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第3話 無自覚な奇跡と、忠誠の誓い
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城での朝は、驚くほど静謐で、そして贅沢な香りに満ちて始まる。
最高級の羽毛布団に包まれながら目覚めると、窓の外には白銀の世界が広がっている。
王都にいた頃は、日の出前に叩き起こされ、冷たい水で顔を洗うのが日課だった。
それが今ではどうだ。
ふかふかの天蓋付きベッド、部屋を暖める魔道具、そして朝一番に用意される温かい果実水。
これが夢なら、永遠に覚めないでほしいと思う。
だが、私の血管を巡る魔力の奔流が、これが紛れもない現実だと教えてくれている。
「ふあ……。今日もいい天気ね」
大きく伸びをして、私はテラスに出た。
北の辺境特有の、肺が凍りつきそうなほど冷たく澄んだ空気が心地よい。
体内のマナが呼応し、指先から金色の粒子がさらさらとこぼれ落ちる。
それが手すりに積もった雪に触れると、一瞬にして雪が解け、そこから季節外れのアイビーが勢いよく芽吹いた。
緑の蔦は私の魔力を吸ってぐんぐんと伸び、瞬く間にテラス全体を美しい緑のカーテンで覆い尽くしてしまう。
「あら、またやっちゃった。……まあ、緑があるのは目に良いことだし、このままでいいかしら」
王都では「枯れた」と罵られ続けた私の魔力だが、どうやらこの土地との相性が良すぎるらしい。
あるいは、あの黒い釜――『創世の器』だったかしら?――を触り続けているせいで、私の魔力回路そのものが変質しているのかもしれない。
まあ、細かいことはいい。
私が快適なら、それで全てよしだ。
着替えを済ませ、私は軽い足取りで広大な裏庭へと向かった。
朝の散歩は、錬金術のアイデアを練るのにちょうどいい。
敷石の道を歩いていると、向こうからミーナが重そうな洗濯籠を抱えて歩いてくるのが見えた。
いつもなら元気いっぱいに手を振ってくれる彼女だが、今日は足取りがふらつき、顔色も土気色をしている。
「おはよう、ミーナ。……顔色が悪いわよ? まるで幽霊みたい」
「あ、おはようございます、エル様……。へへ、バレちゃいました?」
ミーナが力なく笑い、その場にぺたりと座り込んだ。
「実は、ここ数日ずっと偏頭痛がひどくて……。この北の寒暖差に、まだ身体が慣れていないみたいなんです。目の奥がズキズキして、世界が回っているようで」
「それは大変。薬は飲んだの?」
「城の医務室で痛み止めをもらったんですけど、全然効かなくて。……あいたた、また波が来ました」
彼女がこめかみを押さえて呻く。
その苦痛に歪んだ顔を見て、私は即座に思考を切り替えた。
偏頭痛の原因は、血流の滞りと、自律神経の魔力的な乱れだ。
王都の治療院なら高額な施術が必要なケースだが、今の私ならもっと手軽に解決できる。
「ちょっとじっとしてて。今すぐ楽にしてあげるから」
「えっ、エル様? お手を煩わせるわけには……」
「いいから、いいから」
私は庭の植え込みに目を走らせる。
ちょうど足元に、可憐な白い花――『スノードロップ』が咲いていた。
一般的にはただの観賞用の花だが、その根には微弱ながら鎮痛作用がある成分が含まれているはずだ。
私はそれを一輪摘み取り、掌の中で優しく包み込んだ。
(抽出、濃縮、そして最適化……)
イメージするのは、血管の拡張と神経の鎮静。
私の指先から、黄金のマナが糸のように伸び、花の中へと入り込む。
植物の細胞壁を透過し、有効成分だけを瞬時に抽出。
さらに、そこに私の余剰魔力をたっぷりと混ぜ合わせ、効果を数千倍にブーストする。
私の魔力は、触媒を通すことで「万能薬」としての性質を帯びるようだ。
シュワァァァ……。
掌の中で、白い花が光の粒子となって崩れ、一滴の朝露のような雫へと変わった。
虹色に輝くその雫を、私はミーナの額にそっと押し当てた。
「えいっ、痛いの痛いの、飛んでいけ」
子供騙しのような呪文と共に、雫が肌に吸い込まれる。
その瞬間。
カッ!
