社会人の俺が女体化したら転がり堕ちていった

ニッチ

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二章 やや女

第十一話 言葉に責め囲まれて

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「ここが私の専用個室プライベートルームだ」

 自動感知照明が、鮮やかに室内を照らしていく。その天井は高く、壁紙はシックで、床のカーペットは暑かった。2LDほどの広間には、複数の調度品が品良く配置されており、高級ホテル顔負けのような室内であった。
 じぶんは濡れた水着のまま、肩にタオルを羽織り、口元を抑えつつ目を見開く。

「す、すご~い!」

 羨望せんぼうの輝きを目に灯しつつ、壁掛けのスクリーンや、広々としたベットへ大袈裟おおげさに向き直る。さらに、運動器具や大きな冷蔵庫へ目を走らせつつ、

「(! あった)――まさにVIPルームですねぇ」

 高そうな木目調のデスクの上に、銀色の小さな端末パソコンが置かれていた。電源は入っているらしく、小さなランプが明滅していた。
 ――けど、そちらへ意識が向きすぎていたため、無警戒状態のまま、バスタオルの上から肩に置かれた手により、グッと抱き寄せられる。――ゾワッ、と肌が泡立ったのは言うまでもなかった。

「喉が渇いたろう。お酒でもいかがかな?」

 加齢臭が身体にまとわり付くみたく、ツンとした臭いが鼻をついた。さっき散々に若い男性をこき下ろした罰だろうか? 臭いも行為も、係長や長谷川君との逢い引きの際には、全く気にならなかった現象によって、生理的嫌悪が肌を走る。
 ぐふふっ、と笑う部長は空いた手で携帯に少し触れた後、緩んだ顔の肉にたくさんのシワを刻む。こっちは鳥肌を気取られないように、必死になってびるみたく部長かれを見上げるしかなかった。

「ね、ねぇ。部長ぅ」

 緊張と乾きによる手の震えを意識的に止めるため、肩に置かれた毛深い手に、そっと指を重ねる。

「シャワー。浴びてから飲みません?」

 恥じらう風に口にする。

「私から入っていいのかね?」

 そう言いつつも、バスタオルを掴まれて、カーペットの上に投げ置かれる。栗色の髪から雫が伝う中、卑猥な水着姿を、再びねぶるように見られる。

「――むしろ私は、入らない方がイイのでは?」

 うふっ、と誘うように息を飛ばす。部長は二度ほどゆったりと頷いた。

「少し、待っていなさい」

 そう言うと――ペタペタ――っと、まるでわざと土踏まずをつけるみたく足音を鳴らして、浴室へ消えていった。暖房が少し効いているとはいえ、色々な意味で震える身体と共に、端末の傍へ忍び寄る。
 拭いた指でもって、クリックパットに触るとパスワードのポップアップが表示される。赤い顔が青くなり、空気が喉につっかえる。――けれど、キーボード下に付箋ふせんみたいなものが貼られており、そこには英数字の羅列られつが載っていた。
 苦し紛れに入力すると、奇跡的にログインに成功する。勢いを得たじぶんは、急いで水着のボトムの内側に縫い付けておいた、防水仕様のUSBを取り出し、差し込む。
 ピッ。データの引き抜きを早々に開始する。

「(画像や動画が多いのかな? 時間がかかりそう)急いで急いで――」

 瞬きも忘れて、ダウンロード画面とにらめっこをする。浴室からの音はしたりしなかったりだが、やがてその間隔が短くなってくる。今のうちにメール内容の一つや二つをあらためようかとも思ったけど、墓穴を掘るのが怖くて、ソレはやめた。
 四十パーセントの時点で、音源が脱衣所へとうつり始める。

「(間に合いそうにない?)と、とりあえずは――」

 棚から適当なお酒を取り出す。手近にあった仏語フランスのラベルの果実酒リキュールを開けて、やむなくグラスに注ぎ、USBを隠すように瓶を置く。当然、飲んでいないと怪しまれるので、グラスを口につける。

「! つよっ」

 アルコール度数をもっとよく見ておけばよかったと、口にしてから後悔する。女になってからお酒に弱くなったのに、さらに水分不足の状態で強い酒を飲むなんて、迂闊うかつだったと言わざるを得なかった。
 と、と、とにかく水を一口だけでも――。
 ガララッ。

