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第1章 おじさんと異世界の人々
第23話
仕切り直しだ。
今度は、極端なブレンドを試してみる。
マーレ七割、ブルナ一割、レオナ二割。
逆に、ブルナ六割、マーレ三割、レオナ一割。
──無茶苦茶な配合に見えるが、こういうところから傑作は生まれる。
ミルで挽き、手際よく淹れる。
「──よし」
二杯並べ、まずはマーレ七割から。
ずしりとくる深いコク。
だが、後味にほんのり、ブルナの花のような香りが混じる。
「悪くねぇ」
続いて、ブルナ六割の方。
口に含んだ瞬間、ふわりと広がる華やかさ。
そして、奥に潜むレオナ由来のまろやかさ。
「……これも、ありか」
どちらも悪くない。
だが、まだ完璧じゃない。
「──もう少し、煮詰めるか」
独りごちながら、カウンターに腰掛け、煙草を取り出す。
火をつけ、一服。
甘く、深く、肺に広がる香り。
俺の求めるのは、この感覚だ。
「一発で正解なんか、出るわけねぇよな」
ぼそりと笑って、煙を吐き出した。
焦らず、じっくりと。
コーヒーも煙草も、時間をかけて育てるもんだ。
◇
試作を重ねるうちに、コツが掴めてきた。
やみくもに配合を変えるんじゃない。
それぞれの豆が持つ個性を、どう引き立て、どう組み合わせるか。
「──主張させすぎず、かといって埋もれさせず、か」
カウンターに肘をつきながら、ぼそりと呟く。
俺の目指すのは、調和。
苦味、酸味、甘み、コク──すべてがバランス良く絡み合い、しかも一杯飲み終えた後に、ほんのりと余韻を残す。
そんなブレンド。
◇
新たに三種類の配合を考え、試作する。
マーレ深緑五割、ブルナ草三割、レオナ湖畔二割──これが基本。
そこから、微妙に比率を変えたバリエーションを作る。
一杯、また一杯。
ドリップして、啜って、味を確かめる。
「……惜しいな」
「……こっちは少し雑味が出るか」
「……これも悪くねぇが、まだ軽い」
ぶつぶつと独り言を繰り返しながら、地道なテイスティングを続けた。
香り、口当たり、喉越し、後味──。
一つ一つ、丹念に確認する。
◇
夕方近く。
何杯目か、数えるのも億劫になってきたころ。
「──これだ」
思わず、呟いた。
マーレ深緑五割、ブルナ草二割五分、レオナ湖畔二割五分。
一見、平凡な配合。
だが──。
口に含んだ瞬間、豊かなコクとほのかな酸味が絶妙に溶け合い、後から優しい甘みがふわりと立ち上る。
そして、喉を通った後にも、柔らかな余韻が長く残る。
深く、でも重すぎない。
華やかだが、派手すぎない。
まさに、俺が求めていたバランス。
「──完成、だな」
カップを傾け、最後の一滴までゆっくりと味わう。
自然と、頬が緩んだ。
これなら、誰に出しても胸を張れる。
いや、誰に出すかはともかく──。
俺自身が、心から満足できる。
それが一番だ。
◇
残った豆を、丁寧に保存瓶に詰める。
瓶には、ラベル代わりに小さく「オリジナルNo.1」とだけ記した。
まだ改良の余地はあるかもしれない。
だが今は、これでいい。
焦る必要なんか、どこにもない。
「──ただ、一杯と一服」
誰に急かされるでもなく。
誰に褒められるためでもなく。
自分のためだけに。
俺は、今日も紫炎をくゆらせながら、最高のコーヒーを淹れる。
今度は、極端なブレンドを試してみる。
マーレ七割、ブルナ一割、レオナ二割。
逆に、ブルナ六割、マーレ三割、レオナ一割。
──無茶苦茶な配合に見えるが、こういうところから傑作は生まれる。
ミルで挽き、手際よく淹れる。
「──よし」
二杯並べ、まずはマーレ七割から。
ずしりとくる深いコク。
だが、後味にほんのり、ブルナの花のような香りが混じる。
「悪くねぇ」
続いて、ブルナ六割の方。
口に含んだ瞬間、ふわりと広がる華やかさ。
そして、奥に潜むレオナ由来のまろやかさ。
「……これも、ありか」
どちらも悪くない。
だが、まだ完璧じゃない。
「──もう少し、煮詰めるか」
独りごちながら、カウンターに腰掛け、煙草を取り出す。
火をつけ、一服。
甘く、深く、肺に広がる香り。
俺の求めるのは、この感覚だ。
「一発で正解なんか、出るわけねぇよな」
ぼそりと笑って、煙を吐き出した。
焦らず、じっくりと。
コーヒーも煙草も、時間をかけて育てるもんだ。
◇
試作を重ねるうちに、コツが掴めてきた。
やみくもに配合を変えるんじゃない。
それぞれの豆が持つ個性を、どう引き立て、どう組み合わせるか。
「──主張させすぎず、かといって埋もれさせず、か」
カウンターに肘をつきながら、ぼそりと呟く。
俺の目指すのは、調和。
苦味、酸味、甘み、コク──すべてがバランス良く絡み合い、しかも一杯飲み終えた後に、ほんのりと余韻を残す。
そんなブレンド。
◇
新たに三種類の配合を考え、試作する。
マーレ深緑五割、ブルナ草三割、レオナ湖畔二割──これが基本。
そこから、微妙に比率を変えたバリエーションを作る。
一杯、また一杯。
ドリップして、啜って、味を確かめる。
「……惜しいな」
「……こっちは少し雑味が出るか」
「……これも悪くねぇが、まだ軽い」
ぶつぶつと独り言を繰り返しながら、地道なテイスティングを続けた。
香り、口当たり、喉越し、後味──。
一つ一つ、丹念に確認する。
◇
夕方近く。
何杯目か、数えるのも億劫になってきたころ。
「──これだ」
思わず、呟いた。
マーレ深緑五割、ブルナ草二割五分、レオナ湖畔二割五分。
一見、平凡な配合。
だが──。
口に含んだ瞬間、豊かなコクとほのかな酸味が絶妙に溶け合い、後から優しい甘みがふわりと立ち上る。
そして、喉を通った後にも、柔らかな余韻が長く残る。
深く、でも重すぎない。
華やかだが、派手すぎない。
まさに、俺が求めていたバランス。
「──完成、だな」
カップを傾け、最後の一滴までゆっくりと味わう。
自然と、頬が緩んだ。
これなら、誰に出しても胸を張れる。
いや、誰に出すかはともかく──。
俺自身が、心から満足できる。
それが一番だ。
◇
残った豆を、丁寧に保存瓶に詰める。
瓶には、ラベル代わりに小さく「オリジナルNo.1」とだけ記した。
まだ改良の余地はあるかもしれない。
だが今は、これでいい。
焦る必要なんか、どこにもない。
「──ただ、一杯と一服」
誰に急かされるでもなく。
誰に褒められるためでもなく。
自分のためだけに。
俺は、今日も紫炎をくゆらせながら、最高のコーヒーを淹れる。
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