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第3章.バイブレーション茶道部【桃瀬春子】
第44話.魔改造の昼
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キーンコーンカーンコーン♪
気怠い4限目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、待ちに待った”翌日の昼休み”が訪れる。
これでやっと、桃瀬に件の性玩具を提供した犯人だと俺が目星をつけたその”容疑者”への尋問を実施する時がきたのだ。
椅子に座りながらクルッと身体の向きを変え、後ろの席へと振り返る。
「なぁ夏希、お前ってさ、茶道部の桃瀬春子と仲が良かったりするのか?」
「……なによ唐突に、気色悪いわね」
溜息混じりの冷やかなトーンで、そんな酷いリアクションを返される。
質問しただけで気色悪いとは、これいかに……
これはとても、俺に脈がある女の反応とは到底思えない。
やはりその点に関しては、茶道部の後輩ちゃんたちの”勘違い”というか”思い込み”だったという線が濃厚だろう。
「……ていうかなに、あんた、何か今日は一段と顔色悪くない?体調不良?風邪とか移さないでよね、キモいから」
気色悪がったりキモがったり、お前も忙しいヤツよのう。
「あ~、いや、風邪とかではないんだけど……昨日の夜中に、”漬物石”の妖怪,もとい妖精にエラい目に合わされちまって、寝不足かつ顎と舌が極度の筋肉痛で……って、今はそんな事はどうでもよくてだな。で、どうなんだ、桃瀬とは仲が良いのか?」
「春子となら、私は仲が良いと思ってるけど、それがどうかしたの?」
ふむ、やはりコイツと桃瀬には接点があるようだな。
たまに廊下や教室で2人で喋っている姿を見かけた事があったので、少なからず親交があると踏んでいたが、どうやら正解だったようだ。
こうなってくると、ますますコイツが怪しく見えてくるよな……
夏希には、円香に提供した”ストーカー7つ道具”を始め、俺の部屋に設置してある16門の小型監視カメラ、緑川に取り付けたGPSチップ等、”ヤバいもの”を数多く生み出してきたという”前科”があるのだ。
桃瀬と親交があり、かつ無音で駆動する性玩具をクラフトできそうな人材となると、やはり1番に名前が挙げられて然るべきなのは彼女、赤﨑夏希だ。
コイツが”黒幕”であれば、今回の桃瀬攻略の目処が立つのだが果たして……
「で、何であんたなんかが春子について質問してくるわけ?……もしかして、春子に気があって探りを入れてんの?やめときなよ、あんたみたいな”ブサイク童貞”に好意を向けれるなんて、春子が可哀想でしょ」
……夏希さん、初恋の相手に面と向かってブサイクと言われる僕だって、十二分に可哀想な存在だとは思いませんか?
「いや、別に、俺はそんなつもりは」
とまで口に出したところで、ひどく聞き馴染みのある騒がしい女の声に言葉を遮られる。
「聞き捨てならーん!!!」
そのバカデカい声と共に教室に乱入してきた”バカ”は、ドカドカと荒い足音を立てながら俺に詰め寄ってきた。
「なに、お兄ちゃん、まさか桃瀬さんの事、ガチで狙ってんの!?キモっ!身の程知らずにも限度ってもんがあるでしょ!」
「妹よ、頼むから話をややこしくするのは勘弁してくれないか……」
なんで裏の事情を把握しているはずのお前が、わざわざ突っかかってくるんだよ、めんどくせーな。
「お兄ちゃんごときが桃瀬さんを落とそうだなんて、んな無茶な事止めときなって!傷つくだけだよ!ペンギンがエベレストの登頂を目指すぐらい無望だよ!」
「そうよね、コイツなんかが春子と結ばれるなんて、そんな絵空事、モグラが太平洋を横断するぐらい有り得ないことよね」
両者ともに、流石に無理が過ぎるだろうが!
