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一話 白き銀
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「幽霊?」
あくる日の昼下がり、家の軒先で天日干し中の白雲樹の樹皮の具合を確認していた時だった。
「そうなのよ先生。うちのコニが昨晩、二階の窓から見たって言って聞かないの」
柔らかな山風がそっと僕達の服を撫でる中、村民の女性陣らが、調合薬と食料の物々交換のために訪れていた。その際に真っ先に出た雑談で、ロームとメナリの母親もいた。
やや突拍子なその話題は、平和な山村において魅力的な世間話なだけな気配もあった。けど、コニが無意味に嘘を突くとも思えない。
――とは言え幽霊かぁ。彼の母親も首を捻る。
「夜にトイレへ起きた時、窓の外が変に明るかったらしいの。覗くと、月明かりに照らされたアスナロの枝に、鈍く輝くナニかがいたとかで――。泣きながら父母を起こしに来たから見に行ったけど、特に別に」
別の女性も腕を組む。
「そうさねぇ。魔物や魔獣の類ならまだわかるけど幽霊なんてねぇ……フィルム先生はどう思う?」
皆の視線が集まる。
「う~ん。この辺りの山間部には、棄てられた墓地も不浄な寺院なんかもありませんからね」
基本的に幽霊……正確には魔霊や不死族などの邪悪な存在は、悪しき起源やおぞましい召喚師、不浄な苗床を必要とするのが一般的だ。
例えば腐食人であれば、埋葬も浄化もされない遺体が放置され続ける必要があり、また鬼火なんかは高度な魔術でもって召喚されるなどが通例だ。不定迷宮は例外だけど、この辺りでは確認されていない。もっとも、山や森で死んだ魔物や獣の怨恨が具象化する、いわゆる流霊ということも無くはない、のか。
あとは――近隣の地勢的に確認が取れていない、村の北にある急峻な地形の白落谷はその限りではないくらいだ。
「(いずれにしても)――もし本当に悪霊の類なら、寺院から司教様を、あるいは冒険者ギルドへ依頼して、悪霊狩りを生業にする冒険者を手配してもらう必要があります」
とは言え、最寄りにある麓のカナンの町ですら、徒歩では一日かかるし護衛だって必要だ。伝書鷹もこの村では飼っていない上、そもそも祓える職業の人らが常在しているのかもわからない。
「(でももし、本当に魔霊がこの小さな山村に取り憑いたら?)――村長や他の人とも協議しましょう。広場にてお願いします」
……小一時間ほどかけて、コニへ聞き取りをしたり、大人達で話し合いも繰り返した。けど、あまり建設的な意見は得られなかった。
そうこうしている内に、日が傾き始める。村人の不安がシミみたく拡がる中、とかく真偽を確認しなければと、心配が先走った僕は思わず。
「今晩、見張を行います」
などと、口走ってしまった――。
「! さすがフィルム先生!」
「た、頼りになるよ」
「先生。いつもすみませんねぇ本当に」
や、やらかした。――昔、枕元母さんにで読んでもらった騎士物語の主人公じゃあるまいし。
「い、いえいえ。あ、あはは――」
輪をかけて自信が無かったのも、無理はなかった。調合薬の中には邪悪な存在やその場所を、浄清化する効能を持つものもあるにはあった。
けど、その特異な処方箋は寺院や聖騎士団などで管理されていることが多く、せいぜい冒険者ギルドの共有財産くらいだった。加えて、日輪草や聖蝶みたいな浄化系の素材が、この辺りには自生していない。
魔除けの塩はまだ一般的な方だけど、こんな山奥では塩だって貴重品だ――。
「(とにかく、父さんのレシピと、魔霊に関する本があれば少しでも読み込もう)で、では夜に広場の井戸の近くに警戒しています。何かあれば大声で叫んで知らせてください。ここにいない人達にも共有をお願いします」
皆が頷く中、村長が腕を組む。
「フィルム君。ワシも手伝おうか?」
「お、お気持ちだけ受け取っておきます」
* * *
双つ月は、夜の雲間から隠たり現れたりを繰り返しつつ、青と金の光の破片を、夜のルミオンの山地へ降り注いでいた。
「何事も無ければいいけど――」
青蚕の糸の刺繍が入った灰色の外套を羽織り、銀の短刀は腰元に、岩塩を塗り込んだナイフ三本を携帯して屈んでいた。使い古したランプは腰より周囲をボンヤリと光り、そうして照らされた切り札の小瓶を手に取る。
