ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow

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第62話 10 の至宝

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 一通り点検を終え、ディノッゾを鞄などを枕代わりに横たえ、状態が落ち着いているのを確認し終わった。

 8人はようやく落ち着き、宝箱の回りに集まった。目の前にある七色に輝く九つの能力玉と、竜の左手に握られた一つの禍々しい能力玉と思われる宝玉。

 子供たちはそのあまりにも幻想的な光景に、しばらくの間、言葉を失っていた。

「……すごい。これが、ダンジョンクリアの報酬……」

 誰かが、ごくりと喉を鳴らす。
 だが、彼らが期待したような、金銀財宝の山は、どこにも見当たらない。
 闘技場の中央に鎮座していたのは、竜の亡骸でも、宝の山でもなく、ただ一つ、巨大な宝箱だけだった。

「……リリア」

 リーダーの一人であるリオが、促した。

「君が開けてくれ。君たちがいなければ、僕たちはここまで来られなかった」

 その言葉に、他の子供たちも、力強く頷いた。
 リリアは、こくりと頷くと、代表して、恐る恐る宝箱へと近づいた。

「でもディのを待った方が?」
「いや、確かにそうなんだが、開けるまでの時間に制限があったり、何かに触れたら即地上に!なんてこともあり得るからさ。それに先生を早く地上に連れて行きたいじゃないか。君が先生の一番弟子なんだろ?」

「凄いのです!確かにそうなのです!早く開けるのです」

 リリアは納得し、その重厚な蓋に手をかけ、開けようとしたその瞬間だった。
 中からまばゆい光が溢れ出し、一冊の古めかしい魔導書が、ふわりと宙に浮かび上がった。そして、その魔導書は、まるでリリアに吸い寄せられるかのように、彼女の小さな胸の中へと、すっと消えていった。

「きゃっ!?」

 リリアが驚きの声を上げる。
 だが、奇跡はそれだけでは終わらなかった。
 魔導書がリリアの身に宿ると同時に、まるでその者の心を読んだかのように、各自が一番不足しているのを補完するアイテムが、光と共に現れたのだ。
 リリアの前には、彼女の華奢な手に馴染む、美しい白木の杖が、そっと置かれた。
 他の子供たちも、それに続くように宝箱へと駆け寄った。
 彼らが次々と宝箱に手をかざすと、そのたびに、中から新たな魔導書が、そして新たな装備品が現れては、それぞれの主の足元に現れた。

 剣士のリオの前には、古代の剣術が記された書と、決して砕けることのないと言われる伝説の金属で作られた【アダマンタイトの盾】が。 

 治癒術師のティナの前には、高位の白魔法が記された書と、魔力を増幅させる【賢者のローブ】。

 両手剣使いのカミラの前には、両手剣の奥義が記された書と、彼女の身体能力を最大限に引き出す、軽量で強靭な【ミスリルの戦闘服】。 

 一人一つずつ、合計九冊の魔導書と、九つの至宝とも言える武具が、それぞれの主を選び、魔法書は触れるとその身に宿った。

 ディノッゾの分は、気を失っている彼に代わり、リリアが宝箱に手をかざし、現れた魔導書と、どんな攻撃も通さないと言われる、漆黒の旅人の外套(がいとう)を、大切に回収した。

 もちろん全て鑑定のメガネで鑑定し、記録を残している。

 こうして、長かったようで、短かった地獄の初心者ダンジョン攻略は、終わりを告げた。
 だが、彼らに感傷に浸っている暇はなかった。
 各自の左手に握られていた能力玉は分は各自が持つ。それ以外の能力玉は袋にしまい、リリアの異空間収納に入れた。また、台座になっている竜の手のオブジェ?もだ。

 念のため破損した武器防具の残骸も回収し、忘れ物がないことをリリアが最後に確認。

「……行くぞ」

 さすがにパーティーリーダーをしていたリオが、力強く言った。

「先生を、地上へ連れて帰るんだ」

 一番大柄な斧使いのボルツが、気を失ったディノッゾをその屈強な背中に負い、一行は、闘技場の奥に出現した、光に満ちた転移陣へと、その一歩を踏み出した。

 彼らの顔には、もう恐怖の色はない。
 絶望を乗り越え、新たな力をその身に宿し、そして、何よりも代えがたい仲間との絆を深めた、九人の若き英雄たちの顔が、そこにあった。
 彼らの、本当の物語は、ここから始まる。
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