クソッ、コイツら好き勝手言いやがって。
と言っても、そう言いたくなる気持ちも十分に理解はできるので、あえて反論はしないけども……
「まったく、桃瀬さんよりも可愛い妹がいつも隣にいてあげてるってぇのに、お兄ちゃんはどうしてこうも節操なく目移りするかな……」ブツブツブツブツ
「……ん?春子よりも可愛い?」
「すまん夏希、その点に関しては触れないでやってくれ……」
「もぅ~、お兄ちゃんが余計な事を言うから、話が脱線しちゃったじゃんか!ぷんぷん!」
……いや、どう考えてもお前のせいだろ。
「でね、夏希ちゃん、本題に戻るんだけど、前に桃瀬さんから、何か”怪しいモノ”を作って欲しいって、依頼を受けたことはなかったかな?」
「ん?怪しいモノ?いや~、そんな変なモノを作ってあげた覚えはないんだけど……」
「そうか……」
クソッ、アテが外れたか。
となると、犯人の手掛かりがゼロの状況に戻っちまったな。
ん~、どうしたもんかねぇ……
「私が春子に頼まれて作ったのは、成人男性の中指よりちょっと長いぐらいのピンク色の棒状で、無音でグニャグニャと活きの良い爬虫類みたいに無作為に動く、完全防水かつ遠隔操作可能な充電式の小型電子機器だけよ」
……
「いや絶対それだろっ!!!」
「な、なによ、急に大きな声出さないでよ」
「すまん、余りにもビンゴが過ぎてな。俺たちが言ってた”怪しいモノ”っていうのは、99.9%ソレの事なんだよ」
「失礼ね、そんな変なモノじゃないわよ。っと、そうだ、予備に作ってた分が丁度後ろのロッカーに入ったままだから、なんなら実物を見せてあげる」
そう言って席を立った夏希は、後方のロッカーから、そのブツを持って戻ってきた。
「コレよ」
……
「見たら分かる、エロいヤツやん!!!」
どっからどう見ても、100%大人の玩具です。本当にありがとうございました。
「エロいってなんの話よ!変な言い掛かりはヤメてよね!」
「その色、そのフォルムの時点で完全にアウトだろーが!無自覚に、そんないかがわしいビジュアルの”呪物”をこの世に産み落とすな!」
「ねぇねぇ夏希ちゃん、ソレってどんな風に動くの?♡」
隣の円香が、爛々と目を輝かせながら、絵に描いたようなwktk顔で質問する。
ほら言わんこっちゃない、そのヤバすぎる見た目が、アホの琴線に触れちまったじゃねーか。
そういえばコイツも、ディルドを愛用しているようだし、大人の玩具ユーザーのひとりとして、その性能に興味があるのだろうか。
「ちょっと待ってね……」
右手に持っていたその玩具本体を机の中央に置いた夏希は、左手に持っていた遠隔操作用と思われる媒体のスイッチに手を掛ける。
「え~と、スイッチを入れると……」
カチカチッ。
うにょうにょ!ぶにぶに!うねうね!ぐにぐに!ぐいんぐいん!もにゅっもにゅっ!
うおっ、ヤバっ!?動きエグっ!!!
R18版でもモザイク無しでは到底お見せできない程の、その余りにもドスケベ過ぎる挙動に、思わず目を丸くする。
「うわ~、凄いエッチな動き!♡コレ、絶対気持ち良いヤツじゃん!♡」
円香の目から見ても、やはりその挙動は大人の玩具としては素晴らしい出来栄えのようだ。
が、その”動き”以上に驚愕すべき点がある。
そう、その驚異的R18挙動に対し、駆動音が全くもっての”無音”だということだ。
な、何でこれだけの動きに対して、音が一切しないんだ?
信じられん……夏えもんの技術力、恐るべし。
「って、お前はなんて卑猥なモノを作っとるんだ!」
こんなヤバい性能の性玩具、アダルトグッズ業界の歴史が動くぞ!