ミーナの頭部を中心に、清浄な風が爆発的に吹き抜けた。
彼女の身体にまとわりついていた淀んだ灰色のもやが、悲鳴を上げて霧散していく。
どす黒く濁っていた瞳の色が、宝石のように鮮やかな栗色を取り戻し、肌には赤ちゃんのよう血色が差した。
「……え?」
ミーナが目をぱちくりとさせ、自分の顔をペタペタと触る。
「あ、あれ……? 頭が……軽い? いえ、軽いなんてものじゃありません! 重りが取れたみたいです!」
「ふふ、効いたみたいね」
「視界が! 視界が恐ろしいほどクリアです! 向こうの木の枝に止まっている虫の羽の模様まで見えます! それに、昨日掃除で痛めた腰も、万年冷え性だった足先も、全部ポカポカしてます!」
ミーナが信じられないという表情で、その場で高く飛び跳ねた。
その跳躍力たるや、常人の倍近い高さまで達している。
「エル様! これ、ただの魔法じゃないですよね!? 神様が降臨したのかと思いました!」
「大げさね。ただの応急処置よ。その辺の花を使っただけだもの」
私が苦笑していると、背後からガチャガチャと金属鎧が擦れ合う音が近づいてきた。
振り返ると、そこには屈強な騎士たちが十数名、整列して跪いていた。
先頭にいるのは、赤髪の巨漢。
公爵家騎士団を束ねる団長、ガイルだ。
「公爵家騎士団長ガイル、推参いたしました! エル殿、今の奇跡の御業……しかと拝見いたしました!」
ガイル団長が、地面に額を擦り付けんばかりの勢いで叫ぶ。
その声は感動に震え、涙声になっていた。
「我ら騎士団は、連日連夜、北限の強力な魔物たちとの戦闘で疲弊しきっております。傷は癒えず、魔力は枯渇し、皆どこかしらにガタが来ている状態……。どうか、その慈悲深い光を、我ら薄汚い騎士たちにも分けてはいただけないでしょうか!」
彼らの顔を見る。
確かに、どの騎士も目の下に濃い隈を作り、鎧の隙間からは包帯が覗いている。
北の守りがいかに過酷か、その身をもって証明していた。
ゼノス様のために命を張っている彼らを、このまま放置するなんてできない。
「分かりました。皆さん、朝ごはんはまだですよね?」
「はっ! 戦闘続きで、ここ数日は携行食の干し肉しか齧っておりません!」
「それはいけませんね。力が出る特製スープを作りましょう」
私は愛用の黒い釜を取り出し、庭の開けた場所にどすんと置いた。
料理と言っても、厨房に行く時間はない。
ここにあるもので済ませるしかないだろう。
「材料は……そうね、栄養価の高そうなものを」
私は周囲を見渡し、目についたものを片っ端から釜に放り込んだ。
まずは、そこら辺に生えている雑草。
いや、よく見れば生命力が強そうだし、食物繊維は豊富だろう。
次に、ミネラル補給のために、足元に落ちていた手頃な大きさの石ころ。
そして、水筒に入っていた残り水。
客観的に見れば、子供のままごと以下の、泥遊びにしか見えない光景だ。
騎士たちが「あんなゴミで何を……?」と困惑の表情を浮かべているのが分かる。
だが、錬金術の本質は「等価交換」ではない。
「概念の書き換え」だ。
私の魔力を繋ぎにすれば、ゴミだろうが石ころだろうが、極上のスープになるはずだ。
「美味しくなーれ、元気になーれ」
私は鼻歌交じりに、釜の中に手をかざした。
釜の底に眠る『深淵の魔力』が、私の呼びかけに応えて目を覚ます。
ドクン、と釜が脈動し、中に入れた石や草が、原子レベルで分解され、再構築されていく。
グツグツグツ……ボォォォォォンッ!!
