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三限目 体イク館
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トイレから出ると、廊下の構造がまた変わっていた。目の前には赤く錆びた鉄扉があり、向かって右は行き止まりで、左奥には廊下が延々と続いていた。
――そんな異様な光景にも、今までほど心が動かなくなっていた。
「うっ、ぃ。なん、で。こんな、目に、私、がっ」
言い訳なんかじゃない。男子だろうが女子だろうが、こんな異常な暴力に打ち負かされたら、惨に震えるに決まってるよ。
股間にへばりつく濡れたパンティの原因が小便と、汗と、体液だなんて、恥の上塗りもいいところだ。その上さぁ、スカートまで握り持ち上げているんだから、もう本当に最低最悪!
――何よりも、下腹部の奥がまだ変にジンジンしている事実が、私の自尊心へ唾を吐きつつ、遊ぶみたく蝕んでいた。
「ハァ、うぅ」
それでも、立ち止まるのが一番危険だと、歯を食いしばり心に鞭打って探索を進める。
とりあえず正面の大きな鉄扉を調べるべきだろうか? 節々が腐食しており、よくわからない赤茶色のゼリー状の何かが、あちこちに付着していた。
ダメ元で、嫌がる右手で冷たいドアノブを握りしめ、力を込める。
ガチャ――ンギギギ。
重っ。けど辛うじて開閉でき、さらに体当りするみたく肩口を当てて踏み込む。女子の非力さは何度も味わわされたけど、それでも全体重を掛ける。
何とか隙間を作れて、さらに広げすべり込む!
ガッチャン。
「ハァ、ハァ――そ、と?」
渡り廊下へと繋がっていたらしく、外に出られたみたいだった。けど空は気味の悪い紫色で、太陽も月も星も見えない異様な景色だった。また、手摺も落下防止の柵もなく、左右には真っ暗な奈落が見えた。背後の扉は岩のように硬く見えて、二度と動かせそうな気配は無かった。
濡れた股を小幅で動かしつつも、背面の校舎へ振り返る。見える範囲でだけど、壁は赤や黒、灰色がかったマーブル上の色の仕上げ材で埋められていて、窓は真っ暗だった。
ヒュウゥ~。
生温い、わずかに異臭を含んだ風に、身体を触られつつ、渡り廊下を歩き終える。目の前にはボロボロのコンクリの階段と、建物が間近に迫る。
「これって――」
体育館、だよね? 庇の外の位置より見上げると、蒲鉾型の屋根が見え、大きさ的にもそう思えた。
階段を上がった先には、再び鈍重そうな薄緑で鉄製の両開きの引戸があった。その上には、体イク館? と斜めに傾いた、黄ばんだプレートが貼り付けられていた。
「(ここにいても仕方ないし)うんっ、しょ」
スカートの裾から手を離して取っ手を握る。濡れたパンティにスカートが張り付いて、とても気持ち悪かった。
ガガ、ガガガガッ。
まるで嫌がらせみたく戸車が何度も引っ掛かるけど、何とか片側の扉を開ける。警戒しつつも薄暗い中へ足を踏み入れると、明滅する二本の電灯の下でキョロキョロと顔を動かす。
「ロッカーばっかり。更衣室を経由して体育館へつながってる?」
縦長のよく見かけるグレーのロッカーが三十台ほど壁みたく敷き詰められていた。背後で扉が勝手に閉まるのにはもう動じず、右腕で揺れる胸を固定し、左手でスカートを再びたくし上げて周囲を調べる。
大半のロッカーの扉が歪んだり凹んだりしており、カビや錆、よくわからない白っぽい汚れみたいなのが付着していた。唯一、事情が違いそうな部屋の中央にあったロッカーの真ん前に立つ――けれども。
「また、これぇ?」
疲れた私の顔が曇るのは当たり前だった。何かと言うと、白のマジックペンか何かで――。
『お前のスケベな身体にぴったり(笑)』
『早く生着替えしろよ牛乳女子ちゃん!』
『変態ドMエロ女子用のロッカー』
その他にも、卑猥な絵や記号、罵詈雑言がひっきりなしに書いてあった。
「――馬鹿の一つ覚えみたい」
ようやく悪態がつけたかと思うと、手は悔しさで握りこぶしをギュッと作っていた。
でも察するに、中には新しい衣服でも入っているのだろうか? 確かにこの制服が、もう着られない状態でもあることも、事実だった。
「……っ」
出来るだけ距離を取りつつ、腕を伸ばして、恐る恐る開ける。
――カチャ。
目の高さには扉内側に取り付けられた小さな鏡だけだった。やや拍子抜けとばかりに視線を下げると。
「こ、れって?」
綺麗にたたまれている薄い上下の服へ手を伸ばす。最初こそ意味がわからなかったが、何かを理解した瞬間、思わず身をよじってしまう。こ、これを着るの? へ、でも――えっ?
