トラウマ性別とケガレタ学校

ニッチ

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一限目 普通狂室

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「こ、ここは?」

 灰色の汚れたパネルボードで敷き詰められた天井、赤と黒の塗装がボロボロな壁、紫色で傷だらけの塩ビシートが貼られた床。どこも不潔で不気味な建具で構成された空間が、向かって右側へ廊下みたいにずーっと延びており、左側はすぐ壁だった。
 視界もあまり良くなかった。壁に設置された窓は真っ暗で何も透過せず、さらにめ殺し(※開閉できない仕様)だった。天井には不規則な位置に、古びた茶色の水銀燈が並び、小さくまたたいていた。

「なんか、学校の廊下? っぽい」

 最初は病院かとも思ったけど、床にセンターラインが無いことや、ずっと向こうに教室のネームプレートらしきものがチラリと見えたから、そう思った。
 廊下の端をゆっくりと歩むと、短いスカートもつられて揺れた。物音は今のところ聞こえず、また建物の見取り図らしきものも発見できなかった。
 ――にしても、学校なら何校だろうか? 天井の高さの感じから、中学校か高校に思えた。やがて最初に見えたプレートの前までやってくる。

「3―2……普通、狂室きょうしつ?」

 赤い字でそう殴り書きされていた。廊下の先へ視線を戻すも、延々と続いているように見えた。

「(こんな見晴らしのいい廊下にずっと立っているのは嫌だし)――えと。失礼しま、す」

 カラガラガラ。
 引戸の取っ手に力を込めると、意外と建て付けは悪くなかったらしく、簡単に開いた。けれど一歩踏み出して中へ入ると、どういう仕組みか、扉がゆっくりと勝手に閉まっていった。

「――えっ?」

 小さく驚き開いた口を指で隠す。でもそれは、背後の扉が一人でに閉まったからでは無かった。
 教室内の様子が、普通のとかなり異なっていたからだった。……汚く、またカビ(苔?)があちこちをおおい、机や椅子も破損が激しく、かなり乱雑に並んでいた。窓の外はやはり真っ暗で、教室の背面ロッカーは色褪いろあせたブルーシートみたいなもので隠されていた。
 そして何より、教室前方の黒板に描かれた文字と絵のため、息を飲んだ。

「い、飯沼祐希を、みんなで犯そう?」

 中央にはデカデカと、床に座る制服姿の黒髪の女子が、何本もの太い【腕】によって身体中をまさぐられていた。その漫画風の絵は卑猥ひわいそのもので、女子はヨダレを垂らして白目をきそうな勢いだった。

「なに、これ?」

 嫌な汗がわきの下をつたう。――なんだろう、絵が変に上手いせいか、まるで何かを訴えてくれるみたいで不気味だった。
 カタ。
 びくっ。肩を揺らしつつ、再び教室の中心へ振り向く。

「――は?」

 今さらだけど、この空間に来てから疑問符クエスチョンマークばかりを口にしていた。
 いくつかの椅子の上から――のっそり――と【腕】が生えるみたく、机に乗っかってきた。太さや長さなどの大きさや、その毛深さより、中学生以上の男子生徒のモノに見えた。
 まるで出来の悪いB級ホラー映画の序盤みたいな光景に、息すら忘れそうだった。

「は、ははは。い、意味、わかんない」

 動揺するぼくなど気にもめず、【腕】は爪で机の上を引っ掻いたり、手を振ったり、握り拳を作って机を叩いたりしていた。
 ――ら、ラジコンか何か? けどそんな機械的な動作では無いし、普通の人間の腕みたく生き生きと動いていた。
 ……スッ。

「え?」

 突然、六本の【腕】がこちらへ向いてくる。ゆるく握ったかと思うと、ほぼ同時に親指だけを立てた。けど親指は天井ではなく、

「――!」

 ゾワワッ。背筋を氷柱つららで突かれたみたく痛みおびえる。慌てて振り返り、扉を開けようとするけど、なぜか微動だに動かない!
 ガダ、ガタガタッ。
 【腕】はふざけるみたくんだり這い進むみたくしながら、距離を確実に詰めてきたっ。き、気が狂いそうになりつつ、もう一方の扉を見ると、半開きになっていた。
 ぼくは当然、脇目も振らずに教室の壁際を走り抜けようとする!
 ガッ。

