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第5章:単身赴任で甲賀を調略しよう!
無免許医ですか?それとも……
しおりを挟む1567年9月
南近江甲賀
まずい。
アゲハ、顔色が蒼白。声をかけても無反応。
さっきから全力で、岩場を跳躍するような機動をしていた。振動で心臓に負担が来たか?
正史の光秀は医者もアルバイトでやっていたとか言うけど、プーさんだった俺に何が出来るでもなく。
このままでは、行商をしていた時以来、そばにずっといてくれた大切な友人を失う。
こいつがこんなに大切だったとは!
もう虫の息だ。
あぜ道にアゲハの身体を寝かせて、呼吸を楽にさせる。
何もできない俺。
せめて応急措置でも。
サブカルに浸って毎日を過ごしてきた事がこれほど悔やまれるとは。生活知識が全くない。
「そこな顔面真っ青キンカン色の少年。どいて。あたしにその子診せなさいですわ」
何だかよくわからない表現技法を含んだ女の声。
振り返ると白い割烹着のような服を着た14歳くらい少女が立っていた。腕には薬草が入った竹籠。
どうやら医者? 薬師?
「だれだ?」
返事もせずにアゲハの脇に膝をつき、息を確認、脈を診てから背中をさすっていく。その手がある一点で止まる。
「背骨が外れかかっているわね。神経が圧迫されている。このままだと良くて半身不随。悪いと後半刻もしない内に心臓が止まるわね」
「なぜそんなことがわかる?」
「あたしに刺させて。あたし、失敗しないので」
少女はプリーツスカートもどきに隠れた太腿に巻き付けられていた革帯から、一本の針を出して名乗りを上げた。
「あたしは白川黒古。通りすがりの鍼灸師で~す」
涙黒子が全く似合っていない、キリリとした目力の強い少しウェーブのかかっている髪を両脇でリボン結びにツインテした少女。
懐から取り出した『赤十字』のついた腕章を左腕に押し当て、ヲタクだったら絶対に心臓に針刺されるたぐいのシュチュを演出する。
「レッドクロスですの!」
なん……だと?
こいつ未来人?
◇ ◇ ◇ ◇
「あなたの身体いじったのは私ですわ。一子相伝の鍼灸術ですの♪」
アゲハを治療した少女の家に上がり込んで話を聞いてる光秀です。
どうやらこの少女。平成の世から転移してきたらしい。俺と同じくあの糞坊主の手によって。転生した俺と違って転移だったんだ。被害者友の会に入会を許可してあげる。
「覚えてないの? あなた、長良川の戦いで死ぬところだったのよ?」
え~っと。
その死ぬところだったのは親父では?
本当の光秀。
そう言ったら、
「へ~。そうなの? でも、あたしには関係ないですわ。あたしは人の身体を刺すのが仕事。趣味も刺すこと。特技も刺す事ですの」
無責任な奴だということは分かったよ。それと『無免許医師X』というドラマの大ファンだということも。
「でも、今回はちょっと経絡秘孔をたくさん突いたから、あなたと同じく色々と変わっちゃうかもですわ♪」
「ど、どんなことが起きるんだ?」
「え~っと。まずは髪の毛の色が変わりますわ。あとはアンチエイジング。
いえ、レジュビネーション、若返り?
それと~、これは大した問題じゃないけど、あなたと同じく色々なステータスが上がりますわよ。スキル的なものも?」
俺も瀕死だった時に、この少女に刺されたのか。じゃあ、本当の光秀は?
「そうね~。お父さんらしき人もいましたわ。でも不思議なことに治ったらどこかへ消えてしまいましたわ。せめてお礼を言うくらいはするのが礼儀というものですわ」
本物の光秀は生きている?
どこに?
出会ったらヤバイやつ?
「あいむゆあふぁーざー」
くらいで済めばいいけど。
「とにかくあと3日間は絶対安静ね。できれば1週間。あたしが面倒を見るけど、あなたはどうするの?」
「……気が引けるというか、胸が張り裂けるようだが行かねばならない仕事が待っている」
「そう。どこかの武将らしいわね。お仕事? え?信長の家来?ぜひぜひ信長と後で握手させてですわ。顔はやっぱりキム〇ク似?」
この娘もヲタク臭がするなぇ。
名前からしてそうだ。結構偽名なのかもしれないよね。
その時、村人Aが黒古の家に飛び込んで叫んだ。
「黒古さま! 和田様のお城から使いが! 大至急、来てくれと。お隣の蒲生様のお城で急病人が!」
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