41 / 88
食堂②
しおりを挟む
その後幸太と嵯峨良が戻って来ると四人で暫く食事を楽しんでいた。四人で他愛もない事を話しながら会話を楽しんでいると、隣りの席から男が立ち上がるのが目に入った。
叶はあえて気にしない様にしていたが、男はにこやかな笑みを浮かべて叶達の横に立つと軽く頭を下げて語りかけてくる。
「どうもこんにちは。綺麗なお姉さん方にご挨拶だけでもさせて頂いていいかな?」
柔和な笑みを浮かべて横に立つ男を叶は訝しんだ目をして見つめる。
身長は幸太より少し高く思え、恐らく百八十センチ前後、標準的な体型で端正な顔立ちをしており、人当たりの良さそうな笑みを浮かべていた。
「自分は神谷埼怜音といいます。こう見えて一応霊能者の端くれで占いなんかを生業にしてるんですが、皆さんも霊能者で間違いないですかね?」
にこやかに問い掛けてくる神谷崎を見つめて叶は警戒感を強めていたが、横に座る志穂は気にする素振りもなく変わらぬ笑みを浮かべて立ち上がる。
「神谷崎さん、これはご丁寧にありがとうございます。私は嵯峨良探偵事務所で秘書を勤めております陸奥方志穂と申します。そして横におりますこちらが嵯峨良麻璃央先生です。私には皆様の様な特別な力はないのですが嵯峨良先生は今まで様々な怪異の問題も解決してまして、私はその助手をさせて頂いております。そしてこちらにおられますのが鬼龍叶さん。彼女も霊能者で、よくお手伝いをお願いしてるんです。まあ今回はうちの嵯峨良先生がいるので彼女達の出番はそれほどないとは思いますが。因みにそちらの横におられるのが倉井幸太さん。彼も私のように霊能者ではなく一般人ですが鬼龍さんのお手伝いをされてます」
警戒感をあらわにする叶を察したのか、志穂が全員の紹介を済まし、叶と幸太は軽く会釈する。
「なるほどそうでしたか。実は自分は……」
「どういう意味だ!」
尚も神谷崎がにこやかに話を続けようとしたが、斗弥陀家が座るテーブルから怒気を孕んだ声が食堂内に響き渡り、全員が慌てて振り返った。そこでは貴之が顔を紅潮させて、前に立つややふくよかな女を掴みかかりそうな勢いで立ち上がっていた。
「そんなに興奮しないで下さい。私はあくまでもそちらにおられる女性の声を代弁したまでです」
そう言って女の指さす義将会長の背後に全員の視線が集まるが、そこには誰もおらず怪訝な表情を浮かべて貴之が更に詰め寄った。
「何を言っている?まさかそこに誰かいるとでも言いたいのか?」
「ええそういう事です。一般の方には視えないかもしれませんが、あちらにいる霊能者の方々には視えていると思いますよ。はっきりとした顔立ちで、やや明るい髪色でショートカットの女性が心配そうに見つめています。そして私に訴えかけてくるんです、このままでは斗弥陀グループの先行きが不安だと」
「貴様、それは俺のやり方が間違っているという意味か!?」
「いえですから私が言っているのではなくそちらの女性が……」
「ふざけるな!」
貴之が激昂し、まさに掴みかかろうと手を伸ばしたその時、周りにいた義人や秋義がようやく止めに入った。
周りにいた給仕達も加わり二人を引き離すと、貴之は息を荒げて女を睨んでいた。
「貴様三条いつきとか言ったな。会長の客人だからと言って調子に乗るなよ」
捨て台詞にも似た言葉を残して、貴之は横に座っていた妻とおぼしき女性に付き添われて食堂を後にして行く。やや殺伐とした雰囲気の中、騒ぎの当事者となっていた三条は含み笑いを浮かべてゆっくりと叶達の元へと歩み寄って来る。
「本当嫌になるわね、私は見たまま、聞いたままを伝えただけなのに」
そう言って三条は同意を求める様に叶達に微笑みかけるが、その空気を嫌った叶はうんざりした様な表情をして徐に立ち上がる。
「まあ仕方ないんじゃないですか。私達が視えてる世界は普通の人達には視えてない訳だし、信じてもらえない事なんか日常茶飯事じゃないですか?視えないものを信じてもらう程、難しい事なんてないんだから」
素っ気ない言葉を残し、叶は立ち上がって踵を返すと、さっさと食堂を出て行ってしまう。そんな様子を志穂は笑みを浮かべて見つめていたが、幸太は慌てて立ち上がり叶の後を追いかけて行った。