散光塵といういくらかの対魔霊の効能を持ち、外気に触れると発光する性質を持っていた。ただし、聖水みたく不浄な存在へ特効属性があるわけではないので、過度には頼れない。他の所持品というと、夜通しも想定しているため鹿の干し肉を二切、大葉に包んで懐にしまっているくらいだった。
井戸近くそのまま、月の光に誘われるみたく、頭上を見上げる。
ヒュウウゥ。
――今日に限っては、夜風が地表を舐めるみたく吹いていた。季節風だろうか? にしては湿気や重さを感じさせない。これは大陸側から吹いてくる地風に思えた。
「いい予感……はしないな」
僅かに震えだす左手を、右手で握り止める。それはもちろん、風の冷たさや闇夜による視界制限によってだけではなかった。
そもそも冒険者どころか、一般の成人男性と似たような戦闘能力の僕が――ハァ――魔術も異能も使えないのに、こんな無茶な役を買うなんて。
「けれども」
震えてもこの夜空の下にいる理由は、一つしか無かった。
もしも、父さんが生きていたなら、きっとこうやって、皆を助けようとしていただろうから。腕の立つ父さんなら、今回の騒動だって、きっと簡単に――。
「ふぅ、二十歳にもなっていつまで、父親の幻を、生き方を、追っているんだ僕は――」
「で、出たあぁ!」
静寂を裂く悲鳴の方こと、南側へ向きなおる。中年の男性の声は、おそらく石工屋のジョッドさんのだ。
土を蹴って家へと急ぐ。途中、何軒かの家の窓がおそるおそる小さく開けられて光が漏れこぼれる。心配そうに皆が顔を覗かせる中、刺草を踏み抜き、大きな納屋を曲がった先にて、息を飲む。
「――あ、れは?」
ジョッドさんのいる二階の窓からの景色は、山々の深奥へと続く暗く高い森のはずであった。その樫の一本の上にて、二色の月光を浴び、鈍い銀色にボオッと輝く、丸を少し崩したみたいな不思議な存在がいたのだ。
「ほ、本当に魔霊、なのか?」
わからない。魔素を感じられず、また当然ながら神聖性なんて高尚なものを持ち合わせていない僕には、遠目からではとても判断がつかない。
「あれだ! 誰かっ! 先生ぇ!」
張り詰めた叫び声が続き、遠回りに人も集まってくる。
ジョッドさんの大声が山へも響いたせいか、もしくは少なからず明かりを持ってくる人間に驚いてか、不思議な輝きは森の奥へ薄れ消えたように見えた。
僕は思わず駆け出していた。だって、もし今のどちらかの仮説で驚き逃げたのなら、魔霊ではない可能性がある。
連中は視力や聴力を持ち合わせていない存在が多い。集まった皆が、魔除けでも持ち合わせていたのならまだしも、聖職者でもない一般人を脅威と思うのは、考えにくい。
「(けどまだ断定できない)――家にいててください!」
聞こえたかはわからないけど村へ向かってそう叫びつつ、ランプをかざす。念の為にと散光塵を一摘み掴み握り、森の入り口にて撒く。
シュュュッ。
空気が鳴るみたいな音がして、ボワッと光り、十ヤード(※約九メートル)ほど先を一瞬だけ照らした。けど驚いた小鹿が一頭、森の奥へ跳ねただけだった。
ザッザッザ。
ランプを右へ左へ振りつつ、足下のスゲやカヤをかき分け、白藜を揺らして走る。
――スンスン。
これは獣臭? 嗅ぎ慣れない――いや、どこか、しかも最近に嗅いだことがある気もするけど、熱い頭では明確に思い出せない。
バキッ!
西洋桜の枯れ枝を踏み折った音で、一度とまる。村を後ろに置いてきた僕は、肩で息をしつつ頭上を見る。
樫の――あるいは椚の、多様な広葉樹の枝葉が、星空を遮り埋めていた。風でガサガサと鳴り振る様相は暗く不気味に映り、まるで遥か南方の腐ヶ沼に生えるという、食人樹を彷彿とさせた。
「ハァ、フゥ」
呼吸を整えつつ、再び散光塵の小瓶を取り出すも、別に魔霊を見つけた訳ではなかった。広範囲を照らし、異常が認められなければ村へと戻ろうと思っただけの事だった。
シュュュッ。
――そして、まさかそれが、目眩ましになるなんて、その時は思いもしていなかった。
「ギシャァァ!」
「へっ? うわっぁ!」
斜め前方の椣の樹冠に潜んでいた魔物の毒蜘蛛が、その紫色の頭部と胴体を震わせて奇声と共に現れる!
「こん、なところにっ。なんで!」
普通はもっと湿地帯や肥沃な森に生息するはずの毒蜘蛛が、こんな標高の高い乾燥しがちな山麓の森にぃ!
