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翌日から俺の本格的なレベル上げが始まった。
向かう先は昨日見つけた隠し洞窟だ。
「ここなら安全にレベルを上げられるはずだ」
あそこにはゴブリンやスライムといった、序盤のレベル上げに最適な魔物が無限に湧き出すポイントがある。
もちろんそんな仕様は、普通のプレイヤーは知らない。
俺は洞窟の入り口に立ち、ショートソードを構えた。
「さて、始めますか」
洞窟に一歩足を踏み入れる。
さっそく数匹のゴブリンがこちらに気づいて、襲いかかってきた。
「ギャア!」
棍棒を振り上げて突進してくる。
俺は冷静にそれを見極めて、一体ずつ確実に処理していく。
相手の攻撃を盾で受け流す。
がら空きになった胴体を、剣で斬りつけた。
基本的な戦法だがこれが一番確実だ。
戦闘能力の低い俺では、複数の敵を同時に相手にするのは危険すぎる。
一体倒すごとに、頭の中に経験値が入る感覚があった。
【アッシュのレベルが2に上がりました】
「よし、レベルアップ!」
数匹倒したところで、早くもレベルが上がった。
ステータスが全体的に少しだけ上昇する。
この調子でひたすら魔物を狩り続ける。
「ポーションがあるから、多少の無茶はできるな」
アイテムボックスに大量のポーションをストックしてあるので、HPが減ってもすぐに回復できる。
まさに無限にレベル上げができる環境だ。
午前中いっぱい洞窟にこもり、俺のレベルは5まで上がっていた。
職業はまだ「村人」のままだ。
だが初期ステータスと比べれば、かなり動きやすくなっている。
「昼飯にするか」
俺は一度洞窟から出て、木陰で休憩を取ることにした。
アイテムボックスから、村で買っておいたパンと干し肉を取り出す。
「うまい」
こんな質素な食事でも、体を動かした後だと格別に美味く感じた。
食事をしながら俺は今後の計画を練る。
レベル上げと並行して、スキルの習得も進めなければならない。
「まずは【鑑定】と【隠密】だな」
俺が最初に習得しようと考えているのは、この二つだ。
【鑑定】はアイテムや魔物の詳細な情報を知ることができる、冒険者には必須のスキル。
【隠密】はその名の通り、気配を消して敵に気づかれにくくするスキルだ。
戦闘能力の低い俺が生き残るためには、絶対に必要になる。
原作知識によれば【鑑定】を習得するには、「鑑定士の虫眼鏡」というアイテムを使う。
そして百種類の異なるアイテムを鑑定し続ける必要があるのだ。
そして【隠密】は「銀狼の毛皮」で作ったマントを装備する。
夜の森を三時間以上歩き回ることで、習得できる。
どちらも普通にプレイしていたら、まず気づかないような特殊な条件だ。
「鑑定士の虫眼鏡は村の雑貨屋に売ってたな」
「銀狼はこの辺りにはいない。少し遠出する必要があるか」
銀狼はエリル村《むら》から半日ほど歩いた山に生息している。
今の俺のレベルなら、何とか狩れるはずだ。
午後からはその山へ向かうことにしよう。
俺は再び立ち上がり、山道へと足を踏み入れた。
山に入ると森とはまた違う、険しい地形が続く。
時折牙を剥く狼、ワイルドファングや巨大な蜂のキラービーが襲いかかってきた。
だがレベル5の俺の敵ではなかった。
着実に経験値を稼ぎながら、俺は山の奥へと進んでいく。
銀狼は月の光を浴びると、毛皮が銀色に輝くという美しい魔物だ。
しかしその動きは非常に素早く、群れで行動する。
油断しているとあっという間に囲まれてしまう。
俺は気配を殺し、慎重に獲物を探した。
しばらくすると岩陰の向こうに、銀色に輝く毛皮を持つ狼たちの姿を捉えた。
銀狼の群れだ。
数は五匹。
「正面から戦うのは得策じゃないな」
俺はアイテムボックスから、昨日集めた獣の糞を取り出した。
そして風上から、それを銀狼たちのいる方へ思い切り投げつける。
「悪いが、我慢してくれよ」
強烈な悪臭が、狼たちの鼻をついた。
「グルルル…!?」
嗅覚の鋭い狼たちは、突然の悪臭に混乱して陣形を乱す。
その隙を俺は見逃さなかった。
群れから少しだけ離れた、一匹の銀狼に狙いを定める。
俺は一気に駆け出し、ショートソードを振り下ろした。
奇襲は成功した。
