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第二部
15:事件が起きた週末の話(2)
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「ほい、制圧完了」
朝、通勤前にまるでゴミ袋を捨てるお父さんのように、ジャスパーは縛り上げた残党を路地裏に放り投げた。
うぅっと、唸り声をあげる犯罪者を蔑みの目で見下ろし、彼はパンパンと手をはたく。
路地裏にある廃墟の一つに突入してわずか15分。
二つある拠点のうちの一つをほとんど一人で完全制圧してしまった公爵家の騎士に、王都の騎士団は歓声を上げた。
「見たかよ、あの無駄のない洗練された動き」
「暴力的なまでの力の差を見せつけられた気がする」
「あれが帝国最強の騎士か!」
「かっけぇー!」
キラキラとした濁りのない目で尊敬の眼差しを自分に向けてくるに騎士たちに、ジャスパーは満足げに微笑んだ。
顔面偏差値がそこそこ振り切っている彼の爽やかな笑顔に、騎士たちからはまた黄色くない歓声が上がる。
その様子を見ていたノアはなんとも言えない表情をした。
「…そのドヤ顔、すごく腹が立つなぁ」
「いやぁ、この感覚は入団試験以来かもしれません。非常に気持ちがいいです」
「普段の行いがアレだから、尊敬されることなんて滅多にないもんね」
「ひでえ。事実だけども」
ジャスパーはノアから渡されたタオルを受け取り、汗を拭う。
そんなにかっこいいと賞賛されるのなら、モニカにこの姿を見せたかった。
(…まあ、こんな危ないところにはつれていけないけど)
それでも、自分が騎士として剣を振るう姿を見たときにどんな反応をするのかはすごく気になる。
『カッコ良かった』とか言って褒めてくれるだろうか。ときめいたりしてくれるだろうか。
昔は絶対にそんなことを言うと『は?』と半眼で返されていただろうが、今は少し自信があるジャスパーは、ひとり、クスッと笑みをこぼした。
「顔がにやけてるよ、ジャスパー。昼間から何考えてたのさ」
「色々です」
「本当、煩悩の塊だよね」
「否定はできません」
モニカのことに関しては煩悩ばかりだ。とても紳士ではいられない。
「この後どうするんです?」
「そうだなぁ。あとは向かいの通りのもう一つの拠点から狼煙が上がれば終了。詳しい報告は後日にしてもらっているから今日はもう帰れると思うよ」
「じゃあ、ブライアンさんの個展に間に合いますね」
「まあ、僕は招待されてないけどね」
「嘘っ!マジっすか!?」
「マジっすよ。あの子は絶対自分からチケットを渡して来ないから、執事に頼んで用意させた」
本当に素直じゃないから困ると言いつつも、ノアの表情はどこか嬉しそうだった。
「お熱いことで」
「お互い様でしょ?」
「そうっすね。間違いない」
顔を見合わせた二人は、思わず吹き出した。
今すぐにでも互いの恋人がいる場所に駆けつけたい衝動を抑えるのに必死な様子が、顔に出ていたのだろう。
恥ずかしいと二人して笑う。
「グロスター卿!!大変です!!」
そんな良い雰囲気をぶち壊したのは、騎士団の副団長だった。
向かいの通りのもう一つの拠点を潰すはずだった彼は息を切らせてノアの元に駆けつけると、緊急事態であることを告げる。
「い、一部を取り逃しました!」
「…は?」
「すみません!残党3名が武器を所持して商店街の方へと向かった模様です!」
「なっ!!商店街だと!?」
普段温厚なノアが声を荒げる。
そんな剣幕の彼を見たことがなかったのか、副団長はビクッと体を強張らせた。
休日の大通り。あそこの商店街にはたくさんの人がいる。もし無差別に人を襲われたら大変だ。
それに…。
(今日あの場所ではブライアンの個展が…)
動揺が隠せないノアに、ジャスパーはポンと背中を叩いた。
「ノア様、ご指示を」
「わかってる。ジャスパー、追えるか?」
「もちろんです」
「先に行っててくれ。もし見つけたら容赦はしなくていい」
「了解」
濃度の濃い殺気を身に纏ったジャスパーは、腰の剣を握りしめてすぐさま大通りの方へと駆け出した。
「さて、どうしようか…」
ノアは大きく深呼吸をすると、低く重い声色で副団長の名を呼んだ。
その声に自然を副団長は背筋を伸ばして敬礼する。
「とりあえず、君は市民の安全確保を最優先に動いてくれ。僕は団長の元へ向かう」
