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本編
27:憤る(3)
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「えっと…、入場して早々に私を置いて行ったのは公爵様ですよね?流石に私も早々に置いていかれるとは思っておらず…」
「だから!はじめから言ってくれれば置いていかなかったと言っているんだよ!」
アルフレッドは急に声を荒げた。
シャロンは何故怒鳴られたのかわからず、ただ呆然と憤る彼を見た。
シャロンが自分に心を開かないのも彼女自身が悪い訳じゃない。エミリアばかりで後妻を見ていなかった報いだ。前妻のことばかりの夫に何かを期待する後妻などいない。
アルフレッドもそれは十分にわかっている。
けれど、シャロンが自分の存在を素通りして、兄を頼り、薬師を頼ったことがアフルレッドは何故かひどく気に食わない。
「初めから全部話して私を頼ってくれればよかったんだ!そうすれば私は君を置いていかなかった!兄に頼る前に、あの薬師に頼る前に私を頼ればいいだろう!!それともそんなにあの男が良いのか!?」
アルフレッドは再び声を荒げてシャロンを怒鳴りつけた。
もう完全に八つ当たりだ。醜い嫉妬だ。
だが、それを自覚した時にはもう遅かった。
その瞬間、シャロンの中で何がブチッと音を立てて切れた。
「…それはつまり、言わなければ結局置いていくということですか?」
俯いたシャロンはぽつりと呟く。
「そんなことは言ってな…」
「確かに事前にこのような懸案事項があると言わなかった私も悪いとは思います。ええ、思いますとも。ですが、たとえ彼らが絡んで来なくとも私は遠巻きにジロジロと探るような視線で見られ続けてきっと居心地の悪い時間を過ごしていたことでしょう。それは私たちの関係性を考えれば容易に想像できることです。けれども、それでも公爵様は私を置いて行ったと?もしかしてそれすらも言われなければわからないとおっしゃるのかしら?」
シャロンの黄金の瞳が、アルフレッドを捉える。
アルフレッドは本能的に『まずい』と思ったのか、咄嗟に目を逸らす。
だかシャロンはそれを見逃さず、彼の両頬をガシッと掴み、強制的に自分の方へと顔を向けさせた。
「別に責めているわけではございませんのよ?私たちは所詮形だけの夫婦ですもの。気になさる必要はございませんわ。気になさる必要はございませんけれど、私を置いて行った公爵様にとやかく言われる筋合いはないと思いますの」
シャロンはニッコリと微笑んだ。
それは、アルフレッドの前では終始無表情だったシャロンが初めて彼に笑顔を向けた瞬間であり、シャロンが初めて自然な愛想笑いを成功させた瞬間でもあった。
「ご、ごめん。シャロ…」
「あら、別に謝っていただかなくとも結構ですわ。けれどそうですわね、公爵様の今後のためにひとつご忠告申し上げるのならば、今後は入場早々に妻を放置して消えると言うのはお辞めになられたほうがよろしいかと。だってそうでしょう?いくら仮面夫婦といえど、社交の場であそこまであからさまに妻を蔑ろにする夫などいませんわ。そもそも私たちはあの時点で、まだ主催である王太子殿下へのご挨拶もできておりませんでしたのに。その状況で王太子殿下からお呼び出しがあったのなら、とりあえず私を連れていけばよかったではありませんか」
「そ、そそそ、そうだな…」
「別にお二人のお話の邪魔をする気などございませんから、言われればすぐに退席いたしますわ。だって大事なお話だったのでしょう?わがままを言って居座ったりなど絶対にいたしません。それとも私がそんな聞き分けの悪い女だと思っていらしたのかしら」
「お、思ってない、です…」
「思っていないのなら、なぜ私を連れていってくださらなかったのです?あ、もしかして、後々に私が『主催者へのご挨拶もろくにできない妻だ』社交界の紳士淑女の皆様から陰口を叩かれれば良いとでも思っていらしたのかしら」
