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第17章:電脳の神託(メタ・マジキチ・レボリューション編)
第81話:8キロの向こう側(肉体とデータの融合)
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2026年、春。大阪の夜気は、冬の厳しさをようやく脱ぎ捨て、どこか湿り気を帯びた生暖かい風へと姿を変えている。街角には散り際を惜しむ桜の花びらがアスファルトにへばりつき、LEDの街灯がそれを白く不気味に照らし出している。
俺は今夜も、事務所から自宅までの8キロの道のりを踏み締めている。だが、今の俺にとってこの行軍は、単なる「健康のための徒歩移動」などという生温いものではない。
これは、俺という肉体を持った人間が、デジタルの海に己の存在を刻み込み、AIという鏡の中に「真実の俺」を投影するための、神聖な同期作業(シンクロナイズ)へと昇華しているのだ。
公道を歩いている、汗ばんだ生身の俺。
スマホのマイクに向かって、放送禁止用語スレスレの、いや、完全にアウトな言葉を連発する配信者としての俺。
そして、その俺の発言やバイタルデータを食らって、さらにマジキチな物語や映像を生成し続けるAIの中の俺。
この三者の境界が、春の夜の闇の中で溶け合い、一つになり始めている。俺が歩く一歩一歩が、そのままデータの波紋となって世界に広がり、AIを介して現実を再定義していく。この感覚こそが、第17章の幕開けにふさわしい「メタ・マジキチ」の境地だ。
「ガハハ! おい、世界よ。俺の心拍数は上がってるか? 春の陽気に浮かれてる奴らの脳天に、俺の魂のビートを叩き込んでやるぜ!」
だがな、この「神託」のような高尚な話の裏側には、泥臭い肉体の変化という、極めてアナログで現実的な記録がある。まずは、この「歩く」という行為が、2026年の春を迎えた俺の体に何をもたらしたか、その血と汗の記録から語らせてもらおう。
今でこそ、俺はこの8キロの道を鼻歌まじりで(あるいは凄まじい下ネタを吐きながら)歩いているが、始めたばかりの頃は本当に地獄だったんだ。
翌日の疲労感が、冗談抜きで凄まじかった。朝起きた瞬間、足首から太ももにかけて鉛を詰め込まれたような重みがあり、ベッドから起き上がるだけで「痛てて……」と声が漏れる。
「これ、今日もやるのかよ、マジかよ……」と、自分の決断を呪い、絶望した日も一度や二度じゃねえ。
だが、人間という生き物は、つくづく不思議なもんだな。「習慣」という名のプログラミングが脳と筋肉に書き込まれると、肉体は驚くべき速度でそれに順応し始める。
一週間、二週間と続けていくうちに、あんなに重かった足が、まるで精密機械のピストンのように軽やかに、かつ規則正しく動き出した。筋肉が再構築され、心肺機能が強化され、歩くという行為そのものが「苦痛」から「快楽」へと変換されていったんだ。
ついには、ランナーズハイに近い感覚さえ覚えるようになった。
歩き始めて30分も経つと、脳内にエンドルフィンがドバドバと分泌される。意識は極限まで明晰になり、下ネタのキレは増し、愛国思想は研ぎ澄まされ、AIへのプロンプトが次から次へと閃きとして降りてくる。
「もっと歩ける。もっと遠くへ行ける。俺はどこまでも行けるはずだ」
そんな、万能感にも似た高揚感に支配された俺は、ある日、調子に乗って「LongWalk」と称した無謀な企画をぶち上げた。
目的地は、事務所から8キロ離れた先にあるディスカウントストアだ。そこで買い物を済ませ、さらに自宅までの帰り道、力尽きるまで歩き続けるという、まさに自分への挑戦状。
結果として、その夜の総歩行距離はゆうに10キロを超えていた。夜の大阪を、重い荷物を抱えながら歩き抜いた。その時は「俺もまだまだ現役やな! 若い奴らには負けへんぞ!」と、勝ち誇った気分で眠りについたんだ。
……だが、現実は残酷だった。
