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泉のほとりに座る老婆は、ゆっくりと目を開いた。
その瞳は、まるで泉の水そのもののように深くそして澄み切っていた。
俺たちの全てを、見通しているかのような瞳だった。
彼女から発せられるオーラは、今まで出会ったどんな存在とも違っていた。
イフリートのような圧倒的な力でもなく、ロック鳥のような神聖さでもない。
それはもっと根源的な、大地そのもののような穏やかで巨大な力だった。
「わらわが、ミーミル。この聖なる泉の番人じゃ。おぬしたちが、ドワーフの王が待ち続けた勇者か」
「そうだ。俺はカイ、こっちはリナ。俺たちは、ヴォルカノンを救うために『大地の雫』をいただきにきた」
俺は、老婆に対して隠し事をしても無駄だと直感した。
ありのままの目的を、正直に告げる。
「ふむ、そのまっすぐな瞳、気に入った。じゃが、雫はそう易々と渡すわけにはいかん。おぬしたちが、それに値するだけの覚悟を持っているか最後の試練として見せてもらうとしよう」
「最後の試練、だと?」
三つの試練は、乗り越えてきたはずだ。
「ドワーフが課したのは、あくまで泉への道を切り開くための試練じゃ。わらわの試練は、雫を扱う者としての『器』を問うもの。力でも、知恵でも、勇気でもない。おぬしたちの『願い』そのものを見せてもらう」
ミーミルがそう言うと、彼女の周りの空間がぐにゃりと歪んだ。
目の前の景色が、陽炎のように揺らめき始める。
「さあ、見せるがよい。おぬしちが、心の底から何を望んでいるのかを」
ミーミルの言葉を最後に、俺とリナの意識は真っ白な光に包まれた。
次に気がついた時、俺は一人で見覚えのある場所に立っていた。
薄暗いダンジョンの入り口、パチパチと燃える焚き火の光。
ここは、俺が『紅蓮の剣』から追放されたあの場所だった。
「なんだ、これは幻覚か」
俺はすぐに、これがミーミルが見せている幻だと理解した。
だが、その光景はあまりにも現実的だった。
肌をなでる夜風の冷たさも、焚き火の匂いも全てがあの日のままだった。
「カイ、お前を追放したのは間違いだった」
声がして振り返ると、そこにアレックスが立っていた。
その後ろには、ゼノ、サラ、そしてリアもいる。
だが、彼らの表情は以前とは全く違っていた。
全員が、俺に対して深々と頭を下げている。
「俺たちは、お前の本当の価値に気づけなかった。愚かだったんだ。どうか、俺たちを許してくれ。そして、もう一度パーティに戻ってきてはくれないだろうか」
アレックスが、必死の形相で懇願してきた。
その声には、嘘偽りのない後悔の念がこもっているように聞こえた。
「カイがいなければ、俺たちはもうダメなんだ。お前が必要なんだ、頼む!」
ゼノも、プライドを捨てて頭を下げている。
サラもリアも、涙を浮かべて俺を見つめていた。
「カイ、ごめんなさい。私、あなたの気持ちを知っていたのに何もできなかった……。もう一度、やり直したいの。あなたの隣で、一緒に歩ませてほしい」
リアが、俺の手にそっと触れてきた。
その手は、温かかった。
これは、俺がかつて心のどこかで望んでいた光景だったのかもしれない。
俺を裏切った仲間たちが、心から後悔し俺に許しを請う。
そして俺が想いを寄せていたリアが、俺の気持ちに応えてくれる。
もしこの幻を受け入れれば、俺は望んだ全てを手に入れられるのだろう。
Sランクパーティの仲間、名声、そしてリアからの愛。
追放されたあの日、失ったと思っていた全てがここにはあった。
だが、俺の心は少しも揺れなかった。