「ふぅ」

 遅かった。腰にふわっと巻いたタオルと同じ、緩い身体と目尻の部長が、にんまりと笑いながら携帯を持って戻ってくる。

「お待たせ――おっ、先に飲んでいたのかい?」

 少し驚いている感じだけど、非難するような語気は含まれていなかった。むしろ、話が早い、と言った印象すらあって、大股で近づいてくる。

「ご、ごめんなさい。あたし、はしたないことを――」

 上半身と頭を前に倒すと、胸が揺れて水が数滴おちた。あと二分ほどでダウンロード自体は終わりそうだけど、逃げの算段は別で考える必要がありそうだった。

「構わないよ。私と君の仲じゃあ無いか」

 そこまで親しくなったつもりはさらさら無かったけど、はね除けるのもおかしな状況だ。

「部長も、お飲みになります?」

 焦りと酒によって赤くなった頬のまま、酒に満たされたグラスを持って媚笑びしょうを浮かべる。

「――あぁ、頼もうかな」

 相変わらず、じぶんの身体に視線の矢を放ちつつ、ドッカリと高級な無垢材のチェアへ座る。
 にしても、なぜだろうか。自分の状態と部長の自信に満ちた佇まいを見ると、なぜか追い込んでいるはずの自分が、逆に追い込まれているみたく思えてならなかった。

「で、では――」

 時間稼ぎと突破口を見つけるため、たおやかにグラスを渡そうとするが。

「せっかくの一杯目だ。君のお口で飲ませて欲しいなぁ」

 ⁉ プ、プールサイドの時とは言っていた内容も印象もがらりと変えて、頬杖を突きながらニチャァと、口角を上げてくる。
 ――ひょ、ひょっとして、端末パソコンに細工をしたのがバレた、とか?

「(け、けど。そうでないなら、口移しなんて突然)――い、いきなり大胆過ぎません? 部長ぉ~」

 妙な勘ぐりと、鋭さを帯びた部長の視線に怯えてしまったせいか、微妙な返答をこぼしてしまった。

「……ふぅ~」

 あ、明らかに不快そうな息を吐き、肘掛けを人差し指で叩く。

っという言葉、取り消そうかなぁ」

 酔い、水分不足、焦燥、そしてこんな状況下のため、正常な思考なんかとっくにできていなかった。
 どうしようか。これ以上に気色けしきばまれると、改善不可な状況に陥ることだけは察する事ができた。

「(仮に部長が黒でも、USBを引き抜いて逃げるなんて)――ま、待ってくださ、い」

 ……意を決したじぶんは、震える手でグラスをあおって口に含む。の、飲み込まなくても、口内へ含むだけで、脱水症状気味の自分の心身を、強い酒がさらにむしばんだ。
 餌を詰めたリスみたく頬を少し膨らましたまま、一歩一歩と進めて、座り込む部長の前に立つ。部長は、足先から頭の天辺までを目を細めながら見定め、小さく笑うだけであった。
 じぶんは、肘掛けに置かれた彼の両腕へとそれぞれ手を添えて、身体を安定させつつ顔を近づけていく。
 ……太い眉、減退する前髪、脂ぎった皮膚やシミ、不均一な顔の肉付き、タラコ唇なんかが、今更ながら目につく。決して、男前を好んでいたわけではなかった。けど、身体の関係にあった係長や長谷川君が並以上の容貌であり若かったことからか、ここに来てくだらないことに二の足を踏んでしまっ――。

「仕事が遅い」

 ハッ、とするより早く、後頭部へ手が当てられたかと思った瞬間、かさついた大きな唇が触れていた。直後、太くて力強い舌によって、口を開かれたと思いきや――ゴクン、ゴク――と自分の唾液が混じった酒でもって、部長の太い首の喉が鳴る。
 ポタポタポタ、っと口の端から、部長の白い腰巻きへ酒がこぼれ落ちて、小さく変色する。

「ンンッ!」

 混乱するじぶんは身動ぎしようとするも、酔って動揺した状態では、まるでただ誘うみたく胸を揺らしているだけみたいだった。
 ジュル、ゴク、ズルジュル。
 部長の舌は口内に含んだ酒をまたたく間に舐め奪った後、まるでついでのさかなを味わうみたく内頬や舌、歯などへ臭う舌を這わせた。まるで鎖骨の内側をしゃぶられているみたいな感覚に、神経が冷たくなる。
 ――力強くうごめく部長の舌に翻弄ほんろうされて、中腰のまま後頭部を押さえつけらた姿勢を強要された。五分以上、互いの舌を絡め合わせられて、唾液を覚えさせられたのは、致命的な失敗の一つだった。
 息、イキがっ。

「プハッ――ごほっ。げほ」

 鼻の穴を開け広げる寸前、部長の手が離れて、互いの口から一本の糸が引かれる。
 じぶんはようやく直立の姿勢へ戻るも、酒のせいに違いないが、熱い呼吸を繰り返した。怒り……というよりは、急な部長の態度の変化と、身体の芯の気色の悪い熱さへの戸惑いに怯えた。
 ――後になって思うと、勝手に他人の端末のデータを盗もうとした、罪悪感も手伝っていたのかもしれない。