釜の中から、黄金の光の柱が天に向かって噴き上がった。
周囲の雪が一瞬で蒸発し、季節外れの陽気のような暖かさが広がる。
そして漂ってきたのは、極上のコンソメと、数千種の薬草を煮込んだような、濃厚で芳醇な香り。
「できた。特製スタミナスープよ」
釜の中には、黄金色に輝くとろりとした液体が満ちていた。
それは、一口飲めば死者さえも走り出すと言われる伝説の霊薬『神々の晩餐』そのものだったが、私にとっては「ちょっと栄養価の高い朝ごはん」だ。
「さあ、皆さん。遠慮せずに飲んでください」
私が配ると、ガイル団長が恐る恐る器を受け取り、一口啜った。
「……っ!!?」
カッッッッッ!!
ガイル団長の全身が、白熱電球のように発光した。
彼の身体からバチバチと音を立てて火花が散り、着ていた鎧のサイズが合わなくなるほど筋肉が膨張する。
「うおおおおおっ! な、なんだこれは!? 身体の底からマグマのような力が湧き上がってくる!」
「団長!? ……お、俺も!」
他の騎士たちも次々とスープを口にし、その場で光に包まれた。
古傷が一瞬で塞がり、切断されたはずの小指が生え変わり、肌は赤子のようにツヤツヤになる。
それだけではない。
彼らの腰に佩いていた錆びついた鉄の剣が、スープの蒸気に触れただけで、銀色に輝く最高純度のミスリル合金へと変質してしまったのだ。
「魔力が……! 俺の魔力値が、測定限界を突破しているぞ!」
「見てくれ、この剣を! 伝説の聖剣エクスカリバーのような輝きだ!」
「身体が軽い! 今なら山の一つも粉砕できそうだ!」
騎士たちが歓喜の雄叫びを上げ、互いの身体を叩き合って喜びを爆発させている。
まるで、お祭り騒ぎだ。
少し効果が強すぎた気もするが、まあ、元気になったのなら結果オーライだろう。
「……何をしている、お前たちは」
その時。
場の空気を一瞬で凍りつかせる、絶対零度の声が響いた。
歓声がピタリと止む。
振り返ると、テラスにゼノス様が立っていた。
黒い軍服を乱れなく着こなし、その美貌には隠しきれない不機嫌さが滲んでいる。
彼はゆっくりと、しかし捕食者が獲物を追い詰めるような威圧感を放ちながら、こちらへ歩いてきた。
「ゼノス様、おはようございます。騎士の皆さんに、朝ごはんを振る舞っていたんです」
「朝ごはん、だと……?」
ゼノス様が、異様なオーラを放つ騎士たちを一瞥し、絶句した。
「ガイル……貴様、その右目の傷はどうした? 隻眼だったはずだろう」
「はっ! エル殿のスープを一口いただいただけで、眼球が再生いたしました! 視力も両目とも10.0を超えております!」
「……剣はどうだ。なぜ、我が家の宝物庫にある魔剣よりも神々しい輝きを放っている」
「はっ! スープの湯気を浴びただけで、勝手に進化いたしました! この剣からは、ドラゴンをも一撃で屠る波動を感じます!」
ゼノス様がこめかみを押さえ、深いため息をついた。
その溜息と共に、周囲の気温が三度は下がった気がする。
彼は私の元へ歩み寄ると、逃がさないように腰を強く抱き寄せた。
「エル……。お前は、この城の人間を全員、神の眷属に変えるつもりか?」
「ええっ、そんなつもりじゃ。ただ、石ころと雑草でスープを作っただけで……」
「石と雑草で、死者蘇生級の秘薬を作る錬金術師がどこにいる」
ゼノス様の瞳が、至近距離から私を射抜く。
そこにあるのは呆れではない。
底知れない独占欲と、狂おしいほどの執着だ。
彼は騎士たちを鋭く睨みつけた。
「おい、貴様ら。その力、誰のおかげだ?」
「「「エル様のおかげであります!!!」」」
「分かっているなら、心に刻め。エルは私のものだ。彼女が施したその奇跡も、彼女の存在そのものも、全て私が管理する」
彼は宣言と同時に、私の首筋に顔を埋め、所有の印を刻むように深く息を吸い込んだ。
