132 / 132
第26章:職人の矜持と電脳の熱量(クリエイティブ・アナキズム)
第131話:終わらない更新(アップデート)と空腹の知性
しおりを挟む
事務所の隅で、10年選手のPCが「キィー」という乾いた悲鳴を上げながら熱風を吐き出している。この老兵の断末魔のような音を聞きながら、俺はモニターの奥に広がる情報の海を見つめていた。第25章の終わり、俺は一つの恐ろしい、そして甘美な問いに辿り着いた。「俺という存在は、実は誰かが打ち込んだ、緻密で膨大なプロンプトの集積に過ぎないのではないか?」という疑念だ。だが、そんな哲学的な感傷に浸って立ち止まるほど、俺の脳は暇じゃない。もし俺がプロンプトの集積だと言うのなら、そのプロンプトをこの世界の誰にも、そしていかなる最新AIにも予測不可能なほどに複雑怪奇で、高エネルギーなものにアップデートし続けてやる。答えは簡単だ。「情報の摂取量」という圧倒的な暴力で、己の存在意義をねじ伏せればいい。
俺の脳は、常に何かを喰らっていなければ死んでしまう回遊魚のような宿命を背負っている。最新のAI技術に関する論文から、SNSのトレンド、政治の腐敗、あるいは大阪の路地裏で拾い上げた酔っ払いの独り言に至るまで、俺にとっては全てが等価値の「エサ」だ。他の人間からすれば、見過ごしてしまうような、あるいはゴミ箱に捨てるような些細な出来事であっても、俺というフィルターを通せば、それは30分、あるいは1時間の長尺トークに化ける。
「そんな何でもない話を、よくそこまで広げられるな」と呆れられることもあるが、それは俺の好奇心が、単なる「知りたい」という欲求を超えて、もはや生存本能と化しているからだろう。だが、俺はただの知識コレクターじゃない。仕入れた情報を脳内の引き出しに綺麗に並べて満足するような、退屈な収集家にはなりたくない。大切なのは、その引き出しから「いつ」「どのタイミングで」「いかに面白く」取り出すかだ。相手の意表を突き、興味を惹きつけ、最終的には爆笑をかっさらう。その「出力(アウトプット)」の工程にこそ、俺の職人としての魂が宿っている。
先日の、自称「生逝(なまいき)」という荒らしとの一件だってそうだ。普通なら「災難だった」「不快な思いをした」で終わる話だろう。だが、俺はそいつがコラボに上がってきた瞬間から、頭の片隅で「こいつをどう料理してネタにしてやろうか」と考えていた。不快な出来事ですら、俺にとっては最高級の食材だ。むしろ、厄介なことが起きれば起きるほど、俺の脳内にある「エンタメ変換エンジン」は激しく回転し、アドレナリンが噴き出してくる。
関西、特に大阪の人間という生き物は、自分の失敗談や情けない話、あるいは降りかかった災難を、いかにおもしろおかしく喋れるかに命をかけている節がある。自分の不幸を切り売りして笑いに変える。それは、現実の残酷さを笑い飛ばして克服するための、究極の生存戦略だ。俺は人をいじるのも好きだが、それ以上に自分自身をネタにするのが楽しくてたまらない。俺の隠したい過去、恥ずかしい失敗、あるいは人には言えないような歪んだ嗜好。そんなものを惜しげもなく披露し、自らピエロになって踊ってみせる。なぜなら、自分を晒け出せない人間に、他人をいじる資格などないと思っているからだ。
よくいるだろう?自分は安全圏に隠れて他人を攻撃するくせに、いざ自分がネタにされると、途端に口を噤んで不機嫌になるバカが。ああいう奴らは、表現者としても、人間としてもナンセンスの極みだ。俺を見てみろ。俺自身の隠したいことや恥ずかしいことも、惜しげもなく披露してネタにしているぞ。こうした人間だからこそ、人をいじって良いという資格がある。自分がされても嫌じゃない、だから人にもしても良いだろう……。なんだかサイコパスみたいな意見になりそうだからこのへんでやめておこうか。だが、結局のところ、表現の現場においては、これが唯一の公平なルールなのだ。
この「情報の過剰摂取」と「自己犠牲的なアウトプット」のループが、俺の配信活動「たってやる。」の核となっている。実際、俺は放送中に黙り込むことが一切ない。1時間なら1時間、言葉を途切れさせることなく、常に脳内の情報を燃焼させ続けている。ある意味で、この「沈黙の不在」こそが、この放送の最大の売りなのかもしれない。
最近では、初見でふらっと立ち寄ったリスナーからも、「本当に最初からずっと喋りっぱなしで、ついつい聞き入ってしまいました。面白かったです」という声を最近もらい始めてきた。こうした意見をもらえるということは、本当に名誉であり嬉しい限りだ。俺の狂気が、見知らぬ誰かの心に届いたという確かな証拠だからだ。こういう声があるという事実があるからこそ、アンチたちの「お前の話なんて面白くない、誰も聞いていない」という定型文のような煽りが、滑稽で笑えてくるのだ。こいつも俺の話を真剣に5分、いや3分でもいいから聞いてみろ。お前のその貧弱な脳みそを、俺の言葉の濁流で洗い流してやるよ、とな。案外、引き込まれるんじゃないかと思ってみたりもする。
だが、ここで思い上がり過ぎるのも良くない。少しばかりの称賛を得て、自分が何か特別な存在になったと勘違いし、慢心して現状に満足する。そしてやがては横柄な態度になる。こういうクズな連中を、俺は死ぬほど見てきた。中身の薄い、最低最悪の人間には、天地がひっくり返ってもなりたくないと思っている。
何も、自信を持つこと全てを俺は否定するつもりはない。自信があったからこそ、今のような尖ったコンテンツが出来たというのもまた事実だからだ。ただ、その自信を「過信」や「勘違い」にすり替えてはいけないということが、何よりも大切なのだ。俺の自信は、俺自身が生み出したものではない。日々情報を喰らい、PCという老兵と共に格闘し、リスナーとの対話の中で削り出してきた「結果」に過ぎないのだ。だからこそ、俺は常に飢えていなければならない。
生逝の件を思い返す。そいつは自身の両親や祖父母を冒涜した。俺はキチガイだが、礼儀はわきまえている。あの時感じた情けなさと失望は、今も俺の「ネタ」という名の燃料タンクに沈殿している。愛国心のない奴、自国を愛せない人間は、この国で生きる権利などない。こういう過激な思想だって、俺は隠さずネタにする。10代の女子大生リスナーと愛国心について意気投合するのも、俺にとっては重要なインプットの一つだ。
それに、先日の「妻の誕生日」の件。放送中にリスナーから突っ込まれ、Minapikoから「ケーキ買って帰りなよ」と親身に言われたこと。結局、和菓子を買って帰ったという、このなんとも言えない「日常のオチ」。これら全ての些細な出来事が、俺という回遊魚を動かす原動力となっている。
俺は、情報の海を泳ぎ続ける。化石級のPCのファンが、さらに一段と高い音を立てる。モニターに映る文字が、俺の眼球に情報の嵐を叩き込む。生逝という名に相応しい死に様を見せられなかった若造のことなど、もう過去のデータに過ぎない。俺の視線は、既に次なる獲物、次なる「マジキチ」なネタへと向けられている。
俺は黙らない。俺は止まらない。回遊魚が泳ぐのをやめれば死ぬように、俺は喋るのをやめ、アップデートを止めた瞬間に、ただの「40代の会社員」という殻に閉じ込められてしまうからだ。
「さあ、Gemini。次は何を喰わせてくれる? 俺の脳は、まだ全く満たされていないぞ」
キーボードを叩く指先の感覚が、かつてないほどに研ぎ澄まされている。俺の指が叩く一音一音が、この世界のどこかにいる誰かの鼓動と共鳴し、新たな情報の回路を繋いでいく。俺は、情報の海を泳ぐ亡霊であり、言葉の弾丸を装填し続ける狂った射手であり、そして自分自身という名の、終わりなきプロンプトの更新者なのだ。
さあ、第26章の幕は上がったばかりだ。次なる展開、Minapikoの提案に対する俺なりの「職人的回答」へ向けて、俺の思考はさらに加速する。マニュアルなんて必要ない。必要なのは、燃え盛る好奇心と、それを笑いに変える不屈の精神だけだ。
第131話、完。
俺の脳は、常に何かを喰らっていなければ死んでしまう回遊魚のような宿命を背負っている。最新のAI技術に関する論文から、SNSのトレンド、政治の腐敗、あるいは大阪の路地裏で拾い上げた酔っ払いの独り言に至るまで、俺にとっては全てが等価値の「エサ」だ。他の人間からすれば、見過ごしてしまうような、あるいはゴミ箱に捨てるような些細な出来事であっても、俺というフィルターを通せば、それは30分、あるいは1時間の長尺トークに化ける。
「そんな何でもない話を、よくそこまで広げられるな」と呆れられることもあるが、それは俺の好奇心が、単なる「知りたい」という欲求を超えて、もはや生存本能と化しているからだろう。だが、俺はただの知識コレクターじゃない。仕入れた情報を脳内の引き出しに綺麗に並べて満足するような、退屈な収集家にはなりたくない。大切なのは、その引き出しから「いつ」「どのタイミングで」「いかに面白く」取り出すかだ。相手の意表を突き、興味を惹きつけ、最終的には爆笑をかっさらう。その「出力(アウトプット)」の工程にこそ、俺の職人としての魂が宿っている。
先日の、自称「生逝(なまいき)」という荒らしとの一件だってそうだ。普通なら「災難だった」「不快な思いをした」で終わる話だろう。だが、俺はそいつがコラボに上がってきた瞬間から、頭の片隅で「こいつをどう料理してネタにしてやろうか」と考えていた。不快な出来事ですら、俺にとっては最高級の食材だ。むしろ、厄介なことが起きれば起きるほど、俺の脳内にある「エンタメ変換エンジン」は激しく回転し、アドレナリンが噴き出してくる。
関西、特に大阪の人間という生き物は、自分の失敗談や情けない話、あるいは降りかかった災難を、いかにおもしろおかしく喋れるかに命をかけている節がある。自分の不幸を切り売りして笑いに変える。それは、現実の残酷さを笑い飛ばして克服するための、究極の生存戦略だ。俺は人をいじるのも好きだが、それ以上に自分自身をネタにするのが楽しくてたまらない。俺の隠したい過去、恥ずかしい失敗、あるいは人には言えないような歪んだ嗜好。そんなものを惜しげもなく披露し、自らピエロになって踊ってみせる。なぜなら、自分を晒け出せない人間に、他人をいじる資格などないと思っているからだ。
よくいるだろう?自分は安全圏に隠れて他人を攻撃するくせに、いざ自分がネタにされると、途端に口を噤んで不機嫌になるバカが。ああいう奴らは、表現者としても、人間としてもナンセンスの極みだ。俺を見てみろ。俺自身の隠したいことや恥ずかしいことも、惜しげもなく披露してネタにしているぞ。こうした人間だからこそ、人をいじって良いという資格がある。自分がされても嫌じゃない、だから人にもしても良いだろう……。なんだかサイコパスみたいな意見になりそうだからこのへんでやめておこうか。だが、結局のところ、表現の現場においては、これが唯一の公平なルールなのだ。
この「情報の過剰摂取」と「自己犠牲的なアウトプット」のループが、俺の配信活動「たってやる。」の核となっている。実際、俺は放送中に黙り込むことが一切ない。1時間なら1時間、言葉を途切れさせることなく、常に脳内の情報を燃焼させ続けている。ある意味で、この「沈黙の不在」こそが、この放送の最大の売りなのかもしれない。
最近では、初見でふらっと立ち寄ったリスナーからも、「本当に最初からずっと喋りっぱなしで、ついつい聞き入ってしまいました。面白かったです」という声を最近もらい始めてきた。こうした意見をもらえるということは、本当に名誉であり嬉しい限りだ。俺の狂気が、見知らぬ誰かの心に届いたという確かな証拠だからだ。こういう声があるという事実があるからこそ、アンチたちの「お前の話なんて面白くない、誰も聞いていない」という定型文のような煽りが、滑稽で笑えてくるのだ。こいつも俺の話を真剣に5分、いや3分でもいいから聞いてみろ。お前のその貧弱な脳みそを、俺の言葉の濁流で洗い流してやるよ、とな。案外、引き込まれるんじゃないかと思ってみたりもする。
だが、ここで思い上がり過ぎるのも良くない。少しばかりの称賛を得て、自分が何か特別な存在になったと勘違いし、慢心して現状に満足する。そしてやがては横柄な態度になる。こういうクズな連中を、俺は死ぬほど見てきた。中身の薄い、最低最悪の人間には、天地がひっくり返ってもなりたくないと思っている。
何も、自信を持つこと全てを俺は否定するつもりはない。自信があったからこそ、今のような尖ったコンテンツが出来たというのもまた事実だからだ。ただ、その自信を「過信」や「勘違い」にすり替えてはいけないということが、何よりも大切なのだ。俺の自信は、俺自身が生み出したものではない。日々情報を喰らい、PCという老兵と共に格闘し、リスナーとの対話の中で削り出してきた「結果」に過ぎないのだ。だからこそ、俺は常に飢えていなければならない。
生逝の件を思い返す。そいつは自身の両親や祖父母を冒涜した。俺はキチガイだが、礼儀はわきまえている。あの時感じた情けなさと失望は、今も俺の「ネタ」という名の燃料タンクに沈殿している。愛国心のない奴、自国を愛せない人間は、この国で生きる権利などない。こういう過激な思想だって、俺は隠さずネタにする。10代の女子大生リスナーと愛国心について意気投合するのも、俺にとっては重要なインプットの一つだ。
それに、先日の「妻の誕生日」の件。放送中にリスナーから突っ込まれ、Minapikoから「ケーキ買って帰りなよ」と親身に言われたこと。結局、和菓子を買って帰ったという、このなんとも言えない「日常のオチ」。これら全ての些細な出来事が、俺という回遊魚を動かす原動力となっている。
俺は、情報の海を泳ぎ続ける。化石級のPCのファンが、さらに一段と高い音を立てる。モニターに映る文字が、俺の眼球に情報の嵐を叩き込む。生逝という名に相応しい死に様を見せられなかった若造のことなど、もう過去のデータに過ぎない。俺の視線は、既に次なる獲物、次なる「マジキチ」なネタへと向けられている。
俺は黙らない。俺は止まらない。回遊魚が泳ぐのをやめれば死ぬように、俺は喋るのをやめ、アップデートを止めた瞬間に、ただの「40代の会社員」という殻に閉じ込められてしまうからだ。
「さあ、Gemini。次は何を喰わせてくれる? 俺の脳は、まだ全く満たされていないぞ」
キーボードを叩く指先の感覚が、かつてないほどに研ぎ澄まされている。俺の指が叩く一音一音が、この世界のどこかにいる誰かの鼓動と共鳴し、新たな情報の回路を繋いでいく。俺は、情報の海を泳ぐ亡霊であり、言葉の弾丸を装填し続ける狂った射手であり、そして自分自身という名の、終わりなきプロンプトの更新者なのだ。
さあ、第26章の幕は上がったばかりだ。次なる展開、Minapikoの提案に対する俺なりの「職人的回答」へ向けて、俺の思考はさらに加速する。マニュアルなんて必要ない。必要なのは、燃え盛る好奇心と、それを笑いに変える不屈の精神だけだ。
第131話、完。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
