妖怪たちに愛されすぎる優しい和菓子職人

及川証 (アカシ)

文字の大きさ
54 / 104
紫地獄―地獄の道―

53.突然の

しおりを挟む
 和人と名乗る男に案内されるがまま吉兵衛達は険しい崖道を歩く。

「ここは鬼が来ないから安全だよ」

 「そもそも亡者はここまで来ないからね」と笑いながら言う。

「確かに亡者がここに逃げるのであれば化け物――鬼に簡単に捕まるじゃろうな」

 ちらりと遠くを見るぬらりひょん。遠くでまるで蟻のように逃げ惑う人間を潰す大きな巨人とも言える鬼。大きさもそうだがその見た目から想像もつかないほど俊敏な動きを見せている。

 そんな体格や俊敏性があまりに違う鬼から逃げるのであればここでは不利になるのは明確。

「ここに逃げ込むのはよほどの阿呆がすること。何故ワシらをここへ連れて来た」

「ここにはね―――隠し部屋があるのさ」

 「といっても洞窟なんだけどね」そう言い和人が何の変哲もない小石を取る。
 すると岩が突然パズルのように動いた。
 ゴゴゴと地鳴りを上げ一見不規則な動き。しかしいつの間にか大きな洞窟が吉兵衛たちの目の前に顔を見せた。

「この仕掛け誰が作ったんじゃ。亡者は不可能。天国行きと言っておったおヌシでもこのような権限はなかろうて」

「詳しいことは後で。さあ、奴らに気づかれる前に入って」

 ―――

 洞窟に入るといつの間にかあの独特の異臭は消え深呼吸できるくらいの綺麗な空気になっていた。

 足場も松明などの明かりもないのに足元まではっきりと見える。

「ここは一体どこなんだい?普通の洞窟じゃないだろ」

 警戒し口数の少なかった吉兵衛は耐えきれなくなり和人に質問を投げかけた。

「ああ―――本当に我のことは覚えてないのか」

 突然和人の雰囲気が変わった。張り詰めた空気に何が起こっているのか分からない。しかし戦闘の出来ない吉兵衛を守ろうとぬらりひょんは前に出る。

「―――ソレがお前さんの新しい女房かい?ぬらりひょん」

 突然聞こえた声。にぬらりひょんは敵であろう和人から視線を外しそちらを見た。

 着崩した白装束の男。白かったであろう着物は岩絵具や泥絵具が所狭しと飛び散っている。

「久しいねえ、ぬらりひょん」

「すう、し?」

 予想だにしない突然の再会にぬらりひょんは口を開けて驚き固まった。

「……嵩之なのか?」

「おう」

「ホンモノ――なのじゃな?」

「失礼な奴だな。好いた奴の目の前にこんな岩絵具やら泥絵具をべったりつけたまま出てくる男なんて俺くらいしかいないだろ」

 「なあ?浮気者?」なんて言う佐脇嵩之の表情は怒っている様子はなくむしろ茶化しているように見える。

「嵩之っ!!ワシの妻はおヌシだけじゃあっ!!」

「妻呼びはやめろって言ってんだろがっ」

 飛びつくぬらりひょんに少し嫌そうで嬉しさが混ざった苦笑いを浮かべる嵩之を吉兵衛は見守る。

「礼を言うぞ和人!」

「いいよいいよ。俺と嵩之そして―――吉兵衛との仲だ。これくらい当然のことだから」

「わっ、私??―――そう言や、さっき「覚えていないのか」って、私はお前さんと会ったことがあるのかい?」

「そうだよ。遠い昔―――いや、ソレを思い出す前に吉兵衛は思い出さなきゃいけないことがある」

「思い出す―――?なにをだい?」

「おヌシまさか思い出さなければならないこと自体忘れておるのか?」

 首を傾げる吉兵衛に深刻な表情を浮かべぬらりひょんは和人に問う。

「和人殿、これは……」

「ああ、かなり不味い状況。どうやってっ思い出させよう……」

「……俺がなんとかしてみよう」

 嵩之は画材を手に吉兵衛の目の前に立った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

処理中です...