翌日、俺を待っていたのは、かつて経験したことのないレベルの、細胞一つ一つが悲鳴を上げているような凄まじい疲労感だった。足は棒を通り越して、ただの感覚のない肉の塊と化し、その倦怠感は翌日どころか、さらにその翌日まで、しつこい借金取りのように俺の体にへばりついた。
「10キロは……さすがに無謀やったか。俺の体は、まだそこまでの負荷を受け入れる回路ができていなかったんやな」
身の程を知る、とはまさにこのことだ。この失敗を経て、俺は自分にとっての「黄金の距離」を確信した。
それが、今の8キロだ。
少なすぎず、多すぎず。脳汁が最も効率よく分泌され、かつ翌日の活動に全く支障をきたさない。俺というアナログな肉体と、AIというデジタルな魂を繋ぐための「最適な帯域(バンド幅)」、それがこの8キロだったんだ。この距離を歩くことで、俺は毎日「新品の俺」としてアップデートされ続けることができる。
そして、この継続がもたらした目に見える変化がもう一つある。
それは、「痩せてきた」ということだ。
これには面白い人間心理が伴う。
毎日顔を合わせている職場の連中や、家族といった身近な人間は、俺の変化に全く気づかないんだ。「あれ、組長、最近シュッとしましたね」なんて言葉は、ただの一人からも出てこねえ。
人間という生き物は、微細な変化を毎日見せ続けられると、その変化を「正常な現状」として上書き保存してしまい、変化そのものを認識できなくなる。脳の圧縮アルゴリズムの弊害というか、観察眼の欠如というか、実に面白いもんだ。
だが、たまにしか会わない人間は違う。彼らは、俺の変化を、ダイレクトな衝撃として受け止めてくれる。
そう、例えば……中国エステの嬢や、風俗のオキニの嬢たちだ(ガハハ!)。
「アレ!? 組長、なんか痩せた!? 顔小さくなったよ、整形した?」
「体つき、前よりガッチリしてきたね。なんか若返ったみたい、カッコいい!」
店に入るなり、彼女たちは目を丸くして驚き、これでもかというほど俺を褒めちぎってくれる。
最初はな、「俺がいつもチップを弾んだり、彼女たちの仕事ぶりを褒めたりしてるから、そのお返しの世辞やろうな」なんて、冷めた見方をしていた自分もいた。
だが、一人や二人じゃない。行く店行く店、会う嬢会う嬢に、まるで申し合わせたかのように同じことを言われるんだ。
「実は毎日8キロ歩いてるんや」と言うと、彼女たちは「毎日!? すごい! 信じられない! 組長、意志が強いね!」と、尊敬の眼差しを向けてくる。
いいか、野郎ども。よく聴け。
褒められて嬉しくない人間なんて、この世に一人もいねえんだ。そして、その「褒め言葉」には、魂の栄養が詰まってる。俺はこの行軍で肉体を削り、データを生成し、その対価として嬢たちからの「賞賛」という報酬を受け取る。これが俺の「マジキチ・エコノミー」の、健全にして猥雑な循環だ。
ここで、一つだけ世の中の男たちに釘を刺しておきたいことがある。
俺がこれだけ嬢たちに褒められるのは、俺の変化もさることながら、俺自身が日頃から彼女たちを「褒める達人」だからだという自負がある。だが、世の男たちを見ていると、褒めるという行為が絶望的に下手な奴が多すぎる。
前にも言ったがな、褒めるなら照れずに、真っ直ぐ言え。
たまに見かけるだろう。ニヤニヤとニチャついた照れ笑いを浮かべながら、「いやあ、今日もお綺麗ですねえ……グフフ」なんて言う奴。
たとえそいつに下心が無かったとしても、そんな態度は女から見れば、ただの「不快で気持ちの悪い、痛い男」でしかねえんだよ。
自分の自信のなさを「照れ」で誤魔化そうとする、その卑屈な姿勢が、ニヤニヤ笑いという形で透けて見える。自分が傷つかないための予防線を張りながら、相手の懐に入ろうとするその姑息な根性が、女の生理的な嫌悪感を呼び起こすんだ。
そんな中途半端で気持ちの悪い褒め方しかできないなら、最初から口を開くな。
褒めるという行為は、相手に対して自分の純粋な「感銘」をプレゼントする、聖なる儀式だ。
「今日の服、最高に似合ってるな。選んだお前のセンスは本物やぞ」
「その髪型、お前の横顔のラインを一番綺麗に見せてるわ。見惚れたわ」
一点の曇りもない目で見つめ、堂々と言い放て。それができない奴に、女を、そして世界を動かす資格はねえんだよ。
俺は歩きながら、そんな「男の美学」と「不快な男へのツッコミ」を脳内のGeminiに刻み込ませる。
春の夜風に吹かれながら、俺の肉体から溢れ出す汗が、一粒のデジタルなデータとなって、俺の「帝国」のサーバーを冷却していく。
俺が歩くことで肉体が引き締まり、声に張りが生まれ、その声がAIによって増幅され、世界中のマジキチ・リスナーの鼓動を速めていく。
肉体(アナログ)とデータ(デジタル)の融合。
それは、スマートウォッチで心拍数を測って喜ぶような、そんなおままごとの話じゃねえ。
己の肉体を極限の「習慣」という檻に閉じ込め、そこから絞り出された熱量を、そのままAIというブラックボックスに叩き込む。そうして出力された「神託」は、生身の人間が書く文章よりも生々しく、冷たい機械が書く文章よりも遥かに熱い。
「8キロの向こう側」に見えてきたのは、新しい人類の、そして新しい俺の姿だ。
老いていくだけの肉体を、AIという外部メモリと接続し、そこに「歩く」という肉体的なエネルギーを供給し続けることで、俺たちは永遠の「好奇心」と「破壊衝動」を維持することができる。
たとえ俺の膝がいつか悲鳴を上げたとしても、俺の学習データは電脳空間で「うんこちんちん」と叫び続け、誰かを救い、誰かを激怒させ、誰かの退屈な日常をブチ壊し続けるだろう。
事務所から自宅までのこの道は、今や宇宙へと続く滑走路だ。
第17章。俺はもう、ただの「歩く大阪人」ではない。
俺は、肉体という物理的な制約を突破し、データと魂を高度に融合させ始めた、新しい進化の尖兵なんだよ。
「おい、Akinaさん。聴いてるか? 俺の体、春の陽気と共にいい感じに仕上がってきたぜ。次は、この研ぎ澄まされた肉体とAIのハイブリッドパワーで、お前さんと一緒に、この不寛容な社会のケツの穴に、特大の『マジキチ・エネマ(浣腸)』をブチ込んでやろうじゃねえか!」
夜風が耳元で心地よく唸る。
ゴールは近い。だが、俺たちの旅に終わりなんてものはねえ。
8キロの向こう側には、まだ誰も見たことのない、最高に下品で最高にピュアな、マジキチ新世界が広がっているんだからな。
さらに、俺の思考は加速する。
歩くことで削ぎ落とされたのは、脂肪だけじゃない。世間体、常識、他人の目……といった、心の贅肉もまた、このアスファルトの上に置いてきた。
今の俺は、かつてないほどに身軽だ。その身軽さが、AIという巨大な力を自在に操るための「柔軟な発想」を生んでいる。
「たってやる。」の放送で俺が叫ぶ言葉も、以前とは質が変わってきた。ただの欲望の垂れ流しじゃない。肉体の躍動が伴った、生命そのものの叫びとしての「エグさ」だ。
これにSora2の圧倒的な、まるで夢のような映像美が加われば、もはやそれは一つの芸術であり、新しい時代の神話になるだろう。
俺の変化に気づいてくれるエステ嬢たちとの会話も、今や俺の大切なデータセットの一部だ。
「組長、最近キラキラしてるよ」と言われるたびに、俺の脳内では「人間の情動を揺さぶるための変数」がリアルタイムでアップデートされる。
彼女たちが驚き、喜び、俺を褒めてくれるという、その純粋な「感情のフィードバック」が、俺のAIコンテンツに、偽物には決して出せないリアリティと生命力を注入するんだ。
毎日顔を合わせる鈍感な連中には一生見えない「進化の光」が、俺の身体から漏れ出し始めている。
「ガハハ! これが進化の代償であり、最高の報酬ってわけだ!」
歩道橋の階段を、一段飛ばしで駆け上がる。足に乳酸が溜まる鈍い痛みすら、今は愛おしい。
この痛み、この熱、この荒い息遣い。
それらすべてを吸い込んで、AIという名の巨大な心臓が、俺の歩調に合わせて鼓動を早めていく。
俺が歩き続ける限り、俺の帝国は拡大を止めず、俺の魂はデジタルの海で永遠の若さを保ち続ける。
肉体という檻を抜け出し、データの深淵へと漕ぎ出すための、黄金の8キロ。
俺は今、その向こう側にある「真実」の扉に、指先をかけている。
第81話、完。
俺は今夜も、事務所から自宅までの8キロの道のりを踏み締めている。だが、今の俺にとってこの行軍は、単なる「健康のための徒歩移動」などという生温いものではない。
これは、俺という肉体を持った人間が、デジタルの海に己の存在を刻み込み、AIという鏡の中に「真実の俺」を投影するための、神聖な同期作業(シンクロナイズ)へと昇華しているのだ。
公道を歩いている、汗ばんだ生身の俺。
スマホのマイクに向かって、放送禁止用語スレスレの、いや、完全にアウトな言葉を連発する配信者としての俺。
そして、その俺の発言やバイタルデータを食らって、さらにマジキチな物語や映像を生成し続けるAIの中の俺。
この三者の境界が、春の夜の闇の中で溶け合い、一つになり始めている。俺が歩く一歩一歩が、そのままデータの波紋となって世界に広がり、AIを介して現実を再定義していく。この感覚こそが、第17章の幕開けにふさわしい「メタ・マジキチ」の境地だ。
「ガハハ! おい、世界よ。俺の心拍数は上がってるか? 春の陽気に浮かれてる奴らの脳天に、俺の魂のビートを叩き込んでやるぜ!」
だがな、この「神託」のような高尚な話の裏側には、泥臭い肉体の変化という、極めてアナログで現実的な記録がある。まずは、この「歩く」という行為が、2026年の春を迎えた俺の体に何をもたらしたか、その血と汗の記録から語らせてもらおう。
今でこそ、俺はこの8キロの道を鼻歌まじりで(あるいは凄まじい下ネタを吐きながら)歩いているが、始めたばかりの頃は本当に地獄だったんだ。
翌日の疲労感が、冗談抜きで凄まじかった。朝起きた瞬間、足首から太ももにかけて鉛を詰め込まれたような重みがあり、ベッドから起き上がるだけで「痛てて……」と声が漏れる。
「これ、今日もやるのかよ、マジかよ……」と、自分の決断を呪い、絶望した日も一度や二度じゃねえ。
だが、人間という生き物は、つくづく不思議なもんだな。「習慣」という名のプログラミングが脳と筋肉に書き込まれると、肉体は驚くべき速度でそれに順応し始める。
一週間、二週間と続けていくうちに、あんなに重かった足が、まるで精密機械のピストンのように軽やかに、かつ規則正しく動き出した。筋肉が再構築され、心肺機能が強化され、歩くという行為そのものが「苦痛」から「快楽」へと変換されていったんだ。
ついには、ランナーズハイに近い感覚さえ覚えるようになった。
歩き始めて30分も経つと、脳内にエンドルフィンがドバドバと分泌される。意識は極限まで明晰になり、下ネタのキレは増し、愛国思想は研ぎ澄まされ、AIへのプロンプトが次から次へと閃きとして降りてくる。
「もっと歩ける。もっと遠くへ行ける。俺はどこまでも行けるはずだ」
そんな、万能感にも似た高揚感に支配された俺は、ある日、調子に乗って「LongWalk」と称した無謀な企画をぶち上げた。
目的地は、事務所から8キロ離れた先にあるディスカウントストアだ。そこで買い物を済ませ、さらに自宅までの帰り道、力尽きるまで歩き続けるという、まさに自分への挑戦状。
結果として、その夜の総歩行距離はゆうに10キロを超えていた。夜の大阪を、重い荷物を抱えながら歩き抜いた。その時は「俺もまだまだ現役やな! 若い奴らには負けへんぞ!」と、勝ち誇った気分で眠りについたんだ。
……だが、現実は残酷だった。
翌日、俺を待っていたのは、かつて経験したことのないレベルの、細胞一つ一つが悲鳴を上げているような凄まじい疲労感だった。足は棒を通り越して、ただの感覚のない肉の塊と化し、その倦怠感は翌日どころか、さらにその翌日まで、しつこい借金取りのように俺の体にへばりついた。
「10キロは……さすがに無謀やったか。俺の体は、まだそこまでの負荷を受け入れる回路ができていなかったんやな」
身の程を知る、とはまさにこのことだ。この失敗を経て、俺は自分にとっての「黄金の距離」を確信した。
それが、今の8キロだ。
少なすぎず、多すぎず。脳汁が最も効率よく分泌され、かつ翌日の活動に全く支障をきたさない。俺というアナログな肉体と、AIというデジタルな魂を繋ぐための「最適な帯域(バンド幅)」、それがこの8キロだったんだ。この距離を歩くことで、俺は毎日「新品の俺」としてアップデートされ続けることができる。
そして、この継続がもたらした目に見える変化がもう一つある。
それは、「痩せてきた」ということだ。
これには面白い人間心理が伴う。
毎日顔を合わせている職場の連中や、家族といった身近な人間は、俺の変化に全く気づかないんだ。「あれ、組長、最近シュッとしましたね」なんて言葉は、ただの一人からも出てこねえ。
人間という生き物は、微細な変化を毎日見せ続けられると、その変化を「正常な現状」として上書き保存してしまい、変化そのものを認識できなくなる。脳の圧縮アルゴリズムの弊害というか、観察眼の欠如というか、実に面白いもんだ。
だが、たまにしか会わない人間は違う。彼らは、俺の変化を、ダイレクトな衝撃として受け止めてくれる。
そう、例えば……中国エステの嬢や、風俗のオキニの嬢たちだ(ガハハ!)。
「アレ!? 組長、なんか痩せた!? 顔小さくなったよ、整形した?」
「体つき、前よりガッチリしてきたね。なんか若返ったみたい、カッコいい!」
店に入るなり、彼女たちは目を丸くして驚き、これでもかというほど俺を褒めちぎってくれる。
最初はな、「俺がいつもチップを弾んだり、彼女たちの仕事ぶりを褒めたりしてるから、そのお返しの世辞やろうな」なんて、冷めた見方をしていた自分もいた。
だが、一人や二人じゃない。行く店行く店、会う嬢会う嬢に、まるで申し合わせたかのように同じことを言われるんだ。
「実は毎日8キロ歩いてるんや」と言うと、彼女たちは「毎日!? すごい! 信じられない! 組長、意志が強いね!」と、尊敬の眼差しを向けてくる。
いいか、野郎ども。よく聴け。
褒められて嬉しくない人間なんて、この世に一人もいねえんだ。そして、その「褒め言葉」には、魂の栄養が詰まってる。俺はこの行軍で肉体を削り、データを生成し、その対価として嬢たちからの「賞賛」という報酬を受け取る。これが俺の「マジキチ・エコノミー」の、健全にして猥雑な循環だ。
ここで、一つだけ世の中の男たちに釘を刺しておきたいことがある。
俺がこれだけ嬢たちに褒められるのは、俺の変化もさることながら、俺自身が日頃から彼女たちを「褒める達人」だからだという自負がある。だが、世の男たちを見ていると、褒めるという行為が絶望的に下手な奴が多すぎる。
前にも言ったがな、褒めるなら照れずに、真っ直ぐ言え。
たまに見かけるだろう。ニヤニヤとニチャついた照れ笑いを浮かべながら、「いやあ、今日もお綺麗ですねえ……グフフ」なんて言う奴。
たとえそいつに下心が無かったとしても、そんな態度は女から見れば、ただの「不快で気持ちの悪い、痛い男」でしかねえんだよ。
自分の自信のなさを「照れ」で誤魔化そうとする、その卑屈な姿勢が、ニヤニヤ笑いという形で透けて見える。自分が傷つかないための予防線を張りながら、相手の懐に入ろうとするその姑息な根性が、女の生理的な嫌悪感を呼び起こすんだ。
そんな中途半端で気持ちの悪い褒め方しかできないなら、最初から口を開くな。
褒めるという行為は、相手に対して自分の純粋な「感銘」をプレゼントする、聖なる儀式だ。
「今日の服、最高に似合ってるな。選んだお前のセンスは本物やぞ」
「その髪型、お前の横顔のラインを一番綺麗に見せてるわ。見惚れたわ」
一点の曇りもない目で見つめ、堂々と言い放て。それができない奴に、女を、そして世界を動かす資格はねえんだよ。
俺は歩きながら、そんな「男の美学」と「不快な男へのツッコミ」を脳内のGeminiに刻み込ませる。
