妖怪たちに愛されすぎる優しい和菓子職人

及川証 (アカシ)

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3匹目―蜘蛛は主の亡骸をも愛する―

16.大手洋服ブランド会社「絡合点」

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【本日はこのイベント抽選にご当選の皆様おめでとうございます。今回、場所を提供してくださったのは絡合点らくごうてんオーナー兼社長である機織白蜘蛛さんです】

「帰りましょう」

 聞き知った名を聞き荒野は吉兵衛の手を引っ張る。

「なんで?!ここまで来たのに遊ばないとかある?」

「そうだよ!もったいないよっ」

 雄一と慎之介のブーイングを気にもとめず荒野は言う。

「楽しむなら2人でどうぞ」

「荒野、それはあまりにも冷たいんじゃないかい?」

「ですが……」

「なにより、あの白蜘蛛が作った肝試しだよ?面白そうじゃないか」

 「本物の妖怪はいるのかね」とワクワクした表情で建物内を見渡す吉兵衛に荒野は内心舌打ちをした。

(はめられたな。灯し火の馬鹿は何をやってる)

「では、私は吉兵衛さんと……」

 一緒に周る。そう言いかけた荒野の声を遮る大きなマイク音声が響く。

【今回は特別ルール!なんとこの場にいる皆さんをシャッフルしたペアになってもらいます。このクジと同じ番号の人同士集まってください】

「面白そう!」

「えっ、連れと一緒に周れるんじゃないのかよ」

 賛否両論の声が聞こえる。そんな中、誰にも気づかれずに荒野はつぶやいた。

「―――仕方ありませんね」

 荒野の服の袖下でギョロリと無数の目玉が人知れず動いた。


 次々とクジを引いていく。

「兄ちゃん、何番だった?」

「私は9番目だよ」

「あちゃー、俺12」

「えっ、俺と同じじゃん!運命?」

「雄一、気持ち悪いよ」

「酷いわ。ところで荒野は?」

 4人かたまっていたはずなのにいつの間にか姿の見えない荒野を視線で探しているとすぐに小走りでこちらに向かって走ってきた。

「すみません。相手を探してて……」

「荒野は何番だい?」

「吉兵衛さんと同じです」

 清々しいほどの笑みを浮かべる紅目に吉兵衛は周りを見渡す。

「あれっ?!俺さっきまで9持ってたはずなんだけど」

「どうしたら11と9見間違えるんだよ」

 疑いが確信に変わる会話が聞こえ吉兵衛は紅目犯人をじっと見る。
 しかし当人は嬉しそうにニコニコと笑うだけだった。

 流石百々目鬼とどめき。スリの天才である。 

「吉兵衛さんと同じだったんですね。どおりで見つからないはずだ」

「これが、運命」

「やめてやめて、ホントに冗談抜きで怖い」

 オーバーリアクションで口に手を当て驚く雄一と驚きと恐怖に何とも言えない表情の慎之介。

 そんな中、吉兵衛は荒野の耳たぶを引っ張っり小声で問う。

「ズルしたね」

「バレました?」

「ズルは駄目だよ。返してきな」

「いいんですか、豪華景品。もらえなくなりますよ?」

 その言葉にピタリと吉兵衛は止まる。

「いいペアだと思いますが。しかも妖怪である白蜘蛛がどんな仕掛けを施しているのかも不明。一般人より勝率が高いかと」

 その言葉に吉兵衛は考える。

 (ウナギは欲しい。相手は白蜘蛛。妖怪の紅目と一緒なら……)

「……わかったよ」

 決死の覚悟だと言わんばかりの表情で吉兵衛は頷いた。
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