NO MUSIC・NO LIFE

甘酒

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一章

始まりの音☆☆

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「ほら」
「ありがと!」

ベンチにちょこんと座る瞳にたい焼きを渡し、単はゆっくりとベンチに腰をかけた。

「お前、ほんとに女々しいな」
「そりゃあ、そうさ。家族全員女の環境で育ったんだから。」
「それ理由になるのか?」
「なるとも。」

弱々しく吐かれた言葉には、どこか寂しさと憎しみが込められているように、単は感じた。

「ま、まぁ。今のお前でいいと思うぞ。」
「変わる気は無いよ。はむっ」


しばらく何の変哲もない会話が続いた。

「よし。帰ろうか。単、ご馳走様」
「なぁ、このあと付き合ってくれないか?」
「え?」

帰ろうと立ち上がる瞳の手を強く握り締める単の目には、暑さが籠っていた。
瞳は驚いた後、ニカッといつも通りの笑みを零す

「うん、いいよ!行こうか」
「ありがとう。道案内は任せろ」



2人が足並み揃えて向かった先は、古びたライブハウスだった。
お互い初めてだったこともあり、緊張しながらもなんとか入場できた。

「単が音楽に興味あるなんて意外だなぁ」
「そうか?小さい頃から好きなんだけどな」

ニカッと笑ってみせた
会場に人が入り終えた頃だろうか、ステージからドラムの音が聞こえる。
押し潰されそうな程の重音、鼓膜を刺激するリズム
その瞬間に、単と瞳は魅了されていた。

「お待たせしました!では。今日の1組目"Daphne odora"!!」

司会の紹介ともにステージに現れたのは、白衣を身に着けている男性5人だった。
全員が持ち前の場所に着くと、ボーカルであろう人物がマイクの電源を入れた。


「オープニングを飾らせてもらうことになった、Daphne odoraです。今夜限りの最高のライブを楽しみましょう!では、1曲目『始まりの音』」


世界は暗く、未知に溢れている
それでも君は、走ることを決めた
誰が待つのかも分からない
その道を君は走り始めた


「すごい...。」

いつの間にか瞳は言葉を零していた。
今までに無い感覚に駆られ、目には涙が溜まっていた。
それは、隣にいた単も同じだった。
いつかを夢で見たステージ。そして、目の前にいる憧れの人。かつてない感動が体を巡る。

君は見つけたんだ、始まりの音を
無闇に放り投げられた
その希望を拾い、旅に出る
君に始まりの音を聞かせるよ


『なぁ』


お互いの顔を見て微笑む。
もう言葉は必要なかった。
しかし、言わないと気が済まない。そうお互いが感じた


『バンドを組もう』


2人の言葉が、ドラムの音と共にライブ会場全体へと響き渡った。
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