サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

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第67話

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新たに制圧した拠点から、さらに西へ進軍して三日目。
異様な波動を感知した。

(フィン、前方異常感知)

(どの程度の規模ですか?)

(今までとは桁が違う。しかも……人工物の気配だ)

フィンがすぐに指示を飛ばす。

(遊撃隊、先行して調査! 防衛隊、陣形を組め!)

「了解!」

「偵察開始します!」

数時間後、偵察隊が帰還した。

(王、報告します!)

(言え)

(前方に巨大な遺跡群を発見しました! 自然物ではありません。明らかに人工の建造物です!)

(古代遺跡か)

フィンが息を呑んだ。

(王、どうします?)

(進軍継続。遺跡を制圧する)

(了解ッ!)

全軍に命令を飛ばし、俺たちは深海底の遺跡へと向かった。

黒く染まった海底に、無数の石柱。
巨大なドーム型の建造物が海底に半壊した状態で横たわっていた。

ただの廃墟ではない。
空気が違う。
内部から何か得体の知れない存在が覗いている気配がした。

(フィン、警戒を怠るな)

(もちろんです! 突撃隊、防衛隊、配置完了!)

「異常なし!」

「進軍準備完了!」

全軍整列し、遺跡内部へと突入した。

内部は暗かった。
生物の気配はない。
だが、ただならぬ重圧が空間を満たしている。

フィンが呟いた。

(王……気味が悪いです)

(気にするな。敵が出てくるなら、それでいい)

俺たちはさらに進んだ。

遺跡の中心部、巨大なホールにたどり着いた。

そこで、感知スキルが強烈な反応を捉えた。

(来るぞ──!)

叫んだ瞬間、ホールの奥から、巨大な影が姿を現した。

全長五〇メートル以上。
黒くぬめる鱗、無数の腕、裂けた顎。
ただそこに存在するだけで、海水が震えている。

フィンが絶叫した。

(王! 古代モンスターです!!)

(わかってる! 全軍戦闘態勢!!)

「突撃隊、前へ!」

「遊撃隊、側面へ回り込め!」

「防衛隊、後方支援に回れ!」

軍勢が一斉に動き、古代モンスターに殺到する。

俺は最前列で骨槍を構えた。

古代モンスターがうねりを上げて動き出した。
触手が蠢き、巨大な顎が軋む音を立てる。

(フィン、突撃隊、右から回り込め)

(了解ッ!)

(遊撃隊、左翼から撹乱、側面を崩せ!)

(任せろ!)

(防衛隊、後方から支援と援護射撃を集中しろ!)

(了解ッ!)

指示と同時に軍勢が分散、三方向から一気に攻めかかる。

俺は正面から突っ込んだ。

骨槍を構え、一気に距離を詰める。

触手が襲いかかってくるが、水流支配で進路をずらし、硬鱗化した爪で叩き落とした。

フィンが叫ぶ。

(王、触手の根元が脆い!)

(そこを狙え!)

突撃隊が突き刺さるように突進し、触手を引き裂き始める。

古代モンスターが咆哮した。

「グォォォオオオッ!」

水流が爆発するが、俺たちは止まらない。

防衛隊が即座に渦潮掌握で周囲の流れを抑え込み、突撃隊が肉薄する。

(フィン、胴体の核を探せ!)

(了解!)

フィンが感知スキルを最大展開し、周囲を走査する。

(王、胴体中央に異常反応あり! 間違いなく核です!)

(よし、そこを叩く!)

遊撃隊が側面から集中攻撃を仕掛け、触手を削ぎ落としていく。

俺は一気に加速した。

硬鱗化、渦潮掌握、高速遊泳。
全てを同時に発動し、核へ一直線に突撃。

巨大な腕が遮ろうとするが、構わず叩き潰す。

骨槍を全力で突き立てた。

ズガァァァンッ!

鈍い音が響き、核にヒビが走った。

古代モンスターが身をよじり、周囲の兵を振り払おうと暴れまわる。

だがフィンが叫ぶ。

(押し込め! 今しかない!)

「押せぇぇ!」

「王を援護しろ!」

「核を破壊しろ!」

突撃隊、遊撃隊、防衛隊、全軍が突撃をかける。

水中が血と破片に染まる。

俺は牙を剥き出しにしてさらに槍を突き立てた。

ガリガリと嫌な音が響き、核が砕けかける。

古代モンスターが最後の咆哮を上げた。

「グオオオオオオオ!!」

一閃。

俺は全力で硬鱗化した爪を振り抜き、核を叩き割った。

バキィィィン!

核が砕け、古代モンスターの巨体が崩れ落ちた。

フィンが駆け寄ってくる。

(王、討伐完了!!)

(死者は?)

(ゼロ! 軽傷者数名のみです!)

(上出来だ)

兵たちが歓声を上げる。

「王がやったぞ!」

「古代モンスター討伐成功!」

「俺たちがこの海を制したんだ!」

だが、浮かれている暇はない。

俺はすぐに指示を飛ばした。

(補給部隊、核の残骸を回収しろ)

(了解ッ!)

(遊撃隊は周辺警戒! 異常があれば即座に報告しろ!)

(了解ッ!)

フィンが隣に立った。

(王、この核……ただのエネルギー源じゃありません)

(わかってる。遺跡全体を支えていたコアだ)

(このままだと……)

俺は頷いた。

(遺跡崩壊が始まる。全軍、即時撤退準備)

(了解ッ!!)

突撃隊が急ぎ集合し、防衛隊が周囲を警戒しながら後退を開始する。

遊撃隊も最終確認を終え、撤収ルートに合流する。

海底遺跡が音を立てて崩れ始めた。

巨大な石柱が倒れ、ドーム型の建造物がひしゃげ、瓦礫が沈んでいく。

(急げ)

フィンが咆哮を上げた。

(全軍、脱出急げぇぇぇ!!)

俺は軍勢の最後尾につき、遺跡を脱出するまで指揮を取り続けた。
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