社会人の俺が女体化したら転がり堕ちていった

ニッチ

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三章 女以上に女

第十三話 ぬめる月曜日

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 口から吐く息が白くくゆる朝であった。十二月に入り、駅の発着場プラットフォームにいても、徐々に慌ただしくなる世間の様を、敏感な肌が感じた。
 クリスマスと年越しという二大イベントにより、ちょっと追われているみたいなこの雰囲気が、嫌いではなかった。
 ――けれども、今年に関しては、そんなことに神経を割く余裕なんて、欠片となかった。
 ガタンガタン。
 誰もが憂鬱ゆううつな月曜日の通勤電車内にて。揺られるは、身体を壁に押し付けるようにして立っていた。満員電車だからまだそれほど目立たないが、軽い痛みを伴うみたいな、奇妙なもたれ方であった。

「……っ」

 その理由は、酷くいやらしく、またみにくかった。
 ――囲部長に責め貫かれたあのジムの日から、二ヶ月ほどが経っていた。
 あの痴態を晒した翌日、誰もいない小会議室へ、部長に呼び出された。当然ながら、USBの件で問いただされてしまった。データの奪取に失敗し、もはや事の顛末てんまつが不明になった私に残された道は、無様に許しを乞うのみだった。
 眉間に皺を寄せる部長は、捕らえた獲物を甚振いたぶるみたく『依頼人を言えば許してやる』と言い捨てた。私の口の中に舌を這わせて、胸の谷間に太い指を入れながら。
 あわれに喘ぎ声を捧げるしかできなかった私は――けれども――その要求だけは飲めなかった。いくら川口が事の発端ほったんでも、私のヘマのせいで、彼の名を告げることははばかられたから。冷たい小会議室内にて、悲鳴が嬌声へと脱皮しかけた時、意味深に笑う部長は、折衷案せっちゅうあんを提示してくれた。
『木曜日に愛人として抱かれるなら許そう』、と。股間の下着の筋に爪を立てられる私は、乳首が尖りかけるのを悟られるより早く、上目遣いでコクン、と頷いた。
 一通り、卑猥な責めを受けてよがった後、今度は川口に呼び出された。無残な結果をそれとなく伝えると、なぜか拍子抜けするくらいに、その件は不問とされた。
 その後、何度か部長とホテルで夜を過ごしたけど、淫語プレイとでも言うのかな? 心を責め立てる部長の独特なセックスは、私の皮膚の下にうず被虐心マゾを晒し、傷つけ、不潔にし、病んだ快楽を、心身の根深いところに植え付けてイッた。
 式峰係長や長谷川君とのエッチとは全く異質な、未知で不気味な性世界に、私の胸は高鳴り、ただひたすらに濡れ溺れていった。
 ……そう。この半年で、私の性活は一変していった。火曜日は長谷川君と優しく乳繰り合い、水曜日は係長へ甘えつつも激しく求めて、木曜日は部長に頭の中が沸騰するまで責め犯された。どれも気持ちよさのベクトルが異なり、快楽の虜から戻れない日々が続いた。
 知らなかったのならまだしも、知ってしまった今となっては――。

「(もう、戻れない。ううん。例え戻れたとしても、戻りたくは……)んっ」

 憂鬱ゆううつな月曜日が、私の口から溜息をこぼさせた。週末にはエッチの相手がいないため、土日を挟み、特に月曜日の今日はジュクジュクと性欲が心身をむしばんだ。
 もちろん、その気になれば、会社内でも外でもネットでも、他の男性と関係を持つだけなんて、造作も無かった。土日だって、外を歩いていれば、たまにナンパもされた。
 けれども、不特定多数の関係に走ってしまったら、いよいよタガが外れて、セックス中毒者になってしまう――そこだけは最後の砦と押し留まっていた。依存や妊娠はもちろんのこと、性病とかへの怖さもあった。
 となると、唯一の安全な解消方法は自慰オナニーとなるけど、なぜか今週に限って、川口が。

「この一週間はオナ禁な? まぁ、ボーイッシュな新妻なら、オナニーなんてほぼしないだろうけどな。くははっ」

 ……ボーイッシュ? にしても、オナニーをしろというのならわかるけれど、禁止なんて言われたのは初めてであった。
 しかも、その前の週は危険日回避と生理のため、十日間以上は禁欲的な生活を強いられていた。によって、睡眠不足になりそうなくらいだった。