「ぅわっ!」

 一本の素早い【腕】が、細い足首を掴んでくる。かなりの握力で、バランスを崩して前のめりに倒れそうになってしまう。
 ――ググッ。

「ふ、ぇ?」

 けど今度は、すぐ近くの机の上に登っていた別の【腕】が、ぼくの手首を掴み支えてくれて、おかげで顔面強打をまぬがれた。

「へ? あっ?」

 体勢を崩しかけたぼくは何とか、冷たく汚い壁の柱へ背を預けて立ち尽くす。
 六本の【腕】達は、まるでおりみたくこちらを取り囲みつつ、手を開いては閉じたりを繰り返した。一応はパンティが見えない様に、脚をM字にして腰を降ろしつつ、混乱している頭を必死に動かせる。
 ――ひょ、ひょっとしたら、助けてくれる可能性も、あったりする?
 自分おんなも含めた何もかもが異常な世界なんだ。外見がおかしいのなら、内面は正気なんてことが、あるかもしれない。

「あ、あの~」

 正面の最も近い二つの【腕】へ、勇気を振り絞って声をかける、と。
 グニュ、モニュゥ。

「――ぇ?」

 それら二本が、ぼくの、胸部にある二つの出っ張りに、飛びつき揉んでくる。
 事態を理解できない中、周りの【腕】はまるで嘲笑あざわらうみたく、床や壁、机を手の平で叩いていた。

「ひっ!」

 肌が泡立つ中、すぐにでも引きがしたいけど、得たいの知れない二本の【腕】へ触れるのはためらわれた。けどその間、まるで味わうみたく掴み握りつつ、指の一本一本を、気持ち良さそうに乳房おっぱいへ沈み込ませていた。
 その異様な光景は、控えめに言って、吐き戻しそうだった。

「――めてぇ!」

 何とか奮い立ち、両手でそれぞれの手首を掴むも、まるで生きているみたいな温かさと感触に、こっちの体温が下がりそうだった。力を込めて取っ払おうとするけど、とても女の力では敵わない腕力で、一体どうしたら?
 モニュ、グニャ。

「ひ、ぐっ」

 圧倒的な握力で、けど加減しつつ胸を変形させられ続ける。気色悪い存在による気色悪い行為を繰り返されて、正気が目に見えてすり減っていった。

「こ、んのぉ」

 男だったならと勇気を振り絞り、最後の手段とばかりに口を開けて、右側の腕の指に噛み付こうとした時だった。
 ガボッ。

「ン? ンンンッ!」

 !? さ、三本目の【腕】が、その指先を鉛筆の先みたく揃えたかと思うと、開いた口の中に突っ込んで来た! 次の瞬間、指が口内で花みたく開いたかと思いきや、舌や内頬を撫でたり突っついたりしてくる。

「(気持ち、悪過ぎて、吐きそ)ぉ、ぇ!」

 ――プチン、プチン。
 こ、こんなキ●ガイな状況下で、さらに目を疑った。四本目の【腕】が、まるで隙を突いたみたいに、制服と上着ブラウスび付き、器用にボタンを外していく。五秒と経たず、胸の谷間やヘソにヒンヤリとした空気が流れ込み出す。
 さらにさらに、五本目が背後に回ったかと思うと制服うわぎを引っ張り脱がし――カチッ――とブラの留具ホックを外してくる!

「モ、エテ。ヤ、メデェ!」

 当然とばかりに、正面の二本の【腕】が、ブラを掴み投げる。ぷるん――馴染みのない、大きいけど形の良い乳房オッパイが、ピンク色の震える乳首と共に、【腕】達の前にさらされるっ。

「(キモいキモいキモい!)メテ、ンメテ!」

 ガボッ。
 ――よ、ようやく口から【腕】が抜かれるも、ヨダレを乳房の上へ垂らしながら絶叫を続ける。けど、まるで意味をなさなかったみたいだった。
 向かって右側の【腕】は生オッパイへ跳び付いた後、人差し指と中指の第二関節でもって、ち、乳首をグニグニと挟んでくる。
 軽い痛みと気色悪いくすぐったさに、涙腺が熱くなる。

