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第一部
31:解雇処分(1)
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即死でもおかしくなかった状況で、主人を守り、且つ自分は全治1ヶ月の骨折程度。それだけで済んだのはまさに奇跡である。
医務室の宮廷医師は 『むしろ何で生きてるのか』とジャスパーを化け物を見るような目で見始めたらしい。失礼な話だ。
「折れてないって言ったのに」
「俺は多分って言いました」
「…そうね」
翌朝、主人に車椅子を押されて塔に戻ってきたジャスパーは、号泣するノアとエリザを宥めつつ、エリザからの報告を受けた。
「…お兄様、いかがいたしましょうか?」
鼻を啜りながら、エリザは兄に判断を仰ぐ。
妹の報告に彼は顔を顰めた。
「ホークスって、つまり…」
「鷹ですわね…」
「鷹?」
首を傾げるノアとは対照的に、エリザとジャスパーは神妙な面持ちで顔を見合わせる。
この国で鷹といえば思い浮かぶものは一つしかない。
「皇后陛下のご生家の家紋に使われている鳥です。この国で鷹から連想されるものはそれくらいです」
ノアに説明したのはモニカだった。
彼女は穏やかな笑みを貼り付けて、ジョシュアたちを唆したのは皇后本人、もしくはその関係者ではないかと告げる。
「では、イザベラ様でしょうか?それともグレース様?あの双子ならやりかねませんわ」
「あのお二人はパーティーの前に僕の部屋に侵入したしね。皇后陛下の関係者となるとあの二人が一番怪しいかも」
これまであの双子姉妹がやらかしてきた事を考えると、あり得ない話じゃない。
しかし、モニカはそれを否定した。
「あの後、シャンデリアの残骸を調べましたが、シャンデリアと天井の接続部に何かが括り付けてあった痕跡が見られました。微かに残った火薬の匂いや状況から推測するに、ジョシュアらが作成した爆弾ではないかと」
爆弾の破片等、証拠になりそうなものは一応保管してあるとモニカは言う。
動揺していてもその辺りに抜かりがないのは流石である。
「それはつまり、どういうこと?」
「ジョシュアは音楽が鳴り始めたら起爆装置を押すよう言われていた。つまり、あの場所に私とノア様しかいなくなるタイミングを狙って爆発するように指示をされていたんです」
「そんな…」
「シャンデリアの下敷きになればほとんどの場合は即死です。場合によっては顔は潰れ、内臓が破裂して悲惨な最後を遂げていたことでしょう。つまり犯人は私がノア様、もしくはその両方を殺害する目的で爆弾を仕掛けたことになります」
あの双子姉妹は嫌がらせはするが、殺そうとしたことは一度もない。その証拠に、あの時の彼女たちは顔面蒼白で怯えていた。もし二人が自分が仕掛けたことならニヤニヤとあの惨状を眺めていたはずだ。
そしておそらく、自分で爆弾を仕掛けていないジョシュアたちも、殺す気はなかっただろう。
「…裏にいるホークスとやらは、私を殺したいほど憎んでいる人です」
モニカはフッと自嘲するように笑った。
その表情は特定の人物を思い浮かべているようにも見えた。
「もしかして、姫様にはお心当たりがおありなのですか?」
エリザは教えてくれとモニカに詰め寄った。
モニカはそんな彼女の頭を優しく撫でる。
「エリザ。ジャクソン侯爵夫人から紹介状をいただいたんですって?」
「え?ええ。頂きましたわ」
「見せていただけるかしら」
「あ、はい」
唐突にそう言われ、エリザは怪訝な顔をしながらも紹介状をモニカに渡した。
モニカは中身を一読し、納得したように小さく頷く。
「…姫様?」
様子がおかしい。
ジャスパーは隣に立つモニカに手を伸ばした。
しかしその手は軽く払い除けられ、そして彼女はその紹介状を破り捨てた。
「エリザ。貴女を侍女として迎え入れることはありません」
「…ひ、姫様?」
「何度も何度もしつこいのよ。私はいらないと言っているの」
「…え?」
ひどく冷たい声でそう言い放つモニカに、エリザは困惑の表情を浮かべた。
「貴方はここにいる兄を連れてもうお屋敷に帰りなさい。2度とここへ来てはダメよ」
「なっ!?」
「姫様!?」