胴体が山羊くらいの大きさの毒蜘蛛は、視界を取り戻すと、奇怪に八本の脚を動かしつつ――。
「プシュゥ!」
粘つく黒い毒液を飛ばしてくる!
「わわわっ」
恥も外聞も投げ捨てて、無様に転げ避ける。その際に留め具が外れてしまい、銀の短刃以外の道具を山肌の上に散乱させてしまう。
「しまっ」
散光塵を撒いて逃げる算段をと思っていたけど、それも出来ない。威嚇と牽制のために銀の短刃を抜こうとするも。
「シュルル!」
! 膨らんだ臀部の突起を向けてきかと思いきや、灰色の糸らしいモノを飛ばし、当たってしまう。懐に入れた腕ごと固着されて、さらにランプまで落としてしまう!
「これは、マズ――!」
音もなく毒蜘蛛が地表へ飛び降り、その毒々しい牙と複眼でもって、にじり寄ってくる。
尻持ちをついたまま無様に後ろへ下がる――っと同時に、別の樹の枝葉が大きく揺れ動くのに、喉が震える。
「ま、まだ何かいるっ?」
次の瞬間、細い月光の糸を浴び、頭上にてぼんやりと銀色に輝くナニかを打見してしまった。
――お、終わった。もう碌に動けないのに、毒蜘蛛が頭上から垂れ下がってきて、さらに得体の知れない存在が上から近づいてくる。
……父さん、母さん。早いけど、もうすぐそっちへ逝くよ。ほんとはもっと色々と――。
「ギシャァァッ!」
「せめて一思いにっ」
目をつむって歯を食いしばる。昆虫独特の硬い脚の節が、服の上から僕の腰椎の辺りにいやらしく触れた時だった。
「――ウニャ?」
……?
まず毒蜘蛛が、次いで僕が、その気の抜けた声の方へと顔を向ける。倒れたランプの弱々しい光が地面の上にて、その姿を薄ぼんやりと示した。
――白に近しい銀色の体毛に包まれた半獣の、彼女? は僕より少し背があり、物憂げに腰を降ろしつつ、身体の毛繕いをしていた。
彼女と言ったのは――そ、その、上半身の前部分と股間の一部は薄毛かほぼ無毛だったためだ。――や、柔らかそうな乳房はほとんど丸見えで、こ、股間の大事な部分すら、み、見えそうだった、から。
ぜ、全体の身体つきは、人間の形状に近しいけど尻尾と三角耳があり、ホワホワの体毛に包まれていた。仕草や座り方は――王都の貴族や大商人らが飼うという、猫と呼ばれる動物に近しい印象を受けた。
「(って、それどころじゃ)――ぅ、あっと?」
「ギシュルル」
毒蜘蛛は僕の上で器用に回転し、銀毛の人型女性猫へと向きなおる。僕を奪われまいとしてか、あるいは敵と認識してか。
――にも関わらず危機感なしで、相変わらず鼻を鳴らしたり、綺麗そうな髪を手櫛ですいたり、変幻自在な尻尾を左右に振るだけだった。
「プシュゥ!」
まるで眼中にないのに腹を立てるみたく、毒蜘蛛が毒液を吐き飛ばす! 人型女性猫は爬虫類みたいな紋様の、その赤くて丸い瞳を向けると、一瞬で姿が消えた。
「ギギギ?」
「え? あっ」
いや、消えたわけではな無かった。匍匐(※地面に身を付けるくらいに姿勢を低くする)の動作が早すぎた上、身体がかなり柔軟であったため、消えたみたいに錯覚したのだった。
「ニャアァ」
僅かにその八重歯を見せて唸ると、姿勢もそのままに跳ねて――ブシャッ――え? 毒蜘蛛が、僕の上からいなくなってる?
