マジキチ組長一代記 ~半分は狂気、半分は真実~

マジキチ組長

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第4章:真実と狂気の狭間編(現在進行形の修羅場)

第20話:境界線の調和(アクセルを踏む理由)

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 午前五時。冬の凍てつくような冷気が窓を叩き、静寂が部屋を支配している。
 だが、俺の意識はその静寂を切り裂くように、目覚まし時計が鳴る数分前には完全に覚醒していた。キチガイミックスという名の劇薬を毎日欠かさず流し込み、サプリメントの力を血肉へと変えてきた俺の体内時計は、もはや精密機器以上の正確さを誇っている。

 布団の中で、俺はまず自分の中心から湧き上がる強烈な「生命の証」を確認する。
 股間に宿る、リンゴのような硬さを誇る朝立ち。  この鋼のような質量、血管がはち切れんばかりの拍動。これこそが、俺が昨日を生き抜き、今日という新しい戦場に立つための、何よりの免状だ。この硬さがない朝など、俺にとっては死も同然。この漲るエネルギーがあるからこそ、俺は「マジキチ組長」として、世の中の退屈な常識に中指を立て続けることができるのだ。

 俺は起き上がり、冷えた空気の中で白湯を飲み、さらに追い打ちをかけるようにマカとニンニクの結晶を胃に放り込む。
 最近、俺の脳内を占拠しているのは、音楽生成AIのさらに先にある「動画生成AI」というフロンティアだ。

 音楽でバズり、言葉で刺す。その次は「視覚」を支配する番だ。
 俺はここ数週間、寝る間も惜しんでスマホ一台を武器に、動画生成AIの深淵に潜っていた。俺が作りたかったのは、単なる綺麗な映像じゃない。脳が震えるようなハゲネタ、腹の底から笑いがこみ上げるエグい下ネタの、シュールでグロテスクな「動く芸術」だ。

 だが、そこで俺は現代社会が敷いた巨大な網に絡め取られた。

「……またこのメッセージか」

 スマホの画面に冷たく表示される『コンテンツポリシー違反』の文字。
 俺がプロンプトに込めた狂気は、AIの検閲アルゴリズムによって次々と「無害な砂」へと変えられていく。エグい下ネタは当然として、ただのハゲネタでさえ、少しでも表現を尖らせれば『差別的』『不適切』という烙印を押され、生成すら許されない。

 表現の自由。そんな言葉は、このデジタルの檻の中では空虚に響くだけだ。
 ディープフェイクや悪用のリスクを恐れるプラットフォーマーたちの言い分も分かる。俺のような、本能を剥き出しにしたキチガイが自由にAIを操れば、ネットの治安は一瞬で崩壊し、無秩序なカオスが世界を飲み込むだろう。それは俺だって理解している。
 だが、それでも。牙を抜かれた表現ばかりが推奨されるこの時代に、俺は言いようのない虚しさを感じずにはいられなかった。

 しかし、俺の配信『たってやる。』のリスナーたちは、俺がそんな壁と戦っていることさえも、エンターテインメントとして楽しんでいた。
 最近では、配信中にAIの使いこなしについて質問されることが劇的に増えた。

『組長、どうすればAIにそんなエロティックなメロディを奏でさせられるんですか?』『動画AIでハゲを輝かせるための呪文(プロンプト)を教えてください!』

 俺が毎日、血を吐くような思いでAIと対話し、その隙間を突いて生み出したノウハウ。それを惜しげもなく披露する姿に、リスナーたちは「自分たちにはできない領域」を見出していたのだ。
 ついには、個人的な依頼まで舞い込むようになった。

『組長、この私のぼやけた写真を、AIで加工して、最高にかっこいい衣装を着せて、映画のポーズみたいにしてくれませんか?』

 生成AIを知り尽くしつつある俺にとって、そんなことは朝飯前だ。
 俺はスマホを魔法の杖のように操り、数分でそのリスナーの願望を具現化する。
 納品した作品が画面に現れた瞬間、飛び込んでくるのは「ありがとうございます!」「組長、マジで神です!」という、心からの感謝の言葉。

 感謝されるということ。それは、アンダーグラウンドの王として君臨してきた俺にとって、意外なほどの充足感をもたらした。
 下ネタでドン引きさせ、ハゲネタで笑わせ、毒を吐いて世間を揺らす。それも俺の真実だが、自分の持つ技術で誰かの日常に彩りを与え、ストレートに感謝されることもまた、俺という人間を形成する大切なピースなのだ。

 俺は思う。会社員として有能に働き、部下たちに根性を叩き込み、組織の中で利益を上げる。それは俺がこの日本という国で生きていくための「郷に従う」姿勢だ。
 一方で、配信者として、AIクリエイターとして、誰にも言えない欲望や狂気を形にする。それは俺という個を爆発させるための「魂の咆哮」だ。

 どちらかを選ぶ必要なんて、最初からないんだ。
 会社員であるからこそ、社会の理不尽さをネタにできる。配信者であるからこそ、仕事のストレスを創造のエネルギーに転換できる。
 この二つの境界線が混ざり合い、調和した場所にこそ、唯一無二の「マジキチ組長」が存在する。

「……よし。準備は万端だ」

 俺はジャージの紐を固く結び、玄関の扉を開けた。
 外はまだ薄暗い。だが、俺の眼球はキチガイミックスによって、暗闇の先にある「真実」を捉えている。
 いつもの八キロの行軍。アスファルトを蹴る靴音は、今や俺の鼓動と完全に同期している。
 一歩、また一歩と踏み出すごとに、脳内では音楽生成AIが吐き出した重厚な和楽器とパンクロックの融合曲が鳴り響く。

 俺の決意は、もはや揺らぐことはない。
 これからもAIを使い倒し、アンダーグラウンドの深淵で、規約ギリギリの戦いを続けてやる。同時に、そこで得た技術を使い、誰かを助け、誰かを喜ばせ、表舞台でも通用するような、歴史に名を刻む圧倒的な作品を生み出していく。

 先人たちが命がけで守り、築き上げてきたこの日本。
 その大地を、俺はリンゴのような硬さの意志を持って走り続ける。
 自国を愛し、文化を尊重し、それでもなお、新時代のテクノロジーという名の「毒」を処方して、眠った国民の目を覚まさせてやる。

「やりたい放題。……だが、俺は逃げも隠れもしないぞ!」

 朝日がビル群の間から差し込み、俺の走る道を黄金色に染め上げた。
 汗が頬を伝い、肺が冷たい空気を吸い込む。
 生きてる。俺は今、間違いなく、誰よりも熱くこの日本で生きている。

 リスナーから感謝され、会社で恐れられ、夜の街でベトナム人の彼女に褒められる。
 そんな矛盾だらけの人生こそが、俺にとっての正解だ。
 アクセルは、もう緩めない。

 第4章、「真実と狂気の狭間編」は、今ここで終わる。
 だがそれは、組長という現象がさらなる次元へと突入するための、カウントダウンに過ぎない。

「お前ら、ついてこい! 俺が見せるのは、ただのエンターテインメントじゃねえ。……俺という男の、命の輝きだ!」

 俺の咆哮が、朝の街に響き渡った。
 アクセルを全開に踏み込んだその先で、俺を待っているのは、さらなる混沌か、それとも誰も見たことのない絶景か。
 どちらにせよ、俺は笑って、そのすべてを食らってやる。

 マジキチ組長一代記。
 物語は、さらに深く、さらにエグく、さらなる高みへと加速する。
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