外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

☆ほしい

文字の大きさ
34 / 56

34

しおりを挟む
ゼフィルス様からの緊急連絡と、クロの持つ能力が明らかになったことで、俺の拠点にいる人々は新たな希望と熱意に満ち溢れていた。

七色の花の危険な特性を制御できるクロの存在は、まさに万能の鍵だった。

「アルス様! これで心置きなく七色の花の増産に取り掛かれますな!」

「いや、待て」

俺はそう言って、興奮する学者たちを制した。

「七色の花から作られる『究極のポーション』は確かに素晴らしい薬だ。しかし、このポーションにはまだ一つだけ大きな欠点がある」

俺の言葉に、学者たちはきょとんとした顔で互いを見合わせた。

「欠点、ですか? アルス様。あれほどの万能な薬に、どのような欠点が?」

「それは……生産コストだ」

俺はそう言って、七色の花畑へと向かった。

「この花は一度花を咲かせると、その花びらからポーションの原料となる純粋な魔力結晶が採れる。しかし、その花を咲かせるには俺の膨大な魔力が必要となる。そしてクロの炎で調合するにしてもある程度の魔力を消費する。つまりこのポーションは非常に高価な薬となってしまう」

「な、なるほど……」

「それでは貧しい人々には手の届かない薬になってしまうではないか……!」

学者たちは俺の言葉に再び顔を曇らせた。

「そうなんです。俺はそんな薬を世界に広めるつもりはありません。俺が作りたいのは、誰もが何の心配もなく安心して使える、本当の『究極のポーション』です」

俺はそう言って、七色の花畑の中央に立った。

「俺のスキル【畑耕し】はただ作物を育てるだけのスキルではない。俺の心と、俺の思いに応えてくれる力だ。俺の思いが強ければ強いほど、そのスキルは俺の想像を遥かに超える力を発揮する」

俺はそう言って、両手を天に掲げた。

「俺は、この世界中の全ての人々が笑顔で幸せに暮らせる世界を望んでいる! 飢餓も、貧困も、病気も、全てこの世界から根絶したい! 俺の力をそのために使いたいんだ!」

俺の心の中のありったけの思いを込めて、スキル【畑耕し】を発動する。

俺の手から放たれる緑色の光は、これまで見たこともないほどに強く、そして眩く輝いていた。

光は七色の花を包み込み、そして花びらの一つ一つをさらに眩く輝かせる。

するとどうだろう。

花びらが、まるで意思を持っているかのようにひとりでに舞い上がり、空中で一つの大きな虹色の花を形成したのだ。

その花は俺の想像を遥かに超える巨大な花だった。

そしてその花から放たれる魔力の波動は、周囲の空気を振動させ、大地を震わせるほどの絶大なものだった。

「こ、これは……! まるで神が宿っているかのようだ……!」

「アルス様の思いが、花をここまで……!」

学者たちはその神々しい光景に、ただただ呆然と立ち尽くしていた。

巨大な虹色の花はゆっくりと、しかし確実に、その花びらを開いていく。

そしてその花の中心から、一つの小さな、しかし夜空に輝く星のように眩い光を放つ七色の花びらが、静かに、しかし力強く舞い降りてきた。

その花びらは、俺の目の前でゆっくりと形を変えていく。

まるで結晶が再構築されるかのように。

そしてやがて、その七色の光は一つの小さな、しかし夜空に輝く星のように眩い光を放つ、小さな結晶へと変化したのだ。

「こ、これは……!」

俺はその結晶を震える手で拾い上げた。

結晶からは、俺が作った『究極のポーション』と同じ、純粋な魔力と生命エネルギーが放たれている。

しかしその量は、俺が想像していたよりも遥かに巨大だった。

「これが……俺が求めていた、本当の『究極のポーション』の原料か……」

俺はその結晶を、ゼフィルス様からの手紙を運んできた伝令の兵士に託した。

「これをゼフィルス様に届けてくれ。これが俺が作りたかった、本当に作りたかった『究極のポーション』の原料だと伝えてほしい」

俺の言葉に、伝令の兵士は力強く「はっ!」と返事をすると、馬を走らせていった。

俺は再び七色の花畑へと向かった。

そこには、俺の力と俺の思いが結晶化された、新しい花が咲いている。

その花は、俺の思いが強ければ強いほど多くの結晶を生み出すことができる。

そしてその結晶を、誰もが何の心配もなく安心して使える、本当の『究極のポーション』にゼフィルス様たちが変えてくれるだろう。

「ありがとう、クロ。お前のおかげで俺はまた一つ、成長することができた」

俺がそう言うと、クロは嬉しそうに「きゅいーん!」と鳴き、俺の手に顔をすり寄せた。

その温かさが俺の心にそっと染み渡っていく。

俺はクロと一緒に七色の花畑を眺めながら、この花がこの世界中の全ての人々を笑顔にしてくれる日が来ることを心から願った。

そしてその願いはきっと現実になるだろう。

なぜなら、俺にはこの素晴らしいスキルと、そして俺を信じてくれる愛すべき仲間たちがいるのだから。

その確信が俺の胸にまた一つ、大きな希望の光を灯してくれた。

俺の、そしてクロの辺境でのスローライフは、もはや世界を救うための壮大な冒険へと姿を変えていた。

その冒険の旅路はまだ始まったばかりだ。

そしてその旅路の果てにどのような未来が待っているのか、俺は楽しみにしていた。

この先どんな困難が待ち受けていようとも、俺はもう何も恐れない。

なぜなら、俺にはこの素晴らしい仲間たちと、そして俺を信じてくれる人々がいるのだから。

俺は静かに拳を握りしめた。

その手の中には、七色の花から作られた小さな結晶が握られている。

それは俺の、そしてこの世界の新しい未来を切り開くための確かな鍵だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら
ファンタジー
 勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。  居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。  仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。  周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。  追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。  自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。  “無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。  追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

処理中です...