ひたすら葛藤する中、一つだけ言えることは、濡れたパンティが股間へ与える感触が、ただただ気持ち悪かった。
* * *
――シュル。
そしてとうとう、着替えを終えてしまった。
「ほんと、意味わかんない」
ロッカー内側の小さな鏡に、全身が映り、細い眉を下げる。
――白の半袖のトップスは袖口のみ赤く、何より機能性を重視してか密着し、上半身のボディラインが強調されてしまった。しかもノーブラのため胸の中央の二か所が、ツンと角みたく立っているのが、変態すぎる。
「けど、それすらマシなくらいに――」
これ以上に問題なのは下半身だった。
ソレは赤色のツルツルした化学繊維で出来ていて、ほぼ股間と脚の付け根のみにフィットし、ハッキリ言って下着みたいな見た目だった。毛一本すら生えていない生足は、羞恥という鞭に打たれ、柔らかに震わせた。
男だった時の記憶なんだろうけど、見聞きしたことがあった。確かブルマ? とか言われる、実際に昔の日本で、女子児童や学生の体育着として使われていたものだ。実際に穿いて思うけど、日本人の教育関係者は頭がおかしかったのだろうか?
いや、それよりもさらに食い込み気味で、お尻の肉の三分の一くらいが露出する、より卑猥な仕様に思えた。まださっきの汚れた制服の方がマシだったかもとすら、後悔してしまうほどに。
「も、もういい。い、行こう」
相変わらず揺れる胸を左手で固定しつつ、右手で股間付近を(一応)隠し、逃げるみたく奥の扉を開けて出る。
ガッ、チャン。
――天井にある小さな鐘楼みたいな照明が、たった一つの光源だった。どうも自分は体育館の後方付近に立っているらしく、暗い館内を全体的に見渡す。
バスケットゴールは壊れ落ちていて、床のセンターラインもぐちゃぐちゃだった。綿が飛び出ている薄汚れたマットが、ワックスの輝きを失った床の上に乱雑に置かれており、異臭がした。
出入り口の扉は他に二つあるけど、両方ともどんな力が加わったのかわからない様な、ひしゃげ方で素人目にも開きそうになかった。マットを踏み進みつつ、正面奥のステージの方を調べるため、目線を移すと――。
「ひっ!」
し、心臓が口から出そうになる。もちろん比喩ではあるけど。だ、だって、暗い照明の下、め、め、目がマットの上に落ちていたのだから。
「どう、なって」
人間の【目】と思しきソレを、恐る恐る眺めていると、信じられないことに瞬きもすれば、視線をこっちへ向けてくる。さっきの【腕】や【足】と同じ怪異なのだろうか?
「! ひえっ」
い、いつの間にか股下にも【目】が、まるで生え出たみたく出現し、しかも何やらニヤケるみたいに細めている。踏みつけようとも思ったけど、怖く気味悪くて、ステージの上へ登り逃げた。
「ほんと、おかしい! 狂ってるっ」
やがて身体中に、皮膚どころか体操着すら貫通して、文字通り視線が突き刺さるみたいな、妙な感覚が増してくる。確かに女の人は、肌で視線を感じやすいとか言うけど、これは明らかに違うと――。
「ひ、あっ」
音もなく壁や床、そして空中に無数の【目】が出現し始め、こちらを凝視してくる。直接は何もしては来ないけど、この熱線みたいな熱い目線は、一体?
バン。
「! まぶしぃ」
一瞬、視界が白く塗り潰されて目をつむる。いきなりステージ上に強烈なスポットライトが当たったみたいだった。こんな恥ずかしい格好を、これでもかと浮き上がらせるみたいな演出は、まるで【目】の見せ物みたいで、恥ずかしくてドキドキしてしまう。
何十個という【目】が食い入るみたく私を見つめてくる。まるで何かを、期待するかの様に。
「い、いい加減にし――て?」
え? 何十という目から視線を浴び続けてしまったからか、頭と身体の奥が不可思議に熱くなってくる。
だらん、っと胸を持っていた左腕が垂れ下がる。すると、乳首が浮く二カ所へ視線が突き刺さり――ンンッ――え?
