忘却の艦隊

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第26話 制圧

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 ダレン大佐は鹵獲した50艦の制圧作業の進捗を見ながら、敵の正体や目的について考えていた。 
 今の状況からは、少しでも手元に戦力を置きたいのもあり、鹵獲した50艦に期待していた。

「大佐、報告します。鹵獲した50艦の内部の初期探索が終わりましたが、全て無人でした。生体コンピューターが艦を制御していましたが、我々はそれらを排除しました。ただし、一部の生体コンピューターは解析のために残しており、接続を切るだけにとどめています」

 輸送艦にいる鹵獲を指揮した陸軍少将が通信で報告してきた。 
 彼は鹵獲した50艦の内部を探索していた隊長達の報告をまとめる立場だ。
  彼は部下に指示をし、鹵獲した50艦の内部を制圧していた。

「よし、少将!よくやった!少佐、生体コンピューターはどんなものだった?実際に見た者から感じたことを直接聴きたい」

 ダレン大佐は少将の許可を得て、鹵獲した感に侵入しているある1隊の指揮官に直接指示をしている。
 その小隊は少佐が率いていた。

 全ての隊に行うと混乱するので、この少佐のみにヒアリングする。
 艦の仕組みに精通しているダレンが、宙兵隊が気が付かなかった事に気が付く可能性からだ。

 もちろん全隊に指示を出したり、情報共有をする場合は、制圧隊全体の指揮官たる少将経由だ。
  ダレンは生体コンピューターに興味があるが、それは恐怖からだ。

「大佐、これは信じられないことですが、生体コンピューターは一見すると人間の脳や心臓や臓器などから作られているかのように見えましたが、どうやら違うようです。人にしては大きいのです。詳しく調べると未知のものと判明しました。その未知のものは人類に似ているが違う種族であり、敵と何らかの関係があると推測されます」

 隊長が通信で答えたが、彼も生体コンピューターに驚愕しており、 憤りを感じていた。

「何だって!?未知のものだって!?どういうことだ!?」

「大佐、こちらの映像を見てください。鹵獲した艦の内部から回収した生体コンピューターの画像を送信します」

 隊長は鹵獲した艦の内部から回収した生体コンピューターの写真データーをダレン大佐に送信した。 
 リアルタイムのビデオ映像は荒く、分かり難いからだ。

 少佐はダレン大佐に鹵獲した艦の内部から回収した生体コンピューターの真実を知ってもらいたかった。

 ダレン大佐は鹵獲した艦の内部に設置されている生体コンピューターの映像を見て、怒りを覚えた。

 その生体コンピューターには、未知の生命体の脳が閉じ込められていたからだ。 

 ダレンがこぶしを握りワナワナと怒りに震えていると、通信を知らせるアラームが短く鳴った。

「報告します。50艦全ての制圧を完了し、完全に我々の支配下に置かれました」

 総隊長たる少将からの報告だった。 
 彼自身も途中から直接1隊を率いて鹵獲した50艦のうちの1艦の内部を探索しつつ全体の制圧任務を指揮したが、程なくして50艦全て内部の探索を終え、制圧任務が完了した。

「よし、皆よくやった!少将、保管した生体コンピューターの状態はどんなものだった?」

「はい。リアリク少佐から既に報告を受けておいでかと思いますが、3艦の生体コンピューターだけは艦のコンピューターから接続を切るだけにし、生命維持を行っています。ただ、動かせそうになく、それが艦の中にあると戦闘に支障が出ると思いますが、私も輸送艦の工廠担当士官も例え3艦を戦闘から外してでも、生体コンピューターを生かすべきとの意見です」

「私も同意見だ」

 その後1度近くの惑星にある衛星に着陸し、鹵獲した艦を戦力に組み込むための改造や人員の分配を行う事にした。
 贄にするため等で破棄した艦にいた人員分、過剰だったのだ。
 また、陸軍兵士の半数を航宙艦のクルーへのコンバートをし、頭数だけは合わせた。
 結果2週間の足止めとなったが、これを期に各艦の修繕等をする事にした。

 また、これまでは新造艦や旧艦といった呼び名や、艦名も符号だった。
 そこで各名前を募った。
 本来分隊の呼び方は提督や分岐艦隊長がするが、正式にそのポジションの者はいなかった。
 そこで今回人事も整理して休息も入れ、リフレッシュする事にした。

