追放された私、実は世界樹の化身だったので離れた瞬間に国が枯れ果てました

旅する書斎(☆ほしい)

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第2話 神獣の「お座り」は天地創造の合図

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私は、目の前に実っている黄金色の果実を一つ手に取った。
手に吸い付くような重みがある。
皮を剥く必要さえ感じさせないほど、その表面は宝石のように輝き、内側から脈打つような生命の光を放っていた。
これは、ただの果実ではない。
私の魔力がこの土地に染み込み、数万年の時を凝縮させたかのような進化を遂げさせた結晶だ。
一口、かじる。
パリッという軽快な音と共に、口の中に爆発的な甘みと、驚くほど清涼な香りが広がった。

「……んっ、美味しい。これ、王宮で食べていたどの高級食材よりも格上だわ」

咀嚼するたびに、果汁が黄金のスープとなって喉を潤していく。
嚥下した瞬間、胃の腑から全身へ向けて、熱い魔力が奔流となって駆け巡るのがわかった。
指先まで血液が巡り、細胞の一つ一つが歓喜に震えて再生していく。
視界が洗われたように鮮明になり、遠くの雪の結晶の形さえもはっきりと視認できるほどだ。
王城で出されていた、形ばかり整えて味の抜けた果物とは次元が違う。
あの元婚約者たちは、こんな至高の味を知らずに一生を終えるのだろう。
そう思うと、少しだけ優越感が胸をかすめる。

私が感嘆の声を上げると、足元にいた「クロ」が誇らしげに胸を張った。
つぶらな瞳がキラキラと輝き、尻尾がちぎれんばかりに振られている。
さっきから勝手にクロと呼ぶことに決めたのだが、本人もその響きが気に入っているらしい。
どうやら、この果実が美味しいのは彼のおかげだと言いたいようだ。
私は屈み込み、その小さな頭を撫でてやる。

「ありがとう、クロ。あなたが見つけてくれたおかげね」

クロは「ワフッ」と短く鳴き、私の膝から飛び降りると、周囲の雪原をトテトテと歩き回った。
そして、何もない雪の上を前足でトントンと叩く。
ただの犬の仕草に見えるが、次の瞬間、物理法則が悲鳴を上げた。
地面が液体のように波打ち、地中から純白の結晶が生き物のように隆起したのだ。
結晶は空中で複雑に組み合わさり、瞬く間に洗練された造形のテーブルと椅子へと姿を変える。
まるで、最初からそこにあったかのように自然な佇まいだ。
王宮の職人が一生をかけて彫り上げるような芸術品が、犬の「お座り」一つで完成してしまった。

「あら、素敵な椅子。これもクロが作ったの?」

クロは当然だと言わんばかりに鼻を鳴らし、私の足元に擦り寄ってくる。
ただの子犬だと思っていたけれど、この子の特技は少々変わっているようだ。
土いじりが得意な犬種なのだろうか。
王国の図書館で読んだ禁書の一節が、ふと脳裏をよぎる。
万物を無に帰し、主の望むがままに世界を再構成する『終焉獣』。
神代の昔、世界を一度リセットしたとされる最悪の災厄。
もしクロがそれだとしたら、私を追放した騎士団が束になっても、瞬きする間に塵になるだろう。
だが、私の足元でお腹を見せて転がっているこの毛玉が、そんな恐ろしい存在であるはずがない。
きっと、この森特有の珍しい魔法生物なのだろう。
害がないなら、何だっていい。

「こんなに可愛いんだから、種類なんて関係ないわよね」

私はクロを再び抱き上げ、その柔らかいお腹に顔を埋めて深呼吸した。
太陽を凝縮したような、陽だまりの匂いがする。
吸い込むだけで心が安らぎ、体中の毒素が抜けていくようだ。
ふと、視界の隅に半透明な文字が浮かんでいることに気づいた。