その熱い吐息に、私の背筋がゾクゾクと震える。
「聞け! 本日より、エルを私の正式な婚約者として遇する。彼女に指一本でも触れる不届き者がいれば、この私が氷像に変えて砕く。……いいな?」
「「「ははーーっ!! エル様万歳! ゼノス閣下万歳!!」」」
騎士たちの怒号のような歓声が、北の空気を震わせた。
彼らは私に対し、主君に対するそれ以上の、信仰に近い眼差しを向けている。
私は顔から火が出るほど恥ずかしくて、ゼノス様の胸板に顔を押し付けるしかなかった。
「……ん? 何だ、あの不快な臭いは」
ふと、ゼノス様が顔を上げ、空を睨んだ。
遠くの空から、黒い点が一つ、ふらふらと飛んでくる。
それは、全身が半分焼け焦げた、一羽の伝令鳥だった。
王国の紋章が入った足環をつけているが、その羽毛からは鼻を突く焦げ臭さと、不浄な気配が漂っている。
鳥は私の足元に力尽きたように落ち、その足にくくりつけられていた書簡がポロリと転がった。
封蝋には、王太子の印章。
中身を見るまでもない。
『聖女エル、至急帰還せよ。これは王命である。
貴様が去ってから、国内の作物は全滅し、王太子殿下は謎の病に倒れられた。
水は腐り、大地は裂け、民は飢えている。
直ちに浄化を行い、我らを救え。さもなくば、武力を持って連れ戻す――』
書簡が勝手に開き、ジュリアスのヒステリックな声が再生される魔法が発動しかけた。
「……ゴミのような内容だな」
ボォッ!
ジュリアスの声が出る前に、ゼノス様が指先を弾いた。
青白い氷の炎が書簡を包み込み、一瞬にして灰すら残さずに消滅させた。
ついでに、足元の伝令鳥も氷漬けにして粉砕する。
「汚らわしい。我が領土の空気を汚すな」
ゼノス様は吐き捨てるように言い、汚いものを見た目で灰を風魔法で吹き飛ばした。
「エル、気にするな。あのような国、お前が戻る価値など微塵もない。不浄なカラスどもがお前に触れることは、二度とない」
「はい……。私、戻るつもりなんてありませんから」
「そうか。……いい子だ」
彼は満足そうに目を細め、私の顎を指で持ち上げた。
そのまま、衆目も憚らず、深く、所有欲に満ちた口づけを落とす。
背後では、騎士たちが「ヒューッ!」と指笛を鳴らして盛り上がっているが、今の私にはゼノス様の体温しか感じられなかった。
一方その頃、王国では。
「なぜだ……! なぜエルは戻ってこない!?」
王太子ジュリアスが、豪華な寝室のベッドの上で、獣のような絶叫を上げていた。
彼の美しい顔は見る影もなく崩れ、全身にどす黒い斑点が浮かび上がっている。
皮膚が乾燥してひび割れ、そこから膿のような体液がシーツを汚していた。
「あぐっ、ううぅ……! 熱い、身体が焼けるようだ! 誰か、誰か水をくれ!」
侍従が震える手で差し出した水杯を、ジュリアスは奪い取るように飲み干す。
だが、その水は彼の喉を通った瞬間、ヘドロのように腐敗し、彼にさらなる激痛を与えた。
「ぎゃああああああっ! 水が、水が腐っているぞ! 貴様、私を毒殺する気か!」
「め、滅相もございません! それは最高級の湧き水で……!」
「嘘をつけ! ……リン! 聖女リンはどうした!? 彼女の浄化魔法があれば!」
「そ、それが……リン様は……」
侍従が言い淀み、視線を逸らす。
窓の外を見れば、かつて「豊穣の都」と呼ばれた王都の空は、呪いの黒い雲に完全に覆い尽くされようとしていた。
大地は腐り果て、魔物の咆哮が城壁のすぐそこまで迫っている。
「畜生……畜生ぉぉぉぉっ! エル……エルさえいれば……!」
ジュリアスは爪を立てて自身の顔を掻きむしる。
彼がゴミとして捨てた私が、今頃、世界最強の男の腕の中で、極上のスープと愛に満たされていることなど知る由もなく。