「へっ? うわっ」
ドサッ。
長い脚の一本を切り落された毒蜘蛛は、退避とばかりに遠い樹の枝に糸を飛ばして距離を取る。慌てて身を起こす僕は、無事な方の手で銀の短刃を抜き取り、何とか糸を切断する。
スパッ――よしっ。
「(こんなことなら、虫除けや発火の調合薬を持ってくればよかった)ね、ねぇキミ!」
「ファ~。二ァ?」
毒蜘蛛を蹴散らしてくれた人型女性猫へ向き直るも、相変わらずあちこちに鼻を向けるなど、注意力散漫もいいところだった。
――けれども、その神々しいほどに美しい銀髪と銀毛、細く艶めかしい肉体のせいだろうか。まるで、森の隙間からか細く差し込む光でもって、月光浴を愉しむみたいな優美な印象をすら受けた。
「ギシュゥ――シュルル!」
暗澹たる森の闇の中から、一筋の糸が彼女を目掛けて放たれる! それは途中で漁をする網みたく広がった。
「危ないっ」
「フシャ」
知っていた――と、今度は柔かな身体を反ると、土を蹴って背後にあった太い樫の幹へと着地する。っと同時に、樹を蹴り飛び跳躍する姿は、さながら闇夜を裂く銀の矢みたいだった。
「ギギ?」
いくら潜伏が上手い毒蜘蛛でも、糸を飛ばしたせいで、位置が割れてしまったみたいだった。
シュパン――プシュッ。
暗闇にて、鋭利な何かが肉を切り裂き、液体みたいなものを噴き出す音が耳へと入り込む。その場を動けないでいた僕は、ようやくランプの取っ手を握り持ち、装備や道具を回収する。
「ニャァ」
! 欠伸まじりに鳴く彼女だけが、照明の範囲内に戻ってくる。体毛が汚れたのが気に食わないみたいで、靭やかに身体を伸ばしつつ、毛繕いを行う。
――に、にしてもなぜ。彼女は、僕を助けて?
「スンスン」
「へ? わわっ!」
四足歩行でゆったりと僕に近付いて来たのに驚き、再び尻もちをついてしまう。
間近で見るに、赤い瞳は紅玉みたいで、鼻筋は真っ直ぐで、唇は赤く瑞々しかった。全身の毛はやはり柔らかくフカフカに見えて、何よりも――か、形の良い乳房が――揺れに揺れて、先端の薄桃色の乳首が、そ、そのぅ。
そんな僕の動揺なんて気にも止めず、胸板に鼻を近付けて鳴らしてくる。彼女のフワフワな毛の一本一本が、僕の鼻先を官能的にくすぐる。
「い、一体どうし――あ!」
ま、まさかとは思うけど、干し肉の存在を思い出した僕は、包んでいる葉っぱごと慌てて取り出す。
彼女は大きな瞳をさらに丸くして、ジッと見つめる。
「た、食べたいのかい?」
言葉なんて通じるわけはなかったけど、耳や尻尾、体毛以外は人間な彼女に、つい口にしてしまう。
同時並行で肉を取り出して差し出す。彼女は干し肉と僕の顔を二往復した後、毒蜘蛛の討伐で汚れた爪と指を伸ばしてくる。掴み持つと、何回か匂いを嗅ぎ、一切れを口の中へと押し込んでいく。
「あの、助けてもらって本当にありがとう。僕はフィルム=イシュタ」
返事は無いと思ったけど、果たしてその通りだった。瞬く間に干し肉を食べ尽くした彼女へ、もう一枚を手渡す。
「あっ」
彼女の綺麗な肩に紫色の粘着物が付いているのに気付く。せめてものお礼にと、外套を脱ぎ、そっと拭き取る。他にも埃や土汚れ、返り血なんかを綺麗にしていく。マント越しでも柔らかで温かい、鈍く光る銀の体毛と柔肌に触れ、ドキドキしてしまう。
「ウニッ」
食べ終わった彼女はまだその場にいてくれてたので、出来るだけ綺麗にと、優しく拭う。目を閉じてくれる彼女を撫で擦ると、なぜか気持ちが昂ぶってしまう。
「うっ」
やがて、胸元についた汚れの直前で手が止まる。その大きいけど、形の良い乳房は、とても美しく蠱惑的だった。若い女性の裸なんてほぼ見たことの無い僕は、顔を赤くしたまま固まってしまう。
「ニャ? フニ」
手を止めた僕を不審に思ったのか、あるいはもう用済みとばかりに、彼女は立ち上がる――。
! めめ、目線の少し上に、こ、こ、股間がやってくる。い、陰毛は薄く柔らかそうで、フワフワの毛に覆われた腰は丸くて肉付きも良く……って、命の恩人を相手になんて失礼な視線を!
