追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

文字の大きさ
46 / 66

第46話

しおりを挟む
 未来記念塔の演説台から見下ろすと、広場に集う市民たちは歓声を上げ、歓喜に沸き返っておりましたの。

 リゼが横に駆け寄り、小声で告げましたの。

 「お嬢様、王国本土からの使者が特区への入域許可を求めています!」

 「ほう? あれほど高圧的だった連中が、今度は頭を下げに来たと?」

 わたくしは笑みを浮かべながら顎に手を当てましたの。

 「入域を許可なさい。ただし、特区標準の入国審査を厳格に適用すること。例外は一切認めませんわ」

 「了解しました!」

 リゼが魔導通信で入国管理局へ指示を飛ばしていく間に、わたくしは群衆へ向かって続けましたの。

 「未来都市群は、もはや誰にも脅かされることなどありませんわ。なぜなら、わたくしたち自身が未来を創る者たちだからですもの」

 群衆が歓声を上げ、次々と未来記念塔へ感謝と賛辞の声を届けてきましたの。

 「エリス様、ありがとう!」

 「未来を、希望を与えてくれてありがとう!」

 「アウローラ万歳!」

 わたくしはそれに応えるように軽く手を振り、次なる展開を頭の中で素早く組み立てておりましたの。

 リゼが戻ってきて報告しましたの。

 「王国本土からの使者、入国手続き完了です! ただし――」

 「ただし?」

 「使者団の中に、王国直属の特務監察官が混ざっていました。目的は“未来都市群連合の承認交渉”とのことです!」

 「ふふ、わたくしに交渉など持ち掛ける時点で勝負はついていますわ」

 わたくしは広場を後にし、未来記念塔地下の迎賓ホールへ向かいましたの。

 「リゼ、使者団の応接室への案内を手配なさい。三十分後にわたくしが直々に対応いたしますわ」

 「了解しました!」

 未来記念塔内部を滑るように進みながら、わたくしは胸中で次なる一手を練り上げておりましたの。

 敵軍を退け、未来都市群を発足させた今、次に手を付けるべきは――世界そのものの再編成。

 「リゼ、迎賓ホール周辺の警備体制を報告なさい」

 「直衛部隊三重配置! 魔導封鎖フィールド展開済み! 不審動作検知システムも稼働中です!」

 「よろしいですわ。念には念を入れて監視を続けなさい」

 「了解しました!」

 迎賓ホールに到着すると、王国からの使者団はきちんと整列して待機しておりましたの。先頭には、礼装に身を包んだ中年の使者と、冷徹な視線をした若い特務監察官が控えておりましたの。

 わたくしは優雅に微笑みながら歩み寄りましたの。

 「エリス・フォン・グリムヴァルト、未来都市群連合代表にして、アウローラ自由特区連邦総司令官、ここに参上いたしましたわ」

 使者が額に汗を浮かべながら慌てて頭を下げましたの。

 「わ、我々は王国本土政府より派遣されました、和平交渉の使者でございます……!」

 特務監察官は無表情のまま、一歩前に出て言いましたの。

 「我々の要求は単純だ。未来都市群連合の武装解除と、王国への忠誠誓約である」

 わたくしは小さく笑い、首を傾げましたの。

 「……冗談は結構ですわ。王国の庇護など、わたくしたちには不要でございますもの」

 「だが、貴様らは王国の領土だ! 未来都市群など認められるはずが――!」

 「リゼ」

 「はいっ!」

 わたくしは軽く手を上げただけで、リゼが未来記念塔のデータバンクから証拠書類をホログラム展開しましたの。

 「未来都市群連合、国際法上の正統国家承認手続き、完了済みでございますわ。しかも、貴方方王国も批准国の一つですの」

 「なっ……!」

 特務監察官が絶句しましたの。

 わたくしは冷ややかに笑みを深めながら、宣言しましたの。

 「これより先、アウローラ、及び未来都市群連合は、いかなる外圧にも屈しません。従うべきは、未来とわたくしたち自身の意志のみですわ」

 迎賓ホールに沈黙が落ち、使者団たちは呆然と立ち尽くしましたの。

 リゼが耳元で囁きましたの。

 「お嬢様、完勝です……!」

 当然ですわ。わたくしに敗北など、存在するはずがありませんもの。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...