今さら嘘とは言いにくい

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

文字の大きさ
28 / 33

二十八話 友人からのリークでは

しおりを挟む


 嘘は身を滅ぼす。とは誰が言い出したことか。ことわざではないにせよ、共感出来たからこそここまで浸透しているのだと思えば、嘘で身を滅ぼしたヤツは多いのかも知れない。

 オレは食堂でカレーを食いながら、入り口の方を見ては来ないだろう人物のことを想う。食堂のカレーは美味いのに、なんだか気分が上がらない。

 牛丼を送り付けあった日々も。ピザを大量に届けたあの頃も、一緒に蕎麦屋をやった日々も、帰ってこない。

 ため息を吐きながらカレーをかき混ぜていたオレの目の前に、同じくカレーライスの乗ったトレイを置いて、航平と宮脇が座った。

「なにかき混ぜてんだ。さっさと食えよ気持ち悪い」

「混ぜ派のみなさんも居るんだぞ久我。納豆とか生卵派もいるんだ」

「うへ」

 嫌そうに顔をしかめ、航平はスプーンを手に取り、大口を開けてカレーを口に運ぶ。

「なんか暗いぞ?」

「あー、うん」

 もう一度ため息を吐こうとして、ぐっと飲み込む。また暗いと言われそうだ。

(……宮脇は、オレと晃のこと、解ってるんだよな)

 何故かバレてしまった、二人の関係。宮脇なら、相談に乗ってくれるだろうか。間に立ってくれるだろうか。

「……あのさ、宮脇。ちょっと、相談が」

「相談? お前が?」

「お前には言ってねえし」

 口を挟んでくる航平を睨み、宮脇を見る。宮脇は目を瞬かせ、首を捻った。

「ん? どした?」

「いや、ここじゃちょっと……。晃のことでさ。地雷踏んで」

「はぁ? アイツ地雷なんかあるかよ」

「とにかく、相談」

 気の乗らなさそうな宮脇に、必死で頼み込む。

「今度なんか奢るから!」

「うーん。そういや、当の本人はどうしたよ? 交えた方が早くね?」

「いや、それは……。それに、晃のヤツ忙しいっぽくて。今週は残業とか」

 だからまずは相談に乗って欲しい。そう言い掛けたオレに、再び航平がしゃしゃり出てきた。

「ん? 残業なわけねえだろ。今あそこ閑散期だぞ。トラブルもねえし」

「え?」

 なんとなく、思っていたことを口に出され、言葉を詰まらせた。宮脇も眉を寄せる。

「は? じゃあ、なにやってんのアイツ。今週見てないぞ?」

「ネカフェに行ってるっぽいぞ。律が見かけたって言ってたから」

 航平の言葉に、思考が停止する。

(は? 忙しくない? 残業だって嘘ついて、ネカフェに居る?)

 つまり。

 ――つまり晃は、オレの話を聞く気がないのだ。

 オレとの話し合いを避けて、ネカフェで毎日時間を潰していたのだ。

 メッセージも無視して。

「―――」

 ぐっと拳を握ったオレに、宮脇が心配そうに顔を歪めた。

「一緒に行くか?」

「……一人で行く」

 宮脇が付いてこようとしたが、断って立ち上がる。

 今の自分の感情を、どう表現していいか自分でも解らない。モヤモヤして、イライラして、哀しくて、苦しくて。

 色を混ぜすぎて汚くなった絵の具みたいに、どろどろでぐちゃぐちゃしたものだった。

「深呼吸しとけ」

「……」

 航平の言葉に、息を浅く吸い込む。深呼吸しようと思ったが、うまく出来ない。航平は苦笑いして「ちょっと待っとけ」と言うと、ラウンジに置かれた自販機からビールを買って戻ってきた。

 無言で受け取り、一気に飲み干す。空いた缶を宮脇に押し付けて、オレは食堂を飛び出した。




 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

気づいたらスパダリの部屋で繭になってた話

米山のら
BL
鎌倉で静かにリモート生活を送る俺は、極度のあがり症。 子どものころ高い声をからかわれたトラウマが原因で、人と話すのが苦手だ。 そんな俺が、月に一度の出社日に出会ったのは、仕事も見た目も完璧なのに、なぜか異常に距離が近い謎のスパダリ。 気づけば荷物ごとドナドナされて、たどり着いたのは最上階の部屋。 「おいで」 ……その優しさ、むしろ怖いんですけど!? これは、殻に閉じこもっていた俺が、“繭”という名の執着にじわじわと絡め取られていく話。

目覚めたらヤバそうな男にキスされてたんですが!?

キトー
BL
傭兵として働いていたはずの青年サク。 目覚めるとなぜか廃墟のような城にいた。 そしてかたわらには、伸びっぱなしの黒髪と真っ赤な瞳をもつ男が自分の手を握りしめている。 どうして僕はこんな所に居るんだろう。 それに、どうして僕は、この男にキスをされているんだろうか…… コメディ、ほのぼの、時々シリアスのファンタジーBLです。 【執着が激しい魔王と呼ばれる男×気が弱い巻き込まれた一般人?】 反応いただけるととても喜びます! 匿名希望の方はX(元Twitter)のWaveboxやマシュマロからどうぞ(⁠^⁠^⁠)  

囚われの踊り手は闇に舞う

徒然
BL
暗く、退廃的な雰囲気に包まれた舞台に、金髪碧眼の美丈夫が一人。手足に枷、首には首輪を付けられた彼は、鎖を鳴らして淫靡に舞った。 ――今宵の舞を、貴方様へ捧げます。もしお気に召しましたら…… その日、運良く鍵を託されたその人の為だけに舞い、一夜限りの情けを乞う。 そんな彼の、ある夜から始まる話。 ◇◆◇◆◇ 2024.2.1 22:00 公開開始 2024.6.9 22:00 完結

【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。 理想の彼氏はスパダリよ! スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。 受:安田陽向 天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。 社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。 社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。 ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。 攻:長船政景 35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。 いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。 妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。 サブキャラ 長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。 抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。 兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。 高田寿也:28歳、美咲の彼氏。 そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。 義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

処理中です...