モニカは動揺するジャスパーを冷めた視線で見下ろすと、彼にも冷たく言い放つ。
「ジャスパー・オーウェン。貴方を解雇します」
医務室の宮廷医師は 『むしろ何で生きてるのか』とジャスパーを化け物を見るような目で見始めたらしい。失礼な話だ。
「折れてないって言ったのに」
「俺は多分って言いました」
「…そうね」
翌朝、主人に車椅子を押されて塔に戻ってきたジャスパーは、号泣するノアとエリザを宥めつつ、エリザからの報告を受けた。
「…お兄様、いかがいたしましょうか?」
鼻を啜りながら、エリザは兄に判断を仰ぐ。
妹の報告に彼は顔を顰めた。
「ホークスって、つまり…」
「鷹ですわね…」
「鷹?」
首を傾げるノアとは対照的に、エリザとジャスパーは神妙な面持ちで顔を見合わせる。
この国で鷹といえば思い浮かぶものは一つしかない。
「皇后陛下のご生家の家紋に使われている鳥です。この国で鷹から連想されるものはそれくらいです」
ノアに説明したのはモニカだった。
彼女は穏やかな笑みを貼り付けて、ジョシュアたちを唆したのは皇后本人、もしくはその関係者ではないかと告げる。
「では、イザベラ様でしょうか?それともグレース様?あの双子ならやりかねませんわ」
「あのお二人はパーティーの前に僕の部屋に侵入したしね。皇后陛下の関係者となるとあの二人が一番怪しいかも」
これまであの双子姉妹がやらかしてきた事を考えると、あり得ない話じゃない。
しかし、モニカはそれを否定した。
「あの後、シャンデリアの残骸を調べましたが、シャンデリアと天井の接続部に何かが括り付けてあった痕跡が見られました。微かに残った火薬の匂いや状況から推測するに、ジョシュアらが作成した爆弾ではないかと」
爆弾の破片等、証拠になりそうなものは一応保管してあるとモニカは言う。
動揺していてもその辺りに抜かりがないのは流石である。
「それはつまり、どういうこと?」
「ジョシュアは音楽が鳴り始めたら起爆装置を押すよう言われていた。つまり、あの場所に私とノア様しかいなくなるタイミングを狙って爆発するように指示をされていたんです」
「そんな…」
「シャンデリアの下敷きになればほとんどの場合は即死です。場合によっては顔は潰れ、内臓が破裂して悲惨な最後を遂げていたことでしょう。つまり犯人は私がノア様、もしくはその両方を殺害する目的で爆弾を仕掛けたことになります」
あの双子姉妹は嫌がらせはするが、殺そうとしたことは一度もない。その証拠に、あの時の彼女たちは顔面蒼白で怯えていた。もし二人が自分が仕掛けたことならニヤニヤとあの惨状を眺めていたはずだ。
そしておそらく、自分で爆弾を仕掛けていないジョシュアたちも、殺す気はなかっただろう。
「…裏にいるホークスとやらは、私を殺したいほど憎んでいる人です」
モニカはフッと自嘲するように笑った。
その表情は特定の人物を思い浮かべているようにも見えた。
「もしかして、姫様にはお心当たりがおありなのですか?」
エリザは教えてくれとモニカに詰め寄った。
モニカはそんな彼女の頭を優しく撫でる。
「エリザ。ジャクソン侯爵夫人から紹介状をいただいたんですって?」
「え?ええ。頂きましたわ」
「見せていただけるかしら」
「あ、はい」
唐突にそう言われ、エリザは怪訝な顔をしながらも紹介状をモニカに渡した。
モニカは中身を一読し、納得したように小さく頷く。
「…姫様?」
様子がおかしい。
ジャスパーは隣に立つモニカに手を伸ばした。
しかしその手は軽く払い除けられ、そして彼女はその紹介状を破り捨てた。
「エリザ。貴女を侍女として迎え入れることはありません」
「…ひ、姫様?」
「何度も何度もしつこいのよ。私はいらないと言っているの」
「…え?」
ひどく冷たい声でそう言い放つモニカに、エリザは困惑の表情を浮かべた。
「貴方はここにいる兄を連れてもうお屋敷に帰りなさい。2度とここへ来てはダメよ」
「なっ!?」
「姫様!?」
モニカは動揺するジャスパーを冷めた視線で見下ろすと、彼にも冷たく言い放つ。
「ジャスパー・オーウェン。貴方を解雇します」
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