赤い満淫電車

ニッチ

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一両目

毎度ご乗車、ありがとうございます

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 ガタンダタン。タタン、カタン。
 スカートスーツなのに大股おおまたで乗り込んで、そのまま扉の前の真ん中あたりまで入り込み、ホッとしたのもつかの間だった。
 ギュウ、ギュゥ。

「(てか人多っ)マ、ジ?」

 車内はびっくりするほどの混雑で、まるで都会の朝の通勤ラッシュ状態だった。しかも乗客が男の人ばっかりな上、オジサン世代かそれ以上の年齢ばかりだった。夏ってことも相まってか、ツ~ンとした加齢臭かれいしゅうと汗の臭いのミックスが、酔っていてもわかるほどキツかった。 

「(うへぇ。何かのイベントの帰りとかかなぁ? けどこんな時間にってのも変だなぁ)――ふぅ」

 揺れる吊り革の下、身体を動かせないほどの混み具合で、仕方なく目だけ動かす。薄汚れた現場作業員っぽいオジサンや、古ぼったい背広のサラリーマンとかもいて、ほんとの仕事帰りっぽかった。誰の服装もくたびれているか汚れていて、疲れ切ってるのか無言で、ドンヨリとしていた。

「(誰も携帯すら触っていないし)はぁ」

 におう男性達に、そんな服装で密着されるのにはさすがにえるけど、まぁ少しの我慢がまんかな。それに酔いのおかげで感覚や思考もにぶってるし、駅だって五つ目くらいだから、すぐ着く着く。
 ――サワ。
 に、しても、車内がかなり暗くない? 確かに今年の夏は政府による節電要請があったけど、クーラー弱くしすぎじゃない? ってかあれあれ? 広告が吊り下げられてないとか珍しいな。この時期はだいたい『受験生の夏期講習』とか『大型レジャープール』、もしくは『お盆の帰省は電車で』なんかの宣伝せんでんが多いのに。
 サワッ。
 ……暇、だし、携帯か音楽で時間をつぶしたいけど、バックに手を伸ばす隙間スペースすらない。ほんと、大都市の地下鉄じゃあるまいし、それもこんな時間帯にほんとになんで――。
 モニッ。

「っ」

 ……最初は様子見ようすみで、手の甲か何かを当てるみたいな触り方だったけど、やっぱり偶然ぐうぜんじゃなかった。スカートの上から、
 ――まさかの痴漢。卑劣ひれつで品のない、大人のくせに自制心の欠片かけらも無い、マジで最低な種別の男共っ!
 グニ、ムニ。
 み、右側のお尻に手のひらを押し付けて、しかも五本の指を吸い付かせた後、ゆっくり引っくみたく揉んで、くるっ。

「(キモキモキッモ!)う、ッ」

 全身の皮膚が――ゾワゾワ――っと泡立って、奥歯をみ締めても全身が弓なりになる。位置的に後ろの男なんだろうけど、人が多すぎて振り向く事も、お尻の位置をずらすことすら難しい!

「ハァ~、ハァ~」

 うぐ、お、オエッ。変ににおう息を、髪の毛に隠れたうなじへかけられる頃、もう酔いなんてとっくに覚めていた。大粒おおつぶの汗が額に浮く中、何とか腕をお尻の方へ回そうともがく、けど――。
 ペロン、スリリ。

「ひぐっ」

 ちょ、スカートの中に手を入れてきた!? 気色悪さとくすぐったさでもだえていると、指で線を引くみたく太ももをゆっくりと上ってきて――。
 プニッ。

「づ!」

 ひだ、左のお尻の肉を、パンツの上から指先で押してくる。キモキモキモッ、信じられないっ、最低のド変態!
 ――ってかわたしがこれだけモゾモゾしているのに、他の乗客は何も気付かないの? 隣でボーッとする男や、前でスポーツ新聞を読む男も含めた誰一人。
 ガタンガタン。ガタンガタン。
 そ、そもそもまだ一駅目にも着かないの? 少しでも乗客ひとが減ったら、振り返ってぶん殴ってやるのにっ。
 グニュ、モニ。

「ひぅ」

 手首の部分でスカートをさらにめくり上げられて、位置によっては赤のパンツが見えそうだった。そのまま果物くだものつかむみたく、左のお尻を揉み握られる――何度も、何度もっ。不快さと怖さ、何よりはずかしめで肩が震え、涙が出そうになる。
 私自身、高校までは自転車通学だったし、大学生活も含めて、痴漢ちかんったのが初めてで気も激しく動転していた。そもそもこんなに、女の人間性を汚辱おじょくする行為だったなんて。
 スス、グィ――キュッ。

「(もいい加減)ひっ」

 ぱ、パンツをTバックみたいに食い込まされた後、生のお尻を引っいてくる。汚い爪先を私の肉で拭くみたいな感覚に、吐きそうになる。世の痴漢する男はみんな●ねばいいと心底思った。
 ……けれども地獄はまだまだ続いた。
 ガタン、タタン――キキッ。

「!」

 急なブレーキで足がもつれて身体が後ろへ振れる――つまり、
 グニグリリ。

「あぐっ」

 い、痛いくらいにお尻を掴まれて、そのまま支えられた。しかも腰の辺りに、。まるで、私の腰椎ようつい自慰オナニーで利用するみたいに、押し当ててくる。駅は、まだなの?
 グニ、モニュ。ゴリリ、ムニ。
 ……む、無理っ。もぅ、我慢できない! やられっぱなしなんて絶対にヤダ! 揉まれながらも何とか身体を起こして、マグマみたいに熱くなった頭で私は、顔を天井へ向けて、裏返った涙声でこう叫んだ。

「痴漢っ。痴漢よ! 誰か助けてぇ」

 ガタンカタン。ガタンカタン――。
 逆上ぎゃくじょうした痴漢おとこに後ろから殴られたりしない? そうでなくても周囲が無視を決め込んで、行為が続いたりしない?
 どう転ぶかわからなく、数秒間だけ目をつむって待った。

「……?」

 周りから何の反応こえもなく、けど痴漢の手がお尻から――ゆっくりと離れていく? ほんの少し緊張が解けかける私は、けど何か言いようのない違和感を感じた。

「えっ?」

 なんか、乗客達が、変だ。だって、ついさっきまでまばたきしたり、たまにせき込んだり、もちろん息遣いだって聞こえていたのに。今は全員が背筋を伸ばして、。音も電車の振動音くらいしか聞こえない。

「なに? なんなの?」

 ほ、本当にどういうこと? てかこの車両の男達はマジでなんなの? 女の私が痴漢被害にって助けを求めているのに、
 ――もういい! 自分で何とかするっ。意を決してどうにかか振り向いて、痴漢と対峙たいじするよ。顔が真っ赤で涙目な私は、怒った猫みたくフーッ、フーッと息巻いきまきながら、振り返る! そして、前髪の隙間から、出来るだけ怒りを込めてにらみ上げながら怒鳴る。

「あ、アンタねぇ。男として、人間として、ほんとサイッッッテーな行為をしたの、わかってる⁉」
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