「――駆け込み乗車は、危険ですのでお止めください――」

 身体の内側が欲求不満で火傷しそうなくらいに、くすぶっていた。そんな私の一縷いちるの望みは、三人からのイレギュラーな週末のお誘いだけだった。
 こちらから声を掛けているわけでもなく、またオナニーでも無いためルール違反では無いから。

「(……けど、誰からも無かった)ハァ」

 三人それぞれと決めた唯一の曜日ルールであり、一度たりとも破られることが無かったのは、少し不思議だったけど、まぎれもない事実だった。――おそらくきっと、楽しい週末は本当に大事な恋人ひとや家族と、過ごしているのだろうなぁ、と思わされた。
 結局、口では調子のいいことを言っても、いくらアクセサリーや豪華な食事、楽しい会話や快楽を提供してくれても、私は愛人セフレどまり――なんだ。
 わかってはいるよ。このままズルズルいくことが、暗い未来への架け橋を渡るってことくらい。でも、彼らのいない性活なんて、今は考えられない。熱くたぎる情欲が、あざけるみたく、そう告げていた。

「フゥ」

 もたれかかる車内扉の冷たさで我に返る。さらに押しつけて、痛みを得ることで、性の疼きを誤魔化そうと、はかない抵抗を試みていたのであった。
 もうすぐ会社の最寄り駅だけれど、今日に限っては痴漢も現れず、いつも通りに会社を目指すこととなった。

 * * *

「全員、注目」

 卑猥な熱に耐えつつも机へ向かう中、囲部長の声により、顔を上げる。
 全員が、前方にいる部長とその隣に立つ大柄な男性へ目がいく。その男性はラグビーでもしていたのかというほどがたいが良く、首と腕の太さなど、私の倍以上あり、胴体や足も含めてスーツがパンパンであった。

「紹介する。本日付けで支社から転属してきた、十六沢いざさわ課長代理だ」

 部長が半歩下がると、ズンッ、と一歩を踏み出す。

「みなはん! ……ちゃう。皆様、囲営業部長よりご紹介いただいた、十六沢俊郎いざさわとしろうです。四十八歳で子供は三人。精一杯がんばりまっせ――ちゃうわ。誠心誠意努めます!」

 体に見合った大きな顔と声でもって、豪快に笑った。あちこちから小声が聞こえる。

「五十手前? めちゃ若く見えるな」

「しっかし、珍しい時期に転勤してきたなぁ」

「関西人?」

 皆がざわつく中、十六沢代理と部長は、どういうわけか私のいる三課シマへやって来た。慌てて椅子を引いて立ち上がる。

「今日は所属長の立島課長が代休で不在だが、代理には三課へ配属してもらう。客先周りのことなど、ここにいる君達で色々と教えてやってくれ。代理の支社での実績はしっかりしているから、すぐに馴れることだろう。今日のところは、そうだなぁ――」

 部長がをして、私の方へ視線を突き刺す。

「おおっ、新妻クン。君の担当先への顔合わせを、頼めるかなぁ?」

 ニヤァと笑い皺を刻む部長かれを見ると、この前の破廉恥はれんちなプレイが呼び起こされる。
 ……少し高いラブホテルの一室にて、卑猥なランジェリー姿のまま、身体のあちこちを舐め触られた挙げ句、耳元で『愛液の臭いを営業部で垂れ流すなっ』とか、『オマンコするしか能が無い雌』――などと延々と
 汚辱で股間を濡らし、乳首を硬くしていた私は――けどなかなか挿入いれてもらえなくて、ベットの上で三拝九拝した。ようやく正常位で押し倒された時の、はしたない安堵あんどの笑みを浮かべた時の事を思い出すと、疼きが激しくなっちゃう……。

「んん? ど~したのかね。返事は?」

 舌舐めずりをするその臭う舌が、私の肛門に入り込んだ時を、瞬間想起フラッシュバックさせる。

「は、はぃ」

 お尻を小さく振り、床を見ながら頭を下げて了承する。無遠慮に谷間をのぞき込む部長へは、もう何の嫌悪感も沸いてはこなかった。

「ふむ。十六沢君、彼は新妻真クンだ。営業部ウチの紅一点で、だよ」

 目を合わせる彼らは、なぜかヒタヒタと笑った。

「――わかりました。ほな新妻ちゃん、よろしゅう頼んます!」

 目尻を下げて、やはり大きな声で返される。
 ――にしても、課長代理とは思えないフランクさに、周りの男性社員も、えっ? という表情になる。大股で歩み寄ってくる代理に、大きな手で肩を軽く叩かれると、膝が曲がりかけた。
 と、とりあえずは指示の通り、社用車の鍵を手に取り、部屋を出ようとすると、背後から部長に声を掛けられる。

