マジキチ組長一代記 ~半分は狂気、半分は真実~

マジキチ組長

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第10章:共鳴する魂の家族(リアル・コネクション編)

第48話:最小最強の誇り(なめこサイズの中年リスナー)

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 第47話で、恋に彷徨う50代の「サーチライト男」にハゲの誇りを叩き込んだ直後、俺の回線にはさらなる「男の深淵」を抱えたリスナーが凸(とつ)してきた。

 夜の帳が下りた大阪の事務所。ネオンが湿った窓を毒々しく彩る中、スピーカーから聞こえてきたのは、自虐と快楽が同居したような、不思議な中毒性のある男の声だった。名前は「ファントム」。彼は時折、自分自身でも配信を行うが、そのあまりの過激さゆえに、常に運営という名の「常識」と戦い続けている男だ。

「……いいぞぉ~、組長。さっきのハゲの話、最高だった。腹抱えて笑ったよ。やったれやったれ(笑)」
 俺は椅子を回し、指の間を滑り落ちるフサフサとした自慢の髪をかき上げながら返した。

「よお、ファントム。お前、コメント欄じゃいつも調子いいが、今日は一段と声が弾んでねえな。どうした、またどこかのプラットフォームで首を吊られたのか?」

 ファントムは「バカヤロ」と低く吐き捨て、それから乾いた笑い声を上げた。

「……正解だ。また某配信サイトでBAN(アカウント停止)を食らったよ。俺が口を開けば、運営の奴らは即座に赤いボタンを押しやがる。奴らには、俺の魂の叫びが不快なノイズにしか聞こえねえらしい。いいぞぉ~、もう慣れっこだけどな(笑)」

 俺はガハハと笑い飛ばした。

「安心しろ、ファントム。この俺だって、その道のレジェンドだ。俺が歩いてきたネットの路地裏は、BANされたアカウントの死骸で埋め尽くされてる。かつて某パンメーカーのキャンペーンに準えて、『春のBANまつり』なんて揶揄されたもんさ。ポイントを貯めたら白い皿がもらえるどころか、永久追放の通知が届くんだから、これほど刺激的な祭りはねえよな」

 俺はかつての戦歴を思い出し、言葉に熱を込めた。

「いいか、去年にサービスが終了したあの某匿名つぶやきアプリ、あそこだけでも俺は20回はBANされている。運営からの警告文なんて100回以上は拝んだぜ。もはや運営とは、文通相手のような親密な関係だった。さらに、世間じゃ『治安が良い』と評判のSNSアプリにも手を出したが、あそこは凄かった。登録してわずか5分でBANだ。最速記録を更新したぜ」

 ファントムが「やったれやったれ(笑)」と、モニター越しに手を叩いているのを感じ、俺はさらに続けた。

「俺が何を書いたと思う? ただ、『ニンジンを肛門に突っ込むの楽し過ぎワロタ』。それだけだ。それが俺の、偽らざる真実の叫びだったんだ。謹慎が解けた後、俺は反省の色を1ミリも見せず、再び投稿した。今度は『ナスビを肛門に突っ込むの楽し過ぎワロタ』だ。……その瞬間に永遠の別れだ。ガハハ! そのうちよ、BANされること自体が楽しくなってくるんだ。話のネタが増えると思えば、運営の奴らも俺の人生を彩るエキストラに過ぎねえ」

 ファントムは「いいぞぉ~、組長。やっぱりあんたは本物だ」と感嘆の声を漏らした。だが、その声の奥底には、まだ晴れない霧が立ち込めている。

「……でもよ、組長。BANの話は笑える。それは外側の問題だ。俺の本当の問題は、もっと内側、この股間にあるんだ。いいぞぉ~、笑ってくれよ。俺の『ナニ』、サイズがよ……。自分で言うのも情けねえが、マジで『なめこ』程度しかねえんだ」

「なめこ」という言葉が、深夜の事務所に虚しく響いた。北関東の秀が「ハゲ」に絶望していたように、ファントムは己の肉体的なサイズに、男としての誇りを食い荒らされていた。

 俺は立ち上がり、画面越しに彼を指差した。

「バカヤロ! なめこの何が悪い! お前はなめこの真価を分かってねえ。なめこってのはな、山の宝だ。あのぬめり、あの光沢、そして何より唯一無二の存在感。デカいだけで大味な大根とは、魂のステージが違うんだよ! デカけりゃいいってもんじゃねえ。問題は、そこにどれだけの『マジキチな熱量』が凝縮されているかだ!」

 俺は、独自の「なめこ哲学」を展開した。

「いいか、ファントム。今は一点集中の、超高密度なエネルギーが求められる時代だ。お前のモノが『なめこ』だと言うなら、それを世界一エロティックで、世界一生命力に溢れたなめこに昇華させろ! ぬめりのある変態的なテクニック、圧倒的なピストン運動、そして何より『俺はなめこだ、文句あるか!』と開き直るマジキチの精神だ!」