「だから言い掛かりはヤメてよ!私はただ、春子のオーダー通りに、何かよく分からないけど”棒状で蠢くモノ”を作成してあげただけよ」
……何かよくわからない状態で、んな”蠢くモノ”をこの世に産み落とすな。
「なぁ夏希、お前に折り入っての頼みがあるんたが」
「何よ、そんな変に改まって、気味が悪いわね」
「その、桃瀬に頼まれて作った”ブツ”を、俺たちにも1つ提供して欲しいんだが……」
「ん?それなら、この予備で作ったヤツが余ってるから、このままあげちゃってもいいんだけど」
「あぁ、すまん、そっくりそのままってわけじゃなくてな、見た目はまるっきり同じだけど、中身に手を加えた、言わば”マイナーチェンジ版”が欲しいんだよ」
「手を加える?ってどんな風に?」
「えっと、具体的に説明するとだな……」
「……という感じの仕様が希望なんだが、可能か?」
「あ~、うん、そのスペックであれば問題無いとは思うけど……」
「ほんとか!?じゃあ、是が非でも作製をお願いしたいんだけど、頼んでもいいか」
「まぁ、それぐらいなら大した作業でもないし、2日もあれば準備できるけど……で、あんたはソレを何に使おうと企んでるわけ?」
「あ~、いや、それはだな、禁則事項なんで詳しくは説明できないんだけど……とにかく、幼馴染のよしみで頼むぜ、夏えもん!」
「夏えもんって……まぁ、なんだっていいわ。じゃあ、今日中にパーツを揃えて明日中に組み立てるから、渡すのは明後日でいい?」
「おう、それで十分だ!よろしく頼む!」
「ちなみに、コレ、1つ”貸し”だからね。今度、何かしらの”対価”を要求させてもらうから”覚悟”しておきなさいよ!」
「あ、あぁ、お手柔らかに頼む……」
「ねぇ夏希ちゃん、ソレが作れるならさ、”こんなもの”も作れたりするのかな?」
「ん?どんなもの?」
円香は、ポケットから何かの図面の様な紙を取り出して広げると、ソレを夏希へと手渡した。
「えっとね、こんな感じのモノなんだけど……どうかな?」
「ふむふむ……うん、コレなら直ぐに作れるとは思うよ。全体の長さと、各部分の太さ、それに固さとか色を指定してもらえれば、1日もあれば大丈夫かな」
「ほんと!?流石は夏えもんちゃん!」
「夏えもんちゃんって……とにかく、今言った必要事項を教えてさえくれれば、直ぐに作ってあげるよ。円香は私のマブダチだからね♡」
「うん、ありがとう!むふふ、楽しみだな~♡」
ニマニマとイヤらしい笑顔を浮かべる円香。
コイツがこんなに嬉しそうな顔をするって事は、間違いなく碌でもない事を依頼したに違いない。
「あ~、でも、和哉の依頼の方を先に済ませちゃってからでいい?アイツ、自分よりも円香の事を優先したって知ったら、面倒くさそうだからさw」
「うん、確かに、お兄ちゃんそういうところあるもんね。ほんと、器が小さくて困っちゃうよw」
あの~お二人さん、そういう悪口はせめて、本人のいないところで喋ってもらってもいいですか……
「アイツのあの、何に対しても余裕のないところが、当に”童貞”って感じじゃないw」
「わかるわかるw”いやこの男絶対モテないだろ”って感じが透けて見えるっていうかw」
「そうそう、童貞臭さが全身から滲み出てるのよねwあれじゃあ、『俺は童貞だ』って公言しながら歩いてる様なもんよw」
相変わらずヒドい言われようだな……
茶道部の後輩ちゃんたちは、夏希とは脈アリだとか言ってくれてたけども、この感じだと、やっぱどう考えても脈ナシなんだよなぁ……
とか考えていたところで、円香がグイッと身を寄せてきた。
「あはは、お兄ちゃん、”童貞臭い”だってw言われてやんのw」
「……うっせーな」
プイッと、夏希に馬鹿にされた悔しさを誤魔化す様に、顔を背ける。
が、すぐさま円香に耳を引っ張られ、背けた顔を強引に引き戻される。
「いてててて!いてーよ!」
「なに拗ねてんのwウケるんだけどw」クスクス
小生意気な笑みを浮かべた彼女は、俺の耳を摘んでいた指をパッと離したかと思うと、その手をそのまま耳に添えて、顔を近づけボソッと耳打ちする。
「……お兄ちゃんは、私のオマンコで童貞卒業してるのにね♡」
「っっ!///ば、馬鹿野郎っ!///んなこといちいち改めて言うな!///」
「にしし♡赤くなっちゃって可愛いw♡そうやってすぐ照れちゃうのも、”童貞さん”だからかなwね、お兄ちゃん♡」
「くっ……///」
コイツってヤツはほんとに……
しかし、こんな教室で、ましてや夏希の目の前で、『俺は妹で童貞を卒業した男だ』なんて言えるはずもなく、甘んじて”童貞”である事を受け入れざるおえないのである。
「……で、円香、もうこんな時間だけど、教室に戻らなくていいのかよ、弁当食う時間がなくなっても知らんぞ」
「って、ありゃ!?ほんとだ!戻ってお弁当食べなきゃ!じゃあ、お兄ちゃん、夏希ちゃん、私はこれで教室に戻るね!アリーヴェデルチッチ~!」
そう言って騒がしい足音を響かせながら、円香は教室から飛び出していった。
はぁー、まったく、アイツのせいで無駄に話が長くなったような気がする。
夏希に依頼する分には、俺一人でも問題なかっただろうに……
と、そうだ、アイツ、今回の作戦で使うブツとは別に、何か違うモノを夏希に頼んでいたよな……
「なぁ夏希、さっき円香から受け取った図面を見せてもらってもいいか?」
「ん?コレだけど」
「どれどれ、ヤツはいったいどんなモノを欲しているんだ……」
……
うん、うん、うん、なるほどなるほど……
……
……ふぅ。
いや、ちんぽじゃねーか!!!
アイツ、幼馴染のJKにオーダーメイドのディルドを作らせようとしとるがな!!!
我が妹ながら、とんでもねー女だな、おい!
「コレがどうかしたの?」
「あ、いや、なんでもない、気にしないでくれ……」
なんで分かってねーんだよ!
この形状だぞ、どう見てもちんぽだろうが!
まぁ、何故かこの特徴的なフォルムを見てもピンときていない様子の夏希相手に、あえて言及するつもりもないが……
「じゃあ、腹も減ったし、俺も弁当を食べるとするかな」
「私も食べよ~」
カバンから弁当を取り出しながら、なんとなく思いついた言葉が、口からポロっと溢れた。
「……なぁ夏希、せっかくだし、たまには2人で一緒に食うかw?」
断られると分かっていながら、なんでこんな事を言ってしまうのかな、俺ってヤツは。
こういう空気の読めなさもまた、童貞臭さの片鱗なのかもしれない。
「……べ、別にいいけど///」
「へいへい、分かっていましたよ、大人しく一人で食べりゃあいいんでしょ、ええ」
「……だから、一緒に食べてもいいって///」
!?
