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紫地獄―地獄の道―
52.業の深い者たち
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「間に合ったわい」
「ふー」と大きく息をつき安堵するぬらりひょん。
当たりは赤く暗い。そしてよどんだ空気。そして門から漂ってきた鉄臭さが強く感じられる。
「ここは―――地獄なのかい?」
吉兵衛の言葉にぬらりひょんは「如何にも」と頷く。
「ダメ元で各地の地獄のつく名所を周ってそんなとき泥田坊にあっての。おヌシが近々こちらに引っ張られると聞いたんじゃ」
「ドロドロにかい?」
「うむ、おヌシまさか声をかける前に引っ張られるとは思わなんだ」
「紅目たちに連絡を――」
そう言いポケットのスマホに手を伸ばす吉兵衛にぬらりひょんは「無駄じゃ」と止める。
「ここは言わば異世界。そのような場所では電波は届かん。安心せえ、あの3匹には友成が話に行くように指示しておるよ」
その言葉に「そうかい」と吉兵衛は胸をなでおろす。
「3匹ともこっちには来てないんだね」
「安心するのは早い。吉坊はここからどうやってっ戻るかを考えなければならん。差し詰めおヌシ自体が片道切符のようなもの。どう戻れるかは分からぬ」
その時「ドスン、ドスン」という重低音が聞こえ、吉兵衛達は崖下をのぞく。そこにいたのは禍々しく恐ろしい巨大な化け物が複数体いた。
―――そして
「たっ、たすけ―――」
「グシャ」とまるで虫でも潰すかのように白装束を着た人間を次、また次と殺していく。
その光景に吉兵衛は思わず目を背ける。
「安心せえ、あ奴らは業の深い者たち。裁きを受けているだけじゃ」
「なぜそんなことがわかるんだい?」とぬらりひょんの顔を見る。
「火車。お主の灯し火もそうじゃが悪い人間が分かる妖怪もいるんじゃよ」
ぬらりひょんは裁きを受けている亡者を無表情で見ながら答えた。
「さて、しみったれた話しは終いじゃ。さっさと――」
「お前さんは佐脇嵩之を探すんだろ?来ちまったついでだ手伝うよ」
「いや、吉坊には早く帰ってもらわねば不味い―――お主――――3匹の顔。覚えておるか?」
「当たり前―――……」
その言葉に吉兵衛は咄嗟に3匹の顔を思い出そうとした。
「嘘だろ……」
しかし、それは遠い記憶のように曖昧ではっきりとは思い出せなかった。
「ここにいても仕方ない」
「ゆくぞ」と頭を抱える吉兵衛の手をぬらりひょんは握り歩く。
―――
行く先々で化け物が巨大な棍棒を亡者に叩き込んでいた。
言葉にならない断末魔と血吹雪の隣をなに食わぬ顔で歩くぬらりひょん。そして逆に顔を真っ青にして手を引っ張られながら吉兵衛は歩く。
(鉄の臭いは人間のだったんだね)
記憶の件もあるが臭いの元凶を理解し余計に気分が悪くなる。
今後どうなるのか、全ての記憶がなくなってしまうのか。吉兵衛は怖くてたまらない。
「目的地はあそこじゃ」
そう言ってぬらりひょんが指をさしたのは遠くにある長い階段。その先の大きな不気味な建物。
遠くからでも分かる大きく恐ろしい場所に吉兵衛は唾を飲み込む。
「帰る方法が分からぬからの。唯一の情報源はあの閻魔城しかない」
「しっ、城に乗り込むのかい?」
思わず尻込みをしてしまう吉兵衛に「うむ」と頷くぬらりひょん。
どうやら選択肢は他にはないらしい。
「知っての通り、ワシは「ぬらりひょん」姿、気配を消し建物に入るなぞワシにとっては朝メシ前よ。おヌシがそれをよく知っておるじゃろ?」
その言葉に吉兵衛は思い出す。
「お前さん城に行ってよく小判盗んでたものね」
「盗んでおらんよ。ちょいと拝借しただけじゃ」そういってカラカラ笑うぬらりひょんに吉兵衛の不安はほんの少しだけ軽くなるのを感じる。
「キミ――もしかしてぬらりひょんか?」
突然かけられた声にぬらりひょんは咄嗟に吉兵衛の前に手を出し守りの態勢に入る。
「ぬらりひょんはワシじゃ」と警戒しながらも声の主の男に話しかけた。
それを聞いた男は「ほっ」とし硬い表情を和らげる。
「そうか!やっぱり来ていたんだ。いやーよかったよかった」
「おヌシはなんじゃ。何故ワシの事をしっておる。ぬらりひょんは――」
「ああ、頭がフランスパンみたいな妖怪だって書いてあるのは知ってるよ」
予想外すぎる例えられたモノに言葉にぬらりひょんは「ふっ、フランスパン……」と少しショックを受けた表情で固まった。
