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第二部
10:モニカの王子様
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気がついたら自分の部屋にいたモニカはベッドから飛び起きてあたりを見渡した。
赤く染まった空を背に、窓辺に腰掛けて本を読むジャスパーの姿が視界の端に映る。
「…おはよう?」
「おはようございます」
「えーっと、いつ帰ってきたの?私」
「30分前くらいですよ?」
寝ていたのでそのまま運びましたと、ジャスパーはシレッと言った。
途中から車に乗っただろうが、姫抱きされて街を歩いた可能性を考えると起こして欲しかったとモニカは嘆く。
「ねえ、姫様。俺に何か聞きたいことありません?」
「へ?な、何?急に…」
聞きたいことはいろいろあるが、聞く勇気のない彼女は狼狽える。
これはもしや、この前の女性との関係を話してくれるのだろうか。
聞きたいような聞きたくないような。どうするのが正しいのはわからず、百面相するモニカ。
そんな彼女の様子に、ジャスパーは思わず吹き出した。
「…かわいい」
そう小さく呟くと、出窓に本を置き、モニカの方へと近づいて来るジャスパー。
夕日のせいか、少し顔が赤い。
彼はモニカのベッドの端に腰掛けると、彼女に優しく微笑みかけた。
「不安にさせてしまいましたか?」
「な、何の話?」
「ブライアンさんに聞きました。俺、浮気したと思われてたんですね」
ジャスパーは少し寂しそうに、浮気なんてしてないと言う。
モニカは気まずくて視線を落とした。
すると突然、開いたバルコニー側の窓から、ブワッと急に風が吹き込んできた。モニカは咄嗟に強く目を閉じる。
「びっくりしたー。大丈夫です?姫様」
「大丈夫だけど、髪が…」
ゆっくりと目を開いたモニカは、突風で乱れた髪をあせあせと整えはじめた。
ジャスパーはそれを手助けしようと彼女の髪に触れる。
細く柔らかい髪からは、以前彼が好きだと言ったシトラスの香りがした。
昔はもう少し甘い香りを好んでいたのに。自分が好きだと言ったからだろうか。そう思うと、嬉しくてたまらなくなる。
「無理だ…」
気がつくと、ジャスパーは無意識のうちにモニカを押し倒していた。
モニカは目を丸くして彼を見上げる。
「姫様。俺は姫様以外なんて考えられないです」
そういう彼の表情はどこか切なげで、辛そうに見えた。
「今はまだ詳しく言えないけど、姫様が見た彼女とは何もないよ。それだけはこの命にかけて誓える」
「…うん」
「不安なら彼女を紹介します。会えばそういう関係じゃないことはすぐにわかると思うので」
「大丈夫よ。そこまでしなくても、大丈夫」
「そうですか?」
「うん。わかるよ。ちゃんとジャスパーの顔を見たらわかった」
自分がどれだけの想いを向けられているのかが、よくわかる。
彼の美しい紫の瞳に宿るのは、狂気にも似た深く重い感情。見られているだけで息が苦しくなるほどの想い。
モニカはジャスパーの頬に手を伸ばした。
「私、自覚が足りていなかったのかもしれないわ。貴方にどれほどの愛されているのかをちゃんとわかってなかったのかも」
深い愛情を向けられている自覚はあったが、ここまで重いものであることは自覚していなかった。
こんな苦しそうに自分を見つめる男が、他の女に靡くわけがない。
モニカは頬に触れていた手を彼の首元へと滑らせると、自分の方へと引き寄せた。
「大好きよ、ジャスパー」
楽しそうにそう言う彼女に、ジャスパーは胸が苦しくなる。
「好きって本当に?」
「本当よ。疑ってるの?」
「少し」
「どうして?」
「だって、姫様は俺しか知らないから…」
モニカの自分に対する感情は、ただの依存ではないのか。他にもっと紳士的でそれこそ王子様みたいな男が現れたら、そちらに傾いてしまうのではないか。
ジャスパーは震える声でそう話した。
すると、モニカは子どもをあやすように彼の背中をトントンと優しく叩く。
「依存しているかについては否定できないわ。けれど、私が貴方以外に傾くなんてありえない」
「どうしてわかるんですか?」
「だって、実際に本当の王子様にあってもなんとも思わなかったもの」
公爵夫人として出席した夜会で会った他家の令息も、ノアの兄である国王も皆、とても紳士的で素敵な男性だったが何も感じなかった。
手の甲にキスされても、ダンスを踊っても、相手が自分に対して好意を持っているような熱い視線を送ってきても、ちっともトキメかない。