【ハピネスポイント:500】
【現在のアメニティ:黄金の果樹、結晶の家具、浄化の結界】
【次の解放:神糸の織機(必要ポイント1000)】

「何かしら、これ。私の満足度が数値化されているの?」

空中に浮かぶ文字を指でつつこうとすると、波紋のように揺らいで消えた。
どうやら私がこの森で快適に過ごせば過ごすほど、何らかの恩恵が得られる仕組みらしい。
誰が用意したのかは知らないが、実に気が利いている。
私は結晶の椅子に腰掛け、クロを膝に乗せてこれからの生活に思いを馳せた。
背もたれは私の背骨のカーブに完璧にフィットし、座面は適度な弾力で体重を支えてくれる。
王座の硬くて冷たい椅子とは大違いだ。
さて、まずは住居が必要だろう。
今はクロが作ってくれた庭園があるけれど、吹きさらしの中で眠るわけにはいかない。
夜露を凌げる屋根と、手足を伸ばして眠れるベッドが欲しい。
王都の喧騒を離れ、静かに暮らせる小さな小屋でいい。
私がそうぼんやりと考えた瞬間、膝の上のクロが何かに反応したように耳をピクリと動かした。
彼の瞳が、深淵の紫紺に怪しく光る。
クロは私の膝から滑り落ちると、何もない空間に向かって小さく吠えた。

「ワンッ!」

可愛らしい鳴き声とは裏腹に、世界が軋む音がした。
パリン、と空間そのものが薄氷のように割れ、漆黒の亀裂が走る。
そこから溢れ出したのは、この世の物質とは思えない輝きを放つ大量の資材だった。
純度の高い魔力結晶のブロック、オリハルコンの柱、虹色に輝くガラス。
それらは意志を持っているかのように空中で舞い踊り、複雑怪奇なパズルを組み上げていく。
釘を打つ音も、鋸を引く音もない。
ただ、星が流れるような美しい光の軌跡だけが描かれていく。
数分もしないうちに、私の目の前には白亜の宮殿がそびえ立っていた。

「……家というより、お城ね。これ」

私は呆気に取られ、口元に手を当てた。
王宮よりも遥かに巨大で、芸術的な装飾が施された大豪邸だ。
柱には神話をモチーフにした精緻な彫刻が施され、窓には最高級のステンドグラスが嵌め込まれている。
屋根はドーム状で、空の色に合わせて色彩を変える魔法の瓦で葺かれていた。
小屋が欲しいと願ったはずなのに、どうしてこうなったのだろう。
まあ、クロが頑張って穴を掘って資材を集めてきてくれたのかもしれない。
なんて働き者な子犬なのだろうか。

「ありがとう、クロ。ちょっと広すぎる気もするけれど、素敵なお家だわ」

私が礼を言うと、クロは嬉しさのあまり私の周囲を高速で駆け回った。
その移動速度が速すぎて、黒い残像がリング状に繋がって見える。
内装を確認するために一歩足を踏み入れると、床はふかふかの絨毯で覆われていた。
それもただの絨毯ではない。
天上の雲を紡いで作ったような、歩くたびに足裏から疲れが吸い取られる不思議な感覚だ。
壁には淡い光を放つ宝石が埋め込まれており、照明器具などなくとも部屋全体が柔らかい光に包まれている。
空調も完璧だ。
外は極寒の猛吹雪だというのに、室内は春の陽気に満ちている。

さて、住む場所が決まったら次は食事の確保だ。
先ほどの果実だけでも栄養は十分かもしれないが、やはり温かいスープや肉料理が恋しくなる。
塩気のあるものが食べたい。
そう思った矢先、庭園の向こうから妙な物音が聞こえてきた。
ズシン、ズシンという、地響きのような重い足音だ。
私は警戒して入り口に視線を向ける。
庭園の結界を強引に突破し、巨大な白い影が躍り出てきた。
体長五メートルはあろうかという、「白銀の猪」だ。
全身が鋼鉄のような剛毛で覆われ、鼻からは高熱の蒸気を噴き出している。
この森の王と呼ばれ、一国を滅ぼす災厄指定の魔獣、フェンリルボア。
その突進は城壁をも粉砕し、牙はドラゴンすら噛み砕くと言われている。
猪は血走った眼で私を睨みつけ、大地を削る勢いで突進してきた。