そんな事は気にもせず男は自身の自己紹介を始める。
「俺は野分和人。―――人間さ」
「ふー」と大きく息をつき安堵するぬらりひょん。
当たりは赤く暗い。そしてよどんだ空気。そして門から漂ってきた鉄臭さが強く感じられる。
「ここは―――地獄なのかい?」
吉兵衛の言葉にぬらりひょんは「如何にも」と頷く。
「ダメ元で各地の地獄のつく名所を周ってそんなとき泥田坊にあっての。おヌシが近々こちらに引っ張られると聞いたんじゃ」
「ドロドロにかい?」
「うむ、おヌシまさか声をかける前に引っ張られるとは思わなんだ」
「紅目たちに連絡を――」
そう言いポケットのスマホに手を伸ばす吉兵衛にぬらりひょんは「無駄じゃ」と止める。
「ここは言わば異世界。そのような場所では電波は届かん。安心せえ、あの3匹には友成が話に行くように指示しておるよ」
その言葉に「そうかい」と吉兵衛は胸をなでおろす。
「3匹ともこっちには来てないんだね」
「安心するのは早い。吉坊はここからどうやってっ戻るかを考えなければならん。差し詰めおヌシ自体が片道切符のようなもの。どう戻れるかは分からぬ」
その時「ドスン、ドスン」という重低音が聞こえ、吉兵衛達は崖下をのぞく。そこにいたのは禍々しく恐ろしい巨大な化け物が複数体いた。
―――そして
「たっ、たすけ―――」
「グシャ」とまるで虫でも潰すかのように白装束を着た人間を次、また次と殺していく。
その光景に吉兵衛は思わず目を背ける。
「安心せえ、あ奴らは業の深い者たち。裁きを受けているだけじゃ」
「なぜそんなことがわかるんだい?」とぬらりひょんの顔を見る。
「火車。お主の灯し火もそうじゃが悪い人間が分かる妖怪もいるんじゃよ」
ぬらりひょんは裁きを受けている亡者を無表情で見ながら答えた。
「さて、しみったれた話しは終いじゃ。さっさと――」
「お前さんは佐脇嵩之を探すんだろ?来ちまったついでだ手伝うよ」
「いや、吉坊には早く帰ってもらわねば不味い―――お主――――3匹の顔。覚えておるか?」
「当たり前―――……」
その言葉に吉兵衛は咄嗟に3匹の顔を思い出そうとした。
「嘘だろ……」
しかし、それは遠い記憶のように曖昧ではっきりとは思い出せなかった。
「ここにいても仕方ない」
「ゆくぞ」と頭を抱える吉兵衛の手をぬらりひょんは握り歩く。
―――
行く先々で化け物が巨大な棍棒を亡者に叩き込んでいた。
言葉にならない断末魔と血吹雪の隣をなに食わぬ顔で歩くぬらりひょん。そして逆に顔を真っ青にして手を引っ張られながら吉兵衛は歩く。
(鉄の臭いは人間のだったんだね)
記憶の件もあるが臭いの元凶を理解し余計に気分が悪くなる。
今後どうなるのか、全ての記憶がなくなってしまうのか。吉兵衛は怖くてたまらない。
「目的地はあそこじゃ」
そう言ってぬらりひょんが指をさしたのは遠くにある長い階段。その先の大きな不気味な建物。
遠くからでも分かる大きく恐ろしい場所に吉兵衛は唾を飲み込む。
「帰る方法が分からぬからの。唯一の情報源はあの閻魔城しかない」
「しっ、城に乗り込むのかい?」
思わず尻込みをしてしまう吉兵衛に「うむ」と頷くぬらりひょん。
どうやら選択肢は他にはないらしい。
「知っての通り、ワシは「ぬらりひょん」姿、気配を消し建物に入るなぞワシにとっては朝メシ前よ。おヌシがそれをよく知っておるじゃろ?」
その言葉に吉兵衛は思い出す。
「お前さん城に行ってよく小判盗んでたものね」
「盗んでおらんよ。ちょいと拝借しただけじゃ」そういってカラカラ笑うぬらりひょんに吉兵衛の不安はほんの少しだけ軽くなるのを感じる。
「キミ――もしかしてぬらりひょんか?」
突然かけられた声にぬらりひょんは咄嗟に吉兵衛の前に手を出し守りの態勢に入る。
「ぬらりひょんはワシじゃ」と警戒しながらも声の主の男に話しかけた。
それを聞いた男は「ほっ」とし硬い表情を和らげる。
「そうか!やっぱり来ていたんだ。いやーよかったよかった」
「おヌシはなんじゃ。何故ワシの事をしっておる。ぬらりひょんは――」
「ああ、頭がフランスパンみたいな妖怪だって書いてあるのは知ってるよ」
予想外すぎる例えられたモノに言葉にぬらりひょんは「ふっ、フランスパン……」と少しショックを受けた表情で固まった。
そんな事は気にもせず男は自身の自己紹介を始める。
「俺は野分和人。―――人間さ」
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