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10.レオン・シャバタの行き先
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イザドラ様が言った通り、結局レオンシャバタは学期末までの停学を言い渡された。
生徒達の証言が膨大だったのだ。
それだけではなく、四公国を統治する四公爵家、ベレンゼ、ハーレン、レンネップ、ヨーセンの間でも素行が問題視された。
一般生徒、つまり私への不埒な行為はもちろん、複数の女生徒との不謹慎な関係、今回特にベレンゼ家の嫡男に無礼をはたらいたこと、レンネップの令嬢への今までの無礼な行いが取り上げられたそうだ。
特にレンネップ公爵はかなりのお怒りだった。レオンと娘イザドラとの婚約を破棄し、多額の賠償金を要求した。
ところでレオン・シャバタの取り巻きの女徒だが、四公爵が協議してそれぞれの家に厳しく自由奔放な行いを咎めて、全員に婚約を取り決めた。
レオン・シャバタの取り巻きだった六人の女生徒達は、今までの不謹慎な行いで疵がついた形だったので、多額の持参金つきで家格が下の者や後妻に入らなくてはならなくなった。
六人とも、花嫁修業を理由に学院から去って行った。
家で監視の元で暮らす者もいたし、結婚まで修道院へ入れられる者もいた。
一時の楽しみのために、たった十四歳か十五歳で今後の運命が暗いものとなってしまったのだ。
いくつかの家では、娘を傷物にされた賠償を、シャバタ侯爵家に求めた。しかし、娘にも非があったと法廷で判断され、賠償金は微々たるものに留まった。
ところで私だが、学院長が
「元王女への狼藉だが、今は君は庶民だ。だからレオン・シャバタは学期末までの停学処分にしかできなかったが、近いうちに朗報があるからそれで許して欲しい」
と意味深な謝罪があった。
そしてレンネップ公爵家から、シャバタ侯爵家からの賠償金の一部が贈られた。
これが朗報かと訝しんだが、夏季休暇も半ばを過ぎたころ、驚くような知らせが届いた。
シャバタ侯爵家が取り潰しになったのだ。
「シャバタ侯爵家は長年に渡って、王家に多大な不利益をもたらす汚職を行っていたのですわ」
この日もイザドラ様の家に呼ばれてお茶をご一緒していた私に、イザドラ様はことの真相を教えてくださった。
「結果的に、それがカテーナ王国の解体に繋がったのです」
シャバタ侯爵は数代に渡って、自分の娘や養女を国王の側妃に当てがって、要職に就き甘い汁を吸っていたのだ。
王宮の修復や行事、また公共事業の実権を握り、予算を水増ししてその差額を懐におさめていた。
カテーナ王国の解体の直接的な原因になったフェデリア王国との国境紛争も、黒幕はシャバタ侯爵だった。
幸いにもシャバタ侯爵家からは側妃しか出ておらず、またその側妃達から男子も生まれていなかったので、姻戚として公に政治に関わることはできずにいた。
カテーナ王国が解体して四公国に変わってから、その調査が進められてきた。
ベレンゼ公爵家とレンネップ公爵家への無礼は、さらにシャバタ侯爵家の深部を探る好機となった。
シャバタ侯爵家の悪事が、余ることなく露見したのだ。
シャバタ侯爵は貴族が収容されるティーブリー牢獄に収容され、全ての罪の裁判が終わった後には、西の山脈の麓にあるスルシヤ監獄へ送られ、そこで新しく発見された鉱山の労働に従事する終身刑と決まった。
その他の家族はそれぞれの実家へ引き取られた。
レオン・シャバタは公爵令息から、母親の実家のアランナ子爵家の居候扱いとなり、名前もレオン・アランナとなった。
アランナ子爵家は他に爵位を持たないため、レオン・アランナは一生アランナ子爵家の居候として身を縮めてすごすか、文官なり武官なりで自分で身を立てるしかなくなった。