「あ、危ない!」

私が叫ぶよりも早く、クロが私の前に躍り出た。
彼は小さな体のまま、巨大な質量爆弾のような猪に向かって低く唸る。
その瞬間、クロの背後から巨大な「影」が立ち上がった。
それは宇宙の闇を切り取ったような、不定形の獣のシルエット。
影は物理的な距離を無視して膨張し、突進してくる猪を飲み込むように顎を開いた。
咀嚼音も、断末魔もない。
影が通り過ぎた後、そこには猪の姿はどこにもなかった。
物理的に吹き飛んだのではない。
その存在そのものが、因果の地平から抹消され、最初から存在しなかったかのように消え失せたのだ。
いや、完全に消えたわけではない。
猪がいた場所には、綺麗に皮を剥がれ、部位ごとに解体された最高級の「バラ肉」の塊だけが、丁寧に積み上げられていた。
血の一滴も残っていない、完璧な下処理だ。

「……ええと、お肉を用意してくれたのね。ありがとう」

クロは平然とした顔で私の元に戻り、尻尾を振って「撫でて」と催促する。
私は困惑しつつも、そのフワフワの頭を優しく撫でた。
どうやらクロは、私の空腹を察知して狩りに行ってくれたらしい。
それにしても、食べられない部分を瞬時に取り除くなんて、随分と几帳面な狩りをする子だ。
この森での生活は、私の想像を遥かに超えた快適なものになりそうだ。

私はキッチンへと向かい、クロが用意してくれた肉を調理することにした。
広大なキッチンには、魔導コンロや調理器具が一通り揃っている。
水場に手をかざすと、蛇口からはクリスタルのように澄んだ水が溢れ出した。
これもただの水ではない。
一口飲んでみると、体中の魔力回路が洗浄されるような感覚がある。
おそらく、地下深くを流れる聖脈から直接汲み上げられた「神水」だろう。
こんな水で料理を作れば、どんな失敗作でも絶品になるに違いない。
私は肉を一口大に切り分け、フライパンの上で焼き始めた。
ジュゥゥゥッという食欲をそそる音と共に、香ばしい匂いが邸宅を満たしていく。
味付けはどうしようかと考えた瞬間、窓の外の庭に自生していた雑草が目に入った。
私が「香草が欲しい」と願った瞬間、その雑草が光を放ち、形状を変化させたのだ。
瞬く間に成長し、極上のローズマリーやタイムに変質していく。
私の魔力は、植物の遺伝子情報すらも書き換えてしまうらしい。
私は窓を開け、手を伸ばしてそれらを摘み取り、肉の上へ散らした。

私が鼻歌を歌いながらフライパンを揺らしていると、香ばしい匂いに誘われたのか、外の様子が変化していた。
枯れ果てていたはずの「死の森」が、いつの間にかエメラルドグリーンの光に包まれている。
私の無意識の魔力が料理の熱と共に漏れ出し、周囲数キロメートルの生態系を強引に楽園へと書き換えてしまったようだ。
雪原だった場所には色とりどりの花が咲き乱れ、蝶が舞っている。
まあ、私が過ごしやすいのならそれでいい。
肉がこんがりと黄金色に焼き上がった頃、玄関の方から控えめなノックの音が聞こえた。
こんな森の奥深くに、来客だろうか。
私はエプロン姿のまま、玄関の扉を開けた。

「……あの、失礼いたします。あまりに尊い気配を感じたもので……」

扉の隙間から顔を出したのは、真っ白な髭を蓄えた、見るからに高名そうな老魔導師だった。
彼は私の姿を見るなり、持っていた杖を派手な音を立てて床に落とした。
そして、口をパクパクさせながらその場にへたり込んでしまう。
まるで、直視してはいけないものを見てしまったかのような狼狽ぶりだ。

「な、なんという……なんという光り輝く魔力の奔流……! 太陽が地上に降りてこられたのか!?」

老人はガクガクと震え出し、白目を剥いて痙攣を始めた。
私の背後から漂うステーキの匂いと、私の身から溢れる世界樹のオーラが混ざり合い、彼の許容量を超えてしまったらしい。
彼は涙を流しながら、這いつくばって私の足元に額を擦り付けた。

「ああ、神よ……! この老いぼれに、最期にこのような奇跡を見せてくださるとは……!」

大袈裟な人だ。
ただ料理を作っていただけなのに、神扱いとは。
やはり、この森に来る人は少し変わっているのかもしれない。
私は震える老人に苦笑しながら、焼きたての肉を盛り付けた皿を差し出した。
とりあえず、このお客人に食事を振る舞って落ち着かせることにしよう。
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