「な、に?」
ドキ、ドク、ドキッ。
どう、してか、心臓が早鐘を鳴らし始める。今までの恐怖や緊張によるストレス由来ではなく、明らかに高揚感に近い興奮だった。まるで、そう、【目】に注目されることで、失われた自信を取り戻しているみたいだった。もっと言えば、誰もが求める承認欲求が満たされていく、みたいな。
今までの怪異とは毛色が違う、そう思考が固まりかけた時だった。
モニュ。
「んあっ! ――え? 私は、ナニ、を?」
内股になりつつ、注目を浴びる乳房を、両手で揉みしだいてしまっていた。
! す、すると明らかに【目】からの視線が強まり、胸辺りが――ひゃん――あつ、熱くなっちゃう。
ドクン、ドクン。
「(なに、これ。まるでみんなに注目されて、嬉しいみたいなこの感覚)だ、騙されちゃ、ダメ、ぇ――ぅあん!」
も、元男として、あり得ないと自分に言い聞かせる。けど、そんな記憶は曖昧で、身体が女である以上、くぅっ。
そんなに触れてもいない乳首が、ツンと硬くなってきて、しかも言う事を聞かない人差し指が、爪先で軽く引っ掻いてしまう。
ピリリッ。
「んあっ!」
嬌声が、臭くて荒廃した、不浄な体育館に響き渡る。そんな中、光で浮き彫りにされつつ、思考がセメントみたく固まっていき、やがてペタンとステージへお尻を着けてしまう。
M字に開いた脚の頂点こと、ブルマに視線が注がれて、脚の力が、抜けちゃう?
「み、見ないでぇ」
そういう私の声は、甘ったるかった。【目】で視姦されるつど、心臓が高鳴り、もっと見て欲しくて、さらにエッチな吐息をたくさん吐いちゃう。
一方、【目】の下僕と成り下がった指はオッパイを離れて、注目高まるブルマの中央部分に触れてしまう。ソコは一番の熱源で、きっと【目】が最も弄って欲しい場所の一つのはず。
「(だめぇ、もうほんとヤバい)――あぁん!」
中指の爪先で濡れ始めた中央をなぞると、ビリリっと電気が放たれて頭と下腹部、乳首を桃色に染め上げられてしまう。しかもノーパンだから、刺激がダイレクトで、けどブルマの人工的な質感が、ちょっと癖になりそう。
そしてステージ上において、【目】と共に自慰する一体感は、まるで自分が主役になっているアイドルショーみたいな錯覚すら引き起こした。――で、でも、これ以上はほんとに、オカシクなっちゃう。
か、欠片の理性でもって、股間から指を引き離して、乳首で我慢してもらおうと思った時だった。
「「……」」
物言わぬ【目】達のいくつかが、視線を外しだす。
「え? あっ、え?」
すると、例えようもない不思議な喪失感が、胸の内側にてじわーっと広がっていく。まるで火が消えたみたく寂しく、お祭りの終わりの様な、世界から色が消えたみたいな、耐え難い感覚だった。
「ま、待って!」
慌てて、股間の――ま、マン筋を指で触るも、焦って力加減を誤ってしまう。
グヌニッ。
「ひんあっ!」
反り返り、上半身が体操着にピッタリと引っ付く。乳房の大きさも形も、硬化した乳首も、丸わかりになってしまう。
「「!」」
――でも、でも何とか視線を取り戻せた私は、何故かとても高揚し、そして同じぐらいに安心してしまう。
もう【目】からの注目を外されないよう、半開きの口からトロンとした口調で。
「ぬ、濡れてきちゃってるよぉ」
アピールするみたくなぞる股間の中央が、愛液で色が変わっていた。いくつかの【目】が接近して来るたび、文字通り目力が入るつど、心のどこかがいやらしく満たされて、熱く惚けた。
SNSや動画配信者の女の子が、過激な格好やパフォーマンスをしちゃうのも、こんな感覚なんだろうか?
