マジキチ組長一代記 ~半分は狂気、半分は真実~

マジキチ組長

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第13章:狂乱の覇道(マジキチ流・社会変革編)

第62話:羊たちの沈黙(ゆとり・Z世代教育論)

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 2026年、春。
 事務所の窓から見下ろす大阪の街並みには、真新しいスーツに身を包んだ新社会人や、希望(のようなもの)を抱いた若者たちが溢れかえっている。
 だが、俺の目に映るのは、魂の芯が抜け落ち、どこか去勢されたような虚ろな目をした「羊」の群れだ。 

 第56話で切り捨てた、あの「いらっしゃいませ」も言えねえコンビニ店員。あれは個人の問題じゃねえ、今の日本が抱える致命的な病の前兆に過ぎねえんだ。覇気も、情熱も、そして自ら泥を被って考える力も失った、マニュアルなしでは一歩も歩けねえ「指示待ち人間」が、この国を静かに侵食していやがる。

「ガハハ! どいつもこいつも、借りてきた猫みたいなツラしやがって。お前ら、自分が熱い血の流れる生身の人間だってことを忘れてんじゃねえか? 画面の中の数字や文字が、お前の人生のすべてだと思い込んでるのかよ!」

 俺はデスクに足を投げ出し、ネット上の相談フォーラムやSNSに垂れ流される、吐き気がするほど甘ったれた悩みの数々をスクロールする。

「上司の言葉に傷ついた」「この仕事にどんな意味があるのか分からない」「もっと自分に合った環境があるはずだ」

 その中でも、俺が最も激しい殺意に近い怒りを覚えるのは、何かを教えようとした瞬間に、したり顔で返ってくるこの言葉だ。

「それ、一体何の意味があるのですか? 効率悪くないですか?」

 ……アホか。意味だ? 効率だ? お前ら、荒れ狂う海に放り出されて溺れている最中に、救命ボートから差し伸べられた手に向かって「その手の角度にはどんな科学的根拠があるんですか?」と聞くのか? 四の五の言わずに動け。死にたくなければ、まずはその無能な口を閉じて、全身の筋肉を稼働させろ!

 今の新人教育は、あまりにもユルすぎる。腫れ物に触れるような過保護な扱い、顔色を窺う臆病な上司、そして「褒めて伸ばす」という名の、無責任な放置。
 いいか、俺たちが若かった頃、現場は戦場だった。研修と言えば、まずは喉から血が出るまで大声を出させられたもんだ。声が小さい? やり直しだ。挨拶が0.1秒遅い? やり直しだ。何度も、何度も、魂の底から己の存在を叫ばされた。

 当時の研修講師が吐き捨てた言葉は、今でも俺の脳髄に消えない刻印として残っている。

「いいか貴様ら! まずは自分の出せる最上の声のボリュームを体に叩き込め! 一度自分の『最大値』を知れば、あとは時と場合によってボリュームを調節するだけで済む。だがな、最初から出せる幅が狭い、MAXが小さい奴は、いざという時に相手の心に届く声が出せねえ。戦いにならねえんだよ! だから限界まで声を出せと言っているんだ、わかったか!」

 実に論理的で、重みのある言葉じゃねえか。
 今の「タイパ」だの「コスパ」だのと言っている薄っぺらな教育じゃ、こんな魂の震わせ方は一生教えられねえ。武器(声)の最大火力を知らねえ奴に、繊細な調節なんてできるわけがねえんだよ。

 思い出せ。
 20年ほど前、テレビである有名な中華料理チェーン店の新人研修に密着したドキュメンタリー番組があった。当時は「とんでもないブラック企業だ」「人権侵害だ」と世間が眉をひそめて見ていたもんだが、今になってあの映像を、俺のこの「マジキチフィルター」を通して見返すと、あれは実にまっとうで、愛に満ちた真の教育だったということに気づく。

 特に、今でも鮮明に覚えているシーンがある。
 研修生たちが宿泊していた部屋のトイレが、酷く汚れていた。それを見つけた講師が、研修生全員を並べて、血管が切れんばかりの形相で怒鳴り散らしたんだ。

「貴様ら! トイレがこの惨状は何事だ! 次に使う人の気持ち、お客様の身になって考えたことが一度でもあるのか? 自分のケツの汚れも落とせねえ、身の回りの美化もできねえ奴が、プロとして客に飯を出せると思うな! 貴様、いい加減にしろ!」