銀狼は悲鳴を上げる間もなく絶命する。
残りの四匹が俺の存在に気づき、一斉に襲いかかってきた。
だが俺はすぐにその場を離れ、森の奥へと逃げ込んだ。
深追いはしない。
今日の目的はあくまで「銀狼の毛皮」を一つ手に入れることだけだ。
無理して全滅させる必要はない。
俺はドロップした「銀狼の毛皮」をアイテムボックスに収納し、急いで山を下りた。
村に戻る頃には、すっかり日が暮れていた。
俺は雑貨屋に駆け込み、「鑑定士の虫眼鏡」を購入した。
なけなしの銅貨がほとんど消えてしまったが、これは必要経費だ。
家に帰り、俺はさっそく【鑑定】スキルの習得に取り掛かった。
アイテムボックスから手当たり次第にアイテムを取り出す。
そして虫眼鏡で覗き込んだ。
「これはただの木の枝、か」
「石ころは、石ころだな」
「ポーションは、HPを少量回復する薬」
「この錆びたショートソードは…何か秘密がありそうだ、だって?」
鑑定結果が頭の中に直接表示される。
錆びたショートソードには、意味深なメッセージが追加されていた。
やはりただのガラクタではないようだ。
俺は黙々と鑑定作業を続けた。
薬草、魔物の素材、装備品に日用品。
百種類のアイテムを鑑定し終えた時、頭の中にアナウンスが響いた。
【スキル【鑑定】Lv.1を習得しました】
「よしっ!」
俺は思わずガッツポーズをした。
これで色々なものの正体を、見抜くことができる。
さっそく自分自身を鑑定してみることにした。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前:アッシュ
職業:村人 Lv.5
HP:75/75
MP:28/28
STR(筋力):12
VIT(体力):13
AGI(敏捷):15
INT(知力):17
MND(精神力):15
LUK(幸運):50
スキル:
【鑑定】Lv.1
【アイテムボックス】
隠しステータス:
【世界の知識】:EX
【ヒロインからの初期注目度】:測定不能
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「……なんだこれ」
スキル欄に、見慣れない項目が追加されている。
隠しステータスだ。
【世界の知識】は、俺の原作知識のことだろう。
ランクEXというのは、最高ランクを意味する。
そして問題はもう一つの方だ。
【ヒロインからの初期注目度】:測定不能。
「どういう意味だ?」
原作のアッシュは、ヒロインたちとは一切接点がないはずだ。
それなのに注目度が測定不能とは。
良い意味なのか、悪い意味なのかも分からない。
少し不気味なものを感じたが、今は考えても仕方ない。
俺は気を取り直し、次のスキル習得の準備を始めた。
アイテムボックスから「銀狼の毛皮」を取り出す。
簡単なマントに加工した。
針と糸くらいは、村人としての生活スキルで使える。
出来上がったマントを羽織り、俺は再び夜の村の外へと出た。
ここから三時間、このマントを装備して森を歩き回る。
それが【隠密】スキルの習得条件だ。
夜の森は昼間とは全く違う顔を見せる。
闇に紛れて、より凶暴な魔物が活動を開始する時間だった。
俺は息を殺し、慎重に歩を進めた。
時折魔物の気配を感じるが、不思議とこちらに気づく様子はない。
「このマント、本当に気配が消えるな」
どうやらこの銀狼のマントには、気配を遮断する効果があるらしい。
これも原作にはなかった仕様だ。
俺は月明かりだけを頼りに、ひたすら森を歩き続けた。
三時間が経過した頃、待ち望んでいたアナウンスが頭の中に響いた。
【スキル【隠密】Lv.1を習得しました】
「やった!」
これで二つの重要スキルを手に入れた。
俺は満足して、家への帰路についた。
家に帰り着き、ベッドに倒れ込む。
さすがに疲労困憊だ。
だが充実感は大きかった。
村の襲撃まで、あと五日。
準備は着実に進んでいる。
「明日からは、本格的な戦闘訓練を始めよう」
原作知識を応用すれば、村人という職業でも強力なスキルを習得できるはずだ。
俺はまだ知らない。
俺のこうした行動が、すでにこの世界の運命の歯車を少しずつ狂わせ始めているということを。
ヒロインたちとの出会いも、そう遠くない未来に迫っていた。