グニャ、グニュ。
指先にて、柔らかで温かく、また湿った小陰唇をブルマの上から苛め続ける。し、痺れるみたいな感覚が股間から発せられて、それを凝視されていると思うと、下腹部に火がくべられたみたく燃えてきちゃた。
……【腕】や【足】にされた時は、目を背けていたけど、もう身体と心に刻まれてしまったんだ。女の子の身体って、こんなにキモチイイ、ってことを。
ブルマの沁みが広がり、指先まで濡れてきちゃった。【目】は今までの怪異と違って乱暴してこないから、そういう意味でも無警戒になっているのかな。
「ふぁ、んふぅ」
もう完全に頭も股間も蕩けて、公開自慰を魅せ続ける。たくさんの視線が、快感に歪む私の顔と、ピン勃ちの乳首、何よりジンジンのクチュクチュな股間に、突き刺さりまくる。
そのつど、まるで自分が喝采を受けているみたく満悦してしまう。虚栄心が満たされるつど、卑猥に臭う液体と気体と声が、私から発せられ続けた。
こんな世界で、幸せを感じられる、なんてぇ。
「「……」」
あ、れ? ど、どうして? またいくつかの【目】が別の場所へ向き出す。
「(変化が乏しいから?)待、って」
すがるみたいな情けない声をこぼす中、ニヤニヤと嘲笑う【目】へ。
「――こ、これなら、どぉ?」
四つん這いになり――プリン――っと丸いお尻を下品に振り向ける。熱いくらいのライトに照らされる中、舌なめずりをしつつ、濃く濡れたお尻でもって、雄を誘う雌みたくゆったりと左右へ揺らす。
「「!」」
んあっ。――た、たくさんの【目】が目蓋を持ち上げて、熱視線を注いでくれる。安心を取り戻せて、ある胸を撫で下ろす。
グニャリ。
乳房と顔を汚れた舞台へ押し付ける。すると偶然、体操着のお腹の隙間から生乳が見えるポジションを作れた。さらに右手でマン筋をなぞり、左手の指を口に出し入れして、媚びるみたいな視線を、お尻付近の【目】へと逆送りする。
「(もっと私を見て、視線を注いでっ)目で犯してぇ」
【目】の中には、まるで娼婦を見下すみたいな、あるいはもっと汚い存在を卑下するみたいなのもあった。けど、瞬きもせずに食い入るみたいな視線を送り続けるということは、見たいからに他ならないと、より実感できた。
ゾワゾワ、っとした快感が、皮膚の下で火花みたく散り、下腹部が火事みたくなってきちゃう。
【目】からもっと視姦されたいと、気が付けば指先の第一関節の半分くらいを、ブルマごとに膣口へ押し込んでいた。いまさら痛みに気付くけど、それを覆い尽くす快感に、四つん這いすら出来なくなりそうだった。
「お、お腹が、アツイよぉ」
涎でも床を汚しつつ、指は痒い部分を引っかくみたく、びちゃびちゃなブルマの中央に爪を立て続けた。雌便所の最後みたく、股間の内側でナニかが膨張してイクみたいな感覚に、意識が引っ張り溶かされる。
一つの【目】が、まさに私の目の前に来た時だった。ソレはただただこう訴えていた。
――体操着な姿で、こんなゴミ溜まりより酷い場所にて、怪異に見下されて、自慰に耽って、快楽の海に沈むお前こそ、飯沼祐希そのもの――なんだって。
そう読み取った瞬間だった。
「! いはん。ひぃん!」
羞恥が全て快楽に裏返ったみたいな卑猥な衝撃に、ビリビリと全身が打ち震える。快楽が筋張ったみたいな強烈な感覚に、意識を失いそうになった。
「――はっ、ハッ、ハァ?」
最初はナニが起こったか、サッパリだった。言えるのは、乳首が過去一くらいに勃起してて、身体中が桃色に煮え、ブルマの前半分はお漏らしたみたくグショ濡れだった。
絶頂の余韻に浸る中――【目】がいつの間にか消えていた。私は四つん這いの情けなく淫らな姿勢のまま、ただ動けないままでいた。
「……ァ」
頭へ霜が急に降りたみたく、罪悪感という冷気が神経という神経を凍らせていく。
――今回は、もう言い訳できない。怪異を前に、自分から進んで自慰を見せビラかせてイッタのだから。
そして、何より、気持ち良かった。信じられないくらいに。相手が触ってこなくても、女の子の身体はここまで快感漬けになれることを、心が壊れるくらいに思い知らされた。
……いや、むしろ、男から女になった自分だからこそ、男の感覚と女の肉体で、二重の快感を得られた? けれどもその言い方もどこか違和感がある気が。
「私は、ボク、は――?」
いつの間にかライトが消えていたステージの上は、少し冷えるくらいだった。愛液に塗れたブルマは、生臭い臭いをプンプンと立ち昇らせ、やがて体温を奪うみたく吸熱していった。
――そんな異様な光景にも、今までほど心が動かなくなっていた。
「うっ、ぃ。なん、で。こんな、目に、私、がっ」
言い訳なんかじゃない。男子だろうが女子だろうが、こんな異常な暴力に打ち負かされたら、惨に震えるに決まってるよ。
股間にへばりつく濡れたパンティの原因が小便と、汗と、体液だなんて、恥の上塗りもいいところだ。その上さぁ、スカートまで握り持ち上げているんだから、もう本当に最低最悪!