「ニャニッ」
シュ――頭上の樹の上へ一瞬で姿を消して行った。
まるで悪夢を銀色に塗りつぶされたみたく、僕の両目は未だに鈍く光る銀の残影を追っていた。
ガサガサ、っという音と共に我に返って目をやると、背の低い西洋躑躅の下にて、ハツカネズミが目を光らせていただけだった。
「――む、村へ。帰ろう」
未だに頭の中がグチャグチャな僕は、耳を赤くしたまま、やや前屈みで村へと足先を向ける。
胸の奥が摘ままれるみたいな感覚に戸惑いつつ、まるで夢から抜け出したみたいな頼りない足取りで、みんなが待つミブの村へと戻って行った。
あくる日の昼下がり、家の軒先で天日干し中の白雲樹の樹皮の具合を確認していた時だった。
「そうなのよ先生。うちのコニが昨晩、二階の窓から見たって言って聞かないの」
柔らかな山風がそっと僕達の服を撫でる中、村民の女性陣らが、調合薬と食料の物々交換のために訪れていた。その際に真っ先に出た雑談で、ロームとメナリの母親もいた。
やや突拍子なその話題は、平和な山村において魅力的な世間話なだけな気配もあった。けど、コニが無意味に嘘を突くとも思えない。
――とは言え幽霊かぁ。彼の母親も首を捻る。
「夜にトイレへ起きた時、窓の外が変に明るかったらしいの。覗くと、月明かりに照らされたアスナロの枝に、鈍く輝くナニかがいたとかで――。泣きながら父母を起こしに来たから見に行ったけど、特に別に」
別の女性も腕を組む。
「そうさねぇ。魔物や魔獣の類ならまだわかるけど幽霊なんてねぇ……フィルム先生はどう思う?」
皆の視線が集まる。
「う~ん。この辺りの山間部には、棄てられた墓地も不浄な寺院なんかもありませんからね」
基本的に幽霊……正確には魔霊や不死族などの邪悪な存在は、悪しき起源やおぞましい召喚師、不浄な苗床を必要とするのが一般的だ。
例えば腐食人であれば、埋葬も浄化もされない遺体が放置され続ける必要があり、また鬼火なんかは高度な魔術でもって召喚されるなどが通例だ。不定迷宮は例外だけど、この辺りでは確認されていない。もっとも、山や森で死んだ魔物や獣の怨恨が具象化する、いわゆる流霊ということも無くはない、のか。
あとは――近隣の地勢的に確認が取れていない、村の北にある急峻な地形の白落谷はその限りではないくらいだ。
「(いずれにしても)――もし本当に悪霊の類なら、寺院から司教様を、あるいは冒険者ギルドへ依頼して、悪霊狩りを生業にする冒険者を手配してもらう必要があります」
とは言え、最寄りにある麓のカナンの町ですら、徒歩では一日かかるし護衛だって必要だ。伝書鷹もこの村では飼っていない上、そもそも祓える職業の人らが常在しているのかもわからない。
「(でももし、本当に魔霊がこの小さな山村に取り憑いたら?)――村長や他の人とも協議しましょう。広場にてお願いします」
……小一時間ほどかけて、コニへ聞き取りをしたり、大人達で話し合いも繰り返した。けど、あまり建設的な意見は得られなかった。
そうこうしている内に、日が傾き始める。村人の不安がシミみたく拡がる中、とかく真偽を確認しなければと、心配が先走った僕は思わず。
「今晩、見張を行います」
などと、口走ってしまった――。
「! さすがフィルム先生!」
「た、頼りになるよ」
「先生。いつもすみませんねぇ本当に」
や、やらかした。――昔、枕元母さんにで読んでもらった騎士物語の主人公じゃあるまいし。
「い、いえいえ。あ、あはは――」
輪をかけて自信が無かったのも、無理はなかった。調合薬の中には邪悪な存在やその場所を、浄清化する効能を持つものもあるにはあった。
けど、その特異な処方箋は寺院や聖騎士団などで管理されていることが多く、せいぜい冒険者ギルドの共有財産くらいだった。加えて、日輪草や聖蝶みたいな浄化系の素材が、この辺りには自生していない。
魔除けの塩はまだ一般的な方だけど、こんな山奥では塩だって貴重品だ――。
「(とにかく、父さんのレシピと、魔霊に関する本があれば少しでも読み込もう)で、では夜に広場の井戸の近くに警戒しています。何かあれば大声で叫んで知らせてください。ここにいない人達にも共有をお願いします」
皆が頷く中、村長が腕を組む。
「フィルム君。ワシも手伝おうか?」
「お、お気持ちだけ受け取っておきます」
* * *
双つ月は、夜の雲間から隠たり現れたりを繰り返しつつ、青と金の光の破片を、夜のルミオンの山地へ降り注いでいた。
「何事も無ければいいけど――」