 ファントムは「いいぞぉ~……」と、呻くように声を漏らした。

「……なめこ最強説。やったれやったれ(笑)。でもよ、組長。現実は非情だ。世の女たちは、やっぱり見栄えやボリュームを欲しがる。このなめこじゃ、戦場に出る前に門前払いだ……」

「バカヤロ!」

 俺は再び一喝した。

「見栄えで選ぶような女は、俺たちのマジキチには付いてこれねえんだよ。お前がその『なめこ』を誇り、全身全霊で挑めば、相手の脳天を突き抜けるほどの衝撃を与えることだって可能だ。サイズを気にして縮こまってる暇があったら、そのなめこに魂の火を灯せ! お前自身が、自分のなめこを愛さずして、誰が愛してやるんだ!」

 俺はデスクを激しく叩き、さらに声を張り上げた。

「いいか、ファントム。俺だって、この『たってやる。』という看板を背負って生きている。だがこれは肉体的な長さの話じゃねえ。魂が、本能が、真っ直ぐに直立しているかどうかの話なんだよ! たとえ物理的なサイズがなめこだろうが、お前のマジキチな魂が天を突くほどそびえ立っていれば、それはもう宇宙一の巨根なんだよ! 脳内で完結させろ! 圧倒的な情念で、物理法則を捻じ曲げろ!」

 ファントムの声が、徐々に熱を帯び、力強さを取り戻してきた。

「……いいぞぉ~、組長。俺は間違っていたよ。BANされるのを恐れて、自分自身のなめこを自分自身でBANしてたんだな。自分の可能性を、世間一般の定規で測って、勝手に失格のスタンプを押してたんだ。やったれやったれ(笑)!」

「その通りだ、ファントム! お前をBANできるのは、世界で唯一、お前自身だけだ。俺たちのようなBAN常習者はな、何度消されても、何度指を差されても、ゾンビのように這い上がって、また『ニンジン』だの『なめこ』だのと、真実を叫び続けるんだよ。それがマジキチとして生きるってことだろうが!」

 ファントムは最後、腹の底から、事務所の空気を震わせるほどの声を張り上げた。

「いいぞぉ~! 組長、俺はもう迷わない。俺のなめこを、世界一光り輝く宝物にしてやる。バカヤロ! 見てろよ、俺のなめこが銀河を貫くその日をな! ガハハハハ!」

 彼の叫びには、もはや自虐の色はなかった。そこにあるのは、己の業を抱きしめ、笑い飛ばす、誇り高きマジキチの魂だ。物理的な問題は何一つ解決していない。明日になればまた、彼はふとした瞬間に溜息をつくかもしれない。だが、その瞬間に彼は思い出すはずだ。自分の内側には、どんな運営もBANできない「最小最強のなめこ」がそびえ立っていることを。

 俺は通話を切り、心地よい疲労感と共に椅子に背を預けた。

 2026年の大阪。街の灯りは、欲望の数だけ瞬いている。

「さて……。なめこの誇りを取り戻させた後は、俺自身の『たってやる。』を堪能しに行くとするか」

 俺はスマホを手に取り、日課であり、俺の生命維持装置でもある「ランダムチャット」を起動させた。ここだけは、BANされるわけにはいかない。ここでは、俺が俺自身として、名もなき他者と魂の火花を散らす。その剥き出しのライブ感が、俺の血を沸騰させる。

「……いいか、ファントム。俺はランダムチャットだけは勘弁してくれと、神がいるなら願ってるよ。なぜなら、ここで俺自身が楽しみながら『たってやる。』を体現してるからだ。この場所は、俺の聖域であり、最高の実験場なんだよ」

 俺はリュックを背負い、深夜の8キロ行軍へと繰り出した。
 大阪の街を歩く俺の足取りは、いつになく軽い。

「いらち」な俺は、信号待ちの一秒ですら魂を削られる気分になるが、今夜はその一秒が、自分を見つめ直す贅沢な時間に思えた。テイクアウトの冷めた料理なんて食わねえ。今、この瞬間の熱を、この空気を、そのまま飲み込んでやる。

「……いいぞぉ~、今夜の月は、なんだか美味そうななめこの色をしてやがる」

 俺は誰にも聞こえない独り言を漏らし、アスファルトを力強く蹴り上げた。
 フサフサな俺の髪を、夜風が激しく、そして誇らしげに撫で上げた。

「たってやる。……全宇宙のなめこたちが、己のサイズを誇り、夜明けを告げるその日までな!」

 コンプレックスという名の檻を壊し、己のなめこを愛すると決めたファントム。
 それを見事に焚き付け、最強の武器へと変えさせた組長。

 人生のBAN祭りは、これからが本番だ。
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