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第7章:京都で文化侵略しよう!

フット猿

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 順調だ。

 何がって?
 京都にいるんだから、京都支配ですよ。
 それに朝廷と公家連中への支配も。

 でもこのお公家さんたち。面従腹背、魑魅魍魎ちみもうりょうのどろどろ世界の住人。
 こいつらを完全支配するのは厳しいなぁ。

 その支配を曲がりなりにも確保したのは正史の光秀。
 偉い奴だったんですね、光秀、光秀をほめてあげる。

 ?
 やっぱり俺、やってないっす。
 半兵衛っち?
 やってないっす。
 だって田舎侍だから相手にされない。
 本物の光秀、連歌だとか茶の湯、四書五経、和歌なんか古今伝授とかいう秘伝を継いでいる。そうゲームでは設定で出ていた。

 今の織田家にそんなことできる奴いないと思っていたけど、なぜかあの秀吉が出来やがりました。誰かに教わったのかな?
 なんかね、この1年間で相当勉強したみたい。

 さすが天下取る人。結構できるようになったとか。才能あるんだ。
 それ使ってご機嫌取りしたんだって。どうしてそんなことを勉強で来たかは知らない。

 ゲームなんかではチートできるから、一気に修行できるけどね。


「殿。用意ができました」
「そうか。では参ろう」

 半兵衛っちが、俺の指示した作業が完了したことを伝えて来た。
 これから更なる文化侵略だ!
 調停工作は秀吉君がやっているけど、その支援も兼ねる秘策を披露しようではないか!

「すでに会場は満員。将棋倒しにならないように、各所に警備の武士を配備しました」
「それは大事。安全第一だ」

 人ごみはどの時代でも危険です。

「かわら版は?」
「はい。すでに10日前から。ルールもしっかり説明してあります」

 目の前には40m×20mの長方形の草原。
 草を刈りそろえるのが大変でした。地面も所々でこぼこです。
 短い辺の中央にはゴールを作ってあります。
 人々はボールを蹴ってパス回しをしています。
 みんな俺の配下のものです。
 今日のために訓練のあと、娯楽として練習させたの。

 まあ、いわゆるサッカーコートのミニチュア版?
 これ作った。

 で、戦国時代にフットサルを流行らせる!
 さすがにサッカーコートはピッチの確保が難しい。
 なので屋外でフットサル。


 噂話が大好きな京雀きょうすずめ達が集まってきたよ。
 やっぱり話のネタがいつも供給されないと、戦の世に対して不満を募らせ一気に一揆!
 根本的な一揆対策でもあります。


「キンカン。申せ」

 また~。
 もうちょっと、ふつーの人に分かるように発言しないとリーダー失格だよ? 信ちゃん。
 でも信ちゃんの良い所は、言葉に表さなくても人や組織への配慮がわかる事。

 まあ、それがわからん奴は要らないという事なんでしょね。
 それならもっと光秀に優しくしてほしいです!


「はっ。先にも申し上げた通り、この『ふっと猿』。日枝大社と比叡山対策でもありまする。
 日枝大社と猿は切っても切れぬ間柄。比叡山もまたしかり。
 これが流行りますれば、大会を開催し、民間信仰としての認可を頂きまする。その後……」

「堕落させると」

はい。人は熱狂すると暴走いたします。
 各宗派でちーむを組んで、それぞれのさぽーたーとなることで、相手に敵愾心てきがいしんを募らせまする。
 これで各宗派を仲たがい。それを仲裁する立場に信長様がつくことに」

 続けよという表情、頂きました。

「最強チームを作るため、金に糸目をつけなくなった山門(お寺さんの事)は、あの方々を雇いまする」
「あいつらか」
「あいつらです」

 俺たちが視線を送る先にはフットサルのピッチの中央で『蹴鞠けまり』をするお公家さんたち。
 蹴鞠道?で身を立てている飛鳥井家の方々。

「フットサルを流行らせればコーチとして大量の銭収入が手に入りまする。それを恩に着せ、かの家を織田家の傀儡かいらいとし朝廷工作への伝手とできましょう。
 もちろん、ほかの公家も蹴鞠は得意。
 収入が出来ることで、ほぼ確実に織田家に好意的になりましょう」

 信ちゃん、俺の顔、じっと見ている。
 こわい、怖いです。この間合い。
 痛くしないで~~~

「ふっと猿の件。猿に任せる。あやつは今、朝廷工作の任を与えている。この仕組み、巧み使うであろう」

 おお。
 お見事なオヤジギャグ。いただきました~

 しかも秀吉君に恩を売れた?

「かわら版は吉兵衛(村井貞勝)に任せる。奴は京都所司代にする故」

 そうだね。
 京都の情報操作は所司代の管轄でいいよね。

「キンカン。甲賀の忍びはどうじゃ」

 なんか忍びの頭目になっちゃったんで、全国の情報集めるスパイマスターに選ばれてしまった光秀。
 今度、テープレコーダーを開発して「なお、このテープは自動的に消滅する」とか「黄昏。今回の君の任務は……」とかやってみたいなぁ。

「はっ。甲賀の薬売りの準備は順調にて。
 奴らには情報収集を申し付けまする。
 それにともなう物流と相場の情報を操作。堺の商人たちに売りつけて、その情報量を矢銭として差し出させるように差配しておりまする」

 これもね。
 立派なサブカル知識。というかアイデア。
 そのアイデア、ちょっと口にしたら、例の天才軍師が1000倍も仕組みを増幅して、すぐさま運用試験する所までこぎつけちゃいました。

「伊賀はどうじゃ」
「それが……はかどりませぬ。やはり時間を掛けてあ奴らを罠にかけるしかござらぬかと。
 我攻めは危険」

 1578年だっけ?
 伊賀の乱で織田軍、まさかの敗退。
 そんな無様なことしなくても、何とか調略できないかな。
 そろそろアゲハの抜け忍免除期間終わっちゃうし。
 あとでぶっ潰そう。


「キンカンは、残る文化侵略の仕組みを整えてから、岐阜へ行け。そこで鉄砲隊の再編じゃ」

 信ちゃん、フット猿が始まる際の舞。派歌はかに見入っている。
 サッカーのハカも日本的にすると優雅な舞になっちゃうらしい。

「褒美じゃ。子を作れ」

 こちらを向いた信ちゃん。
 考えられない程、穏やかな顔。
 それ程、光秀、優遇されてるの??

「10日じゃ。火急的速やかに種付けし、次の任務につけ。
 子の後は城を作れ。
 これは100日じゃ。
 宇佐山に堅固な……」

 やっぱこき使うために、いい顔するんですね。
 でもそんな少ないご褒美でも笑顔が一番うれしいです。

 だって、謀反疑われたくないもん!
 怖いもん!
 働きますから(超嫌だけど)粛清しないで~~~

 決して本能寺には少人数では泊まらないでね。

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