絶望の叫びは、誰にも届くことなく闇に飲み込まれていった。
最高級の羽毛布団に包まれながら目覚めると、窓の外には白銀の世界が広がっている。
王都にいた頃は、日の出前に叩き起こされ、冷たい水で顔を洗うのが日課だった。
それが今ではどうだ。
ふかふかの天蓋付きベッド、部屋を暖める魔道具、そして朝一番に用意される温かい果実水。
これが夢なら、永遠に覚めないでほしいと思う。
だが、私の血管を巡る魔力の奔流が、これが紛れもない現実だと教えてくれている。
「ふあ……。今日もいい天気ね」
大きく伸びをして、私はテラスに出た。
北の辺境特有の、肺が凍りつきそうなほど冷たく澄んだ空気が心地よい。
体内のマナが呼応し、指先から金色の粒子がさらさらとこぼれ落ちる。
それが手すりに積もった雪に触れると、一瞬にして雪が解け、そこから季節外れのアイビーが勢いよく芽吹いた。
緑の蔦は私の魔力を吸ってぐんぐんと伸び、瞬く間にテラス全体を美しい緑のカーテンで覆い尽くしてしまう。
「あら、またやっちゃった。……まあ、緑があるのは目に良いことだし、このままでいいかしら」
王都では「枯れた」と罵られ続けた私の魔力だが、どうやらこの土地との相性が良すぎるらしい。
あるいは、あの黒い釜――『創世の器』だったかしら?――を触り続けているせいで、私の魔力回路そのものが変質しているのかもしれない。
まあ、細かいことはいい。
私が快適なら、それで全てよしだ。
着替えを済ませ、私は軽い足取りで広大な裏庭へと向かった。
朝の散歩は、錬金術のアイデアを練るのにちょうどいい。
敷石の道を歩いていると、向こうからミーナが重そうな洗濯籠を抱えて歩いてくるのが見えた。
いつもなら元気いっぱいに手を振ってくれる彼女だが、今日は足取りがふらつき、顔色も土気色をしている。
「おはよう、ミーナ。……顔色が悪いわよ? まるで幽霊みたい」
「あ、おはようございます、エル様……。へへ、バレちゃいました?」
ミーナが力なく笑い、その場にぺたりと座り込んだ。
「実は、ここ数日ずっと偏頭痛がひどくて……。この北の寒暖差に、まだ身体が慣れていないみたいなんです。目の奥がズキズキして、世界が回っているようで」
「それは大変。薬は飲んだの?」
「城の医務室で痛み止めをもらったんですけど、全然効かなくて。……あいたた、また波が来ました」
彼女がこめかみを押さえて呻く。
その苦痛に歪んだ顔を見て、私は即座に思考を切り替えた。
偏頭痛の原因は、血流の滞りと、自律神経の魔力的な乱れだ。
王都の治療院なら高額な施術が必要なケースだが、今の私ならもっと手軽に解決できる。
「ちょっとじっとしてて。今すぐ楽にしてあげるから」
「えっ、エル様? お手を煩わせるわけには……」
「いいから、いいから」
私は庭の植え込みに目を走らせる。
ちょうど足元に、可憐な白い花――『スノードロップ』が咲いていた。
一般的にはただの観賞用の花だが、その根には微弱ながら鎮痛作用がある成分が含まれているはずだ。
私はそれを一輪摘み取り、掌の中で優しく包み込んだ。
(抽出、濃縮、そして最適化……)
イメージするのは、血管の拡張と神経の鎮静。
私の指先から、黄金のマナが糸のように伸び、花の中へと入り込む。
植物の細胞壁を透過し、有効成分だけを瞬時に抽出。
さらに、そこに私の余剰魔力をたっぷりと混ぜ合わせ、効果を数千倍にブーストする。
私の魔力は、触媒を通すことで「万能薬」としての性質を帯びるようだ。
シュワァァァ……。
掌の中で、白い花が光の粒子となって崩れ、一滴の朝露のような雫へと変わった。
虹色に輝くその雫を、私はミーナの額にそっと押し当てた。
「えいっ、痛いの痛いの、飛んでいけ」
子供騙しのような呪文と共に、雫が肌に吸い込まれる。
その瞬間。
カッ!