青蚕の糸の刺繍が入った灰色の外套を羽織り、銀の短刀は腰元に、岩塩を塗り込んだナイフ三本を携帯して屈んでいた。使い古したランプは腰より周囲をボンヤリと光り、そうして照らされた切り札の小瓶を手に取る。
散光塵といういくらかの対魔霊の効能を持ち、外気に触れると発光する性質を持っていた。ただし、聖水みたく不浄な存在へ特効属性があるわけではないので、過度には頼れない。他の所持品というと、夜通しも想定しているため鹿の干し肉を二切、大葉に包んで懐にしまっているくらいだった。
井戸近くそのまま、月の光に誘われるみたく、頭上を見上げる。
ヒュウウゥ。
――今日に限っては、夜風が地表を舐めるみたく吹いていた。季節風だろうか? にしては湿気や重さを感じさせない。これは大陸側から吹いてくる地風に思えた。
「いい予感……はしないな」
僅かに震えだす左手を、右手で握り止める。それはもちろん、風の冷たさや闇夜による視界制限によってだけではなかった。
そもそも冒険者どころか、一般の成人男性と似たような戦闘能力の僕が――ハァ――魔術も異能も使えないのに、こんな無茶な役を買うなんて。
「けれども」
震えてもこの夜空の下にいる理由は、一つしか無かった。
もしも、父さんが生きていたなら、きっとこうやって、皆を助けようとしていただろうから。腕の立つ父さんなら、今回の騒動だって、きっと簡単に――。
「ふぅ、二十歳にもなっていつまで、父親の幻を、生き方を、追っているんだ僕は――」
「で、出たあぁ!」
静寂を裂く悲鳴の方こと、南側へ向きなおる。中年の男性の声は、おそらく石工屋のジョッドさんのだ。
土を蹴って家へと急ぐ。途中、何軒かの家の窓がおそるおそる小さく開けられて光が漏れこぼれる。心配そうに皆が顔を覗かせる中、刺草を踏み抜き、大きな納屋を曲がった先にて、息を飲む。
「――あ、れは?」
ジョッドさんのいる二階の窓からの景色は、山々の深奥へと続く暗く高い森のはずであった。その樫の一本の上にて、二色の月光を浴び、鈍い銀色にボオッと輝く、丸を少し崩したみたいな不思議な存在がいたのだ。
「ほ、本当に魔霊、なのか?」
わからない。魔素を感じられず、また当然ながら神聖性なんて高尚なものを持ち合わせていない僕には、遠目からではとても判断がつかない。
「あれだ! 誰かっ! 先生ぇ!」
張り詰めた叫び声が続き、遠回りに人も集まってくる。
ジョッドさんの大声が山へも響いたせいか、もしくは少なからず明かりを持ってくる人間に驚いてか、不思議な輝きは森の奥へ薄れ消えたように見えた。
僕は思わず駆け出していた。だって、もし今のどちらかの仮説で驚き逃げたのなら、魔霊ではない可能性がある。
連中は視力や聴力を持ち合わせていない存在が多い。集まった皆が、魔除けでも持ち合わせていたのならまだしも、聖職者でもない一般人を脅威と思うのは、考えにくい。
「(けどまだ断定できない)――家にいててください!」
聞こえたかはわからないけど村へ向かってそう叫びつつ、ランプをかざす。念の為にと散光塵を一摘み掴み握り、森の入り口にて撒く。
シュュュッ。
空気が鳴るみたいな音がして、ボワッと光り、十ヤード(※約九メートル)ほど先を一瞬だけ照らした。けど驚いた小鹿が一頭、森の奥へ跳ねただけだった。
ザッザッザ。
ランプを右へ左へ振りつつ、足下のスゲやカヤをかき分け、白藜を揺らして走る。
――スンスン。
これは獣臭? 嗅ぎ慣れない――いや、どこか、しかも最近に嗅いだことがある気もするけど、熱い頭では明確に思い出せない。
バキッ!
西洋桜の枯れ枝を踏み折った音で、一度とまる。村を後ろに置いてきた僕は、肩で息をしつつ頭上を見る。
樫の――あるいは椚の、多様な広葉樹の枝葉が、星空を遮り埋めていた。風でガサガサと鳴り振る様相は暗く不気味に映り、まるで遥か南方の腐ヶ沼に生えるという、食人樹を彷彿とさせた。
「ハァ、フゥ」
呼吸を整えつつ、再び散光塵の小瓶を取り出すも、別に魔霊を見つけた訳ではなかった。広範囲を照らし、異常が認められなければ村へと戻ろうと思っただけの事だった。
シュュュッ。
――そして、まさかそれが、目眩ましになるなんて、その時は思いもしていなかった。
「ギシャァァ!」
「へっ? うわっぁ!」
斜め前方の椣の樹冠に潜んでいた魔物の毒蜘蛛が、その紫色の頭部と胴体を震わせて奇声と共に現れる!
「こん、なところにっ。なんで!」
普通はもっと湿地帯や肥沃な森に生息するはずの毒蜘蛛が、こんな標高の高い乾燥しがちな山麓の森にぃ!