「もう遅い、と言ったはずだ」
俺は、リアの手を静かに振り払った。
「え……?」
「お前たちが後悔しているのは、分かった。だが、それはお前たちが勝手にすればいいことだ。俺にはもう、関係ない」
俺の心の中には、もう彼らの居場所はなかった。
俺の隣には、リナがいる。
俺を信じ、どんな時も支えてくれるただ一人の相棒が。
この幻には、彼女の姿はどこにもなかった。
それだけで、この世界が俺にとって偽物であることの何よりの証明だった。
「俺には、帰る場所がある。守りたい仲間がいる。お前たちと馴れ合っている暇はないんでね」
俺がそう言い放った瞬間、目の前の幻がガラスのように砕け散った。
気がつくと、俺はミーミルの泉の前に戻っていた。
隣には、同じように幻から覚めたばかりのリナが呆然と立ち尽くしている。
「カイさん……」
「お前も、何か見ていたのか?」
「はい……。私は、捨てられた故郷の村にいました。私を『役立たず』と罵った父や村人たちが、私に謝っていました。治癒師として、村に戻ってきてほしいと。ずっと、私が望んでいた言葉でした。でも……」
リナは、俺の顔を見てにっこりと笑った。
「私、断ってきました。私の居場所は、もうあそこにはありません。カイさんの隣です」
彼女もまた、俺と同じように過去との決別を選んだのだ。
俺たちは、もう後ろを振り返らない。
ただ、前だけを見て進む。
その覚悟が、俺たちの『願い』だったのだ。
「見事じゃ」
ミーミルが、満足そうに頷いた。
「おぬしたちは、過去の幻影に打ち勝った。失ったものを取り戻すのではなく、今あるものを守り未来へと進むことを選んだ。その強い意志、しかと見届けたぞ」
ミーミルが泉に手をかざすと、泉の中央から一滴の水晶のような雫が浮かび上がってきた。
その雫は、まばゆいほどの生命力の輝きを放っている。
「これこそが、『大地の雫』。タルタロス・ウォームの呪いを浄化できる、唯一の希望じゃ。持っていくがよい」
雫は、ゆっくりと俺たちの元へと飛んできた。
俺は、持参していた水晶の小瓶でそれを受け止めた。
小瓶の中で、雫は心臓のように優しく脈動している。
「ありがとう、ミーミル」
「礼には及ばん。じゃが、気をつけるんじゃぞ。雫の力を使えば、タルタロス・ウォームは必ずや最後の抵抗を試みるじゃろう。ヴォルカノンでの戦いは、これまでで最も過酷なものとなるやもしれん」
ミーミルの忠告に、俺たちは力強く頷いた。
全ての目的を果たし、俺たちはミーミルに別れを告げた。
再び光の通路を通り、ヴォルカノンの玉座の間へと戻る。
手にした大地の雫が、ドワーフ王の亡骸の前でかすかな光を放った。
まるで、王の魂が喜んでいるかのようだった。
「よし、行くぞリナ。最後の戦いだ」
「はい!」
俺たちは、タルタロス・ウォームが封印されているというヴォルカノンの最深部へと向かった。
王の日記によれば、それはオリハルコン鉱脈のさらに下。
都市の動力炉があった場所らしい。
巨大なエレベーターのような装置を動かし、俺たちは地底深くへと降りていく。
降りるにつれて、空気が邪悪なものに変わっていくのが分かった。
壁には黒い粘液のようなものが付着し、不気味なうめき声のようなものが聞こえてくる。
そしてついに、俺たちは最深部の広大な空洞にたどり着いた。
そこは、地獄の釜の底とでも言うべき場所だった。
地面には黒い瘴気が渦巻き、中央には巨大な肉塊が脈動している。
それがこの都市を滅ぼした元凶、タルタロス・ウォーム。
邪神の怨念が生み出した、星を蝕む化け物だ。
その巨体は、この空洞全体を埋め尽くさんばかりの大きさだった。
