視える私と視えない君と

赤羽こうじ

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食堂

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 食堂の前に着きその大きな扉を池江が開けると、先に食堂にいた全員の視線が叶と幸太に注がれた。
 正面の長いテーブルの中心には年老いた人物が鎮座しており、その右隣に貴之が座り、左隣は一つ空席を挟んで義人と秋義が並んで座っていた。更に貴之の隣には中年女性が座っており、奏音や朱里、華月の三名は別テーブルに集められていた。
 叶がさっと見渡し軽く頭を下げると、池江がすぐに二人を案内する。

「さぁ、鬼龍様、倉井様、こちらへどうぞ」

 池江について歩いて行くと、二人は嵯峨良と志穂が座る四人掛けのテーブルに案内された。
 池江が二つの椅子を引き、着席を促すと二人は軽く礼を伝えて席に着く。
 席に着くと志穂が笑みを浮かべてひらひらと手を振ってきたので叶は会釈し、苦笑しながら小声で問い掛けた。

 「ひょっとして私達が最後ですか?」

 そう言って少し申し訳なさそうにする叶を見て、志穂は周りを軽く見渡しゆっくりと口角を上げる。

 「まぁそうだけどそんなに気にしなくてもいいんじゃない?私達もさっき来た所だし、他も多分似た様なもんよ」

 「そうなんですか?なら良かった」

 叶が安堵の表情を浮かべていると、それと同時に中央に座っていた人物がゆっくりと立ち上がった。

 「これで全員揃ったようだな。霊能者諸君、ようこそ儂が斗弥陀グループ会長の斗弥陀義将だ。皆さんは優秀な霊能者だと聞いている。そこで儂の相談に乗ってもらおうと思い今日皆さんには集まって頂いた。知ってる者もいるとは思うが半年前、我が妻、絵梨花が亡くなってしまった。突然亡くなった絵梨花が何か思い残す事があったんじゃないかと思い、皆さんには絵梨花の想いを読み取って頂けないかと思っている。どうか協力してほしい」

 最後は少しすがる様にしてゆっくりと頭を下げた義将を貴之が座るように促すと、変わって貴之が立ち上がり全体を見渡した。

「今義将会長からあったように皆さんにはその特異な力を持って会長の期待に応えてもらいたい。まぁまだ着いて間もないので疲れもあるだろうと思う。そこでささやかながらおもてなしをさせて頂きたい。和洋中、様々な料理を用意させて頂いた。ビュッフェスタイルだが今はゆっくりと食事を堪能してもらいたい」

 そう言って貴之が指す後方に目をやると、そこには長テーブルの上に湯気を立てて料理がずらりと並んでいた。
 高級食材を使った料理等も目に付き、テーブルに並んでいる料理は高級ホテルと比べても遜色のない物ばかりだった。
 そんな中、並んだ料理にも興味無さそうに、叶は斗弥陀家が並んで座るテーブルを見つめて、憂鬱なため息を漏らす。

「あら鬼龍ちゃん、あんまりお腹減ってない感じ?」

「え?いや、そんな訳じゃないんですけどね……」

「じゃあせっかくだから頂きましょうよ。さぁ倉井君も行きましょう」

 志穂に促され叶が立ち上がると、少し遅れて幸太も立ち上がる。
 様々な料理が並ぶ中、叶はさっとトレーに取り分けるとすぐに自分達の席へと戻って行った。
 すると少し遅れて志穂も席へと戻って来る。

「鬼龍ちゃん少しご機嫌斜めかしら?」

 笑みを浮かべて問い掛ける志穂を見て、叶は苦笑いを浮かべて頭を振った。

「そんな事ないですよ。ただ、お金持ちの人達って何処か上から目線で言ってくるよなぁって思ってただけです」

「まぁ言ってる事は分かるけどね。まぁでもクライアントなんだし少しは我慢してよ」

「分かってますよ。ただ……」

 そう言って口ごもり志穂の方を見つめると、志穂は含み笑いを浮かべて叶の事を見つめ返す。

「志穂さん達も気付いてますか?」

「何をかな?……とりあえず『ただ……』の続きを聞かせてよ」

「……。義将会長にはどこまで伝えた方がいいんですかね?」

 叶が少し気だるそうに問い掛けると、志穂は片方の口角を釣り上げニヤリと笑った。

「ふふふ、やっぱり視えてるんだ。ただ、ここはうちの嵯峨良先生の顔立てて鬼龍ちゃんは大人しく控えといてくれない?」

「まぁ志穂さんがそう言うならいいですよ……何か企んでますか?」

「ふふ、そんな言い方しないでよ。ただ保険は掛けときたいのよ」

 普段から細い目を更に細めて楽しそうな笑みを浮かべる志穂を見て、叶は小さなため息を漏らした。
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