追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

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第26話

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 アウローラ自由特区連邦が正式に独立国として歩み始めたことで、世界は大きく揺れましたの。王国は表向きには沈黙を守っておりましたけれど、裏では着々と圧力を強めてきておりましたわ。

 「お嬢様、王国からの交易船が、特区向けの物資輸送を一方的に停止しました!」

 リゼが駆け込んできた報告に、わたくしはあくびを噛み殺しながら答えましたの。

 「予想通りですわね。リゼ、代替ルートの確保状況は?」

 「はいっ! 自由都市群と沿岸同盟から輸送隊を編成済みです!」

 「よろしい。取るに足らない妨害ですわ。むしろ、王国製品に頼らずに済む分、こちらの独自色が強まりますわね」

 わたくしは優雅に指先を弾き、書類をめくりましたの。

 「リゼ、次は“技術開放宣言”を準備なさい」

 「ぎ、技術開放……!?」

 リゼが素っ頓狂な声を上げるのも無理はありませんわ。でも、わたくしの頭の中ではすでにシミュレーション済みですの。

 「ええ。わたくしがこれまで開発した中で、特に汎用性の高い技術群を公開しますわ」

 「でも、それって……王国にも利用されちゃうかも……!」

 「構いませんわ」

 わたくしはきっぱりと言い切りましたの。

 「知識は、閉じ込めれば腐りますの。拡げてこそ、発展する。そして、拡がった知識の果てに生まれる“応用”こそ、真の力になりますわ」

 リゼがぽかんと口を開けたまま固まっておりましたけれど、すぐに必死でメモを取り始めましたの。

 「と、とにかく準備ですね! 開放リスト、すぐまとめます!」

 「よろしいですわ」

 数日後、アウローラ自由特区連邦は、世界に向けて正式に技術開放を宣言いたしましたの。

 ――「知識はすべての者のものであり、自由であるべきである」――

 わたくしが書いたその言葉は、瞬く間に広がり、各国の技術者たちを狂喜させましたわ。

 「お嬢様! 自由都市群の魔導技術学院が、特区式カリキュラムの導入を決定しました!」

 「北方鉱山都市連合も、特区式採掘技術を正式採用です!」

 「沿岸交易同盟では、特区式航路管理システムが標準化されました!」

 リゼが次々と報告を読み上げるたびに、わたくしの胸は高鳴りましたの。ええ、これこそ、わたくしが望んだ世界の変革。

 王国の古びた支配体制が、知識の奔流に押し流されていくさまを、わたくしは確かに見ておりましたの。

 だが、当然ながら、王国も黙ってやられるつもりはなかったようですわ。

 「お嬢様、王国が新たな“特別技術院”を設立しました!」

 「ほう……」

 わたくしは興味深く耳を傾けましたの。

 「“対アウローラ技術防衛局”という名目で、特区由来技術の取り込みと防衛を目的に動き出しているそうです!」

 「ええ、結構ですわ」

 わたくしは薄く笑いましたの。

 「後追いで技術を模倣しようとする限り、彼らは永遠にわたくしの背中すら捉えられませんわ」

 リゼが力強く頷くのを見て、わたくしは更なる一手を指示しましたの。

 「リゼ、“未来技術開発局”を設立いたしますわ。すべての技術をさらに三歩先へ進めるために」

 「了解です!」

 未来技術開発局、略して“未来局”の設立により、アウローラは常に先手を取り続ける体制を築きましたの。新しい魔導動力機関の開発、次世代通信網の構築、空間転移技術の応用研究――すべてが、わたくしの指揮のもとに動き出しましたわ。

 そして、時代は、さらに大きく動きましたの。

 「お嬢様! ついに、周辺小国家群からも、アウローラ加盟要請が……!」

 リゼが泣きそうな顔で報告してまいりましたわ。

 「当然ですわ」

 わたくしは微笑みましたの。

 「知識と自由を求める者にとって、アウローラは唯一の道なのですもの」

 加盟を受け入れた国家群を再編し、アウローラ連邦はその版図を広げましたの。経済圏は拡大し、魔導技術は世界標準となり、王国の支配力は日に日に衰えていきましたわ。

 リゼがわたくしを見上げて言いましたの。

 「お嬢様……世界を変えたんですね」

 「ええ、でもまだ“始まり”にすぎませんわ」

 わたくしは力強く言い切りましたの。

 「わたくしたちが目指すのは、“知識の理想郷”。世界のすべてに、自由と繁栄をもたらすことですわ!」
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