無数の触手が、蠢いている。
俺たちが来たことに気づくと、肉塊の中心にあった巨大な目がゆっくりと開かれた。
「よく来たな、ドワーフの残した希望とやら。我の眠りを妨げた愚か者どもよ」
タルタロス・ウォームが、直接脳内に語りかけてくる。
その声は、聞くだけで精神を汚染されそうな邪悪な響きを持っていた。
「お前を浄化しにきた。この都市を、ドワーフたちの故郷を、元の姿に戻すためにな」
俺はアグニを抜き放ち、言い放った。
「浄化だと?笑わせるな。この星の生命は、いずれ全て我が糧となる。お前たちも、ここで我が一部となるがよい!」
タルタロス・ウォームが咆哮すると、周囲の瘴気が凝縮し何体もの魔物を生み出した。
それは、今まで俺たちが戦ってきたモンスターたちとは比較にならない純粋な悪意の塊だった。
「リナ、援護を頼む!」
「はいっ!」
リナが聖域の壁を展開し、魔物たちの瘴気のブレスを防ぐ。
俺は、浄化の炎をまとったアグニで魔物たちを次々と切り裂いていった。
一体一体は、それほど強くない。
だが倒しても倒しても、瘴気から次々と湧き出てくる。
キリがない。
「本体を叩くしかない!」
俺は魔物の群れを突破し、タルタロス・ウォームの本体へと迫った。
だが、無数の巨大な触手が俺の行く手を阻む。
触手の一撃は、岩盤をたやすく砕くほどの威力を持っていた。
俺は神の眼で攻撃を予測し、かわし続ける。
そして触手を切り裂きながら、少しずつ本体へと近づいていった。
「リナ、今だ!雫を!」
俺が本体の懐にたどり着いた瞬間、リナに向かって叫んだ。
彼女は頷くと、水晶の小瓶の蓋を開けた。
そして、中の『大地の雫』を天に掲げる。
雫は、太陽のようにまばゆい光を放った。
その聖なる光が、この邪悪な空間の闇を隅々まで照らし出していく。
「ぐおおおおおっ!こ、この光は、まさか!」
タルタロス・ウォームが、苦痛の声を上げた。
聖なる光は、瘴気を浄化し湧き出てくる魔物たちを消滅させていく。
触手の動きも、明らかに鈍くなっていた。
「今が好機だ!」
俺は、タルタロス・ウォームの本体である巨大な肉塊にアグニを突き立てた。
浄化の炎が、その邪悪な体を内側から焼き尽くしていく。
「ばかな、この我が、人間ごときに!」
タルタロス・ウォームが、最後の力を振り絞った。
その巨大な目から、極太の破壊光線が放たれる。
それはこの空間そのものを消滅させかねないほどの、すさまじいエネルギーの奔流だった。
俺はとっさに、鞄からヘパイストスの槌を取り出した。
そして、その槌を盾のように構える。
神の槌が、破壊光線を真正面から受け止めた。
すさまじい衝撃が、全身を襲う。
だが、神造武具はびくともしなかった。
「終わりだ!」
俺は光線を弾き返すと、再びアグニを肉塊の中心、核があるであろう場所へと深々と突き刺した。
聖なる光と、浄化の炎。
二つの力が合わさり、タルタロス・ウォームの邪悪な存在を完全に消し去っていく。
断末魔の叫びが、地底の奥深くに響き渡った。
やがてその巨体は光の粒子となって消滅した。
後に残ったのは、浄化された清浄な空気と静寂だけだった。
「終わった、のか」
俺たちが勝利を確信した、その時だった。
空洞の入り口から、拍手する音が聞こえてきた。
「見事だ、カイ。まさか、本当に邪神を滅ぼしてしまうとはな。その力、やはり俺のものにこそふさわしい」
そこに立っていたのは、変わり果てた姿のアレックスだった。
その全身からは黒いオーラが立ち上り、手にした聖剣は禍々しい紫色の光を放っている。
彼の目は赤く輝き、正気とは思えない狂気に満ちていた。
