乙ゲー主人公に転生した私は全力で悪役令嬢の恋を応援します!

小伊成

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お風呂から上がってすっきりした私達がリビングへ行くと、既に父と兄は帰っていた。

私はダイニングから出てきた母に弟妹を任せると、髪を厚めの柔らかい布で拭きながら二人に近づく。

「お帰りなさい、お父さん、ラルフ兄。」

「ただいまリア。もう具合は良いのか? (顔色は良いみたいだが…。)」

「うん、もう熱も下がったよ。心配かけてごめんね、お父さ──‥」

って、ちょ ‥ラルフ兄??
無言で私のところにスタスタと歩いてくるの、威圧感ハンパないんですけど!?

え、なな、なに、私の頬を両手で包んで ───‥
───うぎゃ! 見上げさせられたし!!

「・・・・・。(‥うん、──もう大丈夫っぽいな。‥ハァ~ほんと可愛いリアが倒れたって聞いた時は心臓が止まったよ…。)──ただいまリア。」

…いや、私はニッコリ満面の笑顔で『僕の』とかのたまう、妹溺愛なお兄様が怖いです…‥。



私の3つ年上の兄ランドルフは、弟妹と同じく母似の美形で、長いまつ毛にスッと通った鼻筋、父と母の色が混ざった木漏れ日のような白緑の髪に母譲りの天色アパタイトの瞳を持つ、良いとこ総取りの結晶みたいな人だ。

で。父はカイザルといって、名前だけ聞くと何だか強そうな、カッコイイ容姿を想像すると思う。

───でもゴメン。父は真逆の容姿をしていらっしゃいます。。

というかね。父の容姿もそこまで悪い方じゃない。

…背は少し…そこそこ、‥うん、かなり低めだけど、そこは父方の祖先に小人族と結婚した人がいたからで、この世界で言うとまぁ普通の部類だ。(この世界には人間族以外にも多種多様な種族が暮らしてて、一部の種族間ではいさかいが絶えないけど、大凡おおよそは差別もなく混血も普通だったりするんだよね。)

───ただね。‥顔立ちがね…。
総合的に表すと父の顔立ちは『モブ顔』だ。

なんだけどね‥。

兄に顔を固定されたまま、ちらりと横目で父を見た。

小顔で細いタレ目に、これといった特長のない、小さな鼻と口。

父の顔は一見どこにでも居そうな顔立ちだ。

…なんだけど。何とゆーか、この顔立ちで42歳とかね…。。。

(──…どー見ても“10代”にしか見えないんだよなぁ…。)

そうなのだ。
うちの父の顔立ちは美魔女もびっくりする位、ものすごーーーくのだ。

そこに兄みたいな長身の美男子が横に並ぶと、父の幼さに拍車がかかるとゆーか、親子が逆転して見えるとゆーか。。

加えて父は自分が低身長なことを気にしているらしく(顔立ちも相まって周りに舐められることが多いらしく)、自分を大きく見せようと身振り手振りを大きく取るから、そのせいでどこぞの“ゆるキャラ”みたいに見えてくるのが…何とも悲しいかな。。

かくいう私も父似なので、いつも年相応には見られずに色々と苦労していたりするんだけどね。

───てゆーか兄よ‥。
そろそろ私の頬を解放してくれないかな?

「えと…ラルフ兄。そろそろ…その」

「なんだいリア? (あ~ほんとリアは可愛いなぁ~。)」

・・・・・。
美形がそんなウットリするような甘い顔で、ふんわりと笑わないでください。
実の妹に向ける笑顔じゃないですよそれ‥。

「‥えーと、そろそろ顔を放し‥「もう少しだけ見せて? (このまま時が止まれば良いのに…。)」」

「~~~~~~っっ」

こ‥、こ‥、こーーわーーいーーよーーーっっ
お母さーーーーん!

うちの兄のこの溺愛ぶり、ぜったいぜったい普通じゃないから!!

てゆーか、ただで、他は全くもって平凡なモブこの顔のどこに『可愛い』要素が?!

