バトルが神ゲーと名高い鬱展開エロゲにモブとして転生した俺、原作知識と隠し仕様を駆使して推しヒロインたちを救います

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翌日、俺は再び隠し洞窟へと足を運んでいた。
レベル上げも重要だが、それだけでは足りない。
生き残るためには、戦闘技術、つまりスキルが必要不可欠だ。
村人という職業のままでは、レベルアップで覚えるスキルはほとんどない。
だが、この世界には特定の行動を取ることで習得できる、隠しスキルが存在する。
俺が狙うのは、その一つ、【パリィ】だ。
敵の攻撃を引きつけ、当たる直前で防御することで発動する特殊な防御技術。
成功すれば、相手の体勢を崩し、大きな隙を作り出すことができる。
習得条件は、敵の攻撃を十回連続で、ダメージを受けずにジャストガードすること。
タイミングが非常にシビアで、原作ゲームでも習得は困難を極めた。
しかし、モンスターの攻撃モーションを完璧に記憶している俺にとっては、造作もないことだ。
「さて、練習台になってもらうか」
俺は洞窟の奥へ進み、一体のゴブリンをおびき寄せる。
「ギャア!」
ゴブリンが、棍棒を大きく振りかぶってきた。
俺は盾を構えず、剣だけで相手の攻撃を待つ。
棍棒が風を切り、俺の頭上へと迫る。
ここだ。
俺は振り下ろされる棍棒の軌道に、ショートソードの腹を合わせるように差し込んだ。
キィン!という甲高い金属音が響き、火花が散る。
ゴブリンの攻撃は弾かれ、その体勢が大きくぐらついた。
【パリィが成功しました】
頭の中に、システムメッセージが流れる。
よし、一回目。
体勢を立て直したゴブリンが、今度は横薙ぎに棍棒を振るってくる。
俺は冷静にそれも見切り、剣で受け流した。
二回、三回と成功を重ねていく。
ゴブリンは、なぜ自分の攻撃が当たらないのか分からない、といった様子で混乱している。
そして、ついに十回目のパリィを成功させた瞬間。
【スキル【パリィ】Lv.1を習得しました】
待望のアナウンスが、頭の中に響き渡った。
「よし、これで戦いの幅が広がる」
俺は体勢を崩したゴブリンにとどめを刺し、満足げに頷いた。
【パリィ】は、ただの防御スキルではない。
アクティブタイム・スキルチェインの起点となる重要な技なのだ。
パリィ成功後、特定のスキルに繋げることで、強力な連携が生まれる。
まあ、今の俺には連携できるスキルがないのだが。
「スキルを増やすにも、レベルを上げるにも、結局は金が必要だな」
俺はため息をついた。
雑貨屋で買った「鑑定士の虫眼鏡」で、なけなしの所持金は底をついている。
罠の材料を買い足すにも、装備を新調するにも、金貨《きんか》が必要だ。
ゴブリンを倒しても、ドロップするのは雀の涙ほどの銅貨《どうか》だけ。
何か、効率的に稼ぐ方法はないだろうか。
俺は原作の知識を総動員して、金策の方法を考える。
「そうだ、あれがあった」
一つの可能性に思い至り、俺は洞窟を出て村へと戻ることにした。
村の入り口に差し掛かった時、俺は見慣れない一台の馬車が停まっているのに気がついた。
荷台には、様々な商品が山積みになっている。
行商人のようだ。
原作ゲームでは、ごく稀に村を訪れるイベントキャラクター。
確か、珍しいアイテムを扱っているはずだ。
俺は馬車の持ち主である、人の良さそうな中年男性に声をかけた。
「こんにちは。行商人の方ですか?」
「ん?ああ、そうだよ。坊主、何か見ていくかい?」
男はにこやかに笑いかけてくる。
これが、この世界の商人とのファーストコンタクトか。
「はい、ぜひ。どんなものを扱っているんですか?」
「はっはっは。まあ、見てのお楽しみさ。おっと、自己紹介がまだだったな。俺はボロス《ぼろす》だ。よろしくな、坊主」
「俺はアッシュです。よろしくお願いします、ボロス《ぼろす》さん」
俺はボロス《ぼろす》さんが荷台から降ろした商品に目をやった。
様々な薬草、魔物の素材、日用品や、中古の武具などが並べられている。
一見すると、ガラクタ市のような品揃えだ。
だが、俺には【鑑定】スキルがある。
もしかしたら、この中に掘り出し物が紛れているかもしれない。
俺はボロス《ぼろす》さんに断ってから、一つ一つの商品を鑑定し始めた。
【薬草:一般的な薬草。軽い傷なら治せる】
【ゴブリンの棍棒:粗末な作り。薪にした方がまし】
【鉄のナイフ:刃こぼれがひどい】
案の定、ほとんどは価値のないものばかりだった。
やはり、そう上手い話はないか。
俺が諦めかけた、その時だった。
ボロス《ぼろす》さんが帳簿を付けている台の上。
その端で、紙が風で飛ばないように重しとして使われている、黒い石が目に留まった。
何の変哲もない、ただの石ころに見える。
