追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

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第28話

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 世界魔導標準化計画、それはアウローラの技術を世界共通規格とするための壮大な構想ですわ。

 特区発の技術体系を国際基準にしてしまえば、どの国もわたくしの作った枠組みから逃れられなくなりますの。ええ、もはやわたくしに刃向かうことなどできなくなりますわ。

 「リゼ、標準規格制定委員会の立ち上げは?」

 「完了しております! 各都市国家から技術代表を招集済みです!」

 「よろしいですわ。まずは基礎魔導素子規格から制定いたしますのよ」

 「了解です!」

 広場では既に、各国の代表たちが集まって議論を始めておりましたの。自由都市群、鉱山連合、沿岸交易同盟、そして新たに加盟した小国群。みな、アウローラ式技術なしでは生き残れぬと悟っている者たちばかり。

 「お嬢様、会議での支持率、九割を超えています!」

 リゼが興奮気味に囁いてきましたわ。

 「当然ですわね。彼らにとって最も合理的な選択肢が、わたくしなのですもの」

 初回会議はわずか三日で合意に至りましたの。これにより、世界の七割を覆う魔導技術基盤がアウローラ式に統一されることが決定したのですわ。

 「次は、生産規格、流通規格、教育カリキュラム規格も標準化しますわよ」

 「はいっ!」

 リゼが必死にメモを取る姿を見て、わたくしは心地よい満足感を覚えましたの。

 でも、そんな中でひとつ、気になる報告が入りましたの。

 「お嬢様、王国技術院が独自の新型魔導炉を発表しました!」

 「ほう?」

 「“特区に依存せず、独自路線を歩むための革新技術”だと……」

 わたくしは思わず笑ってしまいましたわ。

 「面白いですわね。では、その実物を見せていただきましょうか」

 すぐに情報部を動かし、王国の新型魔導炉に関するデータを収集させましたの。

 「お嬢様、解析完了しました! ですが……」

 「ですが?」

 「特区初期型魔導炉の模倣品でした!」

 リゼが怒りを滲ませて報告してきましたの。

 「ふふ、模倣しかできぬのですわ、あの連中は」

 わたくしは嘲るように微笑みましたの。

 「劣化品を並べても、時代は動きませんわ。未来を創るのは、常に本物だけですもの」

 とはいえ、わたくしは念には念を入れましたの。

 「リゼ、未来局に命じなさい。“次世代魔導炉計画”を最優先で推進するように」

 「了解です!」

 わたくしたちが一歩先を行き続ける限り、王国は永遠にわたくしの背を追い続ける運命ですわ。

 そんなある日のことでしたの。

 「お嬢様! 特区中央広場に、謎の人物が現れました!」

 リゼが血相を変えて飛び込んできましたの。

 「ほう? どのような人物かしら?」

 「顔を隠した黒衣の女です! しかも、広場の中心で“アウローラの真の支配者に謁見を求む”と……!」

 わたくしは紅茶を一口飲み、立ち上がりましたの。

 「面白いですわね。お相手して差し上げましょう」

 リゼを従えて広場へ向かうと、そこには黒衣を纏った一人の女が待っておりましたわ。フードで顔は見えませんでしたけれど、ただ者ではない気配を放っておりましたの。

 「貴女が、アウローラの主か」

 女が低い声で問いかけてきましたわ。

 「ええ、エリス・フォン・グリムヴァルト、この国の創設者にして導き手でございますわ」

 わたくしが名乗ると、女はフードを取ったのですわ。

 「わたくしの名は、リュミエール・ノクターン。世界魔導評議会、特別監査官」

 その名前に、リゼが息を呑みましたの。

 「ま、まさか、伝説の……!」

 「ええ、知っておりますわ。わたくしの世界征服を阻止するために動く“旧世界の番人”……」

 わたくしは微笑みながら、一歩前へ進みましたの。

 「ご用件は何かしら?」

 リュミエールは真っ直ぐにわたくしを見据え、はっきりと告げました
の。

 「アウローラ自由特区連邦に、世界魔導評議会の査察を受けるよう命じる」

 周囲がざわめきましたわ。でも、わたくしは微動だにせず、紅茶をもう一口飲みましたの。

 「拒否したら?」

 リュミエールは微笑みすら浮かべず、答えましたわ。

 「国際的経済封鎖、魔導技術封印、連邦国家からの排除。それが答えだ」

 リゼが青ざめてこちらを見ましたの。でも、わたくしは笑いましたわ。

 「興味深いですわね」
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