――何よりも、下腹部の奥がまだ変にジンジンしている事実が、私の自尊心へ唾を吐きつつ、遊ぶみたく蝕んでいた。
「ハァ、うぅ」
それでも、立ち止まるのが一番危険だと、歯を食いしばり心に鞭打って探索を進める。
とりあえず正面の大きな鉄扉を調べるべきだろうか? 節々が腐食しており、よくわからない赤茶色のゼリー状の何かが、あちこちに付着していた。
ダメ元で、嫌がる右手で冷たいドアノブを握りしめ、力を込める。
ガチャ――ンギギギ。
重っ。けど辛うじて開閉でき、さらに体当りするみたく肩口を当てて踏み込む。女子の非力さは何度も味わわされたけど、それでも全体重を掛ける。
何とか隙間を作れて、さらに広げすべり込む!
ガッチャン。
「ハァ、ハァ――そ、と?」
渡り廊下へと繋がっていたらしく、外に出られたみたいだった。けど空は気味の悪い紫色で、太陽も月も星も見えない異様な景色だった。また、手摺も落下防止の柵もなく、左右には真っ暗な奈落が見えた。背後の扉は岩のように硬く見えて、二度と動かせそうな気配は無かった。
濡れた股を小幅で動かしつつも、背面の校舎へ振り返る。見える範囲でだけど、壁は赤や黒、灰色がかったマーブル上の色の仕上げ材で埋められていて、窓は真っ暗だった。
ヒュウゥ~。
生温い、わずかに異臭を含んだ風に、身体を触られつつ、渡り廊下を歩き終える。目の前にはボロボロのコンクリの階段と、建物が間近に迫る。
「これって――」
体育館、だよね? 庇の外の位置より見上げると、蒲鉾型の屋根が見え、大きさ的にもそう思えた。
階段を上がった先には、再び鈍重そうな薄緑で鉄製の両開きの引戸があった。その上には、体イク館? と斜めに傾いた、黄ばんだプレートが貼り付けられていた。
「(ここにいても仕方ないし)うんっ、しょ」
スカートの裾から手を離して取っ手を握る。濡れたパンティにスカートが張り付いて、とても気持ち悪かった。
ガガ、ガガガガッ。
まるで嫌がらせみたく戸車が何度も引っ掛かるけど、何とか片側の扉を開ける。警戒しつつも薄暗い中へ足を踏み入れると、明滅する二本の電灯の下でキョロキョロと顔を動かす。
「ロッカーばっかり。更衣室を経由して体育館へつながってる?」
縦長のよく見かけるグレーのロッカーが三十台ほど壁みたく敷き詰められていた。背後で扉が勝手に閉まるのにはもう動じず、右腕で揺れる胸を固定し、左手でスカートを再びたくし上げて周囲を調べる。
大半のロッカーの扉が歪んだり凹んだりしており、カビや錆、よくわからない白っぽい汚れみたいなのが付着していた。唯一、事情が違いそうな部屋の中央にあったロッカーの真ん前に立つ――けれども。
「また、これぇ?」
疲れた私の顔が曇るのは当たり前だった。何かと言うと、白のマジックペンか何かで――。
『お前のスケベな身体にぴったり(笑)』
『早く生着替えしろよ牛乳女子ちゃん!』
『変態ドMエロ女子用のロッカー』
その他にも、卑猥な絵や記号、罵詈雑言がひっきりなしに書いてあった。
「――馬鹿の一つ覚えみたい」
ようやく悪態がつけたかと思うと、手は悔しさで握りこぶしをギュッと作っていた。
でも察するに、中には新しい衣服でも入っているのだろうか? 確かにこの制服が、もう着られない状態でもあることも、事実だった。
「……っ」
出来るだけ距離を取りつつ、腕を伸ばして、恐る恐る開ける。
――カチャ。
目の高さには扉内側に取り付けられた小さな鏡だけだった。やや拍子抜けとばかりに視線を下げると。
「こ、れって?」
綺麗にたたまれている薄い上下の服へ手を伸ばす。最初こそ意味がわからなかったが、何かを理解した瞬間、思わず身をよじってしまう。こ、これを着るの? へ、でも――えっ?