その隣には、うつろな表情のリアがまるで操り人形のように寄り添っている。
「アレックス、どうしてここに」
「お前を追ってきたのさ。お前が手に入れたもの、全てを奪うためにな。この日のために、俺は悪魔に魂を売った。新たな力を手に入れたんだ!」
アレックスが叫ぶと、彼の背後から空間が裂けおびただしい数の悪魔の軍勢が現れた。
その数は、先程の瘴気の魔物たちを遥かに上回っている。
「さあ、始めようかカイ。お前の伝説の、最終章だ。主役の座は、この俺がいただく!」
アレックスが、呪われた聖剣を俺に向けた。
リアは、ただ無表情にその様子を見つめている。
俺とリナは、予期せぬ最後の敵と向き合うことになった。
浄化されたばかりのこの場所で、新たな戦いの火蓋が切られようとしていた。
俺はリナを背後にかばい、アグニを構え直す。
彼女も、世界樹の若枝の杖を握りしめた。
その目は、絶望ではなく強い決意に満ちている。
どんな敵が現れようと、二人でなら乗り越えられる。
俺たちの間には、言葉にしなくても分かる固い絆があった。
「来いよ、アレックス。お前が手に入れたのが偽りの力だってこと、その身に教えてやる」
俺は、静かに言い放った。
地底の最深部で、元仲間同士の最後の戦いが始まろうとしていた。
その結末を、まだ誰も知らない。
ただ、俺たちの冒険がここで終わるはずがないことだけは確かだった。
俺は、アレックスの背後に広がる悪魔の軍勢を冷静に見据える。
その一体一体の弱点と行動パターンを、神の眼で捉えようとした。
すると、あることに気づいた。
悪魔たちは、アレックスの魔力によってこの世界に無理やり繋ぎ止められている。
つまりアレックスさえ倒せば、この軍勢は維持できずに消滅するはずだ。
「リナ、狙うはアレックス一人だ。周りの悪魔は、俺が引き受ける」
「はい!」
俺の作戦を、リナは一瞬で理解した。
俺は、悪魔の軍勢に向かって真っ直ぐに突っ込んでいった。
アグニから放たれる浄化の炎が、悪魔たちを薙ぎ払っていく。
一体でも多く、リナに近づけさせないために。
その間隙を縫って、リナはアレックスに治癒の魔法を放った。
しかし、それは回復のためではない。
彼女が放ったのは、悪魔の力に汚染されたアレックスの魂を浄化するための聖なる光だった。
「ぐあああっ!小賢しい真似を!」
アレックスが、苦痛の声を上げた。
彼の体から、黒いオーラが少しだけ晴れる。
だが、彼はすぐに体勢を立て直しリアに命令した。
「リア、あの女を止めろ!」
その命令に、リアは無感情に頷いた。
そしてリナに向かって、黒く変色した治癒魔法を放ち始める。
それは、命を癒す光ではなく命を蝕む呪いの力だった。
リナは、聖域の壁でそれを防ぎながら必死にアレックスへの浄化を続ける。
俺は、悪魔たちを蹴散らしながらアレックスへと続く道を開こうともがいていた。
だが、悪魔の数はあまりにも多い。
このままでは、リナの魔力が先になくなってしまう。
「カイさん!」
リナの、悲痛な声が聞こえた。
見ると、リアの呪いの攻撃がついに聖域の壁を破り始めていた。
まずい、このままではリナが危ない。
俺は、決断を迫られていた。
悪魔の群れを無視して、アレックスの元へ突っ込むか。
それとも、リナを守るために一度後退するか。
俺の思考が、高速で回転する。
そして、一つの答えにたどり着いた。
俺は背負っていた鞄から、ロック鳥の卵を取り出した。
そしてその卵に向かって強く念じる。
『力を貸してくれ、相棒!』
その瞬間、卵がまばゆい光を放ち始めた。
殻にヒビが入り、中から神々しい姿のヒナが誕生する。