向かう先は昨日見つけた隠し洞窟だ。
「ここなら安全にレベルを上げられるはずだ」
あそこにはゴブリンやスライムといった、序盤のレベル上げに最適な魔物が無限に湧き出すポイントがある。
もちろんそんな仕様は、普通のプレイヤーは知らない。
俺は洞窟の入り口に立ち、ショートソードを構えた。
「さて、始めますか」
洞窟に一歩足を踏み入れる。
さっそく数匹のゴブリンがこちらに気づいて、襲いかかってきた。
「ギャア!」
棍棒を振り上げて突進してくる。
俺は冷静にそれを見極めて、一体ずつ確実に処理していく。
相手の攻撃を盾で受け流す。
がら空きになった胴体を、剣で斬りつけた。
基本的な戦法だがこれが一番確実だ。
戦闘能力の低い俺では、複数の敵を同時に相手にするのは危険すぎる。
一体倒すごとに、頭の中に経験値が入る感覚があった。
【アッシュのレベルが2に上がりました】
「よし、レベルアップ!」
数匹倒したところで、早くもレベルが上がった。
ステータスが全体的に少しだけ上昇する。
この調子でひたすら魔物を狩り続ける。
「ポーションがあるから、多少の無茶はできるな」
アイテムボックスに大量のポーションをストックしてあるので、HPが減ってもすぐに回復できる。
まさに無限にレベル上げができる環境だ。
午前中いっぱい洞窟にこもり、俺のレベルは5まで上がっていた。
職業はまだ「村人」のままだ。
だが初期ステータスと比べれば、かなり動きやすくなっている。
「昼飯にするか」
俺は一度洞窟から出て、木陰で休憩を取ることにした。
アイテムボックスから、村で買っておいたパンと干し肉を取り出す。
「うまい」
こんな質素な食事でも、体を動かした後だと格別に美味く感じた。
食事をしながら俺は今後の計画を練る。
レベル上げと並行して、スキルの習得も進めなければならない。
「まずは【鑑定】と【隠密】だな」
俺が最初に習得しようと考えているのは、この二つだ。
【鑑定】はアイテムや魔物の詳細な情報を知ることができる、冒険者には必須のスキル。
【隠密】はその名の通り、気配を消して敵に気づかれにくくするスキルだ。
戦闘能力の低い俺が生き残るためには、絶対に必要になる。
原作知識によれば【鑑定】を習得するには、「鑑定士の虫眼鏡」というアイテムを使う。
そして百種類の異なるアイテムを鑑定し続ける必要があるのだ。
そして【隠密】は「銀狼の毛皮」で作ったマントを装備する。
夜の森を三時間以上歩き回ることで、習得できる。
どちらも普通にプレイしていたら、まず気づかないような特殊な条件だ。
「鑑定士の虫眼鏡は村の雑貨屋に売ってたな」
「銀狼はこの辺りにはいない。少し遠出する必要があるか」
銀狼はエリル村《むら》から半日ほど歩いた山に生息している。
今の俺のレベルなら、何とか狩れるはずだ。
午後からはその山へ向かうことにしよう。
俺は再び立ち上がり、山道へと足を踏み入れた。
山に入ると森とはまた違う、険しい地形が続く。
時折牙を剥く狼、ワイルドファングや巨大な蜂のキラービーが襲いかかってきた。
だがレベル5の俺の敵ではなかった。
着実に経験値を稼ぎながら、俺は山の奥へと進んでいく。
銀狼は月の光を浴びると、毛皮が銀色に輝くという美しい魔物だ。
しかしその動きは非常に素早く、群れで行動する。
油断しているとあっという間に囲まれてしまう。
俺は気配を殺し、慎重に獲物を探した。
しばらくすると岩陰の向こうに、銀色に輝く毛皮を持つ狼たちの姿を捉えた。
銀狼の群れだ。
数は五匹。
「正面から戦うのは得策じゃないな」
俺はアイテムボックスから、昨日集めた獣の糞を取り出した。
そして風上から、それを銀狼たちのいる方へ思い切り投げつける。
「悪いが、我慢してくれよ」
強烈な悪臭が、狼たちの鼻をついた。
「グルルル…!?」
嗅覚の鋭い狼たちは、突然の悪臭に混乱して陣形を乱す。
その隙を俺は見逃さなかった。
群れから少しだけ離れた、一匹の銀狼に狙いを定める。
俺は一気に駆け出し、ショートソードを振り下ろした。
奇襲は成功した。
銀狼は悲鳴を上げる間もなく絶命する。
残りの四匹が俺の存在に気づき、一斉に襲いかかってきた。
だが俺はすぐにその場を離れ、森の奥へと逃げ込んだ。
