48 / 88
狙われたのは?②
しおりを挟む翌日、叶は扉をノックする軽快な音で目を覚ました。
「叶さん、まだ寝てる?」
扉の向こうからは幸太の明るい声が聞こえて来る。
まだすこし重たい瞼を開けて、部屋の時計を確認すると、時計の針は九時を指していた。
ちょっと寝すぎたかな?――。
片手で髪をかきあげながらまだ微睡む頭を動かそうとしていると、再び扉をノックされた。
「叶さーん?」
扉の向こうで戸惑いながら呼び掛ける幸太の声を聞き、叶は慌てて扉に駆け寄り、扉越しに声を掛ける。
「幸太君。ごめんごめん、おはよう。ちょっと今起きた所だから少し待ってて。すぐに支度するから」
「よかった。無事ならいいんだ。じゃあ部屋で待ってるから」
幸太の返事を聞き叶はすぐに支度を始めた。洗面所に行き洗顔と歯磨きを終えると手早く化粧も済ませ着替え終わるとすぐに隣の幸太の部屋を訪ねた。
「幸太君、お待たせ」
扉をノックし声を掛けると、すぐに扉が開き幸太が気持ちのいい爽やかな笑顔を見せた。
「全然待ってないって。志穂さん達は先に食堂に行っとくって言ってたよ」
「そっか、私達も行こうか。朝食何かな?」
そんな他愛もない事を話しながら二人は階段を降りて行く。幸太と共に過ごす和やかな朝は昨夜の騒動が嘘の様に感じさせた。二人はそのまま食堂へ行くと、二人に気付いた池江が駆け寄り頭を下げる。
「鬼龍様、倉井様、おはようございます。お食事の用意が整っております、こちらにどうぞ」
池江に案内された先では志穂と嵯峨良が既に食事を済ませ食後のコーヒーを楽しんでいた。
「あら鬼龍ちゃんおはよう。よく眠れた?」
「おはようございます。おかげ様でゆっくり眠れましたよ。ひょっとして志穂さんはあまり寝てないんですか?」
いつもの様な笑みを浮かべて明るく声を掛ける志穂だったが、叶は志穂の顔色が僅かに血色が悪く感じた為問い掛けた。だが志穂はその問いには答えずに笑顔を見せ叶の顔を覗き込む。
「ふふ、私があまり寝てなくても、逆に寝てたとしてもあまり意味ないわよ。ここからの主役は鬼龍ちゃんに嵯峨良先生なんだから。二人の体調が良ければそれですべてOKでしょ」
「随分謙虚じゃないですか。まぁもちろん美味しい料理も頂いてる訳ですから仕事はちゃんとしますけどね」
「ふふふ、お願いね。ひとまずうちの先生が会長に小夜子さんと思われる着物着た女性の霊の事伝えに行くみたいだけど。ねぇ先生?」
突然志穂に振られて嵯峨良は少し驚いた様な表情を見せたがすぐに襟を正す様に背筋を伸ばすと軽く咳払いをして叶を見つめた。
「ひとまず会長の横に座っていた女性について報告するつもりなんだ。鬼龍君も見えていたんだよね?今は視えるかい?」
真剣な眼差しを向け問い掛けてくる嵯峨良に対して、叶は柔らかな笑みを浮かべて頭を振った。
「いえ、今は視えませんね。理由は分かりませんが、いたのはたぶんあの夕食の時だけでしたね。それで、その事を会長に伝えてどうするつもりですか?」
叶の質問に嵯峨良は何も答えずに不敵な笑みを浮かべると叶が咄嗟に「あ、すいません」と謝罪を口にした。そんな様子を眺めていた志穂が横から割り込む。
「まぁ相手の出方次第よね。ただ、三条さんの言ってる事だけを信じられても困るじゃない?私達もちゃんと視えてるんですよ、って証明しとかないとね」
「まぁ確かに。私はそれより奏音さんの容態が気になってるんですけど何か知ってますか?」
叶の質問に二人は伏し目がちにゆっくりと首を振る。
「いいえ、何も聞かされてないわね。確か秋義さんが付いてるんじゃなかった?」
「ええ、確かその筈ですね」
叶と志穂が暫く話を進めていると池江がワゴンを押しながら叶の横にやって来た。
ワゴンの上には新鮮な野菜を使ったサラダや温かそうなスープが湯気を立てて並んでいた。
「鬼龍様、倉井様、地元で取れた新鮮野菜のサラダとポタージュスープです」
池江は丁寧に説明しながら叶と幸太の前に配膳していく。そんな池江に叶が軽く頭を下げると、池江は叶に顔を近づけそっと囁く様に話す。
「奏音様は一命は取り留められた様です。ただショック症状で窒息状態が長くなってしまったせいで意識は未だに戻ってないそうで……私からお教え出来るのはこれぐらいです」
そう言って深々と腰を折る池江に対して叶は丁寧に礼を伝える。
「池江さんありがとう」
「いえ、ではすぐにパンも運んで来ます」
池江は目を合わせる事もなく再び一礼しワゴンを押してその場を去って行った。
2
あなたにおすすめの小説
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/3:『おかのうえからみるけしき』の章を追加。2026/1/10の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる