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あれから3日後の放課後─────。
青Fの《イベント》が起きる場所の1つである[生徒会室]には、錚々たるメンバーが集まっていた。
正面に冷黒王子、その後ろに護衛騎士と宮廷魔導士。
王子の対面にはエステル様、その左隣にアイリナ様。
エステル様の右隣に私。私の隣にマーリン様。
私の背にはエステル様とマーリン様の手がしっかりと添えられているから、逃げたくても逃げられない状況だ。
まぁ逃げたところで、3日前の一件で冷黒王子が追ってくるのは分かってるから逃げないけどね。
それで、エステル様が私の身柄について王子に『近日中に話し合うための時間を作って欲しい』と望んだ通り、私達と別れてすぐに王子は行動を起こしたようだ。
エステル様曰く、今日の放課後の数時間を手紙で指定して来たらしい。
…ただねぇ。。
私の方は正直、今の心境は『もうどうにでもなれ』って感じの、投げやりな気持ちだったりするんだよね…。
というのも、あれから現在に至るまでの間に、私の精神はそれはも~ゴリゴリと。
削りに削られまくる出来事の数々が、怒涛のように押し寄せて来ましてね…。
そんな訳で、もう抵抗する気力がないんだよね…。
まぁでも、その御蔭で攻略対象と関わるのは御免蒙りたい所を、エステル様になら完全に任せても大丈夫だって思える状況にはなったんだけども。
てゆーか、私の立場的に、エステル様に任せるしかなくなったんだよね…。
( …ハァ~~~~。)
とりあえず、今日に至るまでの経緯を簡単に説明すると…
────3日前に一悶着があった翌朝からだな。
私は極力目立たないよ~にと、気配を消して学院に登校したんだけど。
なんと『庶民用』の[学院の門]の前に、エステル様達が佇んでいたのだ。
王族貴族が『庶民用』の門前に居るだなんて、普通なら考えられない事態だ。
なのに何でかその時の私は、疑問には思っても回れ右せず近づいていったんだよね。
(改めて思い返せば『【ゲーム補正】のせいで意識できなかったんだ』と分かるんだけど、分かったら分かったでエステル様達への警戒心がまるで無くなってる自分に驚きだし、【ゲーム補正】の強力さにゾッとしてるよ…。)
で。そのまま私は猪突猛進なアイリナ様に捕まり。
エステル様とマーリン様の元へと連行されてーの。
周囲から痛~い視線を浴びまくって魂が抜けた私を、マーリン様が教室へ手を引いて連行しーの。(懸念が本当になった瞬間だったよ。教室ではもう貝になるしかないな私‥。)
朝のHRが終わったら学院長から呼び出されてーの。(マーリン様も一緒に呼び出されました。)
学院長の部屋に入ったら何故かエステル様が居てーの。(エステル様は学院長と優雅にお茶してらっしゃいました。)
そこで学院長から、私が置かれている立場がどれだけ微妙なものかを説明されてーの。(その殆どが王族貴族絡みの派閥問題だったから、庶民の私には全く理解できなかったけどね。)
…と、気づけば私は、学院長公認で『エステル様に囲われることになった』んだよね…。
まぁ、私を取り込むことや、排除しようと目論む不穏な動きが想定されるから、この国で権力がある三柱の公爵令嬢で〔生徒会副会長〕でもあるエステル様が、学院長に進言して、私の指導役兼フォローを引き受けることが決まったと言われたのは理解できる。
できるけど…うん。我ながら凄い展開になって来てるなぁと思う訳ですよ…。
青Fには無かった攻略キャラ達との【敵対ルート】、攻略キャラ以外との【親愛?ルート】なストーリー展開を、幸か不幸か爆進中だもんなぁ…。
(う~ん…こんな筈じゃなかったんだけどなぁ。。)
まぁ、私は庶民の立場上、目の前に居る冷黒王子には直言も直視もできない立場なので。
(どう話が進んでも、成り行きに身を任せるしか無いんだけどね…。)
ということで、私は冷黒王子とエステル様の会話に口を挟まず目線は下に‥と意識しながら、3日前から今までの出来事を振り返ることにした。
* * * *
エステル様達と合流し、私を乗せたエステル様の馬車が、王都の中心街に本店を置くフォートレック商店に着いたのは18時を回った頃だった。
丁度うちの母が追加の商品を搬入中だったから、エステル様達を母に紹介して、お薦めの試供品を母子二人で選んでお渡しして、エステル様達とはそこで別れた。
(ちなみに母は、お貴族様相手でも普段と変わらぬニコニコ笑顔で、洗髪剤と整髪料の他にも、美容に良さそうな化粧品までしっかりと薦めて試供品を渡してて、二重の意味で凄いなぁと思ったのは余談だ。)
それで、エステル様達に試供品をお渡しした後は、特に何事もなく、母と共に帰路へ着いたのだけど。
ただね…【ゲーム補正】がね…。
別れ際にエステル様から、
「それではまた明日ね。ごきげんようリアさん。」と挨拶された時にさ。
薔薇とか牡丹とかの豪華な花が咲いたみたいな、
『華やかな笑顔』を真正面から向けられて、優しく髪を一撫されたんだよね…。
しかもそれに追従するように、アイリナ様とマーリン様も私の髪を一撫してきて、
「「ごきげんようリリアンさん。」」と『朗らかな笑顔』で言われるわで…。
いや貴女達、その笑顔のオンパレード、庶民の私に向けていい顔じゃないからね?!
私の髪質が理由で髪を撫でたくなる心境までは理解できるけれども!
三人揃って『甘々な笑顔』を私に向けてくるのはマズすぎる案件だからね!!?
…───とまぁ、こんな感じだった訳ですよ。。
私も頭じゃ【ゲーム補正】のせいだと分かってても、顔面偏差値100%超えの美女達から極上の笑顔を向けられれば、顔が茹でダコみたく真っ赤になるのは抑えられないし、数十秒は固まる羽目にもなる訳で…。(あのまま母から肩を叩かれなかったら、数十秒とは言わず数分は固まってたよ。)
いやホント、あの甘々な攻撃(?)の数々には参ったわ…。(てか、アイリナ様は勝気な笑顔しか見たことなかったから、朗らかにも笑えることに衝撃まで受けたし。)
ただ1点だけ、アイリナ様に関して言えば。
うちの母を見た時、私と交互に見比べて『え?こちらの御婦人がリリアンさんのお母様なの? あら…本当にお母様なのね。。‥リリアンさんの小鼠のような顔立ちはお父様似なのかしら…。。』とか心の中で推測してたのには、ジト目になったけど。
そのままアイリナ様をジト目で見た私に、何よ?って顔でアイリナ様が睨んで来たんだけど、いや私は悪くないと思うぞ?
アイリナ様の信じられない気持ちには同意するけど、“小鼠のような顔”って、軽くディスってる表現だからね?
しかしエステル様とマーリン様が、私と母の容姿が似てなさすぎる点に全く心が動いてなかったのには、私の方が驚いた。
二人とも普通に『あら…こちらの方がリアさん(リリアンさん)のお母様なのね…お綺麗な方だわ。』くらいの、さらっとした反応だったんだよね。
今まで出会ってきた人達は、アイリナ様みたく何かしら驚きの感情を“心の声”で伝えてきたから、それが当たり前になってた私は『へ? それだけ??』ってビックリした顔を二人に向けてしまって。
そしたら二人同時に『『あら、可愛い。』』って“心の声”でハモられたから、さっき以上にビックリした顔になったのに、…何故だか二人とも可笑しそうに微笑まれたんだよ…。
あのね。
普通なら二人の態度は、“有り得ない”態度なんだよ。
普通なら『二人の“心の声”に反応してしまった』私の表情に対して、何をそんなに驚いているのかと、不審に思われて追求されてる筈なのよ。
だって二人は私が『〔読心〕の能力持ち』なことは知らないんだから。
それがたった数時間の短い間に、何の疑いも掛けられずに、ここまで私のことを受け入れられた反応をされるとね…。
(どんだけ【ゲーム補正】がかかってるんだよってなる訳で‥。この先が思いやられるわ…。)
───で、さっきの話に戻るけど。
母と共に家に着いたら、今日から私が学院へ通うからと早めに父も兄も帰ってきてて、弟妹と一緒に出迎えてくれてね。
そのまま皆で母の夕食の支度を手伝いながら、今日起きた出来事を掻い摘んで家族に報告したのよ。
───内心、ビクビクしながらね‥。
私が言うのも何だけど、父も母も私のことを目に入れても痛くない位に可愛い娘だと、ラルフ兄に至っては溺愛レベルで可愛い妹だと、大切に思ってくれてるのを知ってたからさ。
入学初日でこんなに波瀾万丈なアレコレに遭ったことを報告したら、きっとすごく驚かれて、すごく心配されるだろうなぁって思ってたんだ。
だから、返ってくる反応が怖くてビクビクしてたんだけど。
私の報告が終わったら、皆で口を揃えて、
「「「まぁリアだからねぇ~‥(父母兄)」」」
って、驚きも心配もされず、何故か苦笑されたんだよ‥。
その反応に、私の方が『‥え、なんで苦笑い? 』って面食らってね。
困惑しつつも、驚きも心配もしないのは何かあるんだろうなって訝しんで、
「リアだからねぇ~‥ってどういう意味?」
って理由を聞いたんだ。
そしたらさぁ。
父も母もラルフ兄も、何の後ろ盾もない庶民の私が[魔法特待生]として入学する境遇的に、入学初日から目を付けられることとか、何らかのトラブルに巻き込まれるだろうと思っていたって言うじゃない。(ただまぁ、入学初日から第一王子とトラブルを起こしてくるとまでは思ってなかったらしいけど。)
その上で、“心の声”を聴く能力──〔読心〕を持ってる私なら、ある程度の問題は自分で回避できるだろうと思ってたんだって。
それを聞いた私は、なんてゆーか言い様のないモヤモヤしたものが込み上げてきちゃってね。
で。返す言葉がうまく見つからずに無言になって‥…結論、拗ねました。笑。
そりゃあ親からも兄からも信用されてるのは嬉しいし、皆に心配だってかけたくないと思ってるけど、全く驚きも心配もされないのはなんてゆーか、何だか寂しくなってしまったんだよね…。
そんな私の沈んだ雰囲気を感じたみたいで。
父からは、
「リアは父さん譲りのトラブル体質だからなぁ~。」
と労るように言われて頭を撫でられ。
母からは、
「その分リアはお母さん譲りの回避力の持ち主だから大丈夫よ。」
と優しく言われて抱きしめられ。
すぐ横ではラルフ兄が、
「父さんも母さんも僕も、リアの才能をいちばん理解してるし認めてるからね。‥リアを大切に思ってるからこそ、リアを信じて見守ってるんだよ。」
って、私と同じくらい寂しそうな顔で、困ったように言われちゃったらもう‥ね。
『本当は過保護に構いたくて仕方ないんだけどね…。』
って、“心の声”付きで言われちゃったらもう‥ね。
‥うん、ラルフ兄、ゴメン。
うちの家族は、私を独り立ちさせる為に信じて寄り添ってくれてたんだって、よぉ~く分かったわ。
その後、私は後ろから弟妹に、
「「リア姉、大丈夫ー?」」
と抱きつかれながら言われて。
そんな家族皆の優しい言葉と心に触れたら、じ~んときちゃって。
嬉し泣きしちゃったのは言うまでもないかな。
それで、一通り今日の出来事を話した後で、例の〔神降ろし〕ができる神官様を紹介してもらいたいことを、両親と兄に相談したんだよね。
そしたらさ。
悩むそぶりも一切無く、「そうかそうか、なら行ってきなさい」と、お布施料をポンと手渡されたんだよ。
我が家にとっては結構な大金を、まるで準備してたみたいに出されたんだよ。
もちろん「何で?」って戸惑いながら聞いたよね。
そしたらさ。
「リアは〔先祖返り〕の血を引いてるから、きっと神様に訊たいことが出てくると思っていた。」んだって。
せっかく涙が止まったのに。
それ聞いてまた泣いちゃったよ。
それで翌日、さっそく私は学校帰りに教会の神父さんを訪ねて、〔神下ろし〕ができる神官様を紹介してほしいと願い出たんだけど…。
まぁ、タイミングってあるよね…。
この国に在籍している〔神下ろし〕ができる二人の神官様の内、一人は隣国へ用事で出払ってて戻りは1ヶ月先。
もう一人は〔神下ろし〕をしたばかりで「全魔力を使い果たして療養中。次に〔神下ろし〕ができるくらいに魔力が回復するのは、あと5日はかかる」って言われてしまったんだ。
まぁ、5日待てば創世神様の意図を訊ける訳だしね。
それまでの辛抱だ。
創世神様と話せる確約を取れたことで、今まで漠然とした不安を抱えてた私は、少しだけ安堵することができたのだった。
青Fの《イベント》が起きる場所の1つである[生徒会室]には、錚々たるメンバーが集まっていた。
正面に冷黒王子、その後ろに護衛騎士と宮廷魔導士。
王子の対面にはエステル様、その左隣にアイリナ様。
エステル様の右隣に私。私の隣にマーリン様。
私の背にはエステル様とマーリン様の手がしっかりと添えられているから、逃げたくても逃げられない状況だ。
まぁ逃げたところで、3日前の一件で冷黒王子が追ってくるのは分かってるから逃げないけどね。
それで、エステル様が私の身柄について王子に『近日中に話し合うための時間を作って欲しい』と望んだ通り、私達と別れてすぐに王子は行動を起こしたようだ。
エステル様曰く、今日の放課後の数時間を手紙で指定して来たらしい。
…ただねぇ。。
私の方は正直、今の心境は『もうどうにでもなれ』って感じの、投げやりな気持ちだったりするんだよね…。
というのも、あれから現在に至るまでの間に、私の精神はそれはも~ゴリゴリと。
削りに削られまくる出来事の数々が、怒涛のように押し寄せて来ましてね…。
そんな訳で、もう抵抗する気力がないんだよね…。
まぁでも、その御蔭で攻略対象と関わるのは御免蒙りたい所を、エステル様になら完全に任せても大丈夫だって思える状況にはなったんだけども。
てゆーか、私の立場的に、エステル様に任せるしかなくなったんだよね…。
( …ハァ~~~~。)
とりあえず、今日に至るまでの経緯を簡単に説明すると…
────3日前に一悶着があった翌朝からだな。
私は極力目立たないよ~にと、気配を消して学院に登校したんだけど。
なんと『庶民用』の[学院の門]の前に、エステル様達が佇んでいたのだ。
王族貴族が『庶民用』の門前に居るだなんて、普通なら考えられない事態だ。
なのに何でかその時の私は、疑問には思っても回れ右せず近づいていったんだよね。
(改めて思い返せば『【ゲーム補正】のせいで意識できなかったんだ』と分かるんだけど、分かったら分かったでエステル様達への警戒心がまるで無くなってる自分に驚きだし、【ゲーム補正】の強力さにゾッとしてるよ…。)
で。そのまま私は猪突猛進なアイリナ様に捕まり。
エステル様とマーリン様の元へと連行されてーの。
周囲から痛~い視線を浴びまくって魂が抜けた私を、マーリン様が教室へ手を引いて連行しーの。(懸念が本当になった瞬間だったよ。教室ではもう貝になるしかないな私‥。)
朝のHRが終わったら学院長から呼び出されてーの。(マーリン様も一緒に呼び出されました。)
学院長の部屋に入ったら何故かエステル様が居てーの。(エステル様は学院長と優雅にお茶してらっしゃいました。)
そこで学院長から、私が置かれている立場がどれだけ微妙なものかを説明されてーの。(その殆どが王族貴族絡みの派閥問題だったから、庶民の私には全く理解できなかったけどね。)
…と、気づけば私は、学院長公認で『エステル様に囲われることになった』んだよね…。
まぁ、私を取り込むことや、排除しようと目論む不穏な動きが想定されるから、この国で権力がある三柱の公爵令嬢で〔生徒会副会長〕でもあるエステル様が、学院長に進言して、私の指導役兼フォローを引き受けることが決まったと言われたのは理解できる。
できるけど…うん。我ながら凄い展開になって来てるなぁと思う訳ですよ…。
青Fには無かった攻略キャラ達との【敵対ルート】、攻略キャラ以外との【親愛?ルート】なストーリー展開を、幸か不幸か爆進中だもんなぁ…。
(う~ん…こんな筈じゃなかったんだけどなぁ。。)
まぁ、私は庶民の立場上、目の前に居る冷黒王子には直言も直視もできない立場なので。
(どう話が進んでも、成り行きに身を任せるしか無いんだけどね…。)
ということで、私は冷黒王子とエステル様の会話に口を挟まず目線は下に‥と意識しながら、3日前から今までの出来事を振り返ることにした。
* * * *
エステル様達と合流し、私を乗せたエステル様の馬車が、王都の中心街に本店を置くフォートレック商店に着いたのは18時を回った頃だった。
丁度うちの母が追加の商品を搬入中だったから、エステル様達を母に紹介して、お薦めの試供品を母子二人で選んでお渡しして、エステル様達とはそこで別れた。
(ちなみに母は、お貴族様相手でも普段と変わらぬニコニコ笑顔で、洗髪剤と整髪料の他にも、美容に良さそうな化粧品までしっかりと薦めて試供品を渡してて、二重の意味で凄いなぁと思ったのは余談だ。)
それで、エステル様達に試供品をお渡しした後は、特に何事もなく、母と共に帰路へ着いたのだけど。
ただね…【ゲーム補正】がね…。
別れ際にエステル様から、
「それではまた明日ね。ごきげんようリアさん。」と挨拶された時にさ。
薔薇とか牡丹とかの豪華な花が咲いたみたいな、
『華やかな笑顔』を真正面から向けられて、優しく髪を一撫されたんだよね…。
しかもそれに追従するように、アイリナ様とマーリン様も私の髪を一撫してきて、
「「ごきげんようリリアンさん。」」と『朗らかな笑顔』で言われるわで…。
いや貴女達、その笑顔のオンパレード、庶民の私に向けていい顔じゃないからね?!
私の髪質が理由で髪を撫でたくなる心境までは理解できるけれども!
三人揃って『甘々な笑顔』を私に向けてくるのはマズすぎる案件だからね!!?
…───とまぁ、こんな感じだった訳ですよ。。
私も頭じゃ【ゲーム補正】のせいだと分かってても、顔面偏差値100%超えの美女達から極上の笑顔を向けられれば、顔が茹でダコみたく真っ赤になるのは抑えられないし、数十秒は固まる羽目にもなる訳で…。(あのまま母から肩を叩かれなかったら、数十秒とは言わず数分は固まってたよ。)
いやホント、あの甘々な攻撃(?)の数々には参ったわ…。(てか、アイリナ様は勝気な笑顔しか見たことなかったから、朗らかにも笑えることに衝撃まで受けたし。)
ただ1点だけ、アイリナ様に関して言えば。
うちの母を見た時、私と交互に見比べて『え?こちらの御婦人がリリアンさんのお母様なの? あら…本当にお母様なのね。。‥リリアンさんの小鼠のような顔立ちはお父様似なのかしら…。。』とか心の中で推測してたのには、ジト目になったけど。
そのままアイリナ様をジト目で見た私に、何よ?って顔でアイリナ様が睨んで来たんだけど、いや私は悪くないと思うぞ?
アイリナ様の信じられない気持ちには同意するけど、“小鼠のような顔”って、軽くディスってる表現だからね?
しかしエステル様とマーリン様が、私と母の容姿が似てなさすぎる点に全く心が動いてなかったのには、私の方が驚いた。
二人とも普通に『あら…こちらの方がリアさん(リリアンさん)のお母様なのね…お綺麗な方だわ。』くらいの、さらっとした反応だったんだよね。
今まで出会ってきた人達は、アイリナ様みたく何かしら驚きの感情を“心の声”で伝えてきたから、それが当たり前になってた私は『へ? それだけ??』ってビックリした顔を二人に向けてしまって。
そしたら二人同時に『『あら、可愛い。』』って“心の声”でハモられたから、さっき以上にビックリした顔になったのに、…何故だか二人とも可笑しそうに微笑まれたんだよ…。
あのね。
普通なら二人の態度は、“有り得ない”態度なんだよ。
普通なら『二人の“心の声”に反応してしまった』私の表情に対して、何をそんなに驚いているのかと、不審に思われて追求されてる筈なのよ。
だって二人は私が『〔読心〕の能力持ち』なことは知らないんだから。
それがたった数時間の短い間に、何の疑いも掛けられずに、ここまで私のことを受け入れられた反応をされるとね…。
(どんだけ【ゲーム補正】がかかってるんだよってなる訳で‥。この先が思いやられるわ…。)
───で、さっきの話に戻るけど。
母と共に家に着いたら、今日から私が学院へ通うからと早めに父も兄も帰ってきてて、弟妹と一緒に出迎えてくれてね。
そのまま皆で母の夕食の支度を手伝いながら、今日起きた出来事を掻い摘んで家族に報告したのよ。
───内心、ビクビクしながらね‥。
私が言うのも何だけど、父も母も私のことを目に入れても痛くない位に可愛い娘だと、ラルフ兄に至っては溺愛レベルで可愛い妹だと、大切に思ってくれてるのを知ってたからさ。
入学初日でこんなに波瀾万丈なアレコレに遭ったことを報告したら、きっとすごく驚かれて、すごく心配されるだろうなぁって思ってたんだ。
だから、返ってくる反応が怖くてビクビクしてたんだけど。
私の報告が終わったら、皆で口を揃えて、
「「「まぁリアだからねぇ~‥(父母兄)」」」
って、驚きも心配もされず、何故か苦笑されたんだよ‥。
その反応に、私の方が『‥え、なんで苦笑い? 』って面食らってね。
困惑しつつも、驚きも心配もしないのは何かあるんだろうなって訝しんで、
「リアだからねぇ~‥ってどういう意味?」
って理由を聞いたんだ。
そしたらさぁ。
父も母もラルフ兄も、何の後ろ盾もない庶民の私が[魔法特待生]として入学する境遇的に、入学初日から目を付けられることとか、何らかのトラブルに巻き込まれるだろうと思っていたって言うじゃない。(ただまぁ、入学初日から第一王子とトラブルを起こしてくるとまでは思ってなかったらしいけど。)
その上で、“心の声”を聴く能力──〔読心〕を持ってる私なら、ある程度の問題は自分で回避できるだろうと思ってたんだって。
それを聞いた私は、なんてゆーか言い様のないモヤモヤしたものが込み上げてきちゃってね。
で。返す言葉がうまく見つからずに無言になって‥…結論、拗ねました。笑。
そりゃあ親からも兄からも信用されてるのは嬉しいし、皆に心配だってかけたくないと思ってるけど、全く驚きも心配もされないのはなんてゆーか、何だか寂しくなってしまったんだよね…。
そんな私の沈んだ雰囲気を感じたみたいで。
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「リアは父さん譲りのトラブル体質だからなぁ~。」
と労るように言われて頭を撫でられ。
母からは、
「その分リアはお母さん譲りの回避力の持ち主だから大丈夫よ。」
と優しく言われて抱きしめられ。
すぐ横ではラルフ兄が、
「父さんも母さんも僕も、リアの才能をいちばん理解してるし認めてるからね。‥リアを大切に思ってるからこそ、リアを信じて見守ってるんだよ。」
って、私と同じくらい寂しそうな顔で、困ったように言われちゃったらもう‥ね。
『本当は過保護に構いたくて仕方ないんだけどね…。』
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‥うん、ラルフ兄、ゴメン。
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「「リア姉、大丈夫ー?」」
と抱きつかれながら言われて。
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それで、一通り今日の出来事を話した後で、例の〔神降ろし〕ができる神官様を紹介してもらいたいことを、両親と兄に相談したんだよね。
そしたらさ。
悩むそぶりも一切無く、「そうかそうか、なら行ってきなさい」と、お布施料をポンと手渡されたんだよ。
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そしたらさ。
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まぁ、タイミングってあるよね…。
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もう一人は〔神下ろし〕をしたばかりで「全魔力を使い果たして療養中。次に〔神下ろし〕ができるくらいに魔力が回復するのは、あと5日はかかる」って言われてしまったんだ。
まぁ、5日待てば創世神様の意図を訊ける訳だしね。
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あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
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