【完結】妹など、断じて好きじゃない

七瀬菜々

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2:甘えん坊系妹

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 妹の種類はまだ他にもある。 
 
 例えば、甘えん坊系妹。

 『お兄ちゃん、出来ないのー。やって?』とか事あるごとに甘えてくる系の妹だが、これはかなり厄介だ。
 何でも言われるがまま、手を貸していてはとんでもないわがまま娘が出来上がる。それがいずれ、家を出てよそ様に嫁ぐ事を考えると大変危険だ。
 製造元として責任が取れないのなら、甘やかすべからず!
 ああいう妹は、2次元だから素直で純粋なまま育っているにすぎないのだ。

 見てみろ、俺の妹を。
 ソファでスマホいじりながら、隣に座る兄に話しかけてくる。

「お兄ちゃん、今日休みでしょ?」
「休みだが?」
「駅まで送ってー」

 それが人にものを頼む態度かよ。せめてこっち見ろよ。一瞬で良いからスマホから目を離せ。よくわからんが、その気持ち悪い猫を育てるゲームやめなさい。本当に。

 舐め腐ってる。兄を都合の良い道具としか見ていない。
 何が悲しくて妹のためにわざわざ車を出さなきゃならんのだ。休日は休む日なんだよ。
 たまには家事とか休みたいから実家に帰ってきてるんだよ。

「やだよ、甘えんな」
「ねえ、お願い。今日雨じゃん?新しいカーディガン濡らしたくないのー」
「濡らしたくないなら古い方着ろよ」
「今日着たいの!」
「じゃあ、カッパでもかぶってけ」
「カッパとかダサいじゃん!」

 少しは折れろ。何か妥協しろ。全部思い通りになると思うな。
 後、勝手に人の足の上に寝転がるな。
 普通逆だろ。膝枕される側じゃなくする側だろお前。いや、妹に膝枕されたいとかは別に思ってないけどな?

「重い」
「重くないし、45キロだし」
「え、軽っ…」

 こいつの身長で45キロは軽すぎる。もう少し食事の量は増やすように母さんに言っておこう。

「…なんだよ。そんな見つめても絶対送らないからな」
「お兄ちゃん。これさ、膝枕とか言うけど、実質もも枕だよね?膝に頭乗せたら絶対硬いよね?」
「…確かに」
「まあ、いいや。ねえー、お兄ちゃーん。膝枕されてあげたんだから送ってよー?」
「…何だよ『されてあげた』って」
「え?膝枕して欲しいの?」
「していらん」
「膝枕いらないの?じゃあ、おっぱい触る?」

 俺は思わず顔をしかめた。
 ほんと、最近の女子高生の貞操観念の緩さは看過できん。この国の未来が心配になる。

「そんな凹んだ乳を触るくらいなら自分の乳触るわ」
「凹んでないし!」
「胸は俺の方がある説」
「うるさい、筋トレオタク」
「はいはい。もういいからサッサと行け。遅刻するぞ?」
「あ?やばい!おにいちゃーん」
「いーやーだー」
「おーねーがーい!」
「こら、抱きついてくんな」
「おねがいー!遅刻しちゃうよー」

 しつこい。本当にしつこい。

「…ったく。40秒で支度しな!」
「やった!お兄ちゃん愛してる!」

 …違う。しつこいので仕方がなかっただけだ。別に、服引っ張りながら上目遣いで甘えてくるのが可愛いからとか、じゃれて抱きついてくるのが可愛いとかそういう事ではない。
 あまりにもしつこいから、こちらが折れてやったのだ。
 これは兄の優しさだ。
 それに雨だと薄暗いし、いつもより交通量多いし、濡れて風邪をひかれても困るだけ。
 そう、他意はない。
 あと、愛してるとか簡単に言うな。ほんと軽い。軽すぎて信用ならない。

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