それは、炎と氷の翼を持つ伝説の神鳥だった。
その瞳は、まるで泉の水そのもののように深くそして澄み切っていた。
俺たちの全てを、見通しているかのような瞳だった。
彼女から発せられるオーラは、今まで出会ったどんな存在とも違っていた。
イフリートのような圧倒的な力でもなく、ロック鳥のような神聖さでもない。
それはもっと根源的な、大地そのもののような穏やかで巨大な力だった。
「わらわが、ミーミル。この聖なる泉の番人じゃ。おぬしたちが、ドワーフの王が待ち続けた勇者か」
「そうだ。俺はカイ、こっちはリナ。俺たちは、ヴォルカノンを救うために『大地の雫』をいただきにきた」
俺は、老婆に対して隠し事をしても無駄だと直感した。
ありのままの目的を、正直に告げる。
「ふむ、そのまっすぐな瞳、気に入った。じゃが、雫はそう易々と渡すわけにはいかん。おぬしたちが、それに値するだけの覚悟を持っているか最後の試練として見せてもらうとしよう」
「最後の試練、だと?」
三つの試練は、乗り越えてきたはずだ。
「ドワーフが課したのは、あくまで泉への道を切り開くための試練じゃ。わらわの試練は、雫を扱う者としての『器』を問うもの。力でも、知恵でも、勇気でもない。おぬしたちの『願い』そのものを見せてもらう」
ミーミルがそう言うと、彼女の周りの空間がぐにゃりと歪んだ。
目の前の景色が、陽炎のように揺らめき始める。
「さあ、見せるがよい。おぬしちが、心の底から何を望んでいるのかを」
ミーミルの言葉を最後に、俺とリナの意識は真っ白な光に包まれた。
次に気がついた時、俺は一人で見覚えのある場所に立っていた。
薄暗いダンジョンの入り口、パチパチと燃える焚き火の光。
ここは、俺が『紅蓮の剣』から追放されたあの場所だった。
「なんだ、これは幻覚か」
俺はすぐに、これがミーミルが見せている幻だと理解した。
だが、その光景はあまりにも現実的だった。
肌をなでる夜風の冷たさも、焚き火の匂いも全てがあの日のままだった。
「カイ、お前を追放したのは間違いだった」
声がして振り返ると、そこにアレックスが立っていた。
その後ろには、ゼノ、サラ、そしてリアもいる。
だが、彼らの表情は以前とは全く違っていた。
全員が、俺に対して深々と頭を下げている。
「俺たちは、お前の本当の価値に気づけなかった。愚かだったんだ。どうか、俺たちを許してくれ。そして、もう一度パーティに戻ってきてはくれないだろうか」
アレックスが、必死の形相で懇願してきた。
その声には、嘘偽りのない後悔の念がこもっているように聞こえた。
「カイがいなければ、俺たちはもうダメなんだ。お前が必要なんだ、頼む!」
ゼノも、プライドを捨てて頭を下げている。
サラもリアも、涙を浮かべて俺を見つめていた。
「カイ、ごめんなさい。私、あなたの気持ちを知っていたのに何もできなかった……。もう一度、やり直したいの。あなたの隣で、一緒に歩ませてほしい」
リアが、俺の手にそっと触れてきた。
その手は、温かかった。
これは、俺がかつて心のどこかで望んでいた光景だったのかもしれない。
俺を裏切った仲間たちが、心から後悔し俺に許しを請う。
そして俺が想いを寄せていたリアが、俺の気持ちに応えてくれる。
もしこの幻を受け入れれば、俺は望んだ全てを手に入れられるのだろう。
Sランクパーティの仲間、名声、そしてリアからの愛。
追放されたあの日、失ったと思っていた全てがここにはあった。
だが、俺の心は少しも揺れなかった。
「もう遅い、と言ったはずだ」
俺は、リアの手を静かに振り払った。
「え……?」