普通だったら、どこかに婿入りする道もあるのだが、醜聞のせいでどこも受け入れ先がないのが実情だ。なんの益もない縁談を受け入れる家などない。
シャバタ家から没収された財産の一部が、また私に賠償金として支払われた。
辞退したが、四公爵家に押し切られて受け取ることになってしまった。
イザドラ様にも多額の賠償金が支払われた。
「わたくしね、新しい婚約が調いましたの」
イザドラ様が微笑みながら言った。
「お相手は誰だと思います?」
いたずらっぽい笑いを含んでいた。
見当もつかずに首をかしげていると、イザドラ様は嬉しそうに小さく笑ってから言った。
「ベレンゼ公爵家のユリアン様よ」
私はもちろん驚いたが、あの漢気のある方ならば、イザドラ様はお幸せになるだろうと思った。
「おめでとうございます」
心から申し上げた。
「年は一つ下なのですが、わたくし、お顔も気に入りましたの」
なんともイザドラ様らしくて、つい笑ってしまった。
「あら、お笑いになったわね」
そう言うイザドラ様も朗らかに笑った。
「サーシャ、あなたもうかうかできませんことよ」
意味深にイザドラ様が言う。
「わたくし、結婚なんて考えておりませんもの」
イザドラ様はまた笑って言った。
「実はね、ベレンゼ公爵家のご次男と、あなたの縁談話が出ているのですよ」
「なんですって!?」
私の知らないところで話が進んでいるのかと、ぞっとした。きっと顔色が変わっていたのだろう。イザドラ様は私の手を握って言った。
「安心なさって。内輪だけの話です。まだ、どうだろうか、くらいですわ」
私は息を吐いた。
「ご次男のマクシム様は今年十二歳で、あなたより二歳下ですもの。来学期から学院にご入学ですわ。わたくし、申し上げましたの」
イザドラ様が私の手を撫でて元気づけるように言った。
「サーシャは殿方を信用しておりませんのよ。レオン・シャバタの所業を思えばおわかりでしょう?実際にお会いして、それでもサーシャをお望みなら、実を尽くしなさいませ、と」
生徒達の証言が膨大だったのだ。
それだけではなく、四公国を統治する四公爵家、ベレンゼ、ハーレン、レンネップ、ヨーセンの間でも素行が問題視された。
一般生徒、つまり私への不埒な行為はもちろん、複数の女生徒との不謹慎な関係、今回特にベレンゼ家の嫡男に無礼をはたらいたこと、レンネップの令嬢への今までの無礼な行いが取り上げられたそうだ。
特にレンネップ公爵はかなりのお怒りだった。レオンと娘イザドラとの婚約を破棄し、多額の賠償金を要求した。
ところでレオン・シャバタの取り巻きの女徒だが、四公爵が協議してそれぞれの家に厳しく自由奔放な行いを咎めて、全員に婚約を取り決めた。
レオン・シャバタの取り巻きだった六人の女生徒達は、今までの不謹慎な行いで疵がついた形だったので、多額の持参金つきで家格が下の者や後妻に入らなくてはならなくなった。
六人とも、花嫁修業を理由に学院から去って行った。
家で監視の元で暮らす者もいたし、結婚まで修道院へ入れられる者もいた。
一時の楽しみのために、たった十四歳か十五歳で今後の運命が暗いものとなってしまったのだ。
いくつかの家では、娘を傷物にされた賠償を、シャバタ侯爵家に求めた。しかし、娘にも非があったと法廷で判断され、賠償金は微々たるものに留まった。
ところで私だが、学院長が
「元王女への狼藉だが、今は君は庶民だ。だからレオン・シャバタは学期末までの停学処分にしかできなかったが、近いうちに朗報があるからそれで許して欲しい」
と意味深な謝罪があった。
そしてレンネップ公爵家から、シャバタ侯爵家からの賠償金の一部が贈られた。
これが朗報かと訝しんだが、夏季休暇も半ばを過ぎたころ、驚くような知らせが届いた。
シャバタ侯爵家が取り潰しになったのだ。