愛らしさが天使レベルの弟妹よりも、何故かラルフ兄は私を可愛がりたがるのだ。

(ルナとレイの方が万倍も可愛いのに…本当にうちの兄は解せぬわ…。)

私は半目になりながら、無言で兄の近過ぎる顎をグググっと両手で押して引き離しにかかった。

「何だよリア…。僕はこんなにリアが可愛くて仕方ないのに、最近ちっとも甘えてくれないし、つれないなぁ。。(前は僕に四六時中くっつきたがって、一緒に寝よーってよく言ってたのに、急に大人びちゃってさぁ。)」

「~~~それはだって、ルナやレイが生まれて私もお姉ちゃんになった訳だし、いつまでもラルフ兄に甘えるのは──?!」

むぅ!
人差し指を当てて口を塞ぐとか…。
さては私に言い訳させない気だな…ぐぬぬ!

「ハァ~~…そんなににらまないでくれるかい? (まぁリアはにらんでる顔も可愛いんだけどさ‥。)」

「んぅー!(むぅー!)」

「…あのねぇリア。リアだって僕の妹でしょ? いきなり妹に甘えられなくなったら僕だって寂しいんだよ。(最近はリアの可愛い寝顔だって見れてないし…。)リアだって、いきなりルナやレイに甘えられなくなったら寂しいでしょ?」

( ゔっ・・・そーゆー言い方は卑怯だと思う。。)

そんな、そっと人差し指を離しながら、しょんぼりとした顔で見つめられても…。
こてんって小首をかしげる仕草が、むちゃくちゃ色っぽくて様になってるし…。

‥何なのよ、妹に対するこの無自覚な攻撃の数々は・・・。

「…それはまぁ、私もそうだけど‥。ゔぅ…。」

正直、私だってラルフ兄にこんな顔をさせるのはツライんだよ…。

だって3年前まで私はラルフ兄にべったりだったんだから。

でも…いくらカッコよくて頼れる兄だからとはいえ。
兄が“異性であること”はまごうことなき事実で‥。

そのことを私は嫌というほどんだもん。。

(───‥周りの目があるのよ、周りの目が…。。)

母譲りの容姿端麗なこの兄は、とにかくモテる。モテる。モテまくる。

今年で18になるラルフ兄は、どんどん美男子ぶりに拍車がかかり、色気まで滲み出ている状態だ。

それなのにラルフ兄ときたら・・・。

(───こっちの頭が痛くなるほど自分の容姿に無頓着なのよ!!)

弟妹が生まれてから。
私は二人の面倒を見る母の代わりに、ラルフ兄と一緒に買い出しに出かけるようになった。

その習慣は現在も続いている。

ただし3年前を境に、私は兄とは一定の距離を保つようになった。

理由はいたって簡単。
周りの女性が兄を見る目付きが、恋慕の情が乗った視線ソレに変わってきたからだ。

それと同時に、兄の隣を歩く私に対して、女性達が“疑念”や“違和感”といった思念を投げてくるようになったからだ。

“なんでこんな幼子が美男子の隣に…。”
“彼まだ若そうなのに‥まさかの子持ち?”
“うわぁ‥すごい、ちぐはぐなカップル…。”
“兄妹ではないわよね…似てないもの‥。”
“恋人かしら…あれじゃ彼の引き立て役ね。”
“────、───────…。”
“─────‥。”

例えば兄の周りに女性が100人居たとするなら、100人全員からそう思われるようになったのだ。
これで自覚しないほうがおかしいだろう。

──あぁ私って『妹に見えないんだな』と。。

(ハァ‥こんなに似てないことが一緒に暮らす上で妨げになるなんてね…。)

私は父似で兄は母似だから、容姿を比べたらそりゃあ月とスッポン(もちろん月は兄だよ)なのは、言うまでもないんだけど。

どうやら私は今の兄と並ぶと、周りの女性には『赤の他人に見える』らしいのだ。

最近では無自覚に色気を振りまくラルフ兄の隣を歩こうものなら、周りの女性が皆して“敵視”してくるわ、“不快感”すら投げかけられる状態ですよ…。トホホ。。

‥こうなってくるとさ。
いくら身内とはいえ、兄が“異性であること”を意識するしかない訳ですよ。。

そりゃあラルフ兄の格好良さがハンパないのは、贔屓目ひいきめなしで実体験から私が一番よく知ってるし、周りの女性が私に嫉妬する気持ちも分かりますよ。ええ、分かりますとも。

(…でも私、だからね?)

それなのにラルフ兄ときたら、相変わらず自分の容姿に無頓着でさ‥。

所構わず私を“お姫様”扱いするわ、妹相手に惜しげもなく甘い笑顔を向けてくるわで…。

(っとに私の気も知らないでさ‥。この無自覚タラシめ…。)

てゆーか、さっきからラルフ兄を引き離そうと押してるのに、なんで距離が広がらないのよ!