「お前たちが後悔しているのは、分かった。だが、それはお前たちが勝手にすればいいことだ。俺にはもう、関係ない」
俺の心の中には、もう彼らの居場所はなかった。
俺の隣には、リナがいる。
俺を信じ、どんな時も支えてくれるただ一人の相棒が。
この幻には、彼女の姿はどこにもなかった。
それだけで、この世界が俺にとって偽物であることの何よりの証明だった。
「俺には、帰る場所がある。守りたい仲間がいる。お前たちと馴れ合っている暇はないんでね」
俺がそう言い放った瞬間、目の前の幻がガラスのように砕け散った。
気がつくと、俺はミーミルの泉の前に戻っていた。
隣には、同じように幻から覚めたばかりのリナが呆然と立ち尽くしている。
「カイさん……」
「お前も、何か見ていたのか?」
「はい……。私は、捨てられた故郷の村にいました。私を『役立たず』と罵った父や村人たちが、私に謝っていました。治癒師として、村に戻ってきてほしいと。ずっと、私が望んでいた言葉でした。でも……」
リナは、俺の顔を見てにっこりと笑った。
「私、断ってきました。私の居場所は、もうあそこにはありません。カイさんの隣です」
彼女もまた、俺と同じように過去との決別を選んだのだ。
俺たちは、もう後ろを振り返らない。
ただ、前だけを見て進む。
その覚悟が、俺たちの『願い』だったのだ。
「見事じゃ」
ミーミルが、満足そうに頷いた。
「おぬしたちは、過去の幻影に打ち勝った。失ったものを取り戻すのではなく、今あるものを守り未来へと進むことを選んだ。その強い意志、しかと見届けたぞ」
ミーミルが泉に手をかざすと、泉の中央から一滴の水晶のような雫が浮かび上がってきた。
その雫は、まばゆいほどの生命力の輝きを放っている。
「これこそが、『大地の雫』。タルタロス・ウォームの呪いを浄化できる、唯一の希望じゃ。持っていくがよい」
雫は、ゆっくりと俺たちの元へと飛んできた。
俺は、持参していた水晶の小瓶でそれを受け止めた。
小瓶の中で、雫は心臓のように優しく脈動している。
「ありがとう、ミーミル」
「礼には及ばん。じゃが、気をつけるんじゃぞ。雫の力を使えば、タルタロス・ウォームは必ずや最後の抵抗を試みるじゃろう。ヴォルカノンでの戦いは、これまでで最も過酷なものとなるやもしれん」
ミーミルの忠告に、俺たちは力強く頷いた。
全ての目的を果たし、俺たちはミーミルに別れを告げた。
再び光の通路を通り、ヴォルカノンの玉座の間へと戻る。
手にした大地の雫が、ドワーフ王の亡骸の前でかすかな光を放った。
まるで、王の魂が喜んでいるかのようだった。
「よし、行くぞリナ。最後の戦いだ」
「はい!」
俺たちは、タルタロス・ウォームが封印されているというヴォルカノンの最深部へと向かった。
王の日記によれば、それはオリハルコン鉱脈のさらに下。
都市の動力炉があった場所らしい。
巨大なエレベーターのような装置を動かし、俺たちは地底深くへと降りていく。
降りるにつれて、空気が邪悪なものに変わっていくのが分かった。
壁には黒い粘液のようなものが付着し、不気味なうめき声のようなものが聞こえてくる。
そしてついに、俺たちは最深部の広大な空洞にたどり着いた。
そこは、地獄の釜の底とでも言うべき場所だった。
地面には黒い瘴気が渦巻き、中央には巨大な肉塊が脈動している。
それがこの都市を滅ぼした元凶、タルタロス・ウォーム。
邪神の怨念が生み出した、星を蝕む化け物だ。
その巨体は、この空洞全体を埋め尽くさんばかりの大きさだった。
無数の触手が、蠢いている。
俺たちが来たことに気づくと、肉塊の中心にあった巨大な目がゆっくりと開かれた。