ミーナの頭部を中心に、清浄な風が爆発的に吹き抜けた。
彼女の身体にまとわりついていた淀んだ灰色のもやが、悲鳴を上げて霧散していく。
どす黒く濁っていた瞳の色が、宝石のように鮮やかな栗色を取り戻し、肌には赤ちゃんのよう血色が差した。
「……え?」
ミーナが目をぱちくりとさせ、自分の顔をペタペタと触る。
「あ、あれ……? 頭が……軽い? いえ、軽いなんてものじゃありません! 重りが取れたみたいです!」
「ふふ、効いたみたいね」
「視界が! 視界が恐ろしいほどクリアです! 向こうの木の枝に止まっている虫の羽の模様まで見えます! それに、昨日掃除で痛めた腰も、万年冷え性だった足先も、全部ポカポカしてます!」
ミーナが信じられないという表情で、その場で高く飛び跳ねた。
その跳躍力たるや、常人の倍近い高さまで達している。
「エル様! これ、ただの魔法じゃないですよね!? 神様が降臨したのかと思いました!」
「大げさね。ただの応急処置よ。その辺の花を使っただけだもの」
私が苦笑していると、背後からガチャガチャと金属鎧が擦れ合う音が近づいてきた。
振り返ると、そこには屈強な騎士たちが十数名、整列して跪いていた。
先頭にいるのは、赤髪の巨漢。
公爵家騎士団を束ねる団長、ガイルだ。
「公爵家騎士団長ガイル、推参いたしました! エル殿、今の奇跡の御業……しかと拝見いたしました!」
ガイル団長が、地面に額を擦り付けんばかりの勢いで叫ぶ。
その声は感動に震え、涙声になっていた。
「我ら騎士団は、連日連夜、北限の強力な魔物たちとの戦闘で疲弊しきっております。傷は癒えず、魔力は枯渇し、皆どこかしらにガタが来ている状態……。どうか、その慈悲深い光を、我ら薄汚い騎士たちにも分けてはいただけないでしょうか!」
彼らの顔を見る。
確かに、どの騎士も目の下に濃い隈を作り、鎧の隙間からは包帯が覗いている。
北の守りがいかに過酷か、その身をもって証明していた。
ゼノス様のために命を張っている彼らを、このまま放置するなんてできない。
「分かりました。皆さん、朝ごはんはまだですよね?」
「はっ! 戦闘続きで、ここ数日は携行食の干し肉しか齧っておりません!」
「それはいけませんね。力が出る特製スープを作りましょう」
私は愛用の黒い釜を取り出し、庭の開けた場所にどすんと置いた。
料理と言っても、厨房に行く時間はない。
ここにあるもので済ませるしかないだろう。
「材料は……そうね、栄養価の高そうなものを」
私は周囲を見渡し、目についたものを片っ端から釜に放り込んだ。
まずは、そこら辺に生えている雑草。
いや、よく見れば生命力が強そうだし、食物繊維は豊富だろう。
次に、ミネラル補給のために、足元に落ちていた手頃な大きさの石ころ。
そして、水筒に入っていた残り水。
客観的に見れば、子供のままごと以下の、泥遊びにしか見えない光景だ。
騎士たちが「あんなゴミで何を……?」と困惑の表情を浮かべているのが分かる。
だが、錬金術の本質は「等価交換」ではない。
「概念の書き換え」だ。
私の魔力を繋ぎにすれば、ゴミだろうが石ころだろうが、極上のスープになるはずだ。
「美味しくなーれ、元気になーれ」
私は鼻歌交じりに、釜の中に手をかざした。
釜の底に眠る『深淵の魔力』が、私の呼びかけに応えて目を覚ます。
ドクン、と釜が脈動し、中に入れた石や草が、原子レベルで分解され、再構築されていく。
グツグツグツ……ボォォォォォンッ!!