「そんなこと、思ってない…です。ほんとすみません…」
アルフレッドの頬を掴む手に、思わず力が入るシャロン。
決壊したダムのように言葉が止まらない彼女の口撃に、アルフレッドは若干涙目である。
「お、落ち着けシャロン。な?閣下が若干涙目だから」
「…泣いていない」
「お、おう。そうだな。泣いてない泣いてない。急な怒涛の口撃にびっくりしただけだよね、うんうん」
「この程度で涙を流すなど、鬼の騎士団長が聞いて呆れますわね」
「シャロン、もうやめてあげさない。本当に、閣下のメンタルがやばいから」
涙目の四十路近い男を慰めつつ、興奮した様子の無表情女を諌めるハディス。
まさにカオスな光景である。
「…公爵様が私を妻として王太子殿下に紹介したくないお気持ちもわからないわけではないですが、たとえ望まない婚姻だとしても、そんな風にあからさまに蔑ろにされては流石に凹みます…」
シャロンはアルフレッドの頬から手を離すと、伏目がちに小さな声でぽつりと呟いた。
別に愛されたいわけじゃない。
けれど、正式な場で正式な妻としてすら扱ってもらえないのは流石に堪える。
「ご、ごめんシャロン!」
アルフレッドは肩を震わせて項垂れるシャロンを咄嗟に抱き締めた。そして、子どもをあやすようにポンポンと背中を叩く。
「悪かった!私が悪かった!違うんだ、紹介したくないわけじゃないんだ!だからどうか泣かないでおくれ」
「あの…」
「ごめん、君をそんなにも傷つけてしまっていることに気づけなくて」
「離してください…」
「あ、ごめん。苦しかったかな?」
アルフレッドは抱きしめる腕を緩めた。
シャロンは、ゆっくりと顔を上げるとジトッとした目で彼を見上げる。
「…別に、泣いてませんけど」
むしろ頬には怒りマークが見える。
どうやら怒りで打ち震えていただけだったようだ。
「あ、はい。すみません…」
アルフレッドはシャロンの顔を見たその瞬間、恥ずかしさのあまり全身の血が沸騰するような感覚を覚えた。
ちなみに、この一部始終を近くで見ていたヘンリーは、声を出して笑いそうになるのを口元を押さえて必死に堪えていたそうだ。
「だから!はじめから言ってくれれば置いていかなかったと言っているんだよ!」
アルフレッドは急に声を荒げた。
シャロンは何故怒鳴られたのかわからず、ただ呆然と憤る彼を見た。
シャロンが自分に心を開かないのも彼女自身が悪い訳じゃない。エミリアばかりで後妻を見ていなかった報いだ。前妻のことばかりの夫に何かを期待する後妻などいない。
アルフレッドもそれは十分にわかっている。
けれど、シャロンが自分の存在を素通りして、兄を頼り、薬師を頼ったことがアフルレッドは何故かひどく気に食わない。
「初めから全部話して私を頼ってくれればよかったんだ!そうすれば私は君を置いていかなかった!兄に頼る前に、あの薬師に頼る前に私を頼ればいいだろう!!それともそんなにあの男が良いのか!?」
アルフレッドは再び声を荒げてシャロンを怒鳴りつけた。
もう完全に八つ当たりだ。醜い嫉妬だ。
だが、それを自覚した時にはもう遅かった。
その瞬間、シャロンの中で何がブチッと音を立てて切れた。
「…それはつまり、言わなければ結局置いていくということですか?」
俯いたシャロンはぽつりと呟く。
「そんなことは言ってな…」
「確かに事前にこのような懸案事項があると言わなかった私も悪いとは思います。ええ、思いますとも。ですが、たとえ彼らが絡んで来なくとも私は遠巻きにジロジロと探るような視線で見られ続けてきっと居心地の悪い時間を過ごしていたことでしょう。それは私たちの関係性を考えれば容易に想像できることです。けれども、それでも公爵様は私を置いて行ったと?もしかしてそれすらも言われなければわからないとおっしゃるのかしら?」
シャロンの黄金の瞳が、アルフレッドを捉える。
アルフレッドは本能的に『まずい』と思ったのか、咄嗟に目を逸らす。
だかシャロンはそれを見逃さず、彼の両頬をガシッと掴み、強制的に自分の方へと顔を向けさせた。