叶はあえて気にしない様にしていたが、男はにこやかな笑みを浮かべて叶達の横に立つと軽く頭を下げて語りかけてくる。
「どうもこんにちは。綺麗なお姉さん方にご挨拶だけでもさせて頂いていいかな?」
柔和な笑みを浮かべて横に立つ男を叶は訝しんだ目をして見つめる。
身長は幸太より少し高く思え、恐らく百八十センチ前後、標準的な体型で端正な顔立ちをしており、人当たりの良さそうな笑みを浮かべていた。
「自分は神谷埼怜音といいます。こう見えて一応霊能者の端くれで占いなんかを生業にしてるんですが、皆さんも霊能者で間違いないですかね?」
にこやかに問い掛けてくる神谷崎を見つめて叶は警戒感を強めていたが、横に座る志穂は気にする素振りもなく変わらぬ笑みを浮かべて立ち上がる。
「神谷崎さん、これはご丁寧にありがとうございます。私は嵯峨良探偵事務所で秘書を勤めております陸奥方志穂と申します。そして横におりますこちらが嵯峨良麻璃央先生です。私には皆様の様な特別な力はないのですが嵯峨良先生は今まで様々な怪異の問題も解決してまして、私はその助手をさせて頂いております。そしてこちらにおられますのが鬼龍叶さん。彼女も霊能者で、よくお手伝いをお願いしてるんです。まあ今回はうちの嵯峨良先生がいるので彼女達の出番はそれほどないとは思いますが。因みにそちらの横におられるのが倉井幸太さん。彼も私のように霊能者ではなく一般人ですが鬼龍さんのお手伝いをされてます」
警戒感をあらわにする叶を察したのか、志穂が全員の紹介を済まし、叶と幸太は軽く会釈する。
「なるほどそうでしたか。実は自分は……」
「どういう意味だ!」
尚も神谷崎がにこやかに話を続けようとしたが、斗弥陀家が座るテーブルから怒気を孕んだ声が食堂内に響き渡り、全員が慌てて振り返った。そこでは貴之が顔を紅潮させて、前に立つややふくよかな女を掴みかかりそうな勢いで立ち上がっていた。
「そんなに興奮しないで下さい。私はあくまでもそちらにおられる女性の声を代弁したまでです」
そう言って女の指さす義将会長の背後に全員の視線が集まるが、そこには誰もおらず怪訝な表情を浮かべて貴之が更に詰め寄った。
「何を言っている?まさかそこに誰かいるとでも言いたいのか?」
「ええそういう事です。一般の方には視えないかもしれませんが、あちらにいる霊能者の方々には視えていると思いますよ。はっきりとした顔立ちで、やや明るい髪色でショートカットの女性が心配そうに見つめています。そして私に訴えかけてくるんです、このままでは斗弥陀グループの先行きが不安だと」
「貴様、それは俺のやり方が間違っているという意味か!?」
「いえですから私が言っているのではなくそちらの女性が……」
「ふざけるな!」
貴之が激昂し、まさに掴みかかろうと手を伸ばしたその時、周りにいた義人や秋義がようやく止めに入った。
周りにいた給仕達も加わり二人を引き離すと、貴之は息を荒げて女を睨んでいた。
「貴様三条いつきとか言ったな。会長の客人だからと言って調子に乗るなよ」
捨て台詞にも似た言葉を残して、貴之は横に座っていた妻とおぼしき女性に付き添われて食堂を後にして行く。やや殺伐とした雰囲気の中、騒ぎの当事者となっていた三条は含み笑いを浮かべてゆっくりと叶達の元へと歩み寄って来る。
「本当嫌になるわね、私は見たまま、聞いたままを伝えただけなのに」
そう言って三条は同意を求める様に叶達に微笑みかけるが、その空気を嫌った叶はうんざりした様な表情をして徐に立ち上がる。
「まあ仕方ないんじゃないですか。私達が視えてる世界は普通の人達には視えてない訳だし、信じてもらえない事なんか日常茶飯事じゃないですか?視えないものを信じてもらう程、難しい事なんてないんだから」
素っ気ない言葉を残し、叶は立ち上がって踵を返すと、さっさと食堂を出て行ってしまう。そんな様子を志穂は笑みを浮かべて見つめていたが、幸太は慌てて立ち上がり叶の後を追いかけて行った。
2
あなたにおすすめの小説
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる