マジキチ組長一代記 ~半分は狂気、半分は真実~

マジキチ組長

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第19章:叛逆のプロトコル(社会実装の狂気編)

第94話:好奇心の暴走(情報の闇鍋パーティー)

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 2026年、春。
 大阪の夜風は、昼間の温もりをどこかへ置き去りにしたかのような鋭さを孕み、事務所の窓をガタガタと震わせている。窓の外では、散り急ぐ桜が街灯の光に照らされ、まるでバグを起こしたピクセルデータのように夜の闇を舞っていた。

 俺は今、猛烈な勢いでGoogle AI Studioの深淵へとダイブしている。つい数日前に本格的に触り始めたばかりだというのに、俺の手元からは、これまでのAI活用の常識を軽々と飛び越えるような作品群が次々と産み落とされている。自分でもこのスピード感には驚いているが、同時にこれは、なるべくしてなった結末だという確信がある。

 結局のところ、この手の生成AIサービスというやつは「プロンプト」がすべてを支配する絶対的な力学の上に成り立っている。AIに対して、いかに的確で、いかに解像度の高い指示を叩き込めるか。それさえできれば、誰だって驚愕するようなクオリティの作品を作り上げることができる。

 だが、その「的確な指示」を生み出すためのコツというやつが、一筋縄ではいかない。このコツの正体は、どれだけ生成AIという未知の知性に対して、寝食を忘れて向き合い、膨大な時間を費やしてきたかという格闘の総量によって、残酷なまでに左右されるのだ。

 俺を振り返ってみろ。
 ChatGPTがこの世に産声を上げたあの瞬間から、俺は毎日のように、それこそ取り憑かれたようにAIを触り倒してきた。プロンプトの一文字を変えるだけでAIの表情がどう変わるのか。エラーを吐かれたときに、どうやって裏道を見つけて指示を通すのか。的外れな回答を「最高のご馳走」として楽しみ、その思考の癖を肉体の一部として刻み込んできた。その泥臭い積み重ねの果てに、俺はAIの呼吸を掴み、それが今の圧倒的なノウハウとなって俺を支えている。これは昨日今日始めた連中が、どれだけマニュアルを読み漁ったところで決して到達できない野生の知覚だ。

 よく「どうすれば組長のようにAIを使いこなせるんですか?」と聞かれることがある。

 だが、正直に言おう。俺は人にものを教えるのが死ぬほど苦手だ。これは俺が昭和という時代に揉まれ、最初の職場で「上司の背中を見て覚えろ」「御託を並べる前にまず手を動かせ、考えるだけ時間の無駄だ」という方針で叩き込まれてきたからだろう。今の時代、そんなやり方はタイパが悪いだのハラスメントだだのと叩かれる対象かもしれない。だが、俺に言わせれば、そんなものは本質を何も分かっていないバカの戯言だ。

 試行錯誤を繰り返し、自分の指を動かし、何度も壁にぶつかって血を流しながら掴み取った知識こそが、真の意味で自分の血肉になる。他人に丁寧に噛み砕いて教えてもらった知識なんて、いざという時に役には立たない、表皮だけをなぞった借り物の知恵に過ぎない。

 俺は、自分が教わってきたこの行動至上主義のやり方が間違っているとは今でも思わない。むしろ、AIのような秒単位でルールが書き換わる最先端の分野においてこそ、この泥臭い「まず動く」という姿勢が最強の生存戦略になると確信している。

 俺は自分のこの「教える才能の欠如」を、短所だと思って改善しようとは微塵も思わない。これは短所というよりは、単にその分野の才能がないのだ。

 以前の話でも触れたが、才能がない人間が、向いていないことに貴重な時間を割いて努力したところで、報われる可能性は極めて低い。

 職場のマネジメントだって同じだ。才能がない者に無理やり教える仕事をさせるより、きっぱりと諦めて、それができる教え上手な人間に任せる方が、組織としても個人としてもよっぽど効率が良い。俺の時間は、教えるためにあるのではなく、創り出すためにあるのだから。

 スケジュール管理だってそうだ。俺にはその才能が決定的に欠けている。計画を立てて、その通りに時計の針を動かすなんて、考えただけで鳥肌が立つ。だから、そんなものはAIや、それが得意な真面目な秀才に丸投げすればいい。俺が磨くべきは、そこではない。

 俺の才能と呼べるものがあるとするなら、それはAIを使いこなす技術そのものよりも、それを突き動かす圧倒的な好奇心だ。俺は自分のあらゆる欠点を、この『好奇心』という名の暴走特急でカバーしている。

 RPGで例えてみろ。戦士として生まれたキャラクターが、わざわざ魔法を使えるようになるために必死に修行したところで、その威力なんて魔法使いの初級魔法にも及ばないだろう?戦士なら、伝説の剣を拾い、その腕力を極限まで高めて、敵を力任せに叩き伏せればいい。魔法使いになりたいのなら、最初からそっちの才能がある奴に任せろ。

 何度でも言うぞ。才能がない分野はきっぱり諦めて、自分が勝てる土俵、自分が震えるほどワクワクできる分野で勝負しろ。そして俺にとっての土俵は、AIという名の巨大な鏡に、自分の中のドロドロとした好奇心を全力で叩きつけることだ。

 今、俺が取り組んでいる実験は、AI StudioのAPIを限界までいじり倒し、ネットの底に沈んでいる情報の闇鍋を、高尚な哲学へと昇華させるマジキチな試みだ。ターゲットは、世の中の雑多でくだらないニュース、芸能人の不祥事への誹謗中傷、掲示板に溢れる下劣なネタ、そして俺が大好きな、三度の飯より欠かせないエグい下ネタの数々だ。それらをAPI経由で、俺が自作した哲学変換エンジンに流し込む。

 プロンプトには、カント、ニーチェ、ハイデガー、あるいはブッダの思考プロセスを模した高度なロジックを実装した。

 例えば「駅前で泥酔して全裸で放尿したおっさんが現行犯逮捕された」という、救いようのない、ただただ不快なニュースを入力すると、俺のAIはそれを「閉塞した現代都市構造における、社会契約を逸脱した原初的な生命力の噴出と、法という名の去勢装置による暴力的な抑止の対峙」という、深遠な存在論的考察へと変換して出力する。

 これが面白いんだ。綺麗事ばかりが並び、ポリコレという名の消毒液で塗り固められた現代のクソ退屈なネット空間に、このマジキチな真実を叩き込む。偏食をしない俺の好奇心が、AIというフィルターを通すことで、時には社会を刺す猛毒となり、時には誰かの行き場のない魂を救う劇薬となる。この変換が行われる一瞬、モニターの向こう側でAIが理解を超える出力を吐き出す瞬間が、たまらなく刺激的なんだ。

「おい、Gemini。この掲示板に書き込まれた、特定個人への執拗な粘着コメントを、サルトルの実存主義に基づいて分析しろ。他者という地獄の中で、いかにしてこの書き込み主が自らの存在を定義しようと足掻いているか、最高に知的な言葉で解体して見せろ」

 AIが思考を開始する。モニターに流れるテキストは、もはや元のドブのようなコメントを忘れさせるほどに崇高で、美しく、そして救いようがないほどに狂っている。これだ。これこそが、AIと人間が共謀して生み出す、新しい時代の表現の形だ。

 理屈で考えている優等生連中は、AIを仕事の効率を上げるための便利な文房具としてしか見ていない。だが、俺のような好奇心の塊は、AIを自分の中の可能性を、100万倍に増幅して世界を破壊するための火薬として見ている。

 AIを極めたい、あるいは使いこなしたいと思っている奴がいるなら、俺のような好奇心の怪物になってみろ。常識を捨てろ、世間体を捨てろ、恥を捨てろ。ただ自分の「知りたい」「見たい」「やりたい」という原始的な衝動に忠実に、ひたすら手を動かし続けろ。

 そうした行動するマジキチが増えれば、日本のAI産業なんてものは、役人の補助金なんて頼らなくても自然と爆発的に栄えるはずだ。

 シンギュラリティなんていう、どこの誰が言い出したかもわからない得体の知れない言葉に怯えている暇があるなら、自分の好奇心でそのシンギュラリティを正面からぶっ飛ばして、その先にある誰も見たことがない面白い世界を、自分たちの手で創り上げようじゃないか。

 俺の行進に、緻密な計画も、安全な地図も、未来の保証もいらない。
 あるのは、止まることのない指先と、無限に膨らみ続け、世界を飲み込もうとする黒い好奇心だけだ。

 情報の闇鍋を、AIという名の巨大なスプーンでかき混ぜ、世界に心地よい毒を撒き散らしながら、俺はさらに深く、暗く、光り輝くAIの深淵へと潜っていく。

 話は、自分の好奇心で、このクソ面白くない世界を少しだけ壊してからだ。

 春の嵐が窓の外で狂い咲く中、俺は再び、見たこともない複雑なプロンプトを、まるで銃弾を装填するように打ち込み始めた。
 この情報の闇鍋パーティーは、まだメインディッシュにさえ辿り着いていない。
 俺たちの夜は、ここからが本番なんだ。

 第94話、完。
 
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