「別に責めているわけではございませんのよ?私たちは所詮形だけの夫婦ですもの。気になさる必要はございませんわ。気になさる必要はございませんけれど、私を置いて行った公爵様にとやかく言われる筋合いはないと思いますの」
シャロンはニッコリと微笑んだ。
それは、アルフレッドの前では終始無表情だったシャロンが初めて彼に笑顔を向けた瞬間であり、シャロンが初めて自然な愛想笑いを成功させた瞬間でもあった。
「ご、ごめん。シャロ…」
「あら、別に謝っていただかなくとも結構ですわ。けれどそうですわね、公爵様の今後のためにひとつご忠告申し上げるのならば、今後は入場早々に妻を放置して消えると言うのはお辞めになられたほうがよろしいかと。だってそうでしょう?いくら仮面夫婦といえど、社交の場であそこまであからさまに妻を蔑ろにする夫などいませんわ。そもそも私たちはあの時点で、まだ主催である王太子殿下へのご挨拶もできておりませんでしたのに。その状況で王太子殿下からお呼び出しがあったのなら、とりあえず私を連れていけばよかったではありませんか」
「そ、そそそ、そうだな…」
「別にお二人のお話の邪魔をする気などございませんから、言われればすぐに退席いたしますわ。だって大事なお話だったのでしょう?わがままを言って居座ったりなど絶対にいたしません。それとも私がそんな聞き分けの悪い女だと思っていらしたのかしら」
「お、思ってない、です…」
「思っていないのなら、なぜ私を連れていってくださらなかったのです?あ、もしかして、後々に私が『主催者へのご挨拶もろくにできない妻だ』社交界の紳士淑女の皆様から陰口を叩かれれば良いとでも思っていらしたのかしら」
「そんなこと、思ってない…です。ほんとすみません…」
アルフレッドの頬を掴む手に、思わず力が入るシャロン。
決壊したダムのように言葉が止まらない彼女の口撃に、アルフレッドは若干涙目である。
「お、落ち着けシャロン。な?閣下が若干涙目だから」
「…泣いていない」
「お、おう。そうだな。泣いてない泣いてない。急な怒涛の口撃にびっくりしただけだよね、うんうん」
「この程度で涙を流すなど、鬼の騎士団長が聞いて呆れますわね」
「シャロン、もうやめてあげさない。本当に、閣下のメンタルがやばいから」
涙目の四十路近い男を慰めつつ、興奮した様子の無表情女を諌めるハディス。
まさにカオスな光景である。
「…公爵様が私を妻として王太子殿下に紹介したくないお気持ちもわからないわけではないですが、たとえ望まない婚姻だとしても、そんな風にあからさまに蔑ろにされては流石に凹みます…」
シャロンはアルフレッドの頬から手を離すと、伏目がちに小さな声でぽつりと呟いた。
別に愛されたいわけじゃない。
けれど、正式な場で正式な妻としてすら扱ってもらえないのは流石に堪える。
「ご、ごめんシャロン!」
アルフレッドは肩を震わせて項垂れるシャロンを咄嗟に抱き締めた。そして、子どもをあやすようにポンポンと背中を叩く。
「悪かった!私が悪かった!違うんだ、紹介したくないわけじゃないんだ!だからどうか泣かないでおくれ」
「あの…」
「ごめん、君をそんなにも傷つけてしまっていることに気づけなくて」
「離してください…」
「あ、ごめん。苦しかったかな?」
アルフレッドは抱きしめる腕を緩めた。
シャロンは、ゆっくりと顔を上げるとジトッとした目で彼を見上げる。
「…別に、泣いてませんけど」
むしろ頬には怒りマークが見える。
どうやら怒りで打ち震えていただけだったようだ。
「あ、はい。すみません…」
アルフレッドはシャロンの顔を見たその瞬間、恥ずかしさのあまり全身の血が沸騰するような感覚を覚えた。
ちなみに、この一部始終を近くで見ていたヘンリーは、声を出して笑いそうになるのを口元を押さえて必死に堪えていたそうだ。
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