「……セックスは、好きかね?」

 トクン。
 まるで、係長や長谷川君との関係を知ってるみたいな、あるいは自分を尻軽女ビッチと見透かす風な、確信を持っている様な質問をぶつけられる。

「え、あっ」

 様々な意味で顔を真っ赤にして、取り乱しかけるじぶんへ、足を組む部長は、けど――。

「三度は聞かない。セックスは、好きかね?」

 ドクン!
 にらみ、さらに見下すようにそう言い放たれる。
 な、何? 部長の言葉ではなく、今、心のどこかがゾクッとした。すごく嫌なのに、まるで、その、みたいな? よくわからない暗い感情がかすめた。

「――き、嫌い、では、ないです」

 と、とりあえずは、ご機嫌を伺うという体裁で心を取り繕いつつ、消え入るみたく呟く。
 けど頭の中は洗濯機のように回りに回っていた。危機的状況に、酔い、水分不足、羞恥、部長との濃厚なキスと身体の内部の異常な熱。考えがまとまらず、直立しつつも震えて、水着姿の自分を抱きしめる。

「ふむ。どんなところが好きなのかね?」

 い、一体、どういう? まるで尋問みたいな聞き方、としか思えない。
 や、やっぱり何かしら、こちらの意図を勘づかれたに違いない。……だ、だとしたら、とにかくご機嫌をこれ以上、悪くしない、ように。

「あ、相手に求められるたびに、心が満されるから……です」

 唇が動く。半分は作戦で、けどもう半分は――。

「ふむ? 乱暴され、好き勝手にされ、物みたいに扱われて、膣内射精なかだしを強要されるのが心地よいから、っということはないのかね?」

 ドックン。
 全身の内側が、暗く熱く脈動する。身体が内側からジリジリとけて痛いのに、どうしてか下腹部のどこか、ジンワリと膨張した。
 お尻の穴がムズムズし、心臓が変に高鳴る。言葉だけでなんて、こんなの、はじ、めて?

「な、ないことも、ないで――」

「そういう場合は、ある、とだけ明瞭に答えなさい!」

 ドンッ、とひじ掛けにが降ろされる。ビクッ、と怯えるじぶんは、訳もわからず胸を揺らして平謝をする。けど恐怖よりも、変な生温かい感情が、肩を舐めてくる。

「……質問を変えよう。新妻キミは、被虐体質マゾヒズムだね?」

 ドクン、ドクン。

「わ、私――」

「あんな痴情みたいな水着を好むのだ。見られたいのだろう?」

 っ、心臓を鷲づかみにされた様な不思議な感覚に、脚がなまめかし交差する。――ち、違うの。こ、これらの一連の受け答えは、USBの件をカバーしようと、彼の気を引いている、だけ。
 決して、では、断じて、ない。

「あっ、う」

 けど言い淀み、時間切れとなる。

「ペナルティーだ」

 そう言うと、部長かれの太い指が伸びてきて、乱暴にバストのビキニを下へズラす。
 プルン、っと桃色の乳首ごと乳房が震え出る。

「あ、あっ」

 恥辱に酷いことをされているにも関わらず、声を出すだけで、動くこともできず、照明の下、汗と酒で濡れる乳房と乳首を、さらしたまま立ち尽くしかできなかった。
 それはまるで、部長のせめがどれほどなのかを、心が知ろうとしているみたいに――。

「もう一度だけ問う。新妻おまえは、被虐体質マゾか?」

 キツめの、侮辱だけの失敬な言葉に、本来は怒り心頭すべきなのが正常だった。けど、身体状況コンディションの異常を差し置いても、部長の汚れた棘だらけの言葉の痛みに、小さく震え耐えることに、今まで感じた事の無い不気味な情炎に、ただれてしまった。
 被虐的な心地よささえ、感じている始末で。
 ――ッキュ。

「んあっ!」

 左乳首に小さな快楽いたみが走り、待っていましたとばかりに嬌声が漏れ出る。じぶんは泣きそうな、でも、不可思議に満たされたような表情かおと共に、熱い吐息でもって答える。

「は、ぃ。男、性に酷いことをされて、満たされることが、あります」

 硬くなりかけの乳首を摘ままれたまま、涙腺に涙を溜めて、無様に答えてしまう。――けど、だけど胸の高鳴りは不快なモノでは決してなかった。

「次の質問だ……今現在も、そうされたいと思っているかね?」

 そう問うと、部長は椅子を立ち、だらしない身体を密着させてくる。たるんだ腕が、毛だらけのお腹が、お風呂あがりなのにもう汗をかいている皮膚が、毛布のように自分を包もうとする。
 しかし、さっきまでの嫌悪感はどこにいったのか、じぶんはただただハァハァと、黒光りする彼の胸毛に、吐息を吹きかけるばかりであった。

「ぅ、あ」

 墜ちた視線の先、彼の腰に巻いたタオルが歪な三角形を描いているのに、気付かされる。
 喉の渇きはもう限界だった。
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