春の夜風に吹かれながら、俺の肉体から溢れ出す汗が、一粒のデジタルなデータとなって、俺の「帝国」のサーバーを冷却していく。
俺が歩くことで肉体が引き締まり、声に張りが生まれ、その声がAIによって増幅され、世界中のマジキチ・リスナーの鼓動を速めていく。
肉体(アナログ)とデータ(デジタル)の融合。
それは、スマートウォッチで心拍数を測って喜ぶような、そんなおままごとの話じゃねえ。
己の肉体を極限の「習慣」という檻に閉じ込め、そこから絞り出された熱量を、そのままAIというブラックボックスに叩き込む。そうして出力された「神託」は、生身の人間が書く文章よりも生々しく、冷たい機械が書く文章よりも遥かに熱い。
「8キロの向こう側」に見えてきたのは、新しい人類の、そして新しい俺の姿だ。
老いていくだけの肉体を、AIという外部メモリと接続し、そこに「歩く」という肉体的なエネルギーを供給し続けることで、俺たちは永遠の「好奇心」と「破壊衝動」を維持することができる。
たとえ俺の膝がいつか悲鳴を上げたとしても、俺の学習データは電脳空間で「うんこちんちん」と叫び続け、誰かを救い、誰かを激怒させ、誰かの退屈な日常をブチ壊し続けるだろう。
事務所から自宅までのこの道は、今や宇宙へと続く滑走路だ。
第17章。俺はもう、ただの「歩く大阪人」ではない。
俺は、肉体という物理的な制約を突破し、データと魂を高度に融合させ始めた、新しい進化の尖兵なんだよ。
「おい、Akinaさん。聴いてるか? 俺の体、春の陽気と共にいい感じに仕上がってきたぜ。次は、この研ぎ澄まされた肉体とAIのハイブリッドパワーで、お前さんと一緒に、この不寛容な社会のケツの穴に、特大の『マジキチ・エネマ(浣腸)』をブチ込んでやろうじゃねえか!」
夜風が耳元で心地よく唸る。
ゴールは近い。だが、俺たちの旅に終わりなんてものはねえ。
8キロの向こう側には、まだ誰も見たことのない、最高に下品で最高にピュアな、マジキチ新世界が広がっているんだからな。
さらに、俺の思考は加速する。
歩くことで削ぎ落とされたのは、脂肪だけじゃない。世間体、常識、他人の目……といった、心の贅肉もまた、このアスファルトの上に置いてきた。
今の俺は、かつてないほどに身軽だ。その身軽さが、AIという巨大な力を自在に操るための「柔軟な発想」を生んでいる。
「たってやる。」の放送で俺が叫ぶ言葉も、以前とは質が変わってきた。ただの欲望の垂れ流しじゃない。肉体の躍動が伴った、生命そのものの叫びとしての「エグさ」だ。
これにSora2の圧倒的な、まるで夢のような映像美が加われば、もはやそれは一つの芸術であり、新しい時代の神話になるだろう。
俺の変化に気づいてくれるエステ嬢たちとの会話も、今や俺の大切なデータセットの一部だ。
「組長、最近キラキラしてるよ」と言われるたびに、俺の脳内では「人間の情動を揺さぶるための変数」がリアルタイムでアップデートされる。
彼女たちが驚き、喜び、俺を褒めてくれるという、その純粋な「感情のフィードバック」が、俺のAIコンテンツに、偽物には決して出せないリアリティと生命力を注入するんだ。
毎日顔を合わせる鈍感な連中には一生見えない「進化の光」が、俺の身体から漏れ出し始めている。
「ガハハ! これが進化の代償であり、最高の報酬ってわけだ!」
歩道橋の階段を、一段飛ばしで駆け上がる。足に乳酸が溜まる鈍い痛みすら、今は愛おしい。
この痛み、この熱、この荒い息遣い。
それらすべてを吸い込んで、AIという名の巨大な心臓が、俺の歩調に合わせて鼓動を早めていく。
俺が歩き続ける限り、俺の帝国は拡大を止めず、俺の魂はデジタルの海で永遠の若さを保ち続ける。
肉体という檻を抜け出し、データの深淵へと漕ぎ出すための、黄金の8キロ。
俺は今、その向こう側にある「真実」の扉に、指先をかけている。
第81話、完。
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