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 ダレン大佐は鹵獲した50艦の改造の指示や人員の分配に忙殺されていた。
 
「大佐、これで鹵獲した50艦の改造は完了しました。全ての艦に我が艦隊の最新技術と人類の進んだ技術を組み合わせて、性能と安定性を向上させました。また、生体コンピューターから回収したデータも解析しましたが、未知の種族に関する情報は少なく、敵との関係も不明です。数少ない敵のDNAとは異なるようです」

 工廠部長が報告した。
 彼は鹵獲した50艦の改造や解析に携わっており、改造や解析に対し誇りを持っていた。

「お疲れ様!工廠部長、君は素晴らしい仕事をした。鹵獲した50艦は我々の戦力として頼りになるだろう。未知の種族に関する情報は残念だが、今後も調査を続けてくれ」

 ダレン大佐が工廠部長を褒め称えた。
 本国でも何度も一緒に仕事をしてきたのもあるが、彼のことは全面的に信頼している

「ありがとうございます。大佐、ではこれから鹵獲した50艦の命名と人事を行いますか?」

 工廠部長が尋ねた。
 彼は鹵獲した50艦の命名と人事に関心があり、それらに積極的に参加したかった。

「うむ。それも重要なことだし、今となっては鹵獲した50艦は我々の仲間だからな。それらに相応しい名前とクルーを与える必要があるな」

 ダレン大佐も鹵獲した50艦に命名する事と、艦の人事に意欲があった。 
 そして何より鹵獲した50艦の命名と人事に責任を感じていた。

「大佐、ではどのようにしますか?」

 工廠部長は尋ねると、ダレン大佐が決断を下すのをじっと待っていた。

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「そうだな。鹵獲した50艦の命名は、我々の艦隊の一員として人類の歴史や文化や伝説にちなんだ名前にしよう。それぞれの艦にはその名前にふさわしい特徴や、性格、役割を持たせよう。鹵獲した50艦の人事は、艦を喪った者達を中心に配備し、不足する人員は志願者や適任者を選んで配属しよう。それぞれの艦にはなるべく相性の良いクルーを揃えよう!」

 ダレン大佐が提案した。 
 鹵獲した50艦の命名と人事に工夫を凝らす必要があったし、 皆も期待していた。

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「なるほど。それは素晴らしいアイデアです。大佐、では早速実行しましょう」

 工廠部長が賛成した。
 彼はミズリア少尉と共に鹵獲した50艦の命名と人事に協力し、ダレン大佐の最終決定に納得した。

 そして、彼らは鹵獲した50艦の命名と人事発表を行った。

 以下、鹵獲した50艦に付けた名前とクルーの一例。
 艦の主要ポジションは航宙軍が担うが、専門分野以外は輸送艦の客人たちとなっている者を分配する。
 見知った者の方が良いとなり、このようにしてみた。

 1号艦:アポロ。
 人類の最初の月面着陸計画にちなんだ名前。月面着陸船も同じ名前だった。探索や偵察に優れた性能を持つ。クルーは陸軍の者を中心に構成されており、勇敢で好奇心旺盛で冒険好きな者が多い。

 2号艦:アテナ。ギリシャ神話の知恵と戦略の女神にちなんだ名前。敵の動きや弱点を分析する能力に長けている。クルーは航宙軍の者で構成されており、冷静で賢くて計画的な者が多い。

 3号艦:ベオウルフ。古英語の英雄叙事詩に登場する勇者にちなんだ名前。強力な火力と防御力を誇る。クルーは宙兵隊やパイロットで構成されており、勇敢で強くて闘争心旺盛な者が多い。

 4号艦:カリプソ。ギリシャ神話の海の島に住む美しく妖艶な女神にちなんだ名前。敵を惑わし隠れる技術に優れている。クルーは諜報員で構成されており、美しくて魅力的で機転が利く者が多い。

 5号艦:ダヴィンチ。ルネサンス期の天才芸術家兼発明家にちなんだ名前。クルーは科学者や技術者で構成されており、知的で創造的で好奇心旺盛な者が多い。

 他の艦は満遍なく混ぜたが、試験的にこの5艦は、大半のクルーの所属を偏らせてみた。
 但し、いずれも基幹クルーは破損艦や、客員となっている航宙軍の者達が担う。
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