釜の中から、黄金の光の柱が天に向かって噴き上がった。
周囲の雪が一瞬で蒸発し、季節外れの陽気のような暖かさが広がる。
そして漂ってきたのは、極上のコンソメと、数千種の薬草を煮込んだような、濃厚で芳醇な香り。
「できた。特製スタミナスープよ」
釜の中には、黄金色に輝くとろりとした液体が満ちていた。
それは、一口飲めば死者さえも走り出すと言われる伝説の霊薬『神々の晩餐』そのものだったが、私にとっては「ちょっと栄養価の高い朝ごはん」だ。
「さあ、皆さん。遠慮せずに飲んでください」
私が配ると、ガイル団長が恐る恐る器を受け取り、一口啜った。
「……っ!!?」
カッッッッッ!!
ガイル団長の全身が、白熱電球のように発光した。
彼の身体からバチバチと音を立てて火花が散り、着ていた鎧のサイズが合わなくなるほど筋肉が膨張する。
「うおおおおおっ! な、なんだこれは!? 身体の底からマグマのような力が湧き上がってくる!」
「団長!? ……お、俺も!」
他の騎士たちも次々とスープを口にし、その場で光に包まれた。
古傷が一瞬で塞がり、切断されたはずの小指が生え変わり、肌は赤子のようにツヤツヤになる。
それだけではない。
彼らの腰に佩いていた錆びついた鉄の剣が、スープの蒸気に触れただけで、銀色に輝く最高純度のミスリル合金へと変質してしまったのだ。
「魔力が……! 俺の魔力値が、測定限界を突破しているぞ!」
「見てくれ、この剣を! 伝説の聖剣エクスカリバーのような輝きだ!」
「身体が軽い! 今なら山の一つも粉砕できそうだ!」
騎士たちが歓喜の雄叫びを上げ、互いの身体を叩き合って喜びを爆発させている。
まるで、お祭り騒ぎだ。
少し効果が強すぎた気もするが、まあ、元気になったのなら結果オーライだろう。
「……何をしている、お前たちは」
その時。
場の空気を一瞬で凍りつかせる、絶対零度の声が響いた。
歓声がピタリと止む。
振り返ると、テラスにゼノス様が立っていた。
黒い軍服を乱れなく着こなし、その美貌には隠しきれない不機嫌さが滲んでいる。
彼はゆっくりと、しかし捕食者が獲物を追い詰めるような威圧感を放ちながら、こちらへ歩いてきた。
「ゼノス様、おはようございます。騎士の皆さんに、朝ごはんを振る舞っていたんです」
「朝ごはん、だと……?」
ゼノス様が、異様なオーラを放つ騎士たちを一瞥し、絶句した。
「ガイル……貴様、その右目の傷はどうした? 隻眼だったはずだろう」
「はっ! エル殿のスープを一口いただいただけで、眼球が再生いたしました! 視力も両目とも10.0を超えております!」
「……剣はどうだ。なぜ、我が家の宝物庫にある魔剣よりも神々しい輝きを放っている」
「はっ! スープの湯気を浴びただけで、勝手に進化いたしました! この剣からは、ドラゴンをも一撃で屠る波動を感じます!」
ゼノス様がこめかみを押さえ、深いため息をついた。
その溜息と共に、周囲の気温が三度は下がった気がする。
彼は私の元へ歩み寄ると、逃がさないように腰を強く抱き寄せた。
「エル……。お前は、この城の人間を全員、神の眷属に変えるつもりか?」
「ええっ、そんなつもりじゃ。ただ、石ころと雑草でスープを作っただけで……」
「石と雑草で、死者蘇生級の秘薬を作る錬金術師がどこにいる」
ゼノス様の瞳が、至近距離から私を射抜く。
そこにあるのは呆れではない。
底知れない独占欲と、狂おしいほどの執着だ。
彼は騎士たちを鋭く睨みつけた。
「おい、貴様ら。その力、誰のおかげだ?」
「「「エル様のおかげであります!!!」」」
「分かっているなら、心に刻め。エルは私のものだ。彼女が施したその奇跡も、彼女の存在そのものも、全て私が管理する」
彼は宣言と同時に、私の首筋に顔を埋め、所有の印を刻むように深く息を吸い込んだ。
その熱い吐息に、私の背筋がゾクゾクと震える。