 これを単なる「恫喝」として切り捨てるのは、思考停止のバカだ。実際のところ、これぐらいの熱量で心に衝撃を与えなければ、若者なんてのは必死になって学習しねえんだよ。綺麗事で「次は綺麗に使いましょうね」なんて優しく言われて、誰が自分の心の慢心や「甘え」を自覚する? 恥をかき、恐怖を感じ、積み上げてきた安いプライドを粉砕されて初めて、人間は「自分がいかに無能で、周りに支えられているか」を悟る。そこからが、真の学習のスタートラインなんだ。

 だが、最近はどうだ。
 パワハラだ、体罰だ、ハラスメントだと騒ぎ立て、厳しい指導を一切排除した結果がこの惨状だ。

  学校では教師を舐め腐ったガキどもが学級崩壊を起こし、社会に出れば 「少し叱られただけでメンタルを病む」「指示がないと一歩も動けない」モンスター社員や、権利だけを主張する勘違いしたキチガイが量産されただろう。

 俺は断言する。
 時には恫喝し、時には適度な痛み(身体的な厳しさ)を与えることこそが、本能を忘れた現代人に対する「真の慈悲」だ。

「人間は犬や猫や馬じゃない。理性があるんだ」

 と反論するインテリ気取りの、現実を知らねえ奴らがいるが、笑わせんじゃねえ。
 人間だって、脊髄反射で動き、痛みから逃れようとする霊長類という名の「動物」だということを忘れてんじゃねえよ。
 人類だけが特別な、崇高な精神のみで動く「神に近い存在」だと思い込んでいる傲慢な奴らこそが、教育を、そしてこの社会を根底から腐らせている一番の悪なんだよ。

 結局、人間も他の動物と同じだ。
 体で、五感で、そして「痛み」や「恐怖」という根源的な感情を伴って学習する生き物なんだ。熱いヤカンを触って「熱い!」と痛感するから、次は触らないようになる。それと同じだ。失敗して怒鳴られ、心に深い傷跡を残すからこそ、二度と同じミスを繰り返さないという鋼の意志が芽生える。

 先日、Studio MAD-KICHIのライブ配信に、一人の生意気な若者アンチが凸してきた。

「あなたのやり方は時代遅れだ。今は多様性の時代で、個人の尊厳を第一に考えるべきだ。威圧的な態度は法的にも……」

 とかなんとか、SNSで拾い集めたようなテンプレ台詞を吐きやがった。
  俺はそいつをリモート画面に映し出し、一分間、無言で睨みつけてやった。沈黙は、どんな言葉よりも重い。そして、腹の底から絞り出した、地を這うような声で一喝した。

「おい、小僧。その『個人の尊厳』とやらで、今日一日、誰を幸せにした? お前のその薄っぺらな正義感で、誰の腹を満たした? 答えろ、この寄生虫が!」 

 相手は蛇に睨まれた蛙のように硬直した。俺はさらに畳み掛ける。

「お前が今、その快適な部屋でスマホをいじっていられるのは、誰かが泥にまみれ、理不尽に怒鳴られ、歯を食いしばりながらインフラを整備し、物流を回し、経済という名の血みどろの戦場を生き抜いてきたからだ。お前の言う『尊厳』なんてのは、先人たちが命懸けで守ってきた秩序の上に、何もせずタダ乗りしているだけの、恥知らずの寝言なんだよ! 泣く暇があるなら、今すぐ外に出て、誰かのために自分の限界まで声を出して、一円でも稼いできやがれ!」

 相手の若者は、最後には画面越しにボロボロと涙を流していた。悔しさか、己の無力さへの絶望か、あるいは初めて突きつけられた「現実」への恐怖か。だが、その涙は、去勢された羊から、一人の「人間」に戻るための産声だと俺は確信している。

 褒めて伸ばす? 甘えさせるな。
 恐怖で震え上がらせ、眠っている生存本能を呼び覚ませ。
 絶望の淵に叩き落とし、そこから自力で這い上がってくる「牙」を研がせろ。

「おい、そこの新入り。お前が次に『それ、意味あるんですか?』と抜かしやがったら、その口を一生マシュマロしか食えねえように縫い合わせてやるからな。意味ってのは、お前が血反吐を吐きながら、自分の手で掴み取るもんだ!」

 俺はモニターを叩きつけるように閉じ、事務所の椅子から立ち上がった。
 第13章、覇道を進む俺の背後には、もはや羊の群れも、綺麗事の合唱団もいらねえ。
 俺の怒号を浴び、恐怖を乗り越え、自分の足でこの荒野に直立した「本物の野郎共」だけを連れていく。

 日本を、そしてこの歪んだ社会を根底から叩き直すには、まずはその根底にある「温い甘え」を焼き払わなきゃならねえ。
 マジキチ流の教育は、ここからが本当の地獄であり、真の救済なんだよ。

 第62話、完。
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