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幕開け③
しおりを挟む残された者達で互いに顔を見合わせるも、口を開く者はおらず静寂に包まれていた。
しかしピンと張り詰めた雰囲気の中、ため息をつきながら三条がゆっくりと前に出て来る。
「呪いよ。絵梨花さんの呪いよ」
悲愴感が漂う中、したり顔で言ってのける三条の言葉を聞き、叶が眉をひそめて睨んだ。
この期に及んでまだそんな戯れ言を――。
叶がつい感情的になり三条に詰め寄ろうとした時、スっと志穂が身体を入れてそれを遮る。
思わず志穂に鋭い視線を飛ばすが、志穂は受け流す様に笑みを浮かべていた。
「鬼龍ちゃん、分かるけど少しだけ我慢して」
囁く様に言った志穂の言葉を受けて、叶は何も言わずに歯噛みし視線を切る。
「……少しだけですからね」
「ありがとうね」
募る苛立ちを抑えながら叶が呟くと、志穂は笑みを浮かべて礼を口にする。
しかし次の瞬間、秋義が怒りをあらわにして三条に掴みかかった。
「どういう意味だ?奏音が呪われる様な事をしたとでも言うつもりか!?」
「痛い!は、離して下さい」
怒気を含んだ秋義の声が響き渡り、掴みかかる秋義の手を振りほどこうとして三条が声を上げると、周りにいた義人や神谷崎が慌てて秋義を止めに入った。
三条は軽くため息をつくと、うんざりした様な表情を浮かべて叶や志穂の方へと歩み寄る。
「本当に嫌になるわ。私はただ霊の言葉を代弁しただけだって言ってるのに普通の人には理解出来ないみたいね」
貴女達霊能者なら私の言ってる事分かるでしょ?
そんな事を言いたげに同意を求める様な素振りで笑みを浮かべる三条だったが、叶は眉間に皺を寄せて険しい表情を見せていた。
一緒にしないでもらいたい――。
叶がそう言ってやろうかと思い詰め寄ろうとした時、再び志穂が叶の前に立ち、笑みを浮かべながら三条の元へと歩み寄った。
「三条さん、私は霊能者ではありませんので貴女の言うところの『普通の人』です。ですが霊能者の方々の想いや意見は十分理解しているつもりです。その辺を踏まえましても三条さんの仰ってる事には賛同しかねますよ」
相変わらず人を食った様な笑みを浮かべる志穂に対して三条は顔をしかめると不機嫌そうにため息をつく。
「分からないの?絵梨花さんの霊が私にそう告げてるのよ」
見下したかの様な笑みを浮かべて三条が呆れた様に言うと、志穂はゆっくりと三条の前に立つ。
「ええ、分からないですね。絵梨花さんの霊は私には視えないし、何故絵梨花さんがそんな事を言うのかも。それにこの状況下でそんな事を平気で口に出来る貴女の神経も。確かに霊能者は様々なものを見聞きしていても、それが理解されないせいか異端な者も多いですが、それでも大体は最低限の礼節は弁えています。貴女のように特異な力をひけらかし、あえて波風を立てようなどとはしないものですよ……分かりますか?もう少し分かりやすく言いましょうか?目障りだから消えろって言ってんだよ」
最後は三条の胸ぐらを掴む様にして語気を強める志穂の顔からは、いつもの笑顔は消え去り冷たく鋭い視線で三条を睨んでいた。
静寂に包まれ、完全に気圧され言葉を失っていた三条を掴む志穂の手に、そっと手を乗せ叶が静かに語り掛ける。
「志穂さん、それぐらいで……」
叶が声を掛けると、三条を掴んでいた手を離し、志穂はいつもの様に目を細めて笑みを浮かべる。
「……そううちの嵯峨良先生が仰ってましたので気を付けてくれますか、三条さん?」
笑みを浮かべて問い掛ける志穂だったが、三条は何も答える事なく顔を引きつらせて自室へと引き上げて行った。
志穂は振り返り嵯峨良の方を見つめる。
「先生の言いたかった事、代わりに伝えときましたよ。お礼は?」
「えっ?えぇ……いや、あ、ありがとう」
困惑する表情を浮かべながら嵯峨良が礼を口にすると、志穂は満足したように軽く頷いていた。
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