しかし、俺はそれに妙に惹きつけられた。
俺はさりげなく、その石に【鑑定】スキルを使ってみる。
すると、頭の中に信じられない情報が流れ込んできた。
【魔力溜まりの石:周囲の魔力を吸収し、内部に蓄積する性質を持つ希少な鉱石。高純度の魔力を帯びており、武具や装飾品の素材として最高級の価値を持つ】
「……マジか」
思わず声が漏れた。
これは、とんでもないお宝だ。
原作ゲームでも、終盤で手に入るかどうかというレベルの超レアアイテム。
それがなぜ、こんな場所で文鎮代わりに使われているんだ。
俺は高鳴る心臓を抑え、平静を装ってボロス《ぼろす》さんに話しかけた。
「ボロス《ぼろす》さん、その石、ちょっと気になったんですけど」
「ん?ああ、これかい?」
ボロス《ぼろす》さんは、黒い石をつまみ上げる。
「ただの石ころだよ。この辺の山で拾ったんだが、妙に重たくてすべすべしてるから、重しにちょうどいいかと思ってな」
「へえ、そうなんですね。もしよかったら、それ、売ってもらえませんか?」
俺は、できるだけ無欲な子供を演じて尋ねる。
「こんな石ころをかい?まあ、別に構わんが……。そうだな、銅貨《どうか》三枚でどうだい?」
「本当ですか!ありがとうございます!」
俺は満面の笑みで銅貨《どうか》を差し出した。
ボロス《ぼろす》さんは、不思議そうな顔をしながらも、快く石を譲ってくれた。
俺は震える手で石を受け取り、すぐさまアイテムボックスに収納した。
これで、当面の資金どころか、一生遊んで暮らせるほどの金が手に入ったも同然だ。
もちろん、すぐに換金するつもりはない。
この石は、最高の装備を作るための切り札として、大切に保管しておく。
「そうだ、ボロス《ぼろす》さん。ついでに、俺が持ってるものも買い取ってもらえませんか?」
俺はアイテムボックスから、これまで集めたゴブリンの耳や毒ガエルの袋、銀狼の毛皮などを取り出した。
ボロス《ぼろす》さんは、それらを一つ一つ手にとって、慣れた手つきで査定していく。
「ほう、こいつは上質な銀狼の毛皮だな。傷も少ない。これなら銀貨《ぎんか》一枚で買い取ろう」
「え、そんなに高く?」
「ああ。他の素材も、状態がいいものばかりだ。全部まとめて、銀貨《ぎんか》一枚と銅貨《どうか》五十枚ってところだな。坊主、なかなか腕の立つ狩人なんだな」
ボロス《ぼろす》さんは感心したように言った。
銀貨《ぎんか》一枚は、この村で数週間は暮らせる金額だ。
俺にとっては、大金だった。
俺はボロス《ぼろす》さんから代金を受け取り、懐にしまう。
これで、活動資金は十分に確保できた。
「ボロス《ぼろす》さん、もう一つ聞きたいことがあるんですけど」
俺は思い出したように尋ねた。
「この辺りで、魔力の結晶みたいなものが手に入る場所って、知りませんか?」
魔力の結晶。
それは、魔法スキルの習得や、魔法アイテムの作成に必要な素材だ。
俺が次に狙っているスキルに、どうしても必要なものだった。
ボロス《ぼろす》さんは、顎に手を当てて少し考える。
「魔力の結晶か……。ありゃあ、そうそう手に入るもんじゃねえな。だが、一つだけ心当たりがある」
「本当ですか!」
「ああ。この村の西に、昔使われていた古い鉱山があるだろう?あそこなら、もしかしたら採れるかもしれねえ」
西の廃鉱山。
原作ゲームにも登場した、序盤のダンジョンの一つだ。
「ただし、あそこは魔物の巣窟になってるって話だ。ゴブリンなんかより、ずっと厄介な奴らがうようよしてるらしい。坊主一人で行くのは、ちと危険すぎるぜ」
ボロス《ぼろす》さんは、心配そうに忠告してくれた。
「大丈夫です。情報、ありがとうございます」
俺は礼を言って、ボロス《ぼろす》さんと別れた。
廃鉱山か。
危険なのは百も承知だ。
しかし、そこに行かなければ手に入らないものがある。
村の襲撃まで、残された時間はあと四日。
俺は自分の家に帰り、明日の準備を始めることにした。
手に入れた金で、村の雑貨屋からロープや松明、保存食などを買い込む。
そして、家の周りに仕掛けた罠も、より強力なものに改良した。
夜、俺はベッドの上で、今日手に入れた「魔力溜まりの石」をアイテムボックスから取り出して眺める。
ずっしりと重く、ひんやりとした感触が手のひらに伝わってくる。
これが、俺の未来を切り開く鍵になる。
「明日は、廃鉱山か」
俺は静かに呟き、気持ちを固めた。
ヒロインたちを救うためなら、どんな危険な場所へだって行ってみせる。
俺の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
俺はゆっくりと目を閉じた。
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