胴体が山羊くらいの大きさの毒蜘蛛は、視界を取り戻すと、奇怪に八本の脚を動かしつつ――。
「プシュゥ!」
粘つく黒い毒液を飛ばしてくる!
「わわわっ」
恥も外聞も投げ捨てて、無様に転げ避ける。その際に留め具が外れてしまい、銀の短刃以外の道具を山肌の上に散乱させてしまう。
「しまっ」
散光塵を撒いて逃げる算段をと思っていたけど、それも出来ない。威嚇と牽制のために銀の短刃を抜こうとするも。
「シュルル!」
! 膨らんだ臀部の突起を向けてきかと思いきや、灰色の糸らしいモノを飛ばし、当たってしまう。懐に入れた腕ごと固着されて、さらにランプまで落としてしまう!
「これは、マズ――!」
音もなく毒蜘蛛が地表へ飛び降り、その毒々しい牙と複眼でもって、にじり寄ってくる。
尻持ちをついたまま無様に後ろへ下がる――っと同時に、別の樹の枝葉が大きく揺れ動くのに、喉が震える。
「ま、まだ何かいるっ?」
次の瞬間、細い月光の糸を浴び、頭上にてぼんやりと銀色に輝くナニかを打見してしまった。
――お、終わった。もう碌に動けないのに、毒蜘蛛が頭上から垂れ下がってきて、さらに得体の知れない存在が上から近づいてくる。
……父さん、母さん。早いけど、もうすぐそっちへ逝くよ。ほんとはもっと色々と――。
「ギシャァァッ!」
「せめて一思いにっ」
目をつむって歯を食いしばる。昆虫独特の硬い脚の節が、服の上から僕の腰椎の辺りにいやらしく触れた時だった。
「――ウニャ?」
……?
まず毒蜘蛛が、次いで僕が、その気の抜けた声の方へと顔を向ける。倒れたランプの弱々しい光が地面の上にて、その姿を薄ぼんやりと示した。
――白に近しい銀色の体毛に包まれた半獣の、彼女? は僕より少し背があり、物憂げに腰を降ろしつつ、身体の毛繕いをしていた。
彼女と言ったのは――そ、その、上半身の前部分と股間の一部は薄毛かほぼ無毛だったためだ。――や、柔らかそうな乳房はほとんど丸見えで、こ、股間の大事な部分すら、み、見えそうだった、から。
ぜ、全体の身体つきは、人間の形状に近しいけど尻尾と三角耳があり、ホワホワの体毛に包まれていた。仕草や座り方は――王都の貴族や大商人らが飼うという、猫と呼ばれる動物に近しい印象を受けた。
「(って、それどころじゃ)――ぅ、あっと?」
「ギシュルル」
毒蜘蛛は僕の上で器用に回転し、銀毛の人型女性猫へと向きなおる。僕を奪われまいとしてか、あるいは敵と認識してか。
――にも関わらず危機感なしで、相変わらず鼻を鳴らしたり、綺麗そうな髪を手櫛ですいたり、変幻自在な尻尾を左右に振るだけだった。
「プシュゥ!」
まるで眼中にないのに腹を立てるみたく、毒蜘蛛が毒液を吐き飛ばす! 人型女性猫は爬虫類みたいな紋様の、その赤くて丸い瞳を向けると、一瞬で姿が消えた。
「ギギギ?」
「え? あっ」
いや、消えたわけではな無かった。匍匐(※地面に身を付けるくらいに姿勢を低くする)の動作が早すぎた上、身体がかなり柔軟であったため、消えたみたいに錯覚したのだった。
「ニャアァ」
僅かにその八重歯を見せて唸ると、姿勢もそのままに跳ねて――ブシャッ――え? 毒蜘蛛が、僕の上からいなくなってる?