ひたすら葛藤する中、一つだけ言えることは、濡れたパンティが股間へ与える感触が、ただただ気持ち悪かった。
* * *
――シュル。
そしてとうとう、着替えを終えてしまった。
「ほんと、意味わかんない」
ロッカー内側の小さな鏡に、全身が映り、細い眉を下げる。
――白の半袖のトップスは袖口のみ赤く、何より機能性を重視してか密着し、上半身のボディラインが強調されてしまった。しかもノーブラのため胸の中央の二か所が、ツンと角みたく立っているのが、変態すぎる。
「けど、それすらマシなくらいに――」
これ以上に問題なのは下半身だった。
ソレは赤色のツルツルした化学繊維で出来ていて、ほぼ股間と脚の付け根のみにフィットし、ハッキリ言って下着みたいな見た目だった。毛一本すら生えていない生足は、羞恥という鞭に打たれ、柔らかに震わせた。
男だった時の記憶なんだろうけど、見聞きしたことがあった。確かブルマ? とか言われる、実際に昔の日本で、女子児童や学生の体育着として使われていたものだ。実際に穿いて思うけど、日本人の教育関係者は頭がおかしかったのだろうか?
いや、それよりもさらに食い込み気味で、お尻の肉の三分の一くらいが露出する、より卑猥な仕様に思えた。まださっきの汚れた制服の方がマシだったかもとすら、後悔してしまうほどに。
「も、もういい。い、行こう」
相変わらず揺れる胸を左手で固定しつつ、右手で股間付近を(一応)隠し、逃げるみたく奥の扉を開けて出る。
ガッ、チャン。
――天井にある小さな鐘楼みたいな照明が、たった一つの光源だった。どうも自分は体育館の後方付近に立っているらしく、暗い館内を全体的に見渡す。
バスケットゴールは壊れ落ちていて、床のセンターラインもぐちゃぐちゃだった。綿が飛び出ている薄汚れたマットが、ワックスの輝きを失った床の上に乱雑に置かれており、異臭がした。
出入り口の扉は他に二つあるけど、両方ともどんな力が加わったのかわからない様な、ひしゃげ方で素人目にも開きそうになかった。マットを踏み進みつつ、正面奥のステージの方を調べるため、目線を移すと――。
「ひっ!」
し、心臓が口から出そうになる。もちろん比喩ではあるけど。だ、だって、暗い照明の下、め、め、目がマットの上に落ちていたのだから。
「どう、なって」
人間の【目】と思しきソレを、恐る恐る眺めていると、信じられないことに瞬きもすれば、視線をこっちへ向けてくる。さっきの【腕】や【足】と同じ怪異なのだろうか?
「! ひえっ」
い、いつの間にか股下にも【目】が、まるで生え出たみたく出現し、しかも何やらニヤケるみたいに細めている。踏みつけようとも思ったけど、怖く気味悪くて、ステージの上へ登り逃げた。
「ほんと、おかしい! 狂ってるっ」
やがて身体中に、皮膚どころか体操着すら貫通して、文字通り視線が突き刺さるみたいな、妙な感覚が増してくる。確かに女の人は、肌で視線を感じやすいとか言うけど、これは明らかに違うと――。
「ひ、あっ」
音もなく壁や床、そして空中に無数の【目】が出現し始め、こちらを凝視してくる。直接は何もしては来ないけど、この熱線みたいな熱い目線は、一体?
バン。
「! まぶしぃ」
一瞬、視界が白く塗り潰されて目をつむる。いきなりステージ上に強烈なスポットライトが当たったみたいだった。こんな恥ずかしい格好を、これでもかと浮き上がらせるみたいな演出は、まるで【目】の見せ物みたいで、恥ずかしくてドキドキしてしまう。
何十個という【目】が食い入るみたく私を見つめてくる。まるで何かを、期待するかの様に。
「い、いい加減にし――て?」
え? 何十という目から視線を浴び続けてしまったからか、頭と身体の奥が不可思議に熱くなってくる。
だらん、っと胸を持っていた左腕が垂れ下がる。すると、乳首が浮く二カ所へ視線が突き刺さり――ンンッ――え?
