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第1章  入試篇

第66話  加護

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 フォルクスはロレッタの肩を掴んでいた筈だったが、急に場面が変わり、シルフに怒られていた。

「このバカタレ!一体何をしておるか?早く起きるのだ!いつまでも寝て・・・」

 ふと目覚めるとどうやら先程までロレッタを治療していた部屋にいる。それにロレッタのベッドに寝ているという事が分かった。先程のエッチな展開はどうやら夢だったようだ。ただひとつ言えるのは、左右の手を各々ラティスとロレッタに握られているという事だ。そして片方の手から自分の手に僅かずつながら、魔力が流れ込んできているのが分かった。

 フォルクスはバカな質問をした。

「あれ? ロレッタさん?傷はちゃんと治っているようだね。良かった。あの、変な事を聞くけど、君の胸を僕はちゅぱちゅぱと吸っていなかったよね?」

 ロレッタが唖然としていた。そして慌てたラティスが上ずった声を出した。


「ほほほほ。フォル殿、さすがにロレッタ殿に対してそのような事を言うのは失礼だと思うぞ。ロレッタ殿が魔力を乳首を経由して送る為に、私達二人でフォル殿にロレッタ殿の乳首を口に含ませ、魔力を送る。そんな事があるわけなかろう?妄想もいい加減にしないとみんなに愛想をつかされるぞ」

「そうだよなぁ。ごめんバカな事を聞いた。そんな変な夢を見たんだけど、えっと、今の状況を教えてもらえるだろうか?」

「はいゆうま様。ゆうま様は私の治療が終わると同時に魔力切れを起こしてしまい倒れてしまいました。そして私の布団で寝かせ、そのまま休んで頂いておりました。私などが寝ていた布団で申し訳ありません。他の人が寝ていたお布団に寝かせるだなんて失礼をしました。フォルクス様は大きくて、ゲストルームに運べなかったのです。それと失礼ですが、手を繋がさせて頂き、私の魔力を僅かではありますが、送り込んでおりました。それで今目覚めたというような状況ですわ」

 うんとフォルクスは頷い。ただおかしかった。さっきの夢ではないがやはりフォルクスの事をフォルクスと言わずにゆうまと呼ぶのだ。それと先程のラティスの言動や態度がやけに言い訳がましく、違和感が有った。

 しかし、一応謝っとこうと思い、謝罪をした。

「ごめんロレッタさん。その治療とはいえ女性の胸を直接触ったのが初めてで、気絶してる時に変な妄想的な夢を見てしまったのかなと思うんだ
 。それと確認したいんだけど、君、火の加護を持っていないかい?その、君の胸から魔力を供給してもらったというような夢を見たけど、その時に火の加護の持ち主で、火の精霊の契約者の器であるというような夢も見たんだ。支援魔法が得意であって、火属性の魔法は本来使えないんじゃないのかい?でも火属性の魔法ではない攻撃が使えるのではないのかな?」

 そう言うとロレッタはかなり驚いていた。

 実は胸を吸わせていたのは本当にやっていたのだが、フォルクスの意識が戻るかなり前に、呼吸が落ち着いたのでやめていたのだ。ラティスと申し合わせ、胸を吸わせた事、それはなかった事にしていた。勿論フォルクスの意識がなかったからだ。

 そうロレッタはフォルクスが今まで誰にも伝えた事のない事を知っていたのでかなり驚いたのだ。確かに火属性の魔法が使えないのに、炎による防御や攻撃ができる。目の怪我をした時に死ななかったのは必死になって身を守ろうとした時に、炎により魔物を打ち倒していたのだ。最終的に魔物は全滅したのだが、その時に顔に大けがを負っていたというような感じであった。
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