マジキチ組長一代記 ~半分は狂気、半分は真実~

マジキチ組長

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第4章:真実と狂気の狭間編(現在進行形の修羅場)

第19話:真面目な旋律(AIが奏でる本音)

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 深夜の事務所、あるいは自宅の書斎。
 俺の指先は、慣れた手つきでスマホの画面を滑っていた。音楽生成AIのプロンプト入力画面。そこは、俺の脳内にあるカオスを、数秒で旋律へと変換してくれる魔法の釜だ。

 これまでに作ってきた曲は、どれもこれも「劇薬」ばかりだった。
 部長の寂しい頭頂部をバラードにした「毛根のレクイエム」、あるいは放送コードを焼き切るようなエグい下ネタソング。確かにそれらはバズる。SNSで拡散され、リスナーは腹を抱えて笑う。人間という生き物は、結局のところ、無意識のうちにそうした低俗で本能的なネタを「一番面白い」と定義している。それは抗いようのない真実だ。

 だが、今夜は少し違った。
 ふと、スマホを置いて窓の外を見た時、都会の夜景の中に、名もなき先人たちが築き上げてきた歴史の重なりが見えたような気がした。

(アンダーグラウンドなネタ曲ばかりじゃ、いつか限界が来るな……)

 もし俺が、マジキチ組長という存在を、このまま表舞台で堂々と輝かせようとするならば。毒だけで終わるのではなく、その根底にある「光」を見せる必要がある。
 普段の『たってやる。』の話題は、八割がエグい下ネタだ。だが、残りの二割。そこには、俺が何よりも大切にしている「愛国思想」や「歴史への敬意」が詰まっている。そして時として、その二割が八割にも九割にも膨れ上がり、一晩中、日本の未来について語り明かすこともある。

 俺はもともと、根っからの文系思考だ。
 世界情勢や、自国日本の歴史に、並々ならぬ興味を持っていた。一つの物や道具を手に取った時、俺の思考は止まらない。

「これは一体、どういう経緯で考え出されたのか?」「この形に行き着くまでに、どれだけの日本人の試行錯誤があったのか?」

 それを考え、調べ、歴史を知ることに、俺は形容しがたい喜びを感じる。一度ウィキペディアを開けば最後、リンクからリンクへ、次から次へと知識の海に目移りしてしまう。その好奇心の連鎖こそが、俺という人間の本質なのだ。

 俺は再びスマホを手に取り、今夜のプロンプトを打ち込んだ。

「楽曲テーマ:悠久の時を越える日本。先人たちの汗と涙。静かなる誇り。ジャンル:重厚なオーケストラと和楽器の融合」

 AIが生成を開始する。俺はそこに、自分の言葉を乗せていく。
 恥ずかしがる必要はない。真剣な表情で、心を込めて褒めたエステの彼女の時のように、俺はこの国に対しても、真っ直ぐな想いをぶつける。

 深夜の配信が始まった。
 BGMは、いつもの騒がしいビートではない。深く、静かに魂を揺さぶるような旋律が流れ出す。

「よお、お前ら。……今夜は下ネタはお預けだ。少しだけ、俺が見ている景色の話をさせてくれ」

 コメント欄が、一瞬で静まり返った。

『今日の組長、なんか雰囲気が違う……』 『BGMがめちゃくちゃ綺麗だ。どうしたんだ?』

 俺は、自分が調べ尽くした歴史の断片を、噛み締めるように語り始めた。
 今、俺たちが当たり前に使っている言葉、道具、そしてこの平和な大地。それが、どれほど崇高な犠牲と、執念に近い「創造の意志」によって守られてきたか。移民問題や国籍の剥奪といった過激な言葉の裏にある、俺の真意——「この国を、この文化を、誰よりも愛している」という、剥き出しの真心。

「俺は、ウィキペディアの波に溺れながら、いつも思うんだ。この道具一つを作るのに、どれだけの日本人が命を削ったかとな。その歴史を知れば、自国を嫌いなんて言葉、口が裂けても言えねえはずだ。郷に従えねえ奴に、この重みは分からねえ」

 旋律は盛り上がりを見せ、俺の独白と共鳴していく。
 愛国心とは、決して排他的な憎悪ではない。それは、自分を育んでくれた「成り立ち」への、限りない敬意と感謝なのだ。

 配信が終わる頃、コメント欄はかつてないほどの静寂と、深い感動に包まれていた。

『組長の話を聞いて、初めて自分の国の歴史を調べてみたくなった』 『下ネタの時の組長も好きだけど、今日の真面目な組長は、本当にかっこいい』

 俺は深く息を吐き、配信を切った。
 ネタ曲でバズる快感とは、また違う種類の、温かく、ずっしりとした手応えが胸に残っている。

 結局のところ、俺はただの「変態」でも、ただの「会社員」でもない。
 歴史という縦糸と、現代という横糸を、狂気という名の針で縫い合わせる、一人の表現者なのだ。

 やりたい放題。
 ハゲネタで笑わせる日もあれば、先人の功績を語って泣かせる日もある。
 そのすべてが、キチガイミックスによって研ぎ澄まされた、俺という人間の真実だ。

「……さて。明日も早い。先人たちが築いたこの社会で、俺は俺の役割を果たすとするか」

 俺はスマホを充電器に差し込み、静かな眠りについた。
 明日の朝、またリンゴのような硬さの目覚めと共に、俺は新しい一歩を踏み出す。

 アンダーグラウンドから表舞台へ。
 俺の奏でる旋律は、今夜、より広い世界へと響き始めた。
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