「聞け! 本日より、エルを私の正式な婚約者として遇する。彼女に指一本でも触れる不届き者がいれば、この私が氷像に変えて砕く。……いいな?」
「「「ははーーっ!! エル様万歳! ゼノス閣下万歳!!」」」
騎士たちの怒号のような歓声が、北の空気を震わせた。
彼らは私に対し、主君に対するそれ以上の、信仰に近い眼差しを向けている。
私は顔から火が出るほど恥ずかしくて、ゼノス様の胸板に顔を押し付けるしかなかった。
「……ん? 何だ、あの不快な臭いは」
ふと、ゼノス様が顔を上げ、空を睨んだ。
遠くの空から、黒い点が一つ、ふらふらと飛んでくる。
それは、全身が半分焼け焦げた、一羽の伝令鳥だった。
王国の紋章が入った足環をつけているが、その羽毛からは鼻を突く焦げ臭さと、不浄な気配が漂っている。
鳥は私の足元に力尽きたように落ち、その足にくくりつけられていた書簡がポロリと転がった。
封蝋には、王太子の印章。
中身を見るまでもない。
『聖女エル、至急帰還せよ。これは王命である。
貴様が去ってから、国内の作物は全滅し、王太子殿下は謎の病に倒れられた。
水は腐り、大地は裂け、民は飢えている。
直ちに浄化を行い、我らを救え。さもなくば、武力を持って連れ戻す――』
書簡が勝手に開き、ジュリアスのヒステリックな声が再生される魔法が発動しかけた。
「……ゴミのような内容だな」
ボォッ!
ジュリアスの声が出る前に、ゼノス様が指先を弾いた。
青白い氷の炎が書簡を包み込み、一瞬にして灰すら残さずに消滅させた。
ついでに、足元の伝令鳥も氷漬けにして粉砕する。
「汚らわしい。我が領土の空気を汚すな」
ゼノス様は吐き捨てるように言い、汚いものを見た目で灰を風魔法で吹き飛ばした。
「エル、気にするな。あのような国、お前が戻る価値など微塵もない。不浄なカラスどもがお前に触れることは、二度とない」
「はい……。私、戻るつもりなんてありませんから」
「そうか。……いい子だ」
彼は満足そうに目を細め、私の顎を指で持ち上げた。
そのまま、衆目も憚らず、深く、所有欲に満ちた口づけを落とす。
背後では、騎士たちが「ヒューッ!」と指笛を鳴らして盛り上がっているが、今の私にはゼノス様の体温しか感じられなかった。
一方その頃、王国では。
「なぜだ……! なぜエルは戻ってこない!?」
王太子ジュリアスが、豪華な寝室のベッドの上で、獣のような絶叫を上げていた。
彼の美しい顔は見る影もなく崩れ、全身にどす黒い斑点が浮かび上がっている。
皮膚が乾燥してひび割れ、そこから膿のような体液がシーツを汚していた。
「あぐっ、ううぅ……! 熱い、身体が焼けるようだ! 誰か、誰か水をくれ!」
侍従が震える手で差し出した水杯を、ジュリアスは奪い取るように飲み干す。
だが、その水は彼の喉を通った瞬間、ヘドロのように腐敗し、彼にさらなる激痛を与えた。
「ぎゃああああああっ! 水が、水が腐っているぞ! 貴様、私を毒殺する気か!」
「め、滅相もございません! それは最高級の湧き水で……!」
「嘘をつけ! ……リン! 聖女リンはどうした!? 彼女の浄化魔法があれば!」
「そ、それが……リン様は……」
侍従が言い淀み、視線を逸らす。
窓の外を見れば、かつて「豊穣の都」と呼ばれた王都の空は、呪いの黒い雲に完全に覆い尽くされようとしていた。
大地は腐り果て、魔物の咆哮が城壁のすぐそこまで迫っている。
「畜生……畜生ぉぉぉぉっ! エル……エルさえいれば……!」
ジュリアスは爪を立てて自身の顔を掻きむしる。
彼がゴミとして捨てた私が、今頃、世界最強の男の腕の中で、極上のスープと愛に満たされていることなど知る由もなく。
絶望の叫びは、誰にも届くことなく闇に飲み込まれていった。
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