「よく来たな、ドワーフの残した希望とやら。我の眠りを妨げた愚か者どもよ」
タルタロス・ウォームが、直接脳内に語りかけてくる。
その声は、聞くだけで精神を汚染されそうな邪悪な響きを持っていた。
「お前を浄化しにきた。この都市を、ドワーフたちの故郷を、元の姿に戻すためにな」
俺はアグニを抜き放ち、言い放った。
「浄化だと?笑わせるな。この星の生命は、いずれ全て我が糧となる。お前たちも、ここで我が一部となるがよい!」
タルタロス・ウォームが咆哮すると、周囲の瘴気が凝縮し何体もの魔物を生み出した。
それは、今まで俺たちが戦ってきたモンスターたちとは比較にならない純粋な悪意の塊だった。
「リナ、援護を頼む!」
「はいっ!」
リナが聖域の壁を展開し、魔物たちの瘴気のブレスを防ぐ。
俺は、浄化の炎をまとったアグニで魔物たちを次々と切り裂いていった。
一体一体は、それほど強くない。
だが倒しても倒しても、瘴気から次々と湧き出てくる。
キリがない。
「本体を叩くしかない!」
俺は魔物の群れを突破し、タルタロス・ウォームの本体へと迫った。
だが、無数の巨大な触手が俺の行く手を阻む。
触手の一撃は、岩盤をたやすく砕くほどの威力を持っていた。
俺は神の眼で攻撃を予測し、かわし続ける。
そして触手を切り裂きながら、少しずつ本体へと近づいていった。
「リナ、今だ!雫を!」
俺が本体の懐にたどり着いた瞬間、リナに向かって叫んだ。
彼女は頷くと、水晶の小瓶の蓋を開けた。
そして、中の『大地の雫』を天に掲げる。
雫は、太陽のようにまばゆい光を放った。
その聖なる光が、この邪悪な空間の闇を隅々まで照らし出していく。
「ぐおおおおおっ!こ、この光は、まさか!」
タルタロス・ウォームが、苦痛の声を上げた。
聖なる光は、瘴気を浄化し湧き出てくる魔物たちを消滅させていく。
触手の動きも、明らかに鈍くなっていた。
「今が好機だ!」
俺は、タルタロス・ウォームの本体である巨大な肉塊にアグニを突き立てた。
浄化の炎が、その邪悪な体を内側から焼き尽くしていく。
「ばかな、この我が、人間ごときに!」
タルタロス・ウォームが、最後の力を振り絞った。
その巨大な目から、極太の破壊光線が放たれる。
それはこの空間そのものを消滅させかねないほどの、すさまじいエネルギーの奔流だった。
俺はとっさに、鞄からヘパイストスの槌を取り出した。
そして、その槌を盾のように構える。
神の槌が、破壊光線を真正面から受け止めた。
すさまじい衝撃が、全身を襲う。
だが、神造武具はびくともしなかった。
「終わりだ!」
俺は光線を弾き返すと、再びアグニを肉塊の中心、核があるであろう場所へと深々と突き刺した。
聖なる光と、浄化の炎。
二つの力が合わさり、タルタロス・ウォームの邪悪な存在を完全に消し去っていく。
断末魔の叫びが、地底の奥深くに響き渡った。
やがてその巨体は光の粒子となって消滅した。
後に残ったのは、浄化された清浄な空気と静寂だけだった。
「終わった、のか」
俺たちが勝利を確信した、その時だった。
空洞の入り口から、拍手する音が聞こえてきた。
「見事だ、カイ。まさか、本当に邪神を滅ぼしてしまうとはな。その力、やはり俺のものにこそふさわしい」
そこに立っていたのは、変わり果てた姿のアレックスだった。
その全身からは黒いオーラが立ち上り、手にした聖剣は禍々しい紫色の光を放っている。
彼の目は赤く輝き、正気とは思えない狂気に満ちていた。
その隣には、うつろな表情のリアがまるで操り人形のように寄り添っている。
「アレックス、どうしてここに」