「はっ!」
「逃したこと、ことの顛末によっては始末書ものだぞ。覚悟しておけ」
「了解であります!」
大きなことにならなえればいいと願いながら、ノアも走り出した。
朝、通勤前にまるでゴミ袋を捨てるお父さんのように、ジャスパーは縛り上げた残党を路地裏に放り投げた。
うぅっと、唸り声をあげる犯罪者を蔑みの目で見下ろし、彼はパンパンと手をはたく。
路地裏にある廃墟の一つに突入してわずか15分。
二つある拠点のうちの一つをほとんど一人で完全制圧してしまった公爵家の騎士に、王都の騎士団は歓声を上げた。
「見たかよ、あの無駄のない洗練された動き」
「暴力的なまでの力の差を見せつけられた気がする」
「あれが帝国最強の騎士か!」
「かっけぇー!」
キラキラとした濁りのない目で尊敬の眼差しを自分に向けてくるに騎士たちに、ジャスパーは満足げに微笑んだ。
顔面偏差値がそこそこ振り切っている彼の爽やかな笑顔に、騎士たちからはまた黄色くない歓声が上がる。
その様子を見ていたノアはなんとも言えない表情をした。
「…そのドヤ顔、すごく腹が立つなぁ」
「いやぁ、この感覚は入団試験以来かもしれません。非常に気持ちがいいです」
「普段の行いがアレだから、尊敬されることなんて滅多にないもんね」
「ひでえ。事実だけども」
ジャスパーはノアから渡されたタオルを受け取り、汗を拭う。
そんなにかっこいいと賞賛されるのなら、モニカにこの姿を見せたかった。
(…まあ、こんな危ないところにはつれていけないけど)
それでも、自分が騎士として剣を振るう姿を見たときにどんな反応をするのかはすごく気になる。
『カッコ良かった』とか言って褒めてくれるだろうか。ときめいたりしてくれるだろうか。
昔は絶対にそんなことを言うと『は?』と半眼で返されていただろうが、今は少し自信があるジャスパーは、ひとり、クスッと笑みをこぼした。
「顔がにやけてるよ、ジャスパー。昼間から何考えてたのさ」
「色々です」
「本当、煩悩の塊だよね」
「否定はできません」
モニカのことに関しては煩悩ばかりだ。とても紳士ではいられない。
「この後どうするんです?」
「そうだなぁ。あとは向かいの通りのもう一つの拠点から狼煙が上がれば終了。詳しい報告は後日にしてもらっているから今日はもう帰れると思うよ」
「じゃあ、ブライアンさんの個展に間に合いますね」
「まあ、僕は招待されてないけどね」
「嘘っ!マジっすか!?」
「マジっすよ。あの子は絶対自分からチケットを渡して来ないから、執事に頼んで用意させた」
本当に素直じゃないから困ると言いつつも、ノアの表情はどこか嬉しそうだった。
「お熱いことで」
「お互い様でしょ?」
「そうっすね。間違いない」
顔を見合わせた二人は、思わず吹き出した。
今すぐにでも互いの恋人がいる場所に駆けつけたい衝動を抑えるのに必死な様子が、顔に出ていたのだろう。
恥ずかしいと二人して笑う。
「グロスター卿!!大変です!!」
そんな良い雰囲気をぶち壊したのは、騎士団の副団長だった。
向かいの通りのもう一つの拠点を潰すはずだった彼は息を切らせてノアの元に駆けつけると、緊急事態であることを告げる。
「い、一部を取り逃しました!」
「…は?」
「すみません!残党3名が武器を所持して商店街の方へと向かった模様です!」
「なっ!!商店街だと!?」
普段温厚なノアが声を荒げる。
そんな剣幕の彼を見たことがなかったのか、副団長はビクッと体を強張らせた。
休日の大通り。あそこの商店街にはたくさんの人がいる。もし無差別に人を襲われたら大変だ。
それに…。
(今日あの場所ではブライアンの個展が…)
動揺が隠せないノアに、ジャスパーはポンと背中を叩いた。
「ノア様、ご指示を」
「わかってる。ジャスパー、追えるか?」
「もちろんです」
「先に行っててくれ。もし見つけたら容赦はしなくていい」
「了解」
濃度の濃い殺気を身に纏ったジャスパーは、腰の剣を握りしめてすぐさま大通りの方へと駆け出した。
「さて、どうしようか…」
ノアは大きく深呼吸をすると、低く重い声色で副団長の名を呼んだ。
その声に自然を副団長は背筋を伸ばして敬礼する。
「とりあえず、君は市民の安全確保を最優先に動いてくれ。僕は団長の元へ向かう」
「はっ!」
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