外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

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夜が更け、俺たちが眠りについた頃、俺の拠点の周りに別の不穏な影が忍び寄っていた。それはライオスたちが俺に敗北したことを知った、レイグランド王国の別の貴族たちが送り込んできた腕利きの暗殺者たちだった。彼らは俺の『究極のポーション』の秘密を奪うために、この辺境の地にひっそりと、確実にその魔の手を伸ばし始めていた。

しかし、俺の拠点は俺が作った『生命の城壁』によって、完全な要塞と化していた。彼らはその強固な城壁を前にして、どうすることもできないでいた。

「くそっ、なんだこの城壁は! 魔物でも住んでいるのか!?」

暗殺者の一人が悔しそうに叫んだ。

「落ち着け! これはアルスが作った植物の壁だ! 勇者ライオス様を倒した力だという報告を受けている。だがアルスはただの農夫だ。魔法や剣の技術は持っていないはず。なら、この城壁にも必ず弱点がある!」

暗殺者のリーダーらしき男が冷静に指示を出した。

彼らは俺が作った幻覚の香りを放つ植物や、捕縛草の罠を警戒しながら、城壁の周りを慎重に調べていく。しかし、どれだけ調べても城壁に弱点など見つからない。

「ちくしょう! どうするんだ、隊長! このままでは夜が明けてしまう!」

「くそっ……。仕方ない。この城壁を破壊する。我々の奥の手を使うしかないようだな」

リーダーの男がそう言うと、彼は懐から不気味な黒いオーラを放つ小さな瓶を取り出した。

「これは俺たちが王国で禁忌とされている、古代の秘薬だ。この薬を使えば、植物を腐敗させ、一瞬で枯れさせる力を得ることができる。これを使えばあの城壁もいとも簡単に破壊できるはずだ!」

暗殺者たちは、その薬をリーダーの男に投与した。

男の体から不気味な黒いオーラがあふれ出し、彼の顔は苦痛に歪んでいる。

「う……うおおおおおおおっ!」

男は絶叫しながら、城壁に向かってその手をかざした。

すると、男の手から黒い腐敗のオーラが放たれ、城壁に触れた瞬間、城壁の一部がみるみるうちに枯れ始め、ボロボロと崩れ落ちていく。

「やったぞ! 城壁を破壊した!」

「隊長、すごい!」

暗殺者たちは歓声を上げた。しかし、その歓声もつかの間だった。

枯れた城壁は俺のスキルによって、瞬時に自己修復を開始したのだ。

「な、なんだと!?」

「こんな馬鹿なことが……!」

彼らが驚愕している間に、城壁は元の姿を取り戻し、再び彼らの行く手を阻んだ。

「くそっ……! まさか、自己修復機能まで……!?」

暗殺者たちは絶望の表情を浮かべた。しかし、その時だった。

城壁の中から俺の相棒、クロが姿を現した。

「グルルルル……!」

クロは暗殺者たちに向かって低く、そして威圧的な唸り声を上げた。

その声には怒りと、そして俺の平和を乱す者への絶対的な排除の意志が込められている。

「なっ……! 黒い、ドラゴン……!?」

「まさか、これが、アルスの相棒……!」

暗殺者たちはクロの威圧的な姿に恐怖で腰を抜かしていた。

クロはそんな彼らを一瞥すると、口から小さな、しかし鋭い火の玉を放った。

火の玉は暗殺者たちの足元に突き刺さり、地面を黒く焦がした。

「ひぃっ……!」

暗殺者たちはクロの警告に肝を冷やした。

彼らは俺の拠点が、ライオスが報告したようなただの農夫の拠点ではないことを、ようやく悟ったのだ。

「くそっ……! 撤退だ! 撤退するぞ!」

暗殺者たちはクロの威圧的な姿と、彼の火の玉に怯え、一目散に逃げ出した。

その日の夜明け、俺はリリアーナ王女とアルフレッド騎士から、暗殺者たちの襲撃とクロの活躍について報告を受けた。

「ふふ、クロも、なかなかやるじゃないか」

俺がそう言って頭を撫でてやると、クロは得意満面に胸を張り、俺の手に顔をすり寄せた。

「アルス様。今回の襲撃は、ライオス殿が敗北したことを知ったレイグランド王国の貴族たちが、あなた様の秘密を奪おうと企んだようですわ。これで彼らも、あなた様の恐ろしさを思い知ったことでしょう」

リリアーナ王女は俺にそう言って、安堵の息をついた。

「まあ、これでしばらくは、静かに過ごせるだろう。さて、今日も一日、頑張るか」

俺は鍬を手に取り、畑へ向かった。

クロも俺の後ろを元気に付いてくる。

その日の午前中、ゼフィルス様が王都から、俺の拠点へと到着した。

彼の顔には疲労の色が浮かんでいるが、瞳の奥には俺の七色の花への強い期待と、探求心が宿っている。

「アルス殿! 手紙を読ませていただいた! 花から放たれる生命エネルギーの波動を、クロ殿の炎が鎮静させ、安定させる力を持っているとは……! これは、まさにこの世の理を超越した奇跡じゃ!」