「あぁ、そうそう。まだ年末前で忙しくないから、今日はから、ね?」

 ……なんだろうか。その声と共に、一瞬だけど、式峰係長や長谷川君、そして川口が、私をマジマジと見つめた気がした。
 今更だけど、ナニか妙な流れに、なってない?

 * * *

 ブウウゥゥン。
 運転は代理がしてくれたけど、運転席がちょっと狭そうに思えるほどだった。
 にしても、男性と二人っきりで車に乗ると、妙な気分になってしまうのは、私の意識が過剰なだけだと、心の中でたしなめた。
 車の中でだって――スーツ姿イカすねぇ――と褒められた以外は、代理の家族の話や子育ての苦労話、支社での出来事に、相槌を打つくらいだった。
 業務の方も、ルート営業の挨拶だけだったので、別に難しくもなかった。むしろ、初見の客先との打ち解け方など、さすがは課長代理だけあって、勉強になった。もっとも、式峰係長みたく、話術によるものというよりは、代理の底抜けな明るさや豪快な態度に、支えられているのを強く感じたけれど。
 やがて昼食(しかも奢り)を終えた昼過ぎとなった。車で回れる近場はおおよそ回れたので、そろそろ帰社してもと思い始める。
 最後の一件を終えた頃、大通りはそろそろ混む時間だと伝えると、迂回のために住宅街の路地へ入り込む。中年男性と女子高生が恋人みたく、仲良く手を繋いで歩いているのを見送った時だった。

「新妻ちゃん」

「はい?」

「家ってどの辺なん?」

 前を見たまま、そう聞かれる。前方に見える信号は黄色に明滅していたが、代理はアクセルを踏み抜いて突っ切った。

「えっと、ここから十分くらいで――」

「ナビで言うとどこなん?」

「えっ? こ、ここら、辺りですかね?」

 女なのに、聞かれたから素直に自宅を教えるという、子供みたいなことをしてしまう。ナビの画面を触って動かす先を、代理はチラッと見つつ、器用に片手で携帯を少し触りつつ、ハンドルを切った。

「おっけ。――あっ、ちょっとコンビニ寄ってええ? コーヒー飲みたくなってん」

 もちろんですと促すと、右折して、わざわさわ会社へ戻るのとは逆側の、離れたコンビニへと走っていく。というかそっちは、家の方向だけれど――。
 コインランドリーが併設されている、駐車場が広めのコンビニへと入る。

「新妻ちゃんも、必要なものとかあったら買ってええで。家まで運んだるし」

「え? い、いえいえ。仕事中ですから――」

 新妻ちゃんは控えめやなぁ――っと、代理はエンジンをかけたまま、店へと入っていった。
 窓から覗く空は綺麗な冬晴れで、遥か遠くに、小さな雲が一片だけ浮いていた。姿勢を正して、ボーっと眺めていると、身体の火照りのせいか、現在関係を持つ三人の男性との是非について、思考回路が奪われた。
 ただれた三人との性活の結果、私の身体で、彼らの手や唇が触れていない場所なんて、もうほとんどなかった。――その一方、朝も思ったけど、彼らがどれだけいたわってくれても、贈物プレゼントをくれても、優しくしてくれても、それは愛人としてだからであった。
 なら拒絶したら? ――それが出来れば苦労はしない。二番以下であっても、彼らが与えてくれる快楽は、もはや薬物どくみたいに私を冒していた。
 けれども、何とかどこかで本気で、この状況を改善しなければ。こんなただれた男性関係、身を滅ぼすだけだって、いい加減に――。

「お待たせ~!」

 バタン! っと、私の正常な思考を、断ち切るみたく扉が開け閉めされた。

「あっ。お、おかえりなさ――」

「ほい」

 温かいカフェオレを手渡される。寒いのは苦手だから助かった。

「す、すみません。お昼も出してもらったのに」

 ペコペコと頭を下げる。もはや揺れる胸と谷間のアピールなど、私自身は気にしない感覚になってしまっていた。

「……休憩がてら、ボクの子供らの動画でも見る?」

 缶コーヒーをすすりながら、代理は携帯を取り出す。特に話題もないし、缶コーヒーももらった手前、断る気はなかった。
 携帯の画面へ向いて、二人して覗き込む。サッカーをしている男の子達の動画が再生される。