「な、に?」
ドキ、ドク、ドキッ。
どう、してか、心臓が早鐘を鳴らし始める。今までの恐怖や緊張によるストレス由来ではなく、明らかに高揚感に近い興奮だった。まるで、そう、【目】に注目されることで、失われた自信を取り戻しているみたいだった。もっと言えば、誰もが求める承認欲求が満たされていく、みたいな。
今までの怪異とは毛色が違う、そう思考が固まりかけた時だった。
モニュ。
「んあっ! ――え? 私は、ナニ、を?」
内股になりつつ、注目を浴びる乳房を、両手で揉みしだいてしまっていた。
! す、すると明らかに【目】からの視線が強まり、胸辺りが――ひゃん――あつ、熱くなっちゃう。
ドクン、ドクン。
「(なに、これ。まるでみんなに注目されて、嬉しいみたいなこの感覚)だ、騙されちゃ、ダメ、ぇ――ぅあん!」
も、元男として、あり得ないと自分に言い聞かせる。けど、そんな記憶は曖昧で、身体が女である以上、くぅっ。
そんなに触れてもいない乳首が、ツンと硬くなってきて、しかも言う事を聞かない人差し指が、爪先で軽く引っ掻いてしまう。
ピリリッ。
「んあっ!」
嬌声が、臭くて荒廃した、不浄な体育館に響き渡る。そんな中、光で浮き彫りにされつつ、思考がセメントみたく固まっていき、やがてペタンとステージへお尻を着けてしまう。
M字に開いた脚の頂点こと、ブルマに視線が注がれて、脚の力が、抜けちゃう?
「み、見ないでぇ」
そういう私の声は、甘ったるかった。【目】で視姦されるつど、心臓が高鳴り、もっと見て欲しくて、さらにエッチな吐息をたくさん吐いちゃう。
一方、【目】の下僕と成り下がった指はオッパイを離れて、注目高まるブルマの中央部分に触れてしまう。ソコは一番の熱源で、きっと【目】が最も弄って欲しい場所の一つのはず。
「(だめぇ、もうほんとヤバい)――あぁん!」
中指の爪先で濡れ始めた中央をなぞると、ビリリっと電気が放たれて頭と下腹部、乳首を桃色に染め上げられてしまう。しかもノーパンだから、刺激がダイレクトで、けどブルマの人工的な質感が、ちょっと癖になりそう。
そしてステージ上において、【目】と共に自慰する一体感は、まるで自分が主役になっているアイドルショーみたいな錯覚すら引き起こした。――で、でも、これ以上はほんとに、オカシクなっちゃう。
か、欠片の理性でもって、股間から指を引き離して、乳首で我慢してもらおうと思った時だった。
「「……」」
物言わぬ【目】達のいくつかが、視線を外しだす。
「え? あっ、え?」
すると、例えようもない不思議な喪失感が、胸の内側にてじわーっと広がっていく。まるで火が消えたみたく寂しく、お祭りの終わりの様な、世界から色が消えたみたいな、耐え難い感覚だった。
「ま、待って!」
慌てて、股間の――ま、マン筋を指で触るも、焦って力加減を誤ってしまう。
グヌニッ。
「ひんあっ!」
反り返り、上半身が体操着にピッタリと引っ付く。乳房の大きさも形も、硬化した乳首も、丸わかりになってしまう。
「「!」」
――でも、でも何とか視線を取り戻せた私は、何故かとても高揚し、そして同じぐらいに安心してしまう。
もう【目】からの注目を外されないよう、半開きの口からトロンとした口調で。
「ぬ、濡れてきちゃってるよぉ」
アピールするみたくなぞる股間の中央が、愛液で色が変わっていた。いくつかの【目】が接近して来るたび、文字通り目力が入るつど、心のどこかがいやらしく満たされて、熱く惚けた。
SNSや動画配信者の女の子が、過激な格好やパフォーマンスをしちゃうのも、こんな感覚なんだろうか?