「お前を追ってきたのさ。お前が手に入れたもの、全てを奪うためにな。この日のために、俺は悪魔に魂を売った。新たな力を手に入れたんだ!」
アレックスが叫ぶと、彼の背後から空間が裂けおびただしい数の悪魔の軍勢が現れた。
その数は、先程の瘴気の魔物たちを遥かに上回っている。
「さあ、始めようかカイ。お前の伝説の、最終章だ。主役の座は、この俺がいただく!」
アレックスが、呪われた聖剣を俺に向けた。
リアは、ただ無表情にその様子を見つめている。
俺とリナは、予期せぬ最後の敵と向き合うことになった。
浄化されたばかりのこの場所で、新たな戦いの火蓋が切られようとしていた。
俺はリナを背後にかばい、アグニを構え直す。
彼女も、世界樹の若枝の杖を握りしめた。
その目は、絶望ではなく強い決意に満ちている。
どんな敵が現れようと、二人でなら乗り越えられる。
俺たちの間には、言葉にしなくても分かる固い絆があった。
「来いよ、アレックス。お前が手に入れたのが偽りの力だってこと、その身に教えてやる」
俺は、静かに言い放った。
地底の最深部で、元仲間同士の最後の戦いが始まろうとしていた。
その結末を、まだ誰も知らない。
ただ、俺たちの冒険がここで終わるはずがないことだけは確かだった。
俺は、アレックスの背後に広がる悪魔の軍勢を冷静に見据える。
その一体一体の弱点と行動パターンを、神の眼で捉えようとした。
すると、あることに気づいた。
悪魔たちは、アレックスの魔力によってこの世界に無理やり繋ぎ止められている。
つまりアレックスさえ倒せば、この軍勢は維持できずに消滅するはずだ。
「リナ、狙うはアレックス一人だ。周りの悪魔は、俺が引き受ける」
「はい!」
俺の作戦を、リナは一瞬で理解した。
俺は、悪魔の軍勢に向かって真っ直ぐに突っ込んでいった。
アグニから放たれる浄化の炎が、悪魔たちを薙ぎ払っていく。
一体でも多く、リナに近づけさせないために。
その間隙を縫って、リナはアレックスに治癒の魔法を放った。
しかし、それは回復のためではない。
彼女が放ったのは、悪魔の力に汚染されたアレックスの魂を浄化するための聖なる光だった。
「ぐあああっ!小賢しい真似を!」
アレックスが、苦痛の声を上げた。
彼の体から、黒いオーラが少しだけ晴れる。
だが、彼はすぐに体勢を立て直しリアに命令した。
「リア、あの女を止めろ!」
その命令に、リアは無感情に頷いた。
そしてリナに向かって、黒く変色した治癒魔法を放ち始める。
それは、命を癒す光ではなく命を蝕む呪いの力だった。
リナは、聖域の壁でそれを防ぎながら必死にアレックスへの浄化を続ける。
俺は、悪魔たちを蹴散らしながらアレックスへと続く道を開こうともがいていた。
だが、悪魔の数はあまりにも多い。
このままでは、リナの魔力が先になくなってしまう。
「カイさん!」
リナの、悲痛な声が聞こえた。
見ると、リアの呪いの攻撃がついに聖域の壁を破り始めていた。
まずい、このままではリナが危ない。
俺は、決断を迫られていた。
悪魔の群れを無視して、アレックスの元へ突っ込むか。
それとも、リナを守るために一度後退するか。
俺の思考が、高速で回転する。
そして、一つの答えにたどり着いた。
俺は背負っていた鞄から、ロック鳥の卵を取り出した。
そしてその卵に向かって強く念じる。
『力を貸してくれ、相棒!』
その瞬間、卵がまばゆい光を放ち始めた。
殻にヒビが入り、中から神々しい姿のヒナが誕生する。
それは、炎と氷の翼を持つ伝説の神鳥だった。
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