触れて触れられて心臓が早鐘を打つのはいつだってジャスパーといる時だけだ。
「だからね、私の王子様はずっとジャスパーだけよ」
赤く染まった空を背に、窓辺に腰掛けて本を読むジャスパーの姿が視界の端に映る。
「…おはよう?」
「おはようございます」
「えーっと、いつ帰ってきたの?私」
「30分前くらいですよ?」
寝ていたのでそのまま運びましたと、ジャスパーはシレッと言った。
途中から車に乗っただろうが、姫抱きされて街を歩いた可能性を考えると起こして欲しかったとモニカは嘆く。
「ねえ、姫様。俺に何か聞きたいことありません?」
「へ?な、何?急に…」
聞きたいことはいろいろあるが、聞く勇気のない彼女は狼狽える。
これはもしや、この前の女性との関係を話してくれるのだろうか。
聞きたいような聞きたくないような。どうするのが正しいのはわからず、百面相するモニカ。
そんな彼女の様子に、ジャスパーは思わず吹き出した。
「…かわいい」
そう小さく呟くと、出窓に本を置き、モニカの方へと近づいて来るジャスパー。
夕日のせいか、少し顔が赤い。
彼はモニカのベッドの端に腰掛けると、彼女に優しく微笑みかけた。
「不安にさせてしまいましたか?」
「な、何の話?」
「ブライアンさんに聞きました。俺、浮気したと思われてたんですね」
ジャスパーは少し寂しそうに、浮気なんてしてないと言う。
モニカは気まずくて視線を落とした。
すると突然、開いたバルコニー側の窓から、ブワッと急に風が吹き込んできた。モニカは咄嗟に強く目を閉じる。
「びっくりしたー。大丈夫です?姫様」
「大丈夫だけど、髪が…」
ゆっくりと目を開いたモニカは、突風で乱れた髪をあせあせと整えはじめた。
ジャスパーはそれを手助けしようと彼女の髪に触れる。
細く柔らかい髪からは、以前彼が好きだと言ったシトラスの香りがした。
昔はもう少し甘い香りを好んでいたのに。自分が好きだと言ったからだろうか。そう思うと、嬉しくてたまらなくなる。
「無理だ…」
気がつくと、ジャスパーは無意識のうちにモニカを押し倒していた。
モニカは目を丸くして彼を見上げる。
「姫様。俺は姫様以外なんて考えられないです」
そういう彼の表情はどこか切なげで、辛そうに見えた。
「今はまだ詳しく言えないけど、姫様が見た彼女とは何もないよ。それだけはこの命にかけて誓える」
「…うん」
「不安なら彼女を紹介します。会えばそういう関係じゃないことはすぐにわかると思うので」
「大丈夫よ。そこまでしなくても、大丈夫」
「そうですか?」
「うん。わかるよ。ちゃんとジャスパーの顔を見たらわかった」
自分がどれだけの想いを向けられているのかが、よくわかる。
彼の美しい紫の瞳に宿るのは、狂気にも似た深く重い感情。見られているだけで息が苦しくなるほどの想い。
モニカはジャスパーの頬に手を伸ばした。
「私、自覚が足りていなかったのかもしれないわ。貴方にどれほどの愛されているのかをちゃんとわかってなかったのかも」
深い愛情を向けられている自覚はあったが、ここまで重いものであることは自覚していなかった。
こんな苦しそうに自分を見つめる男が、他の女に靡くわけがない。
モニカは頬に触れていた手を彼の首元へと滑らせると、自分の方へと引き寄せた。
「大好きよ、ジャスパー」
楽しそうにそう言う彼女に、ジャスパーは胸が苦しくなる。
「好きって本当に?」
「本当よ。疑ってるの?」
「少し」
「どうして?」
「だって、姫様は俺しか知らないから…」
モニカの自分に対する感情は、ただの依存ではないのか。他にもっと紳士的でそれこそ王子様みたいな男が現れたら、そちらに傾いてしまうのではないか。
ジャスパーは震える声でそう話した。
すると、モニカは子どもをあやすように彼の背中をトントンと優しく叩く。
「依存しているかについては否定できないわ。けれど、私が貴方以外に傾くなんてありえない」
「どうしてわかるんですか?」
「だって、実際に本当の王子様にあってもなんとも思わなかったもの」
公爵夫人として出席した夜会で会った他家の令息も、ノアの兄である国王も皆、とても紳士的で素敵な男性だったが何も感じなかった。
手の甲にキスされても、ダンスを踊っても、相手が自分に対して好意を持っているような熱い視線を送ってきても、ちっともトキメかない。
触れて触れられて心臓が早鐘を打つのはいつだってジャスパーといる時だけだ。
「だからね、私の王子様はずっとジャスパーだけよ」
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