追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

第25話

　わたくしが新国家建設に向けて動き出すと、特区中が目に見えて活気づきましたの。

　各工房は昼夜問わず稼働し、魔導士たちは新たな生活インフラの設計に夢中になり、子供たちは胸を張って「未来を作るんだ」と叫びながら魔導学を学び続けておりますの。

　「リゼ、議会設立の進捗は？」

　「はいっ！　各区画から代表候補者が出揃いました！　ただ、選挙方法についてちょっと揉めていて……」

　「ふふ、よろしいではありませんの。揉めるのは健全な証拠。討議を経てこそ、真に価値ある制度が育つのですわ」

　わたくしが微笑むと、リゼも少し緊張を緩めた様子で頷きましたの。

　「それから、国名候補ですが……」

　リゼが紙束を取り出して見せましたわ。

　「“リュクス連邦”、“魔導自由共和国”、“グリムヴァルト自治領”……などが上がっています！」

　「まあ、悪くはありませんわね。でも、“グリムヴァルト”を冠するのはやめなさい。これはわたくし個人のためではなく、民の未来のための国家ですもの」

　わたくしがそう告げると、リゼは目を潤ませながら小さく「はい」と応えましたわ。

　「では、民に決めさせましょう。国名投票を実施いたしますわ」

　「了解です！」

　すぐさま投票準備が進められ、数日後には特区全域を挙げての一大イベントになりましたの。民が、自らの国の名を選び取る。これこそが、わたくしの理想の第一歩ですわ。

　投票結果が出たのは、その二日後。

　「お嬢様、決まりました！」

　「どれに？」

　「“アウローラ自由特区連邦”です！」

　「アウローラ……暁の光、ですのね」

　わたくしはその名を口にして、満足げに微笑みましたわ。ええ、実にふさわしい。知識によって夜を破り、新たな時代を照らす光。それこそ、わたくしが目指す未来そのもの。

　「よろしい、では正式に国名を宣言いたしますわ」

　その日、特区の中心広場には、老若男女問わずすべての民が集まりましたの。わたくしは壇上に立ち、手を高く掲げて宣言しましたわ。

　「本日をもって、我々は“アウローラ自由特区連邦”を建国いたします！」

　歓声が、地を揺るがすほどに響き渡りましたの。民たちの目には、確かな誇りと希望が宿っておりましたわ。

　「リゼ、すぐに外交部門を設立なさい」

　「は、はいっ！　あの、でも……外交って、どこに向けて？」

　「当然、王国以外のすべてですわ。自由都市群、鉱山都市連合、沿岸交易同盟……一つずつ友好条約を結び、技術と知識を通じて連携を広げますの」

　「でも、王国が黙ってないかも……」

　「黙らせますわ」

　わたくしははっきりと告げましたの。

　「技術と経済で押さえ込むのですわ。剣ではなく、知恵で勝つ。それがわたくしの戦い方ですもの」

　リゼが力強く頷き、すぐさま動き出しましたの。ええ、頼もしい右腕になりましたわ、この子も。

　外交交渉が始まると、最初に反応を示したのは自由都市群でしたの。

　「お嬢様！　自由都市群代表議会が、“アウローラとの友好関係構築に前向き”だと！」

　「当然ですわ。彼らは自由を何より重んじる。ならば、わたくしの作る新たな秩序にこそ惹かれるでしょう」

　わたくしはすぐに特使団を編成し、自由都市群との間で「知識と技術の相互援助条約」を締結いたしましたの。

　「これで、こちらの技術は自由都市全域へ流通できますわ」

　リゼが喜びを隠しきれずに報告してきましたけれど、わたくしはそれを当然と受け止めましたの。

　「ふふ、これが第一歩ですわよ、リゼ。アウローラが世界を変える、その第一歩」

　続いて、鉱山都市連合とも交渉を開始いたしましたの。

　「彼らには、特区式の新型採掘魔導具を提供する条件で資源供給契約を取り付けますわ」

　「了解です！」

　特使たちが動き出し、数週間後には連合側から正式な調印の申し出がありましたの。

　「これで資源も確保できましたわ。経済基盤はますます盤石になりますわね」

　リゼと顔を見合わせ、わたくしたちは声を上げて笑いましたの。

　すべては計画通り。

　わたくしの描く未来図は、着実に現実となっていくのですわ。