追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

文字の大きさ
26 / 66

第26話

しおりを挟む
 アウローラ自由特区連邦が正式に独立国として歩み始めたことで、世界は大きく揺れましたの。王国は表向きには沈黙を守っておりましたけれど、裏では着々と圧力を強めてきておりましたわ。

 「お嬢様、王国からの交易船が、特区向けの物資輸送を一方的に停止しました!」

 リゼが駆け込んできた報告に、わたくしはあくびを噛み殺しながら答えましたの。

 「予想通りですわね。リゼ、代替ルートの確保状況は?」

 「はいっ! 自由都市群と沿岸同盟から輸送隊を編成済みです!」

 「よろしい。取るに足らない妨害ですわ。むしろ、王国製品に頼らずに済む分、こちらの独自色が強まりますわね」

 わたくしは優雅に指先を弾き、書類をめくりましたの。

 「リゼ、次は“技術開放宣言”を準備なさい」

 「ぎ、技術開放……!?」

 リゼが素っ頓狂な声を上げるのも無理はありませんわ。でも、わたくしの頭の中ではすでにシミュレーション済みですの。

 「ええ。わたくしがこれまで開発した中で、特に汎用性の高い技術群を公開しますわ」

 「でも、それって……王国にも利用されちゃうかも……!」

 「構いませんわ」

 わたくしはきっぱりと言い切りましたの。

 「知識は、閉じ込めれば腐りますの。拡げてこそ、発展する。そして、拡がった知識の果てに生まれる“応用”こそ、真の力になりますわ」

 リゼがぽかんと口を開けたまま固まっておりましたけれど、すぐに必死でメモを取り始めましたの。

 「と、とにかく準備ですね! 開放リスト、すぐまとめます!」

 「よろしいですわ」

 数日後、アウローラ自由特区連邦は、世界に向けて正式に技術開放を宣言いたしましたの。

 ――「知識はすべての者のものであり、自由であるべきである」――

 わたくしが書いたその言葉は、瞬く間に広がり、各国の技術者たちを狂喜させましたわ。

 「お嬢様! 自由都市群の魔導技術学院が、特区式カリキュラムの導入を決定しました!」

 「北方鉱山都市連合も、特区式採掘技術を正式採用です!」

 「沿岸交易同盟では、特区式航路管理システムが標準化されました!」

 リゼが次々と報告を読み上げるたびに、わたくしの胸は高鳴りましたの。ええ、これこそ、わたくしが望んだ世界の変革。

 王国の古びた支配体制が、知識の奔流に押し流されていくさまを、わたくしは確かに見ておりましたの。

 だが、当然ながら、王国も黙ってやられるつもりはなかったようですわ。

 「お嬢様、王国が新たな“特別技術院”を設立しました!」

 「ほう……」

 わたくしは興味深く耳を傾けましたの。

 「“対アウローラ技術防衛局”という名目で、特区由来技術の取り込みと防衛を目的に動き出しているそうです!」

 「ええ、結構ですわ」

 わたくしは薄く笑いましたの。

 「後追いで技術を模倣しようとする限り、彼らは永遠にわたくしの背中すら捉えられませんわ」

 リゼが力強く頷くのを見て、わたくしは更なる一手を指示しましたの。

 「リゼ、“未来技術開発局”を設立いたしますわ。すべての技術をさらに三歩先へ進めるために」

 「了解です!」

 未来技術開発局、略して“未来局”の設立により、アウローラは常に先手を取り続ける体制を築きましたの。新しい魔導動力機関の開発、次世代通信網の構築、空間転移技術の応用研究――すべてが、わたくしの指揮のもとに動き出しましたわ。

 そして、時代は、さらに大きく動きましたの。

 「お嬢様! ついに、周辺小国家群からも、アウローラ加盟要請が……!」

 リゼが泣きそうな顔で報告してまいりましたわ。

 「当然ですわ」

 わたくしは微笑みましたの。

 「知識と自由を求める者にとって、アウローラは唯一の道なのですもの」

 加盟を受け入れた国家群を再編し、アウローラ連邦はその版図を広げましたの。経済圏は拡大し、魔導技術は世界標準となり、王国の支配力は日に日に衰えていきましたわ。

 リゼがわたくしを見上げて言いましたの。

 「お嬢様……世界を変えたんですね」

 「ええ、でもまだ“始まり”にすぎませんわ」

 わたくしは力強く言い切りましたの。

 「わたくしたちが目指すのは、“知識の理想郷”。世界のすべてに、自由と繁栄をもたらすことですわ!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...