グニャ、グニュ。
指先にて、柔らかで温かく、また湿った小陰唇をブルマの上から苛め続ける。し、痺れるみたいな感覚が股間から発せられて、それを凝視されていると思うと、下腹部に火がくべられたみたく燃えてきちゃた。
……【腕】や【足】にされた時は、目を背けていたけど、もう身体と心に刻まれてしまったんだ。女の子の身体って、こんなにキモチイイ、ってことを。
ブルマの沁みが広がり、指先まで濡れてきちゃった。【目】は今までの怪異と違って乱暴してこないから、そういう意味でも無警戒になっているのかな。
「ふぁ、んふぅ」
もう完全に頭も股間も蕩けて、公開自慰を魅せ続ける。たくさんの視線が、快感に歪む私の顔と、ピン勃ちの乳首、何よりジンジンのクチュクチュな股間に、突き刺さりまくる。
そのつど、まるで自分が喝采を受けているみたく満悦してしまう。虚栄心が満たされるつど、卑猥に臭う液体と気体と声が、私から発せられ続けた。
こんな世界で、幸せを感じられる、なんてぇ。
「「……」」
あ、れ? ど、どうして? またいくつかの【目】が別の場所へ向き出す。
「(変化が乏しいから?)待、って」
すがるみたいな情けない声をこぼす中、ニヤニヤと嘲笑う【目】へ。
「――こ、これなら、どぉ?」
四つん這いになり――プリン――っと丸いお尻を下品に振り向ける。熱いくらいのライトに照らされる中、舌なめずりをしつつ、濃く濡れたお尻でもって、雄を誘う雌みたくゆったりと左右へ揺らす。
「「!」」
んあっ。――た、たくさんの【目】が目蓋を持ち上げて、熱視線を注いでくれる。安心を取り戻せて、ある胸を撫で下ろす。
グニャリ。
乳房と顔を汚れた舞台へ押し付ける。すると偶然、体操着のお腹の隙間から生乳が見えるポジションを作れた。さらに右手でマン筋をなぞり、左手の指を口に出し入れして、媚びるみたいな視線を、お尻付近の【目】へと逆送りする。
「(もっと私を見て、視線を注いでっ)目で犯してぇ」
【目】の中には、まるで娼婦を見下すみたいな、あるいはもっと汚い存在を卑下するみたいなのもあった。けど、瞬きもせずに食い入るみたいな視線を送り続けるということは、見たいからに他ならないと、より実感できた。
ゾワゾワ、っとした快感が、皮膚の下で火花みたく散り、下腹部が火事みたくなってきちゃう。
【目】からもっと視姦されたいと、気が付けば指先の第一関節の半分くらいを、ブルマごとに膣口へ押し込んでいた。いまさら痛みに気付くけど、それを覆い尽くす快感に、四つん這いすら出来なくなりそうだった。
「お、お腹が、アツイよぉ」
涎でも床を汚しつつ、指は痒い部分を引っかくみたく、びちゃびちゃなブルマの中央に爪を立て続けた。雌便所の最後みたく、股間の内側でナニかが膨張してイクみたいな感覚に、意識が引っ張り溶かされる。
一つの【目】が、まさに私の目の前に来た時だった。ソレはただただこう訴えていた。
――体操着な姿で、こんなゴミ溜まりより酷い場所にて、怪異に見下されて、自慰に耽って、快楽の海に沈むお前こそ、飯沼祐希そのもの――なんだって。
そう読み取った瞬間だった。
「! いはん。ひぃん!」
羞恥が全て快楽に裏返ったみたいな卑猥な衝撃に、ビリビリと全身が打ち震える。快楽が筋張ったみたいな強烈な感覚に、意識を失いそうになった。
「――はっ、ハッ、ハァ?」
最初はナニが起こったか、サッパリだった。言えるのは、乳首が過去一くらいに勃起してて、身体中が桃色に煮え、ブルマの前半分はお漏らしたみたくグショ濡れだった。
絶頂の余韻に浸る中――【目】がいつの間にか消えていた。私は四つん這いの情けなく淫らな姿勢のまま、ただ動けないままでいた。
「……ァ」
頭へ霜が急に降りたみたく、罪悪感という冷気が神経という神経を凍らせていく。
――今回は、もう言い訳できない。怪異を前に、自分から進んで自慰を見せビラかせてイッタのだから。
そして、何より、気持ち良かった。信じられないくらいに。相手が触ってこなくても、女の子の身体はここまで快感漬けになれることを、心が壊れるくらいに思い知らされた。
……いや、むしろ、男から女になった自分だからこそ、男の感覚と女の肉体で、二重の快感を得られた? けれどもその言い方もどこか違和感がある気が。
「私は、ボク、は――?」
いつの間にかライトが消えていたステージの上は、少し冷えるくらいだった。愛液に塗れたブルマは、生臭い臭いをプンプンと立ち昇らせ、やがて体温を奪うみたく吸熱していった。
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