「ぃや、め――ンンッ!」

 こ、今度は左側の【腕】が、まるで音量調節のツマミみたく、親指と人差し指でつまみイジってくる。
 半端な技巧テクニックは、まるでぼくへの愛撫あいぶみたく錯覚させて、身体中の汗腺から汗が噴き出る。身動きがとれないなら、せめてこの地獄絵図から視線だけでもそらそうと、首を回すそうとすると――。
 ガ、ググッ。

「ぅ、そ?」

 六本目さいごの【腕】に頭を掴まれると、下を向く様に押さえつけられる。
 と、当然ながら視界には――得体の知れない両【腕】が、見せびらかすみたく、二つの乳首とオッパイを、爪先で、指の腹で、あるいは関節でいじり回すという、目眩めまいのする屈辱的な情景が繰り広げられた。

「――めて。もぅやめてよぉ」

 なに、何なのこの悪夢みたいな状況は。意味、意味わかんないよ!
 ――だけれども、目から流れ出る涙は女ので、口からこぼれて耳へ入る悲鳴も女で、つまりは信じられないことにぼくのそのものだった。
 悲しみのむちでぶたれる様子をよろこぶみたく、他の【腕】も、短いスカートの中に入って太ももなんかを揉んだりなぞったりしてくる。こんな地獄みたいなこんな状態が、永遠に続くのかと思った時だった。

「んんっ」

 変、な声が口からこぼれた。こんな狂気じみた行為をされているのだから、そりゃ、妙な声も漏れ出るだろうけど?

「なん、なの?」

 さっきからたまに発せられる、あまり覚えのない奇妙で鋭敏えいびんな電気的感覚へ、恐怖に似た戸惑いを覚える。なぜかずっと胸が熱くなっていて、恐る恐る目を、向けてしまう。
 ピンッ。
 ……胸に張り付く二本の【腕】が、を、コリコリと指でこねくり回している状況が目に飛び込んでくる。

「は? えっ? ――んあっ!」

 ピリ、ピリッ。
 な、に? 今の、高い声と、おぞましい電気的な刺激。弱かったけど、確実に乳首から、放たれ、て?
 ってか何で乳首が、こんな、硬いの? 服を脱がされて寒いから? けど、そこまでは冷えていないと思うだけでなく、なぜか本能的な恐怖すら覚えた。

「(き、きっと刺激が続いたとか、物理的な、要因だから)――もぅ、やめ……ひん!」

 今度は汚い爪先を、にゅ、乳頭に刺し込もうとする。もちろん痛いけど、それだけじゃなくて、なんか、熱くて、不潔なしびれみたい、な、ナニか、が。

「ハァ、はぁ、ひぃん」

 いじられ続けるオッパイがジンジンと発熱してきて、そのうえ股間の内側が熱くなるという、意味不明な状態へおちいっていく。
 なのに――耳には自分おんなのこの弱々しいあえぎ声? が響き続け、全身が弛緩しかんしてイッタ。よだれは雫となって、どういうわけか、あれだけ気味悪かった【腕】への嫌悪感が、薄れてきた時だった。
 バシン!

「ふぇ?」

 突然、他の【腕】が、オッパイをずっと触っていた二本の【腕】をはたきだす。
 すると、あれほど強固に引っ付いていた【腕】がオッパイを放して、やり返すみたくグーを作っては殴り返し始める。
 ゴン、ガン、パン!
 何故か、ずっとオッパイをいじめ続けた二つの【腕】が、寄ってたかって袋叩きに合う。まるで、美味しい目にあっていたのを、ひがむみたく――。

「(とに、かく)いま、今の、内に」

 乳首が見え隠れする胸を自分の腕で抑え付けて、隠しつつ揺れを軽減する。さらに笑うひざに無理を言って、何とかと後ろ側の扉へ辿り着く――。

「なん、なの。ここ、は? おかし、すぎる」

 答えなどあるわけなく。打ちひしがれる足でもって、ヨロヨロと教室と廊下の境界をまたぐ。早くも心神喪失の状態にある中、けど絶望の校舎探索は、始まったばかりだった――。
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