結構、力込めてるんですけど? んぐぅ~~~っ

「…そんなにリアは僕に甘えるのが嫌? (リアに嫌われることをした覚えはないんだけど‥。)」

…あ、ヤバいこれ…本気で落ち込んでるかも?

「ちがっ‥そうじゃなくて…。」

「…なら何で僕を避けるの? (リアに嫌われたら生きてけないんだけど。。)」

うわこれマジでヤバいじゃん!!

「それはその…、───15にもなって兄に甘えるのは色々とほら、‥恥ずかしいのっ! 」

まぁ本音は『今の色気ダダ漏れなラルフ兄に甘えたら最後、今よりもっとラルフ兄は私を溺愛してきて、今よりもっと周りの女性に嫉妬されるのが予想できてしまうから。』なんだけどね…。

今は買い出しに行く時は、兄とは手分けして買い物に回り(その方が早く終わるからと兄には言い訳をして)、なるべく二人一緒に出歩かないようにしている。

そんな今でさえ、買い出し漏れがないかを確認する為に必要な一瞬、そう集合する一瞬だけでも一斉敵視されるんだよ・・・・。フ‥(遠い目)。

これ以上周りの女性達の敵意を煽るなんて、考えただけでゾッとするわ。。。

私は平和が一番なのよ!

「・・・・ふぅん。そっか、恥ずかしかったんだ…。ん~~…でも僕はリアが甘えてくれないのは寂しいし、困ったな‥。( ──こうなったらリアの部屋に話が分かる幽霊レイスでも召喚して、リアの方から僕と一緒に寝たいって言わせようかなぁ…あ~でもリアが泣くのは嫌だしだな‥。)」

「~~~~~~っっ!?」

な、な、なにいって…

「‥ん?リア、固まってるけど、しないからね? ‥リアが甘えてくれないのは寂しいけど…。(まぁ、このまま僕に甘えてくれないと寝顔もゆっくり見れないから、リアのスープに眠り薬くらいは入れるかもだけど。)」

ぎゃああああああーーーーー!!
寂しそうにシュンてしながら空恐ろしいことを考えるなバカ兄ーーーー!!!



こんなに美形で格好良くて、しかもラルフ兄は魔術のスペシャリストで、実は私よりも先に[王立アカデミー学院]を卒業してたりもする超優秀な人なのに!

(なのに…なのに…中身がこんなに残念とか…。)

思わず私は、ガクブルしながらも兄の将来を憂いて、じっと見つめてしまう。

「…リ~~ア。そんな心配そうな顔しなくても、しないから大丈夫だよ? (ほんとリアは可愛いよなぁ~。)」

「・・・半分は本気だったくせに。。」

「ん~~? そうだね。半分‥───以上、かな? (今の所は‥だけどね。)」

───“以上”なのかよ!!
ってゆーか“今の所は”って何なのよ?!

こんなに恵まれた容姿と頭脳を無駄使いする人物が身内に居ると、ほんっと~に頭が痛くなってくるわ…。

ラルフ兄の美貌はここまでの話で事足りるとして、頭脳の方も兄は凄くて。

一度見聞きすると記憶する〔瞬間記憶〕の能力スキルを持つラルフ兄は、魔術を扱う技術にも長けてたから、少しでも家計の助けになるならと、一般で入るには超難関の[王立アカデミー学院]の入試にトライして、なんと主席で合格した経歴の持ち主だったりする。

しかも在学中に、兄は自分のような『魔術師レベルの魔力量でも“魔法”を使える理論』を構築しちゃって、実際に一部の魔法を使える天才だったりする。

その功績から、兄は王様から〔魔法理論の構築者〕として[名誉騎士]の称号を与えられてて、王宮勤めの話も出てたくらいに(縛られるのが嫌で断ったらしいけど)、もの凄い立身出世した人だったりするのよ…。

‥そんな美貌と頭脳の持ち主の中身が、ですよ…。

(…ハァ~。。‥これで私を溺愛さえしなければ完璧なのに…。ほんっとーにうちの兄は解せぬわ…。)

────…てゆーか兄よ。。
さっきから引き離そうと頑張ってる私を無視して、そのまま抱きしめにかからないでください。。

  
ゔゔゔ…もう誰か、この妹溺愛バカの暴走を、止めて。。。
 
 
 
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