集中砲火だ! ヒーラーはまだ動くな!」
それは、二人のリーダーの判断を、完全に上書きする命令だった。
子供たちは一瞬戸惑うが、もはや彼の言葉を疑う者はいない。即座に陣形を変え、ディノッゾの指示通りに動く。
すると、戦況は一変した。ボルツの一撃で敵の中央陣形が崩れ、そこに生まれた隙を、グリーン・リーヴスの集中攻撃が穿つ。リザードマンの小隊は、あっという間に崩壊した。
戦闘後、子供たちは、ぜえぜえと肩で息をする。
勝利はしたが、その顔には、疲労の色が隠せなくなっていた。
スキルとレベルは上がり強くなったはずだが、精神と肉体が休まる暇はない。絶え間なく続く戦闘は、確実に彼らのスタミナを削っていた。
ディノッゾは、そんな子供たちの様子を冷静に観察しながら、次の指示を出す。
もはや、彼は単なる引率者ではない。
二つのパーティーを駒のように動かし、この地獄を生き抜くための、唯一無二の総指揮官となりつつあった。
そのことに、子供たちも、そしてディノッゾ自身も、気づき始めていた。
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