ゼフィルス様は俺の手を固く握りしめ、感動の涙を流した。

「そして、あなた様が作り出した、七色の花から作られた、夜空に輝く星屑のような結晶……! 実際にこのわしが分析してみたところ、一つの結晶から、なんと千人分もの『究極のポーション』を調合できるほどの魔力と生命力を秘めておる! これならば、生産コストも大幅に抑えられる!」

ゼフィルス様の報告に、俺は驚きを隠せない。

「千人分、ですか!?」

「うむ! まさに奇跡の結晶じゃ! これを使えば、貧しい者も誰もが何の心配もなく、このポーションを使えるようになる! アルス殿、あなた様は本当にこの世界の全ての人々の救世主じゃ!」

ゼフィルス様は俺にそう言って、深々と頭を下げた。

「いえ、ゼフィルス様、これは俺だけの力ではありません。あなた様が王都で研究を続けてくれたからこそ、この結晶の本当の価値が分かったのです。そして、クロの力もこの結晶を安定させるためには不可欠なものだった。これは俺たちみんなで勝ち取った、希望の光です」

俺の言葉に、ゼフィルス様は再び感動の涙を流した。

「アルス様……! なんと謙虚で、素晴らしいお方じゃ……! このわし、生涯をかけて、あなた様のこの偉業を、後世に伝えていくことを誓いますぞ!」

こうして俺とゼフィルス様、そしてクロの三人の力によって、誰もが使える『究極のポーション』がこの世界に生み出されることになった。

このポーションは、この世界の医療技術を根本から変えていくだろう。

そして、そのポーションを求める人々は、この辺境の地へと集まってくる。

俺の拠点は、もはやただの農夫の拠点ではない。

それは世界の希望が集まる、聖地へとその姿を変えつつあった。

その日のうちに、俺はゼフィルス様や各国の学者たちと、七色の花の増産体制と、『究極のポーション』の量産計画について具体的な話し合いを始めた。

「アルス殿! この七色の花は、あなた様の強い思いが込められていることで、これほど巨大な力を得ることができた。ならば、今度はこの花を、より強く、より大きなものへと育てることはできぬか!?」

ゼフィルス様は目をキラキラと輝かせながら、俺にそう尋ねてきた。

「より強く、ですか……」

俺は、その言葉に一つのひらめきを得た。

「……分かりました。やってみます」

俺はそう言って、七色の花畑の中央に立った。そして両手を天に掲げ、目を閉じる。

俺がイメージしたのは、この世界中の全ての人々が笑顔で、幸せそうに、この七色の花を見つめている姿。

そして彼らがこの花から作られたポーションによって、病気や怪我から解放され、希望に満ちた未来を歩んでいる姿だった。

俺の心の中のありったけの思いを込めて、スキル【畑耕し】を発動する。

俺の手から放たれる緑色の光は、これまでよりもさらに強く、眩く輝いていた。

光は七色の花を包み込み、花は俺の思いに応えるように、ゆっくりと、しかし確実にその姿を変えていく。

花びらは虹のように輝きを増し、その大きさは以前の倍以上にもなっていた。

そして、その花の中心から、一つの、夜空に輝く星のような、眩い光を放つ、七色の結晶が静かに、しかし力強く舞い降りてきた。

その結晶は、俺の想像を遥かに超える巨大なものだった。

ゼフィルス様や学者たちはその光景を目の当たりにして、言葉を失っていた。

「……これは、まさか……!」

「一つの結晶から、何万、いや、何十万ものポーションを調合できるほどの魔力を秘めている……!」

彼らの驚愕の声が、静かな畑に響き渡る。

俺は、その結晶を手に取り、満足げに微笑んだ。

「これで、もう、生産コストを気にする必要はない。誰もがこのポーションを手にすることができる」

俺の言葉に、ゼフィルス様は再び感動の涙を流した。

「アルス殿! あなた様は本当にこの世界の希望そのものじゃ!」

こうして、俺の拠点に誰もが手にできる『究極のポーション』を量産できる体制が、完璧に整った。

俺のスキルは、俺の思いに常に期待以上の形で応えてくれる。

この力があれば、俺は本当にこの世界を変えられるかもしれない。

そんな確信にも似た思いが、俺の胸に静かに、しかし力強く燃え上がっていた。

「きゅいーん!」

クロが俺の足元で、嬉しそうに声を上げた。

俺は、その頭を優しく撫でてやり、そして七色の花畑を見渡した。

そこには、俺とクロ、そして俺を信じてくれる仲間たちの新しい未来が、満開の花のように咲き誇っていた。
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