「……い、いいのか?///」
「だから、いいって言ってるでしょ!///ボケっとしてないで、さっさと机くっつけなさいよ、昼休み終わっちゃうでしょ///」
「あ、ああ……///」
……なぁ、夏希さん///
コレって、脈アリなの、脈ナシなの、どっちなんだ!?///
そんなモヤモヤ感と緊張感を抱えつつ、夏希と向き合って他愛もない話をしながら食べた弁当は、なんだかいつもと違った味がした。
それは、俺が大人になったら、もう2度と味わうことができないかもしれない、そんな味。
どれだけ願っても、大金を積んでも、再現不可能であろう、そんな味。
そう、いつの日か俺にも、こんな若かりし頃の”片想いの味”を、懐かしく思い返す日が訪れたりするのだろうか……
気怠い4限目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、待ちに待った”翌日の昼休み”が訪れる。
これでやっと、桃瀬に件の性玩具を提供した犯人だと俺が目星をつけたその”容疑者”への尋問を実施する時がきたのだ。
椅子に座りながらクルッと身体の向きを変え、後ろの席へと振り返る。
「なぁ夏希、お前ってさ、茶道部の桃瀬春子と仲が良かったりするのか?」
「……なによ唐突に、気色悪いわね」
溜息混じりの冷やかなトーンで、そんな酷いリアクションを返される。
質問しただけで気色悪いとは、これいかに……
これはとても、俺に脈がある女の反応とは到底思えない。
やはりその点に関しては、茶道部の後輩ちゃんたちの”勘違い”というか”思い込み”だったという線が濃厚だろう。
「……ていうかなに、あんた、何か今日は一段と顔色悪くない?体調不良?風邪とか移さないでよね、キモいから」
気色悪がったりキモがったり、お前も忙しいヤツよのう。
「あ~、いや、風邪とかではないんだけど……昨日の夜中に、”漬物石”の妖怪,もとい妖精にエラい目に合わされちまって、寝不足かつ顎と舌が極度の筋肉痛で……って、今はそんな事はどうでもよくてだな。で、どうなんだ、桃瀬とは仲が良いのか?」
「春子となら、私は仲が良いと思ってるけど、それがどうかしたの?」
ふむ、やはりコイツと桃瀬には接点があるようだな。
たまに廊下や教室で2人で喋っている姿を見かけた事があったので、少なからず親交があると踏んでいたが、どうやら正解だったようだ。
こうなってくると、ますますコイツが怪しく見えてくるよな……
夏希には、円香に提供した”ストーカー7つ道具”を始め、俺の部屋に設置してある16門の小型監視カメラ、緑川に取り付けたGPSチップ等、”ヤバいもの”を数多く生み出してきたという”前科”があるのだ。
桃瀬と親交があり、かつ無音で駆動する性玩具をクラフトできそうな人材となると、やはり1番に名前が挙げられて然るべきなのは彼女、赤﨑夏希だ。
コイツが”黒幕”であれば、今回の桃瀬攻略の目処が立つのだが果たして……
「で、何であんたなんかが春子について質問してくるわけ?……もしかして、春子に気があって探りを入れてんの?やめときなよ、あんたみたいな”ブサイク童貞”に好意を向けれるなんて、春子が可哀想でしょ」
……夏希さん、初恋の相手に面と向かってブサイクと言われる僕だって、十二分に可哀想な存在だとは思いませんか?
「いや、別に、俺はそんなつもりは」
とまで口に出したところで、ひどく聞き馴染みのある騒がしい女の声に言葉を遮られる。
「聞き捨てならーん!!!」
そのバカデカい声と共に教室に乱入してきた”バカ”は、ドカドカと荒い足音を立てながら俺に詰め寄ってきた。
「なに、お兄ちゃん、まさか桃瀬さんの事、ガチで狙ってんの!?キモっ!身の程知らずにも限度ってもんがあるでしょ!」
「妹よ、頼むから話をややこしくするのは勘弁してくれないか……」
なんで裏の事情を把握しているはずのお前が、わざわざ突っかかってくるんだよ、めんどくせーな。
「お兄ちゃんごときが桃瀬さんを落とそうだなんて、んな無茶な事止めときなって!傷つくだけだよ!ペンギンがエベレストの登頂を目指すぐらい無望だよ!」
「そうよね、コイツなんかが春子と結ばれるなんて、そんな絵空事、モグラが太平洋を横断するぐらい有り得ないことよね」
両者ともに、流石に無理が過ぎるだろうが!
クソッ、コイツら好き勝手言いやがって。
と言っても、そう言いたくなる気持ちも十分に理解はできるので、あえて反論はしないけども……
「まったく、桃瀬さんよりも可愛い妹がいつも隣にいてあげてるってぇのに、お兄ちゃんはどうしてこうも節操なく目移りするかな……」ブツブツブツブツ
「……ん?春子よりも可愛い?」
「すまん夏希、その点に関しては触れないでやってくれ……」
「もぅ~、お兄ちゃんが余計な事を言うから、話が脱線しちゃったじゃんか!ぷんぷん!」
……いや、どう考えてもお前のせいだろ。
「でね、夏希ちゃん、本題に戻るんだけど、前に桃瀬さんから、何か”怪しいモノ”を作って欲しいって、依頼を受けたことはなかったかな?」
「ん?怪しいモノ?いや~、そんな変なモノを作ってあげた覚えはないんだけど……」
「そうか……」
クソッ、アテが外れたか。
となると、犯人の手掛かりがゼロの状況に戻っちまったな。
ん~、どうしたもんかねぇ……
「私が春子に頼まれて作ったのは、成人男性の中指よりちょっと長いぐらいのピンク色の棒状で、無音でグニャグニャと活きの良い爬虫類みたいに無作為に動く、完全防水かつ遠隔操作可能な充電式の小型電子機器だけよ」
……
「いや絶対それだろっ!!!」
「な、なによ、急に大きな声出さないでよ」
「すまん、余りにもビンゴが過ぎてな。俺たちが言ってた”怪しいモノ”っていうのは、99.9%ソレの事なんだよ」
「失礼ね、そんな変なモノじゃないわよ。っと、そうだ、予備に作ってた分が丁度後ろのロッカーに入ったままだから、なんなら実物を見せてあげる」
そう言って席を立った夏希は、後方のロッカーから、そのブツを持って戻ってきた。
「コレよ」
……
「見たら分かる、エロいヤツやん!!!」
どっからどう見ても、100%大人の玩具です。本当にありがとうございました。
「エロいってなんの話よ!変な言い掛かりはヤメてよね!」
「その色、そのフォルムの時点で完全にアウトだろーが!無自覚に、そんないかがわしいビジュアルの”呪物”をこの世に産み落とすな!」
「ねぇねぇ夏希ちゃん、ソレってどんな風に動くの?♡」
隣の円香が、爛々と目を輝かせながら、絵に描いたようなwktk顔で質問する。
ほら言わんこっちゃない、そのヤバすぎる見た目が、アホの琴線に触れちまったじゃねーか。
そういえばコイツも、ディルドを愛用しているようだし、大人の玩具ユーザーのひとりとして、その性能に興味があるのだろうか。
「ちょっと待ってね……」
右手に持っていたその玩具本体を机の中央に置いた夏希は、左手に持っていた遠隔操作用と思われる媒体のスイッチに手を掛ける。
「え~と、スイッチを入れると……」
カチカチッ。
うにょうにょ!ぶにぶに!うねうね!ぐにぐに!ぐいんぐいん!もにゅっもにゅっ!
うおっ、ヤバっ!?動きエグっ!!!
R18版でもモザイク無しでは到底お見せできない程の、その余りにもドスケベ過ぎる挙動に、思わず目を丸くする。
「うわ~、凄いエッチな動き!♡コレ、絶対気持ち良いヤツじゃん!♡」
円香の目から見ても、やはりその挙動は大人の玩具としては素晴らしい出来栄えのようだ。
が、その”動き”以上に驚愕すべき点がある。
そう、その驚異的R18挙動に対し、駆動音が全くもっての”無音”だということだ。
な、何でこれだけの動きに対して、音が一切しないんだ?