「シャバタ侯爵家は長年に渡って、王家に多大な不利益をもたらす汚職を行っていたのですわ」
この日もイザドラ様の家に呼ばれてお茶をご一緒していた私に、イザドラ様はことの真相を教えてくださった。
「結果的に、それがカテーナ王国の解体に繋がったのです」
シャバタ侯爵は数代に渡って、自分の娘や養女を国王の側妃に当てがって、要職に就き甘い汁を吸っていたのだ。
王宮の修復や行事、また公共事業の実権を握り、予算を水増ししてその差額を懐におさめていた。
カテーナ王国の解体の直接的な原因になったフェデリア王国との国境紛争も、黒幕はシャバタ侯爵だった。
幸いにもシャバタ侯爵家からは側妃しか出ておらず、またその側妃達から男子も生まれていなかったので、姻戚として公に政治に関わることはできずにいた。
カテーナ王国が解体して四公国に変わってから、その調査が進められてきた。
ベレンゼ公爵家とレンネップ公爵家への無礼は、さらにシャバタ侯爵家の深部を探る好機となった。
シャバタ侯爵家の悪事が、余ることなく露見したのだ。
シャバタ侯爵は貴族が収容されるティーブリー牢獄に収容され、全ての罪の裁判が終わった後には、西の山脈の麓にあるスルシヤ監獄へ送られ、そこで新しく発見された鉱山の労働に従事する終身刑と決まった。
その他の家族はそれぞれの実家へ引き取られた。
レオン・シャバタは公爵令息から、母親の実家のアランナ子爵家の居候扱いとなり、名前もレオン・アランナとなった。
アランナ子爵家は他に爵位を持たないため、レオン・アランナは一生アランナ子爵家の居候として身を縮めてすごすか、文官なり武官なりで自分で身を立てるしかなくなった。
普通だったら、どこかに婿入りする道もあるのだが、醜聞のせいでどこも受け入れ先がないのが実情だ。なんの益もない縁談を受け入れる家などない。
シャバタ家から没収された財産の一部が、また私に賠償金として支払われた。
辞退したが、四公爵家に押し切られて受け取ることになってしまった。
イザドラ様にも多額の賠償金が支払われた。
「わたくしね、新しい婚約が調いましたの」
イザドラ様が微笑みながら言った。
「お相手は誰だと思います?」
いたずらっぽい笑いを含んでいた。
見当もつかずに首をかしげていると、イザドラ様は嬉しそうに小さく笑ってから言った。
「ベレンゼ公爵家のユリアン様よ」
私はもちろん驚いたが、あの漢気のある方ならば、イザドラ様はお幸せになるだろうと思った。
「おめでとうございます」
心から申し上げた。
「年は一つ下なのですが、わたくし、お顔も気に入りましたの」
なんともイザドラ様らしくて、つい笑ってしまった。
「あら、お笑いになったわね」
そう言うイザドラ様も朗らかに笑った。
「サーシャ、あなたもうかうかできませんことよ」
意味深にイザドラ様が言う。
「わたくし、結婚なんて考えておりませんもの」
イザドラ様はまた笑って言った。
「実はね、ベレンゼ公爵家のご次男と、あなたの縁談話が出ているのですよ」
「なんですって!?」
私の知らないところで話が進んでいるのかと、ぞっとした。きっと顔色が変わっていたのだろう。イザドラ様は私の手を握って言った。
「安心なさって。内輪だけの話です。まだ、どうだろうか、くらいですわ」
私は息を吐いた。
「ご次男のマクシム様は今年十二歳で、あなたより二歳下ですもの。来学期から学院にご入学ですわ。わたくし、申し上げましたの」
イザドラ様が私の手を撫でて元気づけるように言った。
「サーシャは殿方を信用しておりませんのよ。レオン・シャバタの所業を思えばおわかりでしょう?実際にお会いして、それでもサーシャをお望みなら、実を尽くしなさいませ、と」
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