「へぇ。高校生です?」

 次々に動画や画像が流されていく。三人とも男の子みたいで、上から高校二年、中学一年、小学校五年らしい。

「うん。女の子が欲しくて嫁と頑張ってんけど、これがなかなか」

 小さく笑いながら眺める代理は、いわゆる父性というものを帯びているように思えた。ボリュームが上げられていく。

「まぁ、こればかりは天からの授かり、もの――」

 そっと笑いかけた時、息が急に喉につっかえた。

「――アッ、アッ、ん! あなたぁ!」

 ドクン
 さい、最初は意味がわからなかった。
 暗い寝室らしい画面内にて、中年の女性が、熊のような大男に背後からセックスを強いられている情景に見えた。女性は髪を振り乱し、汗だくで悲鳴のような金切り声をずっとあげていた。
 さ、撮影角度と室内の明度、何より突然の動画の切り替わりであったため、思考あたまが全く追っつけていなかった。け、けれども、男性の独特なしゃべり方と身体の大きさから、ひょっとして――。

「おらおら、どしたぁ。なにヘバっとんねん!」

 十六沢、代理? でも、語気や口調が全然違う。そ、それに、映像の女性は、まるでだけだった。挙げ句に軽々と持ち上げられつつ、垂直の挿入を強要され続ける。
 ドックン。
 ――オ、オナ禁が続く自分には、まさに目に猛毒であった。瞬きを忘れ、息すら止めて、目を離せないでいた私は――ジュン。

「あ、ぅ」

 し、しばらくしたら女性はグッタリした。けれど、男性は乱暴に男性器を引き抜き、仁王立ちしたまま、その逞しい腕でもって、女性を逆さまにしては、空中での一方的なクンニを行い始める。
 男性の背中は広背筋がこれでもかと隆起し、腰回りの筋肉も鉄みたいな硬さに見えた。そして、まるで汁物をすするように、女性の膣へ尖った口を突っ込んだかと思うと、勢いよく――。

「なぁ、新妻ちゃん」

 ビクッ。身体が跳ねて、背筋がピンとなる。目を見開く私は、何の弁明も口に出来なかった。横から覗き込んでくる代理の顔を、直視できない。

「……ご覧の通り、ボクと嫁のセックス動画や。のは謝るけどさぁ――」

 ドクン、ドクン。顔が熱くなる中、震える左腕を、震える右手で止めようと掴み持つ。

「何で一目見た瞬間から、嫌がらずに、食い入るように見てたん?」

 なにか、何か言い返さないといけないのに、頭が茹で上がっており、喉がカラカラで、言葉が喉の辺りでつっかえてしまう。

「ンア! アアアッ、イグゥ!」

「ワシがまだやのに三回もイクなや! まだまだ強姦まわすぞクソあまっ」

 ダッシュボードに置かれた携帯から、割れた音が響き続ける。その後について、音声だけの妄想そうぞうだけど、女性は――奥さんはなか出しされて、失神した風に思えた。
 ドッドッド。
 心臓が過剰なポンプの役割を果たす。AVアダルトビデオなんて、足下にも及ばないくらいの、ナマ映像に、身体が震える。

「若い頃はもう少し、嫁も耐えられてんけどなぁ」

 そう言って携帯をしまい、車を急発進させる。羞恥で何一つ発せられない私は、やたらと短いスカートから目線を動かせなかった。カラカラの喉を潤すために飲んだカフェオレは、やたらと甘く感じた。

「おっ。あれが新妻ちゃんの賃貸アパートかいな?」

 奇妙なほど明るい声が耳を抜ける中、専用の駐車スペースに車を止められる。代理はシートベルトを外し、大きな身体を寄せてくる。

「囲部長は遅くなっても構わへって言ってたし、せっかくやから、もう一杯せぇへん?」

 大きな顔が近づいてきたかと思うと、強い息を吹きかけられた。震える瞳を代理へ向けると、まるで熊が獲物を睨むみたく、胸の谷間を覗き見られていた――。
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