深追いはしない。
今日の目的はあくまで「銀狼の毛皮」を一つ手に入れることだけだ。
無理して全滅させる必要はない。
俺はドロップした「銀狼の毛皮」をアイテムボックスに収納し、急いで山を下りた。
村に戻る頃には、すっかり日が暮れていた。
俺は雑貨屋に駆け込み、「鑑定士の虫眼鏡」を購入した。
なけなしの銅貨がほとんど消えてしまったが、これは必要経費だ。
家に帰り、俺はさっそく【鑑定】スキルの習得に取り掛かった。
アイテムボックスから手当たり次第にアイテムを取り出す。
そして虫眼鏡で覗き込んだ。
「これはただの木の枝、か」
「石ころは、石ころだな」
「ポーションは、HPを少量回復する薬」
「この錆びたショートソードは…何か秘密がありそうだ、だって?」
鑑定結果が頭の中に直接表示される。
錆びたショートソードには、意味深なメッセージが追加されていた。
やはりただのガラクタではないようだ。
俺は黙々と鑑定作業を続けた。
薬草、魔物の素材、装備品に日用品。
百種類のアイテムを鑑定し終えた時、頭の中にアナウンスが響いた。
【スキル【鑑定】Lv.1を習得しました】
「よしっ!」
俺は思わずガッツポーズをした。
これで色々なものの正体を、見抜くことができる。
さっそく自分自身を鑑定してみることにした。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前:アッシュ
職業:村人 Lv.5
HP:75/75
MP:28/28
STR(筋力):12
VIT(体力):13
AGI(敏捷):15
INT(知力):17
MND(精神力):15
LUK(幸運):50
スキル:
【鑑定】Lv.1
【アイテムボックス】
隠しステータス:
【世界の知識】:EX
【ヒロインからの初期注目度】:測定不能
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「……なんだこれ」
スキル欄に、見慣れない項目が追加されている。
隠しステータスだ。
【世界の知識】は、俺の原作知識のことだろう。
ランクEXというのは、最高ランクを意味する。
そして問題はもう一つの方だ。
【ヒロインからの初期注目度】:測定不能。
「どういう意味だ?」
原作のアッシュは、ヒロインたちとは一切接点がないはずだ。
それなのに注目度が測定不能とは。
良い意味なのか、悪い意味なのかも分からない。
少し不気味なものを感じたが、今は考えても仕方ない。
俺は気を取り直し、次のスキル習得の準備を始めた。
アイテムボックスから「銀狼の毛皮」を取り出す。
簡単なマントに加工した。
針と糸くらいは、村人としての生活スキルで使える。
出来上がったマントを羽織り、俺は再び夜の村の外へと出た。
ここから三時間、このマントを装備して森を歩き回る。
それが【隠密】スキルの習得条件だ。
夜の森は昼間とは全く違う顔を見せる。
闇に紛れて、より凶暴な魔物が活動を開始する時間だった。
俺は息を殺し、慎重に歩を進めた。
時折魔物の気配を感じるが、不思議とこちらに気づく様子はない。
「このマント、本当に気配が消えるな」
どうやらこの銀狼のマントには、気配を遮断する効果があるらしい。
これも原作にはなかった仕様だ。
俺は月明かりだけを頼りに、ひたすら森を歩き続けた。
三時間が経過した頃、待ち望んでいたアナウンスが頭の中に響いた。
【スキル【隠密】Lv.1を習得しました】
「やった!」
これで二つの重要スキルを手に入れた。
俺は満足して、家への帰路についた。
家に帰り着き、ベッドに倒れ込む。
さすがに疲労困憊だ。
だが充実感は大きかった。
村の襲撃まで、あと五日。
準備は着実に進んでいる。
「明日からは、本格的な戦闘訓練を始めよう」
原作知識を応用すれば、村人という職業でも強力なスキルを習得できるはずだ。
俺はまだ知らない。
俺のこうした行動が、すでにこの世界の運命の歯車を少しずつ狂わせ始めているということを。
ヒロインたちとの出会いも、そう遠くない未来に迫っていた。
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