信じられん……夏えもんの技術力、恐るべし。
「って、お前はなんて卑猥なモノを作っとるんだ!」
こんなヤバい性能の性玩具、アダルトグッズ業界の歴史が動くぞ!
「だから言い掛かりはヤメてよ!私はただ、春子のオーダー通りに、何かよく分からないけど”棒状で蠢くモノ”を作成してあげただけよ」
……何かよくわからない状態で、んな”蠢くモノ”をこの世に産み落とすな。
「なぁ夏希、お前に折り入っての頼みがあるんたが」
「何よ、そんな変に改まって、気味が悪いわね」
「その、桃瀬に頼まれて作った”ブツ”を、俺たちにも1つ提供して欲しいんだが……」
「ん?それなら、この予備で作ったヤツが余ってるから、このままあげちゃってもいいんだけど」
「あぁ、すまん、そっくりそのままってわけじゃなくてな、見た目はまるっきり同じだけど、中身に手を加えた、言わば”マイナーチェンジ版”が欲しいんだよ」
「手を加える?ってどんな風に?」
「えっと、具体的に説明するとだな……」
「……という感じの仕様が希望なんだが、可能か?」
「あ~、うん、そのスペックであれば問題無いとは思うけど……」
「ほんとか!?じゃあ、是が非でも作製をお願いしたいんだけど、頼んでもいいか」
「まぁ、それぐらいなら大した作業でもないし、2日もあれば準備できるけど……で、あんたはソレを何に使おうと企んでるわけ?」
「あ~、いや、それはだな、禁則事項なんで詳しくは説明できないんだけど……とにかく、幼馴染のよしみで頼むぜ、夏えもん!」
「夏えもんって……まぁ、なんだっていいわ。じゃあ、今日中にパーツを揃えて明日中に組み立てるから、渡すのは明後日でいい?」
「おう、それで十分だ!よろしく頼む!」
「ちなみに、コレ、1つ”貸し”だからね。今度、何かしらの”対価”を要求させてもらうから”覚悟”しておきなさいよ!」
「あ、あぁ、お手柔らかに頼む……」
「ねぇ夏希ちゃん、ソレが作れるならさ、”こんなもの”も作れたりするのかな?」
「ん?どんなもの?」
円香は、ポケットから何かの図面の様な紙を取り出して広げると、ソレを夏希へと手渡した。
「えっとね、こんな感じのモノなんだけど……どうかな?」
「ふむふむ……うん、コレなら直ぐに作れるとは思うよ。全体の長さと、各部分の太さ、それに固さとか色を指定してもらえれば、1日もあれば大丈夫かな」
「ほんと!?流石は夏えもんちゃん!」
「夏えもんちゃんって……とにかく、今言った必要事項を教えてさえくれれば、直ぐに作ってあげるよ。円香は私のマブダチだからね♡」
「うん、ありがとう!むふふ、楽しみだな~♡」
ニマニマとイヤらしい笑顔を浮かべる円香。
コイツがこんなに嬉しそうな顔をするって事は、間違いなく碌でもない事を依頼したに違いない。
「あ~、でも、和哉の依頼の方を先に済ませちゃってからでいい?アイツ、自分よりも円香の事を優先したって知ったら、面倒くさそうだからさw」
「うん、確かに、お兄ちゃんそういうところあるもんね。ほんと、器が小さくて困っちゃうよw」
あの~お二人さん、そういう悪口はせめて、本人のいないところで喋ってもらってもいいですか……
「アイツのあの、何に対しても余裕のないところが、当に”童貞”って感じじゃないw」
「わかるわかるw”いやこの男絶対モテないだろ”って感じが透けて見えるっていうかw」
「そうそう、童貞臭さが全身から滲み出てるのよねwあれじゃあ、『俺は童貞だ』って公言しながら歩いてる様なもんよw」
相変わらずヒドい言われようだな……
茶道部の後輩ちゃんたちは、夏希とは脈アリだとか言ってくれてたけども、この感じだと、やっぱどう考えても脈ナシなんだよなぁ……
とか考えていたところで、円香がグイッと身を寄せてきた。
「あはは、お兄ちゃん、”童貞臭い”だってw言われてやんのw」
「……うっせーな」
プイッと、夏希に馬鹿にされた悔しさを誤魔化す様に、顔を背ける。
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「っっ!///ば、馬鹿野郎っ!///んなこといちいち改めて言うな!///」
「にしし♡赤くなっちゃって可愛いw♡そうやってすぐ照れちゃうのも、”童貞さん”だからかなwね、お兄ちゃん♡」
「くっ……///」
コイツってヤツはほんとに……
しかし、こんな教室で、ましてや夏希の目の前で、『俺は妹で童貞を卒業した男だ』なんて言えるはずもなく、甘んじて”童貞”である事を受け入れざるおえないのである。
「……で、円香、もうこんな時間だけど、教室に戻らなくていいのかよ、弁当食う時間がなくなっても知らんぞ」
「って、ありゃ!?ほんとだ!戻ってお弁当食べなきゃ!じゃあ、お兄ちゃん、夏希ちゃん、私はこれで教室に戻るね!アリーヴェデルチッチ~!」
そう言って騒がしい足音を響かせながら、円香は教室から飛び出していった。
はぁー、まったく、アイツのせいで無駄に話が長くなったような気がする。
夏希に依頼する分には、俺一人でも問題なかっただろうに……
と、そうだ、アイツ、今回の作戦で使うブツとは別に、何か違うモノを夏希に頼んでいたよな……
「なぁ夏希、さっき円香から受け取った図面を見せてもらってもいいか?」
「ん?コレだけど」
「どれどれ、ヤツはいったいどんなモノを欲しているんだ……」
……
うん、うん、うん、なるほどなるほど……
……
……ふぅ。
いや、ちんぽじゃねーか!!!
アイツ、幼馴染のJKにオーダーメイドのディルドを作らせようとしとるがな!!!
我が妹ながら、とんでもねー女だな、おい!
「コレがどうかしたの?」
「あ、いや、なんでもない、気にしないでくれ……」
なんで分かってねーんだよ!
この形状だぞ、どう見てもちんぽだろうが!
まぁ、何故かこの特徴的なフォルムを見てもピンときていない様子の夏希相手に、あえて言及するつもりもないが……
「じゃあ、腹も減ったし、俺も弁当を食べるとするかな」
「私も食べよ~」
カバンから弁当を取り出しながら、なんとなく思いついた言葉が、口からポロっと溢れた。
「……なぁ夏希、せっかくだし、たまには2人で一緒に食うかw?」
断られると分かっていながら、なんでこんな事を言ってしまうのかな、俺ってヤツは。
こういう空気の読めなさもまた、童貞臭さの片鱗なのかもしれない。
「……べ、別にいいけど///」
「へいへい、分かっていましたよ、大人しく一人で食べりゃあいいんでしょ、ええ」
「……だから、一緒に食べてもいいって///」
!?
「……い、いいのか?///」
「だから、いいって言ってるでしょ!///ボケっとしてないで、さっさと机くっつけなさいよ、昼休み終わっちゃうでしょ///」
「あ、ああ……///」
……なぁ、夏希さん///
コレって、脈アリなの、脈ナシなの、どっちなんだ!?///
そんなモヤモヤ感と緊張感を抱えつつ、夏希と向き合って他愛もない話をしながら食べた弁当は、なんだかいつもと違った味がした。
それは、俺が大人になったら、もう2度と味わうことができないかもしれない、そんな味。
どれだけ願っても、大金を積んでも、再現不可能であろう、そんな味。
そう、いつの日か俺にも、こんな若かりし頃の”片想いの味”を、懐かしく思い返す日が訪れたりするのだろうか……
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