「へっ? うわっ」
ドサッ。
長い脚の一本を切り落された毒蜘蛛は、退避とばかりに遠い樹の枝に糸を飛ばして距離を取る。慌てて身を起こす僕は、無事な方の手で銀の短刃を抜き取り、何とか糸を切断する。
スパッ――よしっ。
「(こんなことなら、虫除けや発火の調合薬を持ってくればよかった)ね、ねぇキミ!」
「ファ~。二ァ?」
毒蜘蛛を蹴散らしてくれた人型女性猫へ向き直るも、相変わらずあちこちに鼻を向けるなど、注意力散漫もいいところだった。
――けれども、その神々しいほどに美しい銀髪と銀毛、細く艶めかしい肉体のせいだろうか。まるで、森の隙間からか細く差し込む光でもって、月光浴を愉しむみたいな優美な印象をすら受けた。
「ギシュゥ――シュルル!」
暗澹たる森の闇の中から、一筋の糸が彼女を目掛けて放たれる! それは途中で漁をする網みたく広がった。
「危ないっ」
「フシャ」
知っていた――と、今度は柔かな身体を反ると、土を蹴って背後にあった太い樫の幹へと着地する。っと同時に、樹を蹴り飛び跳躍する姿は、さながら闇夜を裂く銀の矢みたいだった。
「ギギ?」
いくら潜伏が上手い毒蜘蛛でも、糸を飛ばしたせいで、位置が割れてしまったみたいだった。
シュパン――プシュッ。
暗闇にて、鋭利な何かが肉を切り裂き、液体みたいなものを噴き出す音が耳へと入り込む。その場を動けないでいた僕は、ようやくランプの取っ手を握り持ち、装備や道具を回収する。
「ニャァ」
! 欠伸まじりに鳴く彼女だけが、照明の範囲内に戻ってくる。体毛が汚れたのが気に食わないみたいで、靭やかに身体を伸ばしつつ、毛繕いを行う。
――に、にしてもなぜ。彼女は、僕を助けて?
「スンスン」
「へ? わわっ!」
四足歩行でゆったりと僕に近付いて来たのに驚き、再び尻もちをついてしまう。
間近で見るに、赤い瞳は紅玉みたいで、鼻筋は真っ直ぐで、唇は赤く瑞々しかった。全身の毛はやはり柔らかくフカフカに見えて、何よりも――か、形の良い乳房が――揺れに揺れて、先端の薄桃色の乳首が、そ、そのぅ。
そんな僕の動揺なんて気にも止めず、胸板に鼻を近付けて鳴らしてくる。彼女のフワフワな毛の一本一本が、僕の鼻先を官能的にくすぐる。
「い、一体どうし――あ!」
ま、まさかとは思うけど、干し肉の存在を思い出した僕は、包んでいる葉っぱごと慌てて取り出す。
彼女は大きな瞳をさらに丸くして、ジッと見つめる。
「た、食べたいのかい?」
言葉なんて通じるわけはなかったけど、耳や尻尾、体毛以外は人間な彼女に、つい口にしてしまう。
同時並行で肉を取り出して差し出す。彼女は干し肉と僕の顔を二往復した後、毒蜘蛛の討伐で汚れた爪と指を伸ばしてくる。掴み持つと、何回か匂いを嗅ぎ、一切れを口の中へと押し込んでいく。
「あの、助けてもらって本当にありがとう。僕はフィルム=イシュタ」
返事は無いと思ったけど、果たしてその通りだった。瞬く間に干し肉を食べ尽くした彼女へ、もう一枚を手渡す。
「あっ」
彼女の綺麗な肩に紫色の粘着物が付いているのに気付く。せめてものお礼にと、外套を脱ぎ、そっと拭き取る。他にも埃や土汚れ、返り血なんかを綺麗にしていく。マント越しでも柔らかで温かい、鈍く光る銀の体毛と柔肌に触れ、ドキドキしてしまう。
「ウニッ」
食べ終わった彼女はまだその場にいてくれてたので、出来るだけ綺麗にと、優しく拭う。目を閉じてくれる彼女を撫で擦ると、なぜか気持ちが昂ぶってしまう。
「うっ」
やがて、胸元についた汚れの直前で手が止まる。その大きいけど、形の良い乳房は、とても美しく蠱惑的だった。若い女性の裸なんてほぼ見たことの無い僕は、顔を赤くしたまま固まってしまう。
「ニャ? フニ」
手を止めた僕を不審に思ったのか、あるいはもう用済みとばかりに、彼女は立ち上がる――。
! めめ、目線の少し上に、こ、こ、股間がやってくる。い、陰毛は薄く柔らかそうで、フワフワの毛に覆われた腰は丸くて肉付きも良く……って、命の恩人を相手になんて失礼な視線を!
「ニャニッ」
シュ――頭上の樹の上へ一瞬で姿を消して行った。
まるで悪夢を銀色に塗りつぶされたみたく、僕の両目は未だに鈍く光る銀の残影を追っていた。
ガサガサ、っという音と共に我に返って目をやると、背の低い西洋躑躅の下にて、ハツカネズミが目を光らせていただけだった。
「――む、村へ。帰ろう」
未だに頭の中がグチャグチャな僕は、耳を赤くしたまま、やや前屈みで村へと足先を向ける。
胸の奥が摘ままれるみたいな感覚に戸惑いつつ、まるで夢から抜け出したみたいな